本文へスキップします。

H1

国内研究者論文詳細

日本人論文紹介:詳細

2022/02/16

無痛性の孤立性上腸間膜動脈自然解離

論文タイトル
Painless isolated spontaneous dissection of the superior mesenteric artery
論文タイトル(訳)
無痛性の孤立性上腸間膜動脈自然解離
DOI
10.1136/bcr-2021-248122
ジャーナル名
BMJ Case Reports
巻号
BMJ Case Reports Vol.14 No.12 (2021)
著者名(敬称略)
大高 行博 小和瀬 桂子
所属
群馬大学大学院医学系研究科 総合医療学

抄訳

上腸間膜動脈(SMA)の孤立性自然解離は稀であるが、主な初発症状が腹痛であることから急性腹症の鑑別疾患の一つとなる。加えて、文献上は無症候性(6.7〜35.7%)または無痛性(19.7%)の孤立性SMA自然解離の症例報告も散見され、腹痛を伴わずに受診する場合もあることには注意が必要である。自験例は60代前半の男性で、高血圧症と10年来の2型糖尿病治療歴があり、突然の嘔気と嘔吐により緊急受診となった。腹部造影CTにて偽腔開存型の孤立性SMA解離を同定した(Sakamoto分類II型)。さらにカラー・ドプラー超音波検査では、偽腔の陰陽徴候を伴う渦巻き状エコーを認め、偽腔内血流の前後運動が示唆された。絶食および降圧療法のみで保存的に治療し、腹部症状は軽快し解離の進行もなかった。本症例では長期の糖尿病罹患に伴う痛覚鈍麻により、消化器症状のみを伴う無痛性SMA解離を生じたと考えられた。無痛性の孤立性SMA自然解離は稀ではあるものの、代謝疾患や神経障害による感覚鈍麻を有する場合には見落とす可能性があるので留意したい。

論文掲載ページへ

2022/02/16

ヒトiPS細胞から分化させた下垂体前葉におけるプロラクチン(PRL)産生細胞の機能評価

論文タイトル
Functional Lactotrophs in Induced Adenohypophysis Differentiated From Human iPS Cells
論文タイトル(訳)
ヒトiPS細胞から分化させた下垂体前葉におけるプロラクチン(PRL)産生細胞の機能評価
DOI
10.1210/endocr/bqac004
ジャーナル名
Endocrinology
巻号
Endocrinology Vol. 163 Issue 3 (bqac004)
著者名(敬称略)
三宅 菜月, 永井 孝,須賀 英隆 他
所属
須賀 英隆:名古屋大学大学院医学系研究科 糖尿病・内分泌内科学
三宅 菜月, 永井 孝:名古屋大学大学院医学系研究科 産婦人科学

抄訳

 これまでヒトiPS細胞から下垂体前葉を分化誘導し、機能的な副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)産生細胞を作成する方法を報告してきたが、PRL産生細胞については検討していなかった。PRLは乳汁分泌に関与するホルモンで、主に下垂体前葉で産生、分泌される。また、高PRL血症は月経異常や不妊の主な原因の一つである。今回、ヒトiPS細胞から分化誘導した下垂体前葉オルガノイドにおけるPRL産生細胞の機能を評価した。
 下垂体前葉に分化誘導した凝集体からPRLの分泌が確認され、経時的に分泌能力が増加した。蛍光免疫染色および免疫電子顕微鏡法でPRL産生細胞の存在を確認した。PRL分泌は、種々のPRL分泌促進薬によって亢進し、ブロモクリプチンによって抑制された。また細胞塊中心部の視床下部組織にはドパミン作動性神経が存在し、PRL産生細胞への接続が示唆されたことから、ドパミンによる調節機構も再現できている可能性が示された。
 ヒトiPS細胞からヒト生体内と同様の分泌反応性を示す下垂体PRL産生細胞を作成した。今後、創薬研究や腫瘍化のメカニズムの研究などに活用できるとともに、下垂体の再生医療へとつながることが期待される。

論文掲載ページへ

2022/02/15

マウス気管の運動性繊毛における中心微小管形成と同調的波打ち運動のためにはCAMSAP3が必要

論文タイトル
Tracheal motile cilia in mice require CAMSAP3 for the formation of central microtubule pair and coordinated beating
論文タイトル(訳)
マウス気管の運動性繊毛における中心微小管形成と同調的波打ち運動のためにはCAMSAP3が必要
DOI
10.1091/mbc.E21-06-0303
ジャーナル名
Molecular Biology of the Cell
巻号
Molecular Biology of the Cell Volume 32, Issue 20
著者名(敬称略)
斉藤 弘子, 竹市 雅俊 他
所属
理化学研究所 生命機能科学研究センター

