抄訳
Phosphatase of regenerating liver(PRL)は悪性度の高いがんで高発現しており、積極的にその悪性化を促進する。これまでの研究からMg2+輸送との関連が示唆されてきたが、その重要性は不明だった。培養細胞の培地からMg2+を除去すると、PRLのタンパク質量が顕著に増加した。このときPRLをRNAiにより発現抑制すると、細胞内Mg2+量が著しく減少して細胞死が起こった。このMg2+枯渇応答性のPRL増加の仕組みを調べたところ、PRL遺伝子の転写レベルでの調節が主因であることが分かった。この遺伝子発現誘導は転写因子STATの活性化によるものであり、その機能阻害化合物やRNAi発現抑制によってPRL増加はほぼ完全に抑制できた。これらの実験結果から、PRLは環境条件応答性に細胞内Mg2+量を調節することが明らかとなり、がん悪性化におけるMg2+調節の重要性が示唆された。