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2023/06/02

ヤツメウナギ初期胚からの高純度なtotal RNA抽出法

論文タイトル
High-quality total RNA extraction from early-stage lamprey embryos
論文タイトル(訳)
ヤツメウナギ初期胚からの高純度なtotal RNA抽出法
DOI
10.2144/btn-2023-0004
ジャーナル名
BioTechniques
巻号
BioTechniques, Ahead of Print
著者名(敬称略)
菅原 文昭(筆頭、連絡著者)、Juan Pascual-Anaya
所属
兵庫医科大学生物学

抄訳

 高純度のtotal RNAの抽出は、近年のトランスクリプトーム解析においてバイアスのない結果を得るために不可欠な技術である。ヤツメウナギは現代に生き残る無顎類の一種であり、脊椎動物の進化発生学(EvoDevo)研究において重要な系統的位置を占める動物である。ヤツメウナギから人工受精によって胚を得ることは比較的容易だが、原腸陥入前の初期胚から不純物のないtotal RNAを抽出すことはこれまで困難であった。例えばAPGC法にイソプロパノール沈殿を組み合わせた従来の手法では多量のコンタミネーションが生じ、O.D.260/280の値が極めて低くなる。また、QIAGEN社のRNeasyなどシリカメンブレンフィルターを用いた抽出法では、RNAがフィルターに結合せず収量が大幅に低下する。今回我々は、抽出前の遠心分離操作の追加とイソプロパノール沈殿時の塩濃度の調整により、収量と純度の大幅な改善に成功したので、その手法を報告する。また、RNA抽出に伴う上記の問題は、孵化前後に徐々に解消されていくことも明らかになった。このことから、孵化に伴う胚の変化(卵膜の有無、卵黄の量)に関係する何らかの物質が初期胚のRNA抽出を妨げている可能性が示唆される。

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