抄訳

 気管は、口と肺をつなぐ空気の通り道で、その内部を常にきれいに保つ必要がある。そのため内腔を被う上皮細胞の表面には繊毛がびっしり生えており、これが同調して波打つことにより粘液流を生み出して異物などを排除する。繊毛が波打ち運動するためには、その構成要素たる9組の周辺微小管と一対の「中心微小管」(9+2構造)の働きが必要だが、中心微小管の形成のしくみは謎に包まれている。本研究は、微小管のマイナス端に結合しそのプラス端側の伸長を支えるタンパク質CAMSAP3のノックアウトマウスを解析し、これが失われると気管繊毛の同調運動が乱れ、また、中心微小管が消滅することを発見。さらに、正常マウスの繊毛では、CAMSAP3の一部が中心微小管のマイナス端辺りに濃縮していた。以上の観察から、CAMSAP3は中心微小管の形成に関わり、繊毛の同調運動のために必要であると結論している。ヒトの呼吸器疾患と関係するかどうかについては今後の研究課題だ。

論文掲載ページへ

2022/02/15

p52SHCはRAF非依存的にERKの持続的な活性化を調節する

論文タイトル
p52Shc regulates the sustainability of ERK activation in a RAF-independent manner
論文タイトル(訳)
p52SHCはRAF非依存的にERKの持続的な活性化を調節する
DOI
10.1091/mbc.E21-01-0007
ジャーナル名
Molecular Biology of the Cell
巻号
Molecular Biology of the Cell Volume 32, Issue 19
著者名(敬称略)
吉澤 亮, 佐甲 靖志 他
所属
国立研究開発法人理化学研究所 佐甲細胞情報研究室

抄訳

 アダプタータンパク質のp52SHC(SHC)およびGRB2はどちらも、細胞表面受容体からERK経路へのシグナル伝達を仲介する。私たちはSHCおよびGRB2の役割を調べるために、これらのタンパク質をMCF7細胞内に発現させ、分化誘導因子により刺激した際の、細胞膜への移行ダイナミクスを計測した。その結果、SHCは持続的に膜局在するのに対してGRB2は一過的に膜局在することがわかった。ERKの核局在化はSHCと同様に持続的であったが、SHCをノックダウンすると応答量が減少し、さらに一過的になったことから、SHCはERKの初期応答と持続的な核局在化の両方に寄与していることがわかった。さらに阻害剤等を用いた解析から、ERKの初期応答はSHC-GRB2-RAF経路に依存していたのに対して、ERKの持続的な応答はRAF非依存的にMEKを活性化するSHC-PI3K経路に依存していることがわかった。またERBB-1受容体の過剰発現によってもSHCとERKのダイナミクスは共に一過的となり、その様な細胞では、細胞運命決定のバイアスも分化から増殖へとシフトした。このようにSHCはERKシグナルにおいてGRB2とは異なる機能を有している事が示唆された。

論文掲載ページへ

2022/02/15

傍腫瘍性舞踏病を呈した胆嚢癌の1例

論文タイトル
Paraneoplastic chorea associated with gallbladder cancer
論文タイトル(訳)
傍腫瘍性舞踏病を呈した胆嚢癌の1例
DOI
10.1136/bcr-2021-247080
ジャーナル名
BMJ Case Reports
巻号
BMJ Case Reports Vol.14 No.12 (2021)
著者名(敬称略)
柳 昌宏 須田 烈史
所属
金沢市立病院 消化器内科

抄訳

症例は81歳女性.1週間前からの左上下肢の投げ出すような不随意運動を主訴に受診した.頭部MRIでは,明らかな異常はなかった.血液検査でも,明らかな異常はなく,各種自己抗体も陰性であったが,腫瘍マーカーのCA19-9が著明に上昇していた.造影CTを撮影したところ,胆嚢腫瘍および肝内にリング状に濃染する多発腫瘤を認めた.多発肝転移を伴う切除不能胆嚢癌と診断し,組織診断のため胆嚢腫瘍に対して超音波内視鏡下穿刺吸引生検を行ったところ,肝様腺癌が検出された.左上下肢の不随意運動については,胆嚢癌の傍腫瘍性神経症候群としての傍腫瘍性舞踏病と診断した.ジェムザール+シスプラチンによる化学療法を開始したところ,腫瘍は縮小し,不随意運動も完全に消失した.傍腫瘍性舞踏病は非常に稀であり,急速に進行し,薬剤に抵抗性であることが多く,症状はしばしば非対称性,片側性である.ステロイドやハロペリドールの有効性も報告されているが,根本治療は背景腫瘍に対する治療(手術や化学療法など)である.成人発症の舞踏運動,特に高齢者や体重減少を伴う症例,片側性の症状を呈する症例では,悪性腫瘍の存在も疑うべきである.

