抄訳
バソプレシン(AVP)は、視床下部視索上核および室傍核に存在する巨細胞性神経分泌細胞で合成され、下垂体後葉の神経終末から血中へと分泌される。これまでに、ムスカリン受容体がAVPの分泌を促進性に調節する可能性が示唆されており、また、視床下部ではM2ムスカリン受容体サブタイプが多く発現していることも報告されている。本研究では、同サブタイプを介したAVPの分泌調節機構について明らかにする目的で、M2サブタイプを欠損したマウスを用いてAVPの合成・分泌能を検討した。視床下部におけるAVPの免疫陽性細胞数を野生型と欠損型で比較すると、室傍核では両者の間に差は認められなかったが、視索上核では欠損型で有意に低下していた。また、欠損型では血中AVP濃度が野生型と比較して有意に低下しており、飲水量および排尿量は有意に増加していた。これらの結果は、M2ムスカリン受容体サブタイプが視索上核におけるAVPの合成・分泌を促進性に調節することにより体液量の恒常性調節に関与することを示唆している。