抄訳
枯草菌のペプチドグリカンを修飾する細胞壁テイコ酸(WTA)は、細胞の形態維持と増殖に必須である。私たちは蛍光標識レクチンを用いて、新たに合成されたWTAのペプチドグリカンへの付着が、側壁部分の細胞膜近傍でパッチ状に行われることを見出した。同様に、エピトープタグを融合したWTA生合成酵素も細胞円筒部にパッチ状に局在し、WTAトランスポーターTagHはWTAポリメラーゼTagF、WTAリガーゼTagT、アクチンホモログMreBとそれぞれ高頻度で共局在していた。さらにグラム陽性細菌の厚い細胞壁レイヤーがどのように形成されるのか観察した結果、新たに合成されたWTAが細胞側壁の下部にパッチ状に挿入され、約30分後にようやく細胞壁の最外層に到達することが明らかになった。本研究では、新たに合成されたWTAを検出することにより、グラム陽性細菌の厚い細胞壁の形成過程を可視化することに成功した。