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2019年11月初旬に米国で開催されたCharleston Conferenceの基調講演で,米国国立医学図書館(NLM)ディレクターのPatricia Flatley Brennan氏が「Anticipating the Future of Biomedical Communications(試訳:生物医学コミュニケーションの将来展望)」という演題でNLMにおける取り組みを紹介した。 講演の序盤で,時代の変化に対応するために策定した「2017-2027戦略プラン」に基づき,NLMは21世紀の生物医学コミュニケーションの支援をミッションとすることが示された。そのために実施するアクションアイテムは以下a. b. cの3点に集約される。 【a. 使い勝手と研究文献へのアクセスの向上】 端的な事例としてPubMed Labs(現在のNew PubMed)に関する取り組みが取り上げられた。PubMedの利用規模として,3,000万超の文献情報を有し,一日に250万人が300万の検索を実施し,900万ページ閲覧されている。また,利用実態に関しては,検索の80%が1ページ分以上の検索結果を返し,そのうち90%の利用者が2ページ以降に進まないとのデータがある。 このような状況から,AI,機械学習により適正度ランキングを改善し続ける必然性がある。効率的な発見を支援することが重要であり,NLMはその改善に取り組んできた。その成果を生かすべくNew PubMedの結果リストでは,ソートのデフォルトオプションを従来の新着順からこのベストマッチに変更する。また,これに関連し,ヒットした文献が必要かどうか判断しやすくするために,検索結果リストで検索語に関連性の高い箇所をスニペット表示したり,検索結果の年代分布をヒストグラム表示し,視覚的に年代の絞り込みができる点にも触れた。 【b. オープンサイエンスとデータの共有の促進】 NLMは基本的に,研究データに関するFAIR原則を推進する。PubMedの多くの文献レコードからデータへのリンクを張り,PubMed Central(PMC)にはフルテキストからデータを引用したり,補助データを提供することでデータへのアクセスを実現している。 臨床データは,医療情報の標準規格であるFHIR(Fast Healthcare Interoperability Resources)に沿って提供する。 ゲノム配列データの成長スピードは非常に速いため,そのペースに追いつくためにAWSやGoogle Cloudなどの商用クラウドも採用する。事例として約12ペタバイトあるSequence Read Archiveがクラウド化されていることが紹介された。 また、収集されたデータを活用してもらうための、コード化、資料化、利用モデル、必要な分析ツールの模索も開始している。 【c. 21世紀の科学コミュニケーションをガイド】 事例として,インパクトの強い以下2つの取り組みが紹介された。 ▼ MEDLINE 2022 現在開発中のサービス。3つの改善点を揚げた。 ・キュレーションのスケールアップ(Curation at Scale) NLMに文献が届いてから24時間以内にインデックス作業を完了する。パートナー(出版社)のXMLでの提供や適切なタグ付けなどの協力なくしては実現できないことを認識している。人によるキュレーション体制も必要な場合のために残す。 ・メタデータの拡張(Expanded Metadata) ゲノム,化学などの様々な資料や,ClinicalTrials.govのようなレジストリとの相互関連性をサポートするためにメタデータの最適化に取り組んでいる。研究インパクトなどのポートフォリオ分析のため助成機関に関するメタデータの拡張についても言及した。 ・効率性と関連性(Efficient and Connected) より多くの利用者をサポートするMeSH(統制語集)の改善に取り組むとともに,アクセス性の向上のため典拠のある用語を追加することも予定している。 ▼ NLM Preprint Pilot プレプリントの文献情報をPubMedに,そのフルテキストをPMCに収録する試行実験を開始する。対象はNIHが助成した研究成果論文に限り,プレプリントのレコードには,査読前の文献であることを明確に表示する。プレプリントの発見性を向上させることにより生物医学分野のコミュニケーションを促進するとともに,重複した研究を減らし科学の効率性の向上を目指す。 プレプリントのメタデータとフルテキストの投稿は直接PMCにするのではなく,bioRxivなどのNLM以外のサービスを使う。コンテンツは,再利用可能なライセンスの付与,機械可読フォーマットで収録のほかに,剽窃,利益競合,不正防止のために厳格で透明性が高い方針のもとで運用されていることが求められる。 2019年7月に開催されたINFOPRO2019では,国内の医学雑誌30タイトル以上が2017年に改定されたNLM電子入稿ポリシーを満たせず,収録中止になったことが報告された。今後の学術コミュニケーションでは出版社,利用者がベンダーの動向を注視する必要があることは言うまでもないだろう。 