抄訳
喫煙は動脈硬化の主要なリスクファクターである。血管内皮細胞は炎症を調節することから、本研究では喫煙が内皮細胞の自然免疫を活性化する機構をDNA損傷の観点から明らかにし、診断への臨床応用の可能性を探索した。タバコ煙抽出物(CSE)は、ヒト内皮細胞において、核およびミトコンドリアのDNA損傷を誘発し、その結果として蓄積した細胞質DNA断片がcyclic GMP-AMP synthase(cGAS)-stimulator of interferon genes(STING)経路の活性化を介した炎症を惹起することを示した。ミトコンドリアおよび核DNA損傷の結果である血漿中cell-free DNA (cfDNA)は、ミトコンドリア由来cfDNA、核由来cfDNAとも動脈硬化患者において増加しており、特にミトコンドリアcfDNAが動脈硬化のリスクと有意に関連していることを明らかにした。本研究成果は、喫煙をはじめとする種々の動脈硬化危険因子がcfDNAを増加させることを示唆し、cfDNAが動脈硬化の有用な新規バイオマーカーである可能性を示した。