抄訳
肝臓には実質的な機能を担う肝細胞に加えて、肝非実質細胞(肝類洞内皮細胞、肝星細胞など)が存在する。これらの肝非実質細胞は、肝線維化の進行において重要な役割を果たしている。特に肝星細胞は、種々の肝障害に応答し、コラーゲン等の細胞外基質を産生して線維化を誘導し、病態の進行に直接的に影響を与える細胞である。線維化の病態を正しく理解して新たな治療法を開発するために、我々を含めた研究グループは、ヒトiPS細胞から肝非実質細胞を作製するシステムを構築してきた。また、これらの細胞を用いたヒト肝臓モデルを開発し、肝線維化のメカニズム解析や新たな治療薬のスクリーニングを実施してきた。本論文では、ヒトiPS細胞から肝非実質細胞への分化誘導系のこれまでの動向、並びに、肝非実質細胞を用いたヒト肝臓モデルの有用性と今後の展望について概説している。