抄訳
ネコモルビリウイルス(feline morbillivirus:FmoPV)感染症は、ネコの新興ウイルス感染症であり、尿細管間質性腎炎との関連が疑われている。FmoPVは中国で2012年に初めて報告されたが、他の国におけるウイルス分離の報告はなかった。我々は日本で初めてFmoPVの分離に成功し、その性状を調べたので報告する。日本国内の動物病院を受診したイエネコ13頭の尿をRT-PCR検査したところ、3頭が陽性と判定された。これらの陽性個体からFmoPVを3株分離した。FmoPVに感染したCRFK細胞では融合を伴うCPEが観察され、間接蛍光抗体法によりFmoPVのN蛋白質が検出された。また電子顕微鏡による観察では、多形性のウイルス粒子のエンベロープ上に明瞭な糖蛋白質のスパイクがみられた。HおよびL遺伝子の系統樹解析ではFmoPVの遺伝的多様性が見られたが、正の選択は受けていないことがわかった。