論文掲載ページへ

2022/02/15

妊娠中期総コレステロール値と在胎不当過小(SGA)・過大児(LGA)の関連:子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)

論文タイトル
Association of Maternal Total Cholesterol With SGA or LGA Birth at Term: the Japan Environment and Children’s Study
論文タイトル(訳)
妊娠中期総コレステロール値と在胎不当過小(SGA)・過大児(LGA)の関連:子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)
DOI
10.1210/clinem/dgab618
ジャーナル名
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism
巻号
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism Vol.107 Issue1 (ee118–e129)
著者名(敬称略)
金子 佳世, 伊藤 由起 他
所属
名古屋市立大学 大学院医学研究科 環境労働衛生学分野

抄訳

 母体の血中コレステロールは、胎生期発育において重要な役割を果たす。本研究は、妊娠中期の総コレステロール値(TC)と在胎不当過小・過大児(SGA/LGA)は関連するか、明らかにすることを目的とした。エコチル調査参加の、各種疾患の既往や妊娠中貧血のない単胎正期産の母親と、新生児先天性異常、遺伝子異常の無い子どもで、解析に必要な変数の揃った母子37449組を対象とした。妊娠中期TC値の1標準偏差(35.33mg/dL)減少毎のSGAのオッズ比は1.20(95%信頼区間1.15-1.25)、1標準偏差増加毎のLGAのオッズ比は1.13(95%信頼区間1.09-1.16)だった。また、妊娠前のBMIや妊娠中体重増加量が正常な者に限定しても、同様の結果が得られた。今回HDLコレステロール値や中性脂肪の影響は検討しておらず、今後、妊娠期における適正な脂質プロファイルの検討が必要である。

論文掲載ページへ

2022/02/14

細胞種により異なるRNAポリメラーゼ転写産物が相分離を介したDBC1核内構造体の形成に関与する

論文タイトル
Distinct RNA polymerase transcripts direct the assembly of phase-separated DBC1 nuclear bodies in different cell lines
論文タイトル(訳)
細胞種により異なるRNAポリメラーゼ転写産物が相分離を介したDBC1核内構造体の形成に関与する
DOI
10.1091/mbc.E21-02-0081
ジャーナル名
Molecular Biology of the Cell
巻号
Molecular Biology of the Cell Volume 32, Issue 21
著者名(敬称略)
萬年 太郎, 廣瀬 哲郎 他
所属
萬年 太郎:立命館大学 生命科学部生命医科学科 プロテオミクス研究室
廣瀬 哲郎:大阪大学大学院 生命機能研究科 RNA生体機能研究室

抄訳

 哺乳類細胞核に存在する様々な核内構造体は、RNA合成やプロセシング、RNP分子装置の生合成の場として知られている。これまでに、特異的なRNAが骨格としていくつかの核内構造体の形成に働いていることが明らかなってきた。今回我々は、RNase感受性を示す2つの核内構造体(大腸がん由来HCT116細胞のDBC1核内構造体[DNB]と子宮頸がん由来HeLa細胞のSam68核内構造体[SNB])が、異なるRNAポリメラーゼ転写産物を骨格として形成されること、さらにDNBとSNBが相分離様の相互作用を介して形成されていることを明らかにした。このことから、これらの核内構造体は相分離を介して相互作用するRNAやタンパク質を変化させることで異なる機能を担っている可能性が示唆された。次にDNBの新規構成因子の探索のため免疫沈降-MS解析をおこない、HNRNPLとHNRNPKを同定した。また、DNB構成因子のsiRNAにより、DBC1とHNRNPLがDNBの形成に必須であることを明らかにした。さらにHNRNPLがDNBの形成にどのように関与しているのか解析した結果、HNRNPLのRNA結合ドメインと天然変性領域が細胞内でのDNB形成とin vitroでの液滴形成に関与していることが明らかになった。このことから、DNB形成にはHNRNPLとRNAやタンパク質との多価相互作用による相分離の誘導が必要であることが示唆された。

論文掲載ページへ

2022/02/09

沖縄トラフ伊平屋北海丘熱水域のMethyloprofundus属メタン酸化細菌群集とその推定優占種の培養

論文タイトル
Multispecies Populations of Methanotrophic Methyloprofundus and Cultivation of a Likely Dominant Species from the Iheya North Deep-Sea Hydrothermal Field
論文タイトル(訳)
沖縄トラフ伊平屋北海丘熱水域のMethyloprofundus属メタン酸化細菌群集とその推定優占種の培養
DOI
10.1128/AEM.00758-21
ジャーナル名
Applied and Environmental Microbiology
巻号
Applied and Environmental Microbiology Volume 88 • Number 2 • January 2022
著者名(敬称略)
平山 仙子 他
所属
国立研究開発法人海洋研究開発機構 超先鋭研究開発部門 超先鋭研究プログラム

