抄訳
X連鎖性低リン血症性くる病 (X-linked hypophosphatemic rickets:XLH)では従来治療が成人期の歯科合併症を予防することが報告されているが、その予防効果が前歯や臼歯などの歯種によって異なるかどうかは不明である。また、異所性骨化に対する従来治療の予防効果に関する報告も少ない。今回我々は、成人XLH30例のパノラマX線画像、脊椎CT、股関節・膝関節X線画像の結果を後方視的に解析し、5歳未満から治療を開始した早期従来療法開始群(早期群)と5歳以降に治療を開始した後期従来療法開始群(後期群)の2群に分けて歯科合併症・異所性骨化重症度を比較した。後期群では、早期群と比較して健全歯数が有意に少なく、齲歯全体の重症度の指標であるDMF指数が有意に高かった。その一方で、前歯と臼歯の歯科合併症の重症度、脊柱靭帯骨化や股関節・膝関節周囲骨棘の重症度・頻度は、両群間で有意差はなかった。本検討によって、早期に治療を開始することにより、骨石灰化障害と同様、歯科合併症も予防が可能であることが示唆された。一方で、腱付着部症は骨や歯と異なり早期に治療を開始しても予防が不可能であった。従って、異所性骨化は低リン血症やFGF23高値が直接影響し惹起されているのではない可能性が高い。