抄訳
急性大動脈解離の診断の見逃しは致死的であり、Dダイマー陰性から除外診断を行うことがしばしば行われている。しかし、Dダイマー陰性の急性大動脈解離を経験したため報告する。70歳代の男性が腰背部痛で救急外来を受診した。Dダイマーは1.0μg/mL以下と陰性であったが、突然発症かつ疼痛部位も移動していたため、急性大動脈解離を強く疑った。両上肢の収縮期血圧にも左右差を認め、造影CTにてStanford B型急性大動脈解離と診断された。直ちに心臓血管外科へコンサルトを行い、厳格な血圧管理によって臓器虚血症状などの合併症なく退院となった。急性大動脈解離には診断予測ツールであるAortic dissection detection risk score(ADD-RS)があり、身体所見、疼痛の性状、患者背景の3項目からなり、本症例は高リスクであった。急性大動脈解離の除外診断を行う際には、D-ダイマーの結果だけに頼るのではなく、病歴からリスクを評価した上で用いる必要があることが改めて示唆される。