抄訳

Methyloprofundus属細菌は海洋性の好気的メタン酸化(資化)細菌である。本属を代表するイガイ科二枚貝の共生細菌が精力的に研究される一方、自由生活型の種を対象とした研究は数える程しかない。沖縄トラフ伊平屋北海丘(沖縄本島北西160 km)の深海熱水活動域では、本属共生細菌をもつ二枚貝が大規模なコロニーを形成している。我々はここに自由生活種も生息している可能性が高いと考え、熱水の影響の異なる4地点(水深約1,000 m)でMethyloprofundus属細菌群集をターゲットに遺伝子解析を行った。その結果、自由生活型と推定される161もの種相当グループを検出し、群集構造の違いと熱水の影響の強さが関係している可能性を見出した。並行して行った培養実験では、群集の優占種且つ新種と推定されるメタン酸化細菌の集積培養に成功し、ゲノム解析により厳しい環境での生存競争に有利と考えられる機能遺伝子を複数見つけた。過去の知見と合わせると、Methyloprofundus属細菌は低酸素環境も含め世界の様々な海洋環境に遍在している可能性がある。

論文掲載ページへ

2022/02/09

リン脂質フリッパーゼとSfk1はエルゴステロールの細胞膜への保持に必須である

論文タイトル
Phospholipid flippases and Sfk1 are essential for the retention of ergosterol in the plasma membrane
論文タイトル(訳)
リン脂質フリッパーゼとSfk1はエルゴステロールの細胞膜への保持に必須である
DOI
10.1091/mbc.E20-11-0699
ジャーナル名
Molecular Biology of the Cell
巻号
Molecular Biology of the Cell Volume 32, Issue 15
著者名(敬称略)
岸本 拓磨, 田中 一馬 他
所属
北海道大学 遺伝子病制御研究所 分子間情報分野

抄訳

 ホスファチジルセリン(PS)などのリン脂質は細胞膜内層で非対称な分布を示すが、その生理的意義は完全に解明されていない。この非対称性は、PSなどを細胞膜内層に輸送するフリッパーゼや著者らが見出した出芽酵母細胞膜タンパク質Sfk1により維持される。本論文では、フリッパーゼおよびSfk1が制御する細胞膜リン脂質非対称性は、細胞に必須な機能を有することを明らかにした。これらの因子の機能が同時に喪失した場合、リン脂質非対称性が崩壊し、それに伴い生育阻害と多岐にわたる細胞膜の異常を引き起こした。この原因究明を進めた結果、リン脂質非対称性の崩壊が、細胞膜の酵母ステロール保持機能を低下させ、それが原因で生育阻害や細胞膜異常を引き起こすことを見出した。また、新たに開発したステロールプローブによる解析から、Sfk1がステロールの物理状態を調整することで細胞膜ステロールの維持に貢献する可能性も示唆された。このような結果から本論文では、リン脂質非対称性を介した細胞膜ステロール維持という新たな生理学的機序を解明した。

論文掲載ページへ

2022/02/08

高血圧患者における血管周囲腔に沿った水拡散係数の変化

論文タイトル

An Investigation of Water Diffusivity Changes along the Perivascular Space in Elderly Subjects
with Hypertension

論文タイトル(訳)
高血圧患者における血管周囲腔に沿った水拡散係数の変化
DOI
10.3174/ajnr.A7334
ジャーナル名
American Journal of Neuroradiology
巻号
American Journal of Neuroradiology Vol. 43 No.1
著者名(敬称略)
菊田 潤子 他
所属
順天堂大学医学部附属順天堂医院

抄訳

近年、脳内の老廃物排泄機構としてのGlymphatic system仮説が注目されている。Glymphatic systemは、脳脊髄液が動脈の血管周囲腔から脳実質内に流入し、間質液との交換とともに脳実質内の老廃物を洗い流し、静脈血管周囲腔から排泄するという仮説である。本研究は高血圧患者の血管周囲腔に沿った水拡散係数(The analysis along the perivascular space index:ALPS index)の変化を調査した。まず、高血圧患者群63例、対照群63例の頭部MRIの拡散強調画像を用いて、左右大脳半球とその平均値のALPS indexを算出した。次に、高血圧患者群と対照群のALPS indexの群間比較を行った。さらに、すべての被験者の左右大脳半球、およびその平均値のALPS indexと最高血圧値、最低血圧値、平均血圧値、脈圧値の相関関係を調査した。その結果、高血圧患者群は対照群と比較して左大脳半球と平均ALPS indexが有意に低く(P <0.05)、左右大脳半球とその平均のALPS indexと最高血圧値、最低血圧値、平均血圧値、および脈圧値に有意な負の相関がみられた。本研究は、高血圧患者における血管周囲腔に沿った水拡散係数の変化を認め、高血圧症がGlymphatic systemの障害を引き起こす可能性が示唆された。

論文掲載ページへ

2022/02/07

酸性で発現誘導する大腸菌遺伝子hdeDのよるLrhAを介したべん毛合成抑制

論文タイトル
The hdeD Gene Represses the Expression of Flagellum Biosynthesis via LrhA in Escherichia coli K-12
論文タイトル(訳)
酸性で発現誘導する大腸菌遺伝子hdeDのよるLrhAを介したべん毛合成抑制
DOI
10.1128/JB.00420-21
ジャーナル名
Journal of Bacteriology
巻号
Journal of Bacteriology Volume 204 • Number 1 • January 2022
著者名(敬称略)
山中 幸 山本 兼由 他
所属
法政大学 生命科学部 生命機能学科

