抄訳
我々は植物(湿原や草原の花を中心として)と同調査域の昆虫に生息する嫌気性菌の微生物生態に関して研究を行っている。
これまでに尾瀬湿原の花から新種の嫌気性乳酸菌Lactobacillus ozensisとLactobacillus floricolaを単離・報告してきた。
長野県の野々海高原は人里離れた湿原で、貴重な生態系が存在することから、許可を得て経年的に調査を行っている。
野々海高原に生息する花や昆虫の微生物叢を調査する過程で、草食性(雑食)のヒメギスに由来する腸内細菌叢を解析した結果、未記載種の乳酸生成菌を単離した。
16S rRNA遺伝子解析の結果、既知細菌種との相同性が96%台と低く、かつ近縁種にはない形態的な特徴(黄色を呈するなど)や生化学的特徴を有していたことから、新種 Lactobacillus metriopteraeを提唱した。メタ16S rRNA遺伝子の解析結果から、本細菌はヒメギス腸管細菌叢の18~78%を占める最優占種であることが判明した。
今後、ヒメギス腸内における本新種の生理学的な役割の解明が期待される。