抄訳
真核生物のゲノムDNAの情報は、ヌクレオソームを基本単位とするクロマチン構造の中に保存されており、通常ヌクレオソームは、H2A、H2B、H3、H4、2分子ずつからなる8量体にDNAが巻き付いた円盤状の構造をとっている。一方、筆者らはヒト由来タンパク質を用いたクライオ電子顕微鏡解析によって、ヒストンH3、H4の2種類のみでもヌクレオソーム様構造体(H3-H4オクタソーム)が形成されることを明らかにした。H3-H4オクタソームは、ヌクレオソームよりも可動性が高く、クロマチン結合因子の足場となる特徴的な酸性表面を持たないユニークな構造体である。筆者らは、H3-H4オクタソーム特異的な構造を出芽酵母内で検出することにも成功し、H3-H4オクタソームが生体内に存在することを初めて実証した。本研究成果は、ヒストンの変異や修飾だけでなく、ヒストンの含有率もヌクレオソームにアイデンティティを与えることを提唱し、今後のクロマチン研究に新しい観点を加えると考えられる。