抄訳

強酸性環境下に晒された大腸菌は、細胞内プロトンを酵素反応で消費し生存する。このグルタミン酸依存的酸耐性(GAD)機構に関する遺伝子群GADクラスターは強酸性で発現誘導される。本論文では、GADクラスターにある唯一機能が不明だった小さな膜タンパク質コード遺伝子hdeDの機能を明らかとした。
hdeDプロモーターは、グリセロールを炭素源とする最小培地で誘導された。hdeD欠失株では、べん毛合成および運動性に関連する全ての遺伝子発現が増加させ、それはべん毛合成の転写活性化因子FlhDCのリプレッサーLrhAの遺伝子プロモーター活性の抑制に起因していた。実際、hdeD, gadE, lrhA欠失株は菌体あたりのべん毛数が増加し運動性が向上した。
推定したHdeD構造分析から、HdeDは中性付近の微細なpH変化を感知する新しい膜センサーであることが示唆された。したがって、強酸性環境下に晒された大腸菌はHdeD合成を誘導し、その後増殖可能な中性域環境に移った時、HdeD依存的にべん毛合成を停止させ、細胞エネルギーを細胞分裂に集約するはたらきを推定した。このシステムは、大腸菌などヒト消化器で下痢などを引き起こす病原性細菌にとって、経口侵入から胃を経て腸管上で集団形成するため、重要であると考えられる。

 

 

論文掲載ページへ

2022/02/07

腸管出血性大腸菌が産生する志賀毒素1の酸素による産生増強

論文タイトル
Enhanced production of Shiga toxin 1 in enterohaemorrhagic Escherichia coli by oxygen
論文タイトル(訳)
腸管出血性大腸菌が産生する志賀毒素1の酸素による産生増強
DOI
10.1099/mic.0.001122
ジャーナル名
Microbiology
巻号
Microbiology Volume 167, Issue 12, 2021
著者名(敬称略)
清水 健 他
所属
千葉大学大学院医学研究院 病原細菌制御学

抄訳

腸管出血性大腸菌(EHEC)は主要な病原因子として志賀毒素1(Stx1)と志賀毒素2(Stx2)を産生する。EHECの感染部位は腸管なので、感染時にはEHEC近傍の酸素濃度は変化する。そこで感染時における病原因子の発現調節を明らかにするために、酸素によるStx1産生への影響を解析した。EHEC標準株であるEDL933株を培養してStx1産生を測定したところ、酸素濃度が上昇するとStx1産生は増強することが明らかになった。酸素によるStx1産生の増強のEHECに対する一般性を確認するために、さらに40株のEHECを用いて解析を行ったが、全てのEHEC株において酸素濃度の上昇でStx1産生は増強した。この酸素濃度の上昇によるStx1産生の増強はEHECの増殖が呼吸条件であっても、発酵条件であっても同様に確認された。Stx1の産生はFe2+濃度によって活性が制御されている転写因子Furによって調節されている。FurはFe2+が結合している時にはstx1プロモーターに結合して、転写を抑制している。しかし、酸素濃度が上昇するとFe2+は水に不溶性なFe3+に酸化され、そのためにFe2+の量が減少することが明らかになった。Fe2+の減少はFe2+が結合している活性型Furを不活性型Furにし、それによってFurがstx1プロモーターから乖離することによって、Stx1産生が増強することが考えられた。このような酸素濃度の上昇は感染時、EHECが嫌気的な腸管内から微好気環境である腸管上皮細胞に接着する過程で起こっていると考えられる。

論文掲載ページへ

2022/02/03

化学固定耐性を備えた緑色の可逆的スイッチング能を持つEos蛍光タンパク質派生型の開発

論文タイトル
Development of a green reversibly photoswitchable variant of Eos fluorescent
protein with fixation resistance
論文タイトル(訳)
化学固定耐性を備えた緑色の可逆的スイッチング能を持つEos蛍光タンパク質派生型の開発
DOI
10.1091/mbc.E21-01-0044
ジャーナル名
Molecular Biology of the Cell
巻号
Molecular Biology of the Cell Volume 32, Issue 21
著者名(敬称略)
大菅 光雄, 末次 志郎 他
所属
奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域 分子医学細胞生物学

