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2023/04/14

自閉スペクトラム症と前部帯状皮質におけるミトコンドリア複合体Ⅰの利用能低下:PETによる研究

論文タイトル
Lower Availability of Mitochondrial Complex I in Anterior Cingulate Cortex in Autism: A Positron Emission Tomography Study
論文タイトル(訳)
自閉スペクトラム症と前部帯状皮質におけるミトコンドリア複合体Ⅰの利用能低下:PETによる研究
DOI
10.1176/appi.ajp.22010014
ジャーナル名
American Journal of Psychiatry
巻号
American Journal of Psychiatry Vol. 180, No. 4
著者名(敬称略)
加藤 康彦  山末 英典
所属
浜松医科大学 精神医学講座

抄訳

目的:死後脳や末梢検体による先行研究から、自閉スペクトラム症病態へのミトコンドリア機能障害の関与が示唆されていた。筆者らは、自閉スペクトラム症者の生体脳内でもミトコンドリア機能障害が存在するか、どの部位に存在し、臨床的相関も認められるか、検討した。
方法:他の精神疾患の併発や知的障害がなく向精神薬の服薬もしていない自閉スペクトラム症と診断された23名の成人男性と、年齢と知能および両親の社会経済的背景に差がない定型発達を示した24名の男性が研究に参加し、ミトコンドリア複合体Ⅰに結合する [18F]BCPP-EFを用いたPET撮像を受けた。診察と血液検査から参加者のミトコンドリア病診断を除外した。
結果:過去に死後脳研究でミトコンドリア機能障害が報告されていた部位の中で、定型発達者に比べて自閉スペクトラム症者では、前部帯状皮質に特異的な[18F]BCPP-EFの利用能低下を認めた。さらに、この前部帯状皮質における[18F]BCPP-EF利用能が低下しているほど社会的コミュニケーションの困難さが深刻であるという相関を認めた。
結論:本研究は、自閉スペクトラム症病態と社会的コミュニケーションの困難に生体脳内のミトコンドリア機能障害が結びついていることを直接的に示し、ミトコンドリア複合体Ⅰが自閉スペクトラム症中核症状に対する新しい治療標的となり得ることを支持した。

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