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2004/08/31:第145号中国市場における出版業界の動向
 

中国市場における出版業界の動向
中国国家新聞出版総署は今月18日、外資系企業による新聞、書籍、雑誌など印刷物の中国での流通業を、今年末をめどに完全に開放すると発表した。
 中国は昨年5月より、2001年の世界貿易機構(WTO)への加盟に際する取り決め として、中国企業との合併もしくは提携を条件とした外資系企業による書籍などの小売業界への参入を認めていた。今回発表された市場開放が実施されると、 外資系企業による卸売業界への参入も可能になり、また、独資での起業も許可される。一方で、出版事業そのものに関する対外開放は、見送られる見通し。
 中国では、すでにドイツのメディア大手Bertelsmannなどが書籍の小売チェーンやオンラインブックストアを展開しており、今後、外資系企業に よる卸売り販売への参入が許可されることで、中国での書籍流通業界における競争が激化することが予想される。
 学術出版業界においても、外資系企業による中国市場への進出は著しい。Nature Publishing Group(NPG)はNature(2003年12月18/25日号)の付録として、「China Voices」を中国で発行した。NPGが初めて中国語で出版した当付録には、海外の大学に所属している中国人研究者による、中国学術会に対する論調などが収録されており、中国科学院や北京大学などの協力の下、 中国の約37,000人の研究者に配布された。なお、当付録の英語版「China: Views from the West」が2004年3月11日号の付録として配布されている。
 また、学術出版社大手Elsevierは、本年5月に清華大学と提携し、同社の20ジャーナルにおける投稿論文レビュー作業での協力体制を敷くことを表明している。これによると、中国の研究者が対象ジャーナルに論文を投稿した際、まず、編集者に任命された清華大学の研究者が重要論文を選出し、最終レビュー を行うかどうか決定することになる。Elsevierはまた、同社の電子ジャーナル プラットフォームSienceDirectに、清華大学が出版する「Tsinghua Science & Technology」を収録する予定である。
 学術ジャーナルを提供するためのインフラ整備においても、外資系企業が参入しつつある。オランダの雑誌取次大手Swets Informations Servicesは本年6月、中国の学術インターネットサービスプロバイダーであるCERNETと提携し、オンラインジャーナルポータルSwetsWiseのコンテンツを、ブロード バンドを用いて廉価に提供すると発表した。これにより、海外の学術出版社に とっても当ポータルを経由することで中国市場へのアクセスが容易となり、 中国での学術ジャーナルの市場開拓が大きく進展すると予想される。
 今回発表された規制緩和により、中国市場での出版業界におけるサービス内容は多様化され、また、学術出版物の流通システムが整備されることで、中国全体に おける学術研究の発展に大きく貢献することになると思われる。Swets社によると、ここ3年間で、中国のSTM市場は約40%拡大すると見られている。今後、各外資系 出版社や販売業者がどのような形で中国市場に道を切り開き、中国学術会での影響力を強めていくか注目される。

<参考資料>
・中国日報(The China Daily)ウェブサイト(2004年8月19日付記事):http://www.chinadaily.com.cn/english/doc/2004-08/19/content_366663.htm
・Nature Publishing Group (Nature Chinaウェブサイト):http://www.natureasia.com/ch/index.php
・Elsevierニュースリリース:http://www.elsevier.com/wps/find/authored_newsitem.cws_home/companynews05_00141
・Swets Information Servicesニュースリリース:http://informationservices.swets.com/web/show/id=39919/contentid=213

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