抄訳
背景と目的
頭蓋底骨髄炎と上咽頭癌との鑑別は時に困難である。本研究ではダイナミック造影MRIと正規化ADC値を用いて頭蓋底骨髄炎と上咽頭癌の違いを検討することを目的とした。
材料と方法
本研究では治療前にダイナミック造影MRIと拡散強調像が施行された頭蓋底骨髄炎8例と上咽頭癌12例を対象とした。
関心領域におけるダイナミック造影MRIの定量的パラメータとADC値を解析した。正規化ADC値は病変部の値を正常脊髄の値で割ることによって算出した。
結果
頭蓋底骨髄炎の1分間あたりの細胞外血管外腔と血漿の間の移行速度定数(Kep)は上咽頭癌より有意に低かった(中央値0.43 vs 0.57; p = 0.04)。Kepの最適カットオフ値は0.48であった(曲線下面積0.78; 95%信頼区間0.55−1)。頭蓋底骨髄炎の正規化平均ADC値は上咽頭癌よりも有意に高かった(中央値1.9 vs 0.87; p < 0.001)。正規化平均 ADC値 の最適カットオフ値は 1.55 であった(曲線下面積0.96; 95%信頼区間0.87−1)。
ダイナミック造影MRI(Kepと細胞外血管外腔の割合[Ve])の組み合わせの曲線下面積は0.89(95%信頼区間0.73-1)、ダイナミック造影MRIのパラメータと正規化平均ADC値の組み合わせの曲線下面積は0.98(95%信頼区間0.93-1)であった。
結論
ダイナミック造影MRIの定量的パラメータと正規化ADC値は頭蓋底骨髄炎と上咽頭癌の鑑別に有用な可能性がある。ダイナミック造影MRIの定量的パラメータと正規化ADC値の組み合わせはそれぞれを単独で使用した場合よりも優れていた。