抄訳
VGF nerve growth factor inducible (VGF) は、代謝調節に関与する神経ペプチド前駆体である。VGF由来のペプチドは、2型糖尿病患者やモデルマウスの血漿中においてインスリン分泌を調節することが示唆されている。しかしながら、糖尿病モデルにおける膵β細胞に対するVGFの保護効果は十分には明らかにされていない。そこで本研究では、VGF過剰発現マウスを用いたストレプトゾトシン(STZ)誘発糖尿病モデルにおけるVGFの膵β細胞保護効果及びVGF誘導作用を有するSUN N8075による治療効果を検討した。その結果、STZ誘発糖尿病モデルのVGF過剰発現マウスでは、野生型マウスに比べて血糖値の改善及びβ細胞量の維持、耐糖能の向上が確認された。また、SUN N8075は、膵島におけるVGFの発現を増加させ、血糖値の上昇を抑制した。さらに、in vitroにおいてVGF由来ペプチドであるAQEE-30及びSUN N8075はSTZ誘発β細胞死を抑制した。以上のことから、VGF及びその誘導剤は、β細胞を保護し糖尿病に対する治療効果を発揮する可能性が示された。