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2012/09/21

ヒト多能性幹細胞からの高機能性褐色脂肪細胞の作製

論文タイトル
Production of Functional Classical Brown Adipocytes from Human Pluripotent Stem Cells using Specific Hemopoietin Cocktail without Gene Transfer 
論文タイトル(訳)
ヒト多能性幹細胞からの高機能性褐色脂肪細胞の作製
DOI
10.1016/j.cmet.2012.08.001
ジャーナル名
Cell Metabolism Cell Press
巻号
Cell Metabolism, Volume 16, Issue 3, 394-406, 5 September 2012
著者名(敬称略)
西尾美和子、佐伯久美子 他
所属
独立行政法人 国立国際医療研究センター研究所 疾患制御研究部

抄訳

褐色脂肪細胞は、脂肪を燃焼して体熱産生を行う「痩せる脂肪細胞」として知られ、メタボリックシンドローム(以下メタボ)の治療開発に向けて世界中から注目されている。しかしヒト検体の入手は困難であり研究は遅れている。今回、ヒト多能性幹細胞(ES/iPS細胞)から熱産生能を有する褐色脂肪細胞を高純度に作製する技術が開発された。遺伝子操作を行わず、異種動物細胞や異種動物血清を用いないクリーンな環境下で、独自に開発した「造血性サイトカインカクテル」を用いた2段階培養により約10日間でほぼ純粋な褐色脂肪細胞が得られる。これをマウスに移植すると「耐脂能」と「耐糖能」が向上することが確認された。一方、白色脂肪細胞(いわゆる脂肪細胞)を移植したマウスは、耐脂能は向上したが耐糖能は悪化した。驚くべきことに、ヒト多能性幹細胞由来褐色脂肪細胞の同時移植により白色脂肪細胞移植に伴う耐糖能障害は正常化され、メタボ治療開発に向けた大きな一歩となった。さらにヒト多能性幹細胞由来褐色脂肪細胞が造血支持能を発揮するという意外な一面も示され、ヒト褐色脂肪細胞研究の新たな可能性が提示された。

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