抄訳

 超解像顕微鏡は、光の回折限界を超えて、高精度で蛍光タンパク質の局在を決定します。超解像顕微鏡技術には、蛍光の確率的活性化によって1分子の蛍光タンパク質の局在座標を同定し、座標を積算することでタンパク質局在を示す画像を再構築する光活性化局在顕微鏡(PALM)が含まれます。PALMによる単一分子局在化の決定では、1分子が画像上で分離できる必要があることから、画像ごとに分析できる分子の数は、限られています。したがって、細胞内の多数の分子の局在座標を得るには、多くの画像の取得が必要で、時間を要するために、観察対象の細胞の化学固定がよく用いられています。しかし、ほとんどの蛍光タンパク質は化学固定時に蛍光を減弱します。緑色の可逆的にフォトスイッチ可能であるが、化学固定耐性のない蛍光タンパク質Skylan-S、および、固定耐性を持つ緑から赤の光変換蛍光タンパク質mEos4bは、ともにEosタンパク質の派生型(変異体)です。本研究では、Skylan-SとmEOS4bのアミノ酸置換を組み合わせ、緑色の可逆的にフォトスイッチ可能かつ固定耐性のあるEOS派生型を開発し、fixiation-resisitant (fr) Skylan-S (frSkylan-S)としました。frSkylan-Sタンパク質は、Skylan-Sと同様に励起光によって蛍光を発すると同時に不活性化されますが、紫外光による照射によって再活性化され、さらに、Skylan-Sよりもアルデヒド化学固定後に蛍光を保持します。frSkylan-S融合タンパク質のα-チューブリンとクラスリン軽鎖は、化学固定を用いたPALM観察において十分な質の再構成画像をもたらしました。さらに、frSkylan-Sは、抗体染色と組み合わせることができました。したがって、frSkylan-Sは、アルデヒド化学固定条件下でのPALMイメージングに適した緑色蛍光タンパク質と考えられます。

論文掲載ページへ

2022/01/28

同じ身体部位における身体図式の多重表現

論文タイトル
Multiple representations of the body schema for the same body part
論文タイトル(訳)
同じ身体部位における身体図式の多重表現
DOI
10.1073/pnas.2112318119
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
PNAS January 25, 2022 119 (4) e2112318119
著者名(敬称略)
松宮 一道
所属
東北大学大学院情報科学研究科 応用情報科学専攻 認知情報学分野

抄訳

意図的な運動は、脳内の身体表現(身体図式と呼ばれる)に依存し、身体図式の異常が運動障害を引き起こす。身体図式は、約1世紀もの間、脳内に一つだけ存在し、すべての運動に対して共通に用いられると考えられてきた。しかし、私たちはしばしば複数の運動を同時に実行しているが、複数の運動時に身体図式がどのように働いているのかは不明だった。本研究では、複数の運動時の身体図式を計測するために、被験者に、自分の目と左手の人差し指で同時に、自分の右手の様々な部位(指先や関節)を指すように教示した。その結果、目と左手が同時に同じ右手の部位を指しているにも関わらず、目で指した結果に比べると左手で指した結果から得られた右手形状(つまり、身体図式)は、より歪んでいた。さらに、この身体図式を形成するための感覚情報の利用も、目と左手で異なっていた。これらの結果は、身体図式が運動効果器ごとに脳内で別々に表現されていることを示している。本知見は、運動障害を有する患者の身体図式を理解するための新たな方法の開発につながることが期待される。

論文掲載ページへ

2022/01/26

終神経に存在するニューロペプチドFF(NPFF)と生殖腺刺激ホルモン放出ホルモン3(GnRH3)が協調してオス性行動のモチベーションを昂進する

論文タイトル
Co-existing Neuropeptide FF and Gonadotropin-Releasing Hormone 3 Coordinately Modulate Male Sexual Behavior
論文タイトル(訳)
終神経に存在するニューロペプチドFF(NPFF)と生殖腺刺激ホルモン放出ホルモン3(GnRH3)が協調してオス性行動のモチベーションを昂進する
DOI
10.1210/endocr/bqab261
ジャーナル名
Endocrinology
巻号
Endocrinology Vol. 163 Issue 2 (bqab261)
著者名(敬称略)
馬谷 千恵, 岡 良隆 他
所属
東京大学 大学院 理学系研究科 生物科学専攻

抄訳

一般に動物は、雌雄が体の内外からの情報を用いて、互いを異性として認め、繁殖期に性行動を行うことで、生殖により子孫を残す。しかし、脳が情報を受けてから動物が性行動を示すまでの神経機構については、多くが不明であった。本研究では、様々な感覚入力を受けることが報告されている終神経GnRHニューロンに着目し、これらが作る2つの神経ペプチドGnRH3とNPFFの遺伝子をノックアウト(KO)したメダカを作出し、メダカの性行動を解析した。すると、一方のペプチドだけをKO(単独KO)したオスメダカでは、最終的には性行動ができるものの、性行動の多くのパートが、野生型と比べて遅れて生じるようになった。一方、両ペプチドKOオスメダカでは、単独KOメダカで観察されたような性行動の遅れがなくなった。これらの結果から、同じニューロンの作る複数の神経ペプチドがバランスよく脳内に作用することで、オス性行動のモチベーションを昂進することが考えられた。

