抄訳
Hirosaki hairless rat (HHR) はSprague-Dawley rat (SDR) から自然発生した遺伝性の変異ラットである。Comparative genomic hybridizationで、HHRでは第1染色体長腕21に phospholipase A2 group IVc (Pla2g4c)を含む50-kbの欠損を認めた。Pla2g4cはSDR乳腺の腺管細胞と筋上皮細胞に発現していた。7,12-dimethylbenz[a]anthraceneによるHHRの乳がん発生率はSDRより低く、乳がんもSDRに比べ小さく、TUNEL陽性のアポトーシスが観察された。ラット乳腺腫瘍細胞(RMT-1)を用いてPla2g4cをsiRNAでノックダウンすると、アポトーシスが誘導されるとともにlipocalin 2 (Lcn2) と NF-κB関連遺伝子の発現が亢進した。Pla2g4cノックダウンによるアポトーシスは、Lcn2のノックダウンあるいはNF-κB阻害剤により抑制された。これらの結果から、Pla2g4cを欠損したラット乳腺ではNF-κB/Lcn2 経路の活性化によりアポトーシスが誘導され、乳がん発生が抑制されることを明らかにした。