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2012/05/28

黄色ブドウ球菌由来莢膜合成酵素CapFは2つの機能ドメインからなるユニークな構造を有する

論文タイトル
Crystal structure of the enzyme CapF of Staphylococcus aureus reveals a unique architecture composed of two functional domains 
論文タイトル(訳)
黄色ブドウ球菌由来莢膜合成酵素CapFは2つの機能ドメインからなるユニークな構造を有する
DOI
10.1042/BJ20112049
ジャーナル名
Biochemical Journal Portland Press
巻号
May 2012 | Vol.443 | Issue 3| 671-680
著者名(敬称略)
宮房 孝光、津本浩平 他
所属
東京大学医科学研究所疾患プロテオミクスラボラトリー 新領域創成科学研究科メディカルゲノム専攻疾患蛋白質工学分野 工学系研究科化学生命工学専攻

抄訳

莢膜は細胞壁の外側に発現される多糖類であり、黄色ブドウ球菌の重要な病原因子の一つである。CapFはこの莢膜の合成に必須な酵素であり、創薬標的と見なしうる。本論文では、CapFのX線結晶構造解析、酵素機能解析を行い、また補酵素であるNADPHとの特異的な相互作用を等温滴定型熱量測定により観察した。
 X線結晶構造解析の結果、CapFは2つの独立したドメイン(N末端ドメイン、C末端ドメイン)を有していることが明らかとなった。これらのドメインを分割した変異体を作成し、酵素機能解析を進めたところ、C末端ドメインがC3-エピマー化反応に必須であること、N末端ドメインがC4-還元反応を触媒していることが示された。後者はNADPHの還元力を要するが、このNADPHはCapFに包摂されておらず1反応毎に1分子が消費されていた。等温滴定型熱量測定の結果はNADPHとCapFの親和性はNADPHが反応後にNADP+へと酸化されることにより40倍程度低下することを示しており、この親和性の変化によりNADPHの結合/放出、還元反応が加速しているものと考察される。このような活性制御機構の報告は今までになく、CapFに特有のメカニズムである可能性がある。

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