論文掲載ページへ

2022/01/25

非小細胞肺癌のリンパ節転移評価におけるdual-energy CTから算出された電子密度値の有用性 ―従来のCT画像およびFDG PET/CTとの対比―

論文タイトル
Dual-Energy CT–Derived Electron Density for Diagnosing Metastatic Mediastinal Lymph Nodes in Non–Small Cell Lung Cancer: Comparison With Conventional CT and FDG PET/CT Findings
論文タイトル(訳)
非小細胞肺癌のリンパ節転移評価におけるdual-energy CTから算出された電子密度値の有用性 ―従来のCT画像およびFDG PET/CTとの対比―
DOI
10.2214/AJR.21.26208
ジャーナル名
American Journal of Roentgenology
巻号
American Journal of Roentgenology Vol.218 No.1 (2022)
著者名(敬称略)
長野 広明 内匠 浩二 他
所属
鹿児島大学大学院医歯学総合研究科放射線診断治療学

抄訳

近年、新しいCTの撮像法であるdual-energy CTが臨床導入され、ヨード密度画像や電子密度画像など新たな解析画像を取得することが可能となった。電子密度画像は、軟部組織内構造を評価しうる新たな定量画像となる可能性を秘めている。本研究では、非小細胞肺癌のリンパ節転移診断におけるdual-energy CTの電子密度値の有用性を評価し、従来のCT評価項目やFDG PET/CTでの評価と比較を行った。電子密度値は、非転移リンパ節と比較して転移リンパ節において有意に低い値であった(P <0.005)。正常リンパ節構造と比較して一般的な結合組織はその内部の電子密度が低いと報告されている。非転移リンパ節と比較して、転移リンパ節内での癌細胞の存在による間質性組織の増加が今回の結果に影響したものと推測された。その他のCT画像所見やFDG PET/CT所見との組み合わせ診断では、リンパ節短径との組み合わせ(診断能82.9%、感度54.5%、特異度94.0%)およびFDG PET/CT陽性との組み合わせ(診断能82.1%、感度60.6%、特異度90.5%)で、短径とFDG PET/CT陽性それぞれ単独と比較して診断能を有意に向上させた(それぞれP <0.05)。

論文掲載ページへ

2022/01/24

小児期に非アルコール性脂肪性肝炎を発症したTUBB3 E410K症候群の1例

論文タイトル
TUBB3 E410K Syndrome With Childhood-Onset Nonalcoholic Steatohepatitis
論文タイトル(訳)
小児期に非アルコール性脂肪性肝炎を発症したTUBB3 E410K症候群の1例
DOI
10.1210/clinem/dgab628
ジャーナル名
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolismy
巻号
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism Vol.107 Issue1 (e38–e43)
著者名(敬称略)
森 潤 他
所属
京都府立医科大学 小児科学/小児科学教室

抄訳

ß-チューブリン (TUBB3)は微小管の主要成分を構成し、細胞分裂や神経発生に関わる。従ってTUBB3の病原性多様体を持つTUBB E410K症候群の患者は様々な神経学的異常を有するが、非アルコール性脂肪性肝炎 (NASH)の合併の報告はない。今回我々は、小児期にNASHを合併したTUBB3 E410K症候群の11歳女児例を経験した。生下時より両側眼瞼下垂、麻痺性斜視、顔面神経麻痺を認め、Moebius症候群としてフォローをされていた。7歳時にエクソーム解析でTUBB3 E410K症候群と診断した。10歳時から肝機能障害を認め、約2年間持続するため精査目的で肝生検を施行し、NASHと診断した。肝臓におけるTUBB3の発現を検討したところ、健常者とNASH患者の肝臓ではTUBB3とチロシンヒドロキシラーゼ (TH)は共発現していたが、本児の肝臓ではTUBB3の発現はなくTHのみ発現していた。近年全身の臓器が自律神経を介して様々な情報をやり取りし協調する臓器連関という概念が提唱されている。マウスにおいて自律神経の異常がNASHの病態に関与していることが報告されている。本症例はヒトにおいて自律神経の発生異常がNASHの発症に関与したことを初めて示唆する貴重な症例である。

論文掲載ページへ

2022/01/21

多能性幹細胞から精子まで雄性生殖細胞の全分化過程の試験管内再構成に成功

論文タイトル
In vitro reconstitution of the whole male germ-cell development from mouse pluripotent stem cells
論文タイトル(訳)
多能性幹細胞から精子まで雄性生殖細胞の全分化過程の試験管内再構成に成功
DOI
10.1016/j.stem.2021.08.005
ジャーナル名
Cell Stem Cell
巻号
Cell Stem Cell Vol. 28 Issue 12 (December 02, 2021)
著者名(敬称略)
石藏 友紀子   斎藤 通紀
所属
京都大学大学院医学研究科 生体構造医学講座 機能微細形態学

