抄訳
無腸類は非常に単純な体制を持つ海産無脊椎動物であり、その研究から左右相称動物の祖先や進化について新たな知見が得られると期待されている。しかし、その研究は進んでおらず、日本国内には100種程度生息すると推測されているものの約10種しか報告されていない。
本研究では、背面中央のアンテナ状の突起という他の無腸類にはみられない特徴を持つ、体長3mm程の無腸類の一種を日本沿岸複数箇所から採集した。観察の結果、この背面突起は水流などを感じる感覚器であり、この無腸類の獰猛な捕食行動の際に利用されていることが示唆された。
この無腸類の形態・行動・発生の観察、および分子系統解析の結果から本種は未記載種であると判断し、背面突起を鬼のツノに見立ててAmphiscolops oni(和名:オニムチョウウズムシ)という学名で新種として報告した。
今後は、背面突起が本当に感覚器なのか、本種がどのようにこの新奇器官を獲得したのかなどの研究を進める予定である。