抄訳
1型糖尿病のモデル動物であるnon-obese diabetic(NOD)マウスは、糖尿病発症に先行してラ氏島炎が認められ、TH1サイトカイン優位で 細胞傷害に働くと考えられている。我々が同定したGalectin-9 (Gal-9)は36kDaのβ-galactoside binding proteinで、TH1細胞の膜蛋白であるT-cell immunoglobulin and mucin-3 (Tim-3)のリガンドとして作用する。組織に浸潤した活性化TH1細胞上のTim-3を介してGal-9がアポトーシスを誘導する。一方、Tim-3は樹状細胞にも発現し、Gal-9がTNF-α分泌を促進することが報告された。そこでGal-9蛋白および抗Tim-3抗体の糖尿病発症に対する効果とその機序について検討した。NODマウス(メス) にリコンビナントGal-9 蛋白(1mg/kg/週)、モノクローナル抗Tim-3抗体(RMT3-23, 0.25mg/3.5日)を計40週間投与した。PBS投与群と比較し、Gal-9投与群、抗Tim-3抗体投与群いずれも有意差をもって糖尿病発症抑制作用を認め、抗Tim-3抗体投与群で最も効果が強力であった(p<0.0001)。培養CD4+Tim-3+TH1細胞の検討では、Gal-9によるTH1細胞のアポトーシス誘導が認められたが、抗Tim-3抗体ではアポトーシスは誘導されなかった。一方tsDCにおいては、抗Tim-3抗体はGal-9によるTNF-αの分泌を用量依存性に抑制した。Gal-9は、TH1細胞のアポトーシスを介してNODマウスの糖尿病発症を抑制すると考えられた。また抗Tim-3抗体は、樹状細胞でTNF-αの分泌を抑制し、TH1細胞ではGal-9のアポトーシス作用を増強することから新しい1型糖尿病の治療ターゲットであると考えられた。