なお,今回のBrennan氏の講演はYouTubeで公開され,約20分のスピーチに凝縮されたNLMの戦略と,その後の質疑応答での聴衆の反応が収録されている。視聴をお勧めしたい。 <参考> ・Keynote Plenary: Anticipating the Future of Biomedical Communications - Patricia Brennan, National Library of Medicine https://www.youtube.com/watch?v=xxMpezF2sCo&feature=youtu.be ・NLM Launches 2017-2027 Strategic Plan https://www.nlm.nih.gov/news/NLM_Launches_2017_to_2027_Strategic_Plan.html ・松田 真美, 黒沢 俊典, 林 和弘. MEDLINE収録 国内医学雑誌の経年分析(第4回):採録数の減少と電子データの重要性. 第16回情報プロフェッショナルシンポジウム予稿集 https://doi.org/10.11514/infopro.2019.0_55 * 理解しやすくするために,発表スライドに記載された口述されなかった情報を多少補完し構成しました。
Microbiology Society(MS)は10月17日に,オーストラリア大学図書館員協議会(CAUL)と,二年間に渡るPublish & Readの転換契約を締結したことを発表しました。 CAULはオーストラリアとニュージーランドの高等機関の研究,教育や学習活動の支援を行っており,45以上の機関が加盟しています。 今回の契約により,CAUL加盟機関の所属研究者はMSが刊行する購読型4誌,オープンアクセス2誌に初号からアクセスできるだけでなく,論文を投稿する際,オープンアクセス出版費用を個別に支払う必要がなくなります。 MSのDirector of Publishing: Tasha Mellins-Cohen氏は「オープンアクセスのイニシアチブへのCAULの参加をとても嬉しく思います。私たちとのPublish & Read契約により,CAUL加盟機関や研究者は今まで以上に良いオープンアクセス論文出版のルートが確保できたことでしょう。長期的には,国全体でオープンアクセスへ転換を目指していきたいと思います。そのためにこの二年契約の間,著者支払いモデルにおける研究者にとっての摩擦を取り除き,すべてのステークホルダーに対し,よりシンプルで広く支持されやすいモデルを浸透させることが目標です。」とコメントを寄せています。 <参考> ・Microbiology Societyプレスリリース https://microbiologysociety.org/news/society-news/transitional-open-access-agreement-signed-between-the-microbiology-society-and-the-caul-consortium.html ・CAULプレスリリース https://www.caul.edu.au/news/first-transformative-agreement-australia-and-new-zealand ・ユサコニュース 310号 Microbiology Society:英JiscとP&Rパイロット契約を締結 https://www.usaco.co.jp/u_news/detail.html?itemid=1088&dispmid=605#un02
オープンアクセスによる出版活動をサポートするChronosが,Plan Sに署名した研究助成機関の一つであるルクセンブルグ研究財団(The Luxembourg National Research Fund: FNR)に採用されました。 同国では,FNRの他に,ルクセンブルク国立図書館(BnL)などもChronosの導入を決定したとのことです。 <参考> ユサコニュース第310号 Chronos:総代理店契約締結 https://www.usaco.co.jp/u_news/detail.html?itemid=1088&dispmid=605#un01
EndNote・NVivoの無料オンラインセミナーを下記の通り開催いたします。いずれもこれから使い始める方やご購入を検討中の方など初心者向けの内容となります。受講後アンケートに回答いただくと録画版をご視聴いただけます。 ▼オンラインセミナー詳細・お申し込みはこちら http://www2.usaco.co.jp/shop/pages/en_nvivo_webinar.aspx ● 開催概要: 日時: 【EndNote】 2019年12月6日(金)17:00 - 18:00 2019年12月17日(火)17:00 - 18:00 【NVivo】 2019年12月19日(木)17:00 - 18:00 場所を問わず気軽に参加できるオンラインセミナーをぜひご利用ください。 【オンラインセミナーに関するお問い合わせ】 ユサコ株式会社 アカデミア事業部 EC Sales shop@usaco.co.jp 皆様のご参加をお待ちしております。
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