抄訳

精子や卵子に代表される生殖細胞は、哺乳類の体を構成する細胞の中で、その遺伝情報を次世代へ受け継ぎ、新たな個体をつくり出すことが可能な唯一の細胞である。我々は、多能性幹細胞から始原生殖細胞様細胞を誘導し、再構成精巣法を用いて、精子の元である精子幹細胞様細胞の長期培養株Germline stem cell-like cells (GSCLCs)を誘導することに成功してきた。この細胞は、生殖細胞欠損マウスの精巣に移植すると、その一部が精巣内に生着し、機能的な精子へと分化した。次の目標として、再構成精巣法を改善し、培養の途中過程を生体における雄性生殖細胞の発生過程により近づけること、GSCLCsから精子まで体外培養にて分化させることを目指した。本研究では、適切なマーカーを有する細胞株を用いて培養条件の改善を行い、1細胞由来のGSCLCs樹立法を組み合わせ、誘導した細胞をより詳細に解析する技術を確立した。さらに、体外精子誘導法と組み合わせ、多能性幹細胞から精子形成までの全過程を試験管内で再現することに、世界で初めて成功した。今後、この培養系は、雄性生殖細胞の分化発生機序を究明する足掛かりになるだけでなく、世代を超えたエピゲノム情報継承メカニズムの解明にも役立つことが期待される。

論文掲載ページへ

2022/01/12

血液透析患者におけるスクレロスチン,二次性副甲状腺機能亢進症,骨代謝の相互関係

論文タイトル
Interrelationships Between Sclerostin, Secondary Hyperparathyroidism, and Bone Metabolism in Patients on Hemodialysis
論文タイトル(訳)
血液透析患者におけるスクレロスチン,二次性副甲状腺機能亢進症,骨代謝の相互関係
DOI
10.1210/clinem/dgab623
ジャーナル名
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism
巻号
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism Vol.107 Issue1 (e95–e105)
著者名(敬称略)
中川 洋佑, 駒場 大峰 他
所属
東海大学医学部腎内分泌代謝内科

抄訳

スクレロスチンは骨細胞により産生され,骨芽細胞の分化・石灰化,及び骨形成を抑制する。スクレロスチンは腎機能低下とともに上昇するが,腎不全患者の骨代謝における役割は明らかでない。そこで我々は血液透析患者654名が参加する東海透析コホート研究のデータと保存血清を用いて,スクレロスチンと副甲状腺ホルモン(intact PTH),骨形成マーカーBAP,骨吸収マーカーTRACP-5b,中手骨骨密度,骨折リスクとの関連性を検討した。透析患者のスクレロスチンの中央値は163 pmol/Lで,健常人の3〜4倍の値であった。スクレロスチンの上昇は,中手骨骨密度の上昇,及びintact PTH,BAP,TRACP-5bの低下と関連していた。スクレロスチンと骨代謝マーカーとの関連性は,intact PTHで調整すると大きく減弱した。媒介分析では,骨代謝回転に対するPTHの影響は主に直接的であり,スクレロスチン抑制を介さないことが示唆された。スクレロスチンは骨折既往とも新規骨折とも関連しなかった。以上の結果より,透析患者の骨代謝におけるスクレロスチンの役割は限定的であり,骨代謝回転に対するPTHの効果を媒介しないと考えられる。

論文掲載ページへ

2022/01/05

くすぶり型と診断されたHTLV-1関連細気管支炎・肺胞異常症(HABA-B)にANK療法が奏功した1例

論文タイトル
Successful treatment of smouldering Human T cell Leukemia Virus Type1 associated bronchiolitis and alveolar abnormalities with amplified natural killer therapy
論文タイトル(訳)
くすぶり型と診断されたHTLV-1関連細気管支炎・肺胞異常症(HABA-B)にANK療法が奏功した1例
DOI
10.1136/bcr-2021-244619
ジャーナル名
BMJ Case Reports
巻号
BMJ Case Reports Vol.14 No.12 (2021)
著者名(敬称略)
長井 賢次郎
所属
医療法人えびのセントロクリニック

抄訳

ANK療法は、先ず、患者さんの血液からリンパ球を分離採取し、抗がん作用を高めるための培養を行います。 次に、がん細胞を傷害する能力を高め、数を増やしたナチュラルキラー(NK)細胞を体内に点滴する事で治療が始まります。 今回ANK療法を実施したのは、成人T細胞白血病くすぶり型と診断され、 ウイルス(HTLV-1)による気管支肺胞障害(HABA)がある81歳の女性患者にANK療法を行いました。 治療内容は、培養後のNK細胞を点滴にて週2回、合計8回実施しました。 その後、CTスキャンにて両側の びまん性粒状陰影の改善と全体の呼吸機能、そして患者の自覚症状が顕著に改善を認めました。また、ANK治療は通院にて実施しましたが、重篤な副作用は認めませんでした。 ANK療法は、高齢で化学療法が施行できない患者でも安全に治療でき効果も期待できる治療です。また、HABAの新たな治療法の一つになり得ます。

論文掲載ページへ