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2016/04/06

卵巣の卵胞局所におけるレチノイン酸合成が排卵準備を完結させ,雌の妊孕性を担保する

論文タイトル
De novo-synthesized retinoic acid in ovarian antral follicles enhances FSH-mediated ovarian follicular cell differentiation and female fertility
論文タイトル(訳)
卵巣の卵胞局所におけるレチノイン酸合成が排卵準備を完結させ,雌の妊孕性を担保する
DOI
10.1210/en.2015-2064
ジャーナル名
Endocrinology Endocrine Society
巻号
Endocrinology Online: March 29, 2016
著者名(敬称略)
川合智子,矢中規之,JoAnne S. Richards,島田昌之
所属
広島大学 大学院生物圏科学研究科 生殖内分泌学,広島大学インキュベーション研究拠点 RCAS

抄訳

ビタミンA欠乏は,雌の繁殖(生殖)能力を減退させることが知られているが,卵巣における役割はほとんど解明されていない.我々は, 発情期において,顆粒膜細胞でFSH依存的にRA合成酵素群の発現が上昇し,それがRA受容体を介して遺伝子発現を誘導することを見いだした. さらに,RA合成抑制剤投与により,新規合成されるRAが排卵刺激を感受するLH受容体(Lhcgr)の顆粒膜細胞での発現を誘導し,それが排卵だけでなく卵成熟,受精および胚発生いずれをも促進することを明らかとした.ビタミンA欠乏飼料を給餌されたマウスにおいても,排卵抑制により発情期が延長する繁殖障害を呈した.これらの異常はRA投与により改善されたことから,雌の繁殖能力は,卵巣の卵胞局所におけるRA新規合成に依存することがはじめて明らかとなった.この成果は,ビタミンA欠乏のみでなくそれをRAに変換する酵素群の発現あるいは活性異常が,ヒトの不妊症や家畜の繁殖障害を引き起こす可能性を示している.

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