抄訳
閉塞性大腸癌における大腸ステント留置術は術前減圧や緩和医療において良好な成績が報告されているが、ステント留置後の化学療法については穿孔などのリスクがあり賛否が分かれるところである。本論文では閉塞症状を有する結腸直腸癌患者55症例において、手術を先行した症例と大腸ステントを留置してから化学療法を施行した症例を後方視的に比較することにより大腸ステント後化学療法症例の長期予後、安全性について検討した。大腸ステント留置術の技術的・臨床的成功率は100%で、大腸ステント長期留置に伴う偶発症は逸脱、閉塞が多いものの無処置もしくは内視鏡的再ステント留置を行うことでほとんどコントロールが可能だった。長期予後は手術先行と大腸ステント群の間に差を認めず大腸ステント症例では化学療法後に原発巣を切除したほうがステントのみで手術を行わない症例や手術先行群に比べ長期の生存が得られていた。大腸ステント後の化学療法は閉塞性大腸癌治療において選択肢の一つとなりうる。