抄訳
胃癌は世界で4番目に多い悪性腫瘍であり、死因の第4位である。 切除不能進行・再発胃癌に対して殺細胞性薬剤を用いた化学療法による治療が確立されているが、生存期間中央値は12〜15ヶ月と限られている。近年、がんの分子生物学的特性や、がんゲノムに関する理解が深まり、胃癌においても各治療ラインで化学療法と分子標的薬との併用療法や、免疫チェックポイント阻害薬との併用療法の臨床試験が数多く行われている。2021年にはCheckMate-649試験で化学療法とニボルマブの併用療法の良好な成績が示され、本邦における新たな一次治療として化学療法+ニボルマブ療法が承認された。さらに現在では抗PD-1抗体と、抗CTLA-4抗体などの他の免疫チェックポイント阻害薬との併用、マルチキナーゼ阻害薬との併用、そしてキメラ抗原受容体T(CAR-T)細胞療法、Bispecific T-cell Engager (BiTE)抗体など、胃癌を対象とした新規臨床試験が進行中である。本総説では、胃癌に対する免疫療法および分子標的治療開発の近年の進歩にスポットを当て、報告する。