抄訳
磁気共鳴画像(MRI)を用いると組織内の微量な脂肪を検出できる。この技術を悪性腫瘍の化学療法後の評価に応用した研究は少なく、予後への影響は検討されていない。我々は、大腸癌肝転移病巣では化学療法後に腫瘍内脂肪が高頻度に検出されることを発見し、さらに、その頻度や臨床的意義を検討した。大腸癌肝転移があり、術前化学療法・根治切除手術が行われた59名の患者を対象に、肝MRI(dual-echo法)を撮像したところ、腫瘍内脂肪は化学療法前では0%、化学療法後では54%で検出された。多変量解析では、独立した予後不良因子として、15個以上の肝転移、212%以上の脂肪含有率、365歳以上の年齢、4治療効果判定(RECIST 1.1法)で進行ないし安定、が残った。まとめると、大腸癌肝転移の化学療法後には頻繁に腫瘍内脂肪が検出され、一定以上の脂肪量は予後不良因子である可能性が示された。本結果は、大腸癌肝転移の適切な治療効果判定や治療の個別化に役立つ可能性がある。