抄訳
日本人2型糖尿病患者を対象とした大規模ゲノム関連解析によって、KCNQ1遺伝子の一塩基多形が糖尿病発症の有意な危険因子であることが2008年に報告された。しかしながら、KCNQ1遺伝子が2型糖尿病を発症させるメカニズムに関してはこれまで明らかにされていなかった。筆者らは、KCNQ1遺伝子がインプリンティング遺伝子である点に注目した。マウスを用いた検討により、父親から引き継いだKcnq1遺伝子の変異は、インプリンティング制御に異常を起こすことによって、細胞周期抑制因子Cdkn1cの発現量を増加させることが明らかとなった。Cdkn1cは膵β細胞特異的に蓄積することによって、膵β細胞量を減少させ、2型糖尿病発症に至ると考えられた。今回の研究により、2型糖尿病原因遺伝子Kcnq1による糖尿病発症機序を解明し、またインプリンティング制御の異常が2型糖尿病発症につながることを初めて見出した。