抄訳
約24時間のリズムを刻む概日時計(体内時計)は食事の時刻や内容により調節される。しかし、特定の栄養素が概日時計に及ぼす影響については不明な点が多い。本研究では、概日時計に影響を及ぼすアミノ酸を同定することを目的とした。
CBA/Nマウスにおいて、回転輪活動リズムの位相変化量を指標として解析を行った。20種類のアミノ酸のうち、L-セリンを投与したマウスでは、光による概日時計の位相変化が強まることが判明した。この効果はGABA-A受容体アンタゴニストであるピクロトキシンにより阻害された。また、明暗周期を6時間前進させてL-セリンを経口投与したところ、新しい明暗周期に対する再同調が早まった。
L-セリンの効果をヒトで実証するため、L-セリンが光による概日時計の位相前進に及ぼす影響について、男子大学生を対象として解析した。L-セリンを就寝前に摂取して翌朝に強い光を浴びると、概日時計の位相の指標であるメラトニン分泌開始時刻が有意に大きく前進した。
以上の結果から、光による概日時計のリセットがL-セリンの摂取により強まることが解明された。本成果により、概日時計の乱れや時差ぼけの改善にL-セリンが有用である可能性が示唆された。