抄訳
原発性アルドステロン症は高血圧症の10%を占めるとされる二次性高血圧症である。近年、網羅的遺伝子発現解析によりアルドステロン産生腺腫(APA)と隣接する副腎組織(AAG)において発現量の異なる遺伝子が多数報告されているが、これらの遺伝子発現の変化とアルドステロンの自律性分泌や腫瘍化の関連には不明な点が多い。一方、APAにおけるDNAメチル化修飾に関する報告はほとんどない。本研究ではAPA発症の分子機構を明らかにするために、同意を得た患者の手術時に採取したAPAとAAGの7症例14検体を用い、網羅的遺伝子発現解析とゲノムワイドDNAメチル化解析を同時に行った。トランスクリプトーム解析では、 APAではAAGと比較してPCP4、CYP11B2などの遺伝子の発現量増加を認め、メチローム解析ではゲノム全体が低メチル化状態であることが明らかになった。遺伝子発現とDNAメチル化修飾の統合解析により、CYP11B2やMC2Rなど遺伝子発現増加とDNA低メチル化の負の関連性を示す36遺伝子を同定した。本研究は同一症例においてAPAとAAGのトランスクリプトーム解析とメチローム解析を統合的に比較検討し、APAの発症にDNA脱メチル化による遺伝子発現制御が関与する可能性を示した初の報告である。