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国内研究者論文詳細

日本人論文紹介:詳細

2021/06/29

患者由来がんオルガノイドを用いたin vitroハイスールプットアッセイ

論文タイトル
High-Throughput In Vitro Assay using Patient-Derived Tumor Organoids
論文タイトル(訳)
患者由来がんオルガノイドを用いたin vitroハイスールプットアッセイ
DOI
10.3791/62668
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (172), e62668
著者名(敬称略)
比嘉 亜里砂1、高木 基樹2 他
所属
1. 富士フイルム和光バイオソリューションズ株式会社
2. 福島県立医科大学 医療-産業トランスレーショナルリサーチセンター

抄訳

患者由来の腫瘍オルガノイド(PDO)は、従来の細胞培養モデルよりも疾患の再現性に優れた前臨床がんモデルとして期待されています。PDOは、腫瘍組織の構造や機能を正確に再現し、さまざまなヒト腫瘍から樹立することに成功しています。しかし、PDOはサイズが不均一で、培養中に大きなクラスターを形成するため、抗がん剤を評価する際に96ウェルや384ウェルプレートを用いたハイスループットアッセイシステム(HTS)や細胞解析には適していません。また、これらの培養やアッセイでは、マトリゲルなどの細胞外マトリックスを用いて腫瘍組織の足場を作る必要があります。そのため、PDOはスループットが低く、コストも高いため、適切なアッセイシステムを開発することが困難です。この問題を解決するために、我々が樹立したF-PDOを用いて、抗がん剤や免疫療法の効果を評価可能で、よりシンプルで精度の高いHTSを確立しました。

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2021/06/25

胸部単純X線写真で病変と誤解されうる先天性肋骨癒合

論文タイトル
Congenital costal fusion can be misinterpreted as lesions on chest X-ray
論文タイトル(訳)
胸部単純X線写真で病変と誤解されうる先天性肋骨癒合
DOI
10.1136/bcr-2021-242834
ジャーナル名
BMJ Case Reports
巻号
BMJ Case Reports Vol.14 Issue 6 (2021)
著者名(敬称略)
多胡 雅毅
所属
佐賀大学医学部附属病院総合診療部

抄訳

67歳の男性が、1週間続く発熱、咽頭痛、食欲不振のために当院を受診した。喫煙者で、他に既往歴はなかった。発熱はなく、身体所見に異常を認めなかった。胸部単純X線写真で、右第5肋間に腫瘤影を認め、骨原性腫瘍や転移性病変を疑った。胸部CTで右第5・6肋骨の癒合を認め、先天性肋骨癒合と診断した。 肋骨癒合は0.3%の頻度で見られ、その多くは無症状で、しばしば本症例のようにX線写真で偶発的に指摘される。肋骨奇形は胸腰部の側弯を伴うことが多く、肋骨癒合は第1肋骨と第2肋骨に多く発生し、胸郭出口症候群の原因となりうる。すぐにCT検査を行うのではなく、まず身体診察とX線写真で肋間と胸郭の左右差を慎重に確認する必要がある。また側弯の有無、胸郭出口症候群の症状も診断の参考となる。本症例では、X線写真で右の第5肋間が左に比べて狭小化していた。内科医は決して稀ではない肋骨癒合に関する正しい知識を持つべきである。

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2021/06/22

神経ネットワークの動的構造を捉える高速・高解像度・広視野 2光子顕微鏡

論文タイトル
Fast, cell-resolution, contiguous-wide two-photon imaging to reveal functional network architectures across multi-modal cortical areas
論文タイトル(訳)
神経ネットワークの動的構造を捉える高速・高解像度・広視野 2光子顕微鏡
DOI
10.1016/j.neuron.2021.03.032
ジャーナル名
Neuron
巻号
Neuron VOLUME 109, ISSUE 11, P1810-1824.E9, JUNE 02, 2021
著者名(敬称略)
太田 桂輔 村山 正宜
所属
理化学研究所 脳神経科学研究センター 触知覚生理学研究チーム

抄訳

脳はさまざまな領域の集合体であり、領域間の相互作用により脳機能が発現すると考えられている。しかしながら、多領域から神経細胞の活動を計測できる顕微鏡は存在せず、広域ネットワークの機能的構造は不明であった。今回、我々は低倍率かつ高開口数を満たす大型対物レンズ、大口径・高感度・高出力光検出器を開発することで、広視野・高解像度・高速撮像・高感度・無収差を同時に満たす2光子顕微鏡「FASHIO-2PM(fast-scanning high optical invariant two-photonmicroscopy)」を開発した。マウス大脳皮質2層に存在する1万6000個以上の神経細胞の活動を、9mm2(従来の36倍)の単一視野面から7.5Hzの撮像速度で高感度に測定することに成功した。単一神経細胞の活動に基づくネットワークを解析したところ、脳はスケールフリーネットワークではなくスモールワールドネットワークであることが明らかになった。同時に長距離の機能的結合も含め100以上の細胞と協調的に活動する非常にレアなハブ細胞(存在確率は1%未満)の存在も明らかにした。

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2021/06/21

体細胞核移植に伴うエピジェネティクス異常

論文タイトル
25th ANNIVERSARY OF CLONING BY SOMATIC-CELL NUCLEAR TRANSFER: Epigenetic abnormalities associated with somatic cell nuclear transfer
論文タイトル(訳)
体細胞核移植に伴うエピジェネティクス異常
DOI
10.1530/REP-21-0013
ジャーナル名
Reproduction
巻号
Reproduction Volume 162 Issue 1 (F45–F58)
著者名(敬称略)
小倉 淳郎 他
所属
理化学研究所バイオリソース研究センター遺伝工学基盤技術室

抄訳

体細胞核移植(Somatic Cell Nuclear Transfer, SCNT)は、1個の体細胞核からクローン胚やクローン個体を作り出す技術である。成体の体細胞核移植によって生まれた最初の哺乳動物、クローンヒツジDollyの報告(Nature 1997)からすでに25年が経過しようとしている。この間、SCNT関連の研究は飛躍的に進み、クローン動物の生産効率の向上に貢献するとともに、SCNTによるエピゲノム異常が次々と明らかになっている。これらの研究を通じて、ドナー体細胞のエピゲノム情報には卵子で再プログラムできるものとできないものがあることが明らかになってきた。現在では、ドナー体細胞ゲノムに含まれるゲノム刷込み情報(片親依存性遺伝子発現制御)は、典型ゲノム刷込み(DNAメチル化依存性)および非典型ゲノム刷込み(ヒストン修飾H3K27me3依存性)とも、SCNTでは再プログラム化されないことがわかっている。したがって、SCNT由来のクローン胚には、ドナー細胞の刷込み記憶パターンがそのまま引き継がれている。前者の典型ゲノム刷込みは、ドナー細胞でも基本的に正常なパターンが保たれており、クローン胚でも問題になることは少ない。一方、後者の非典型ゲノム刷り込みは、ドナー細胞で失われているために、クローン胚において正常な片アレル(父方)発現が破綻し、両アレル発現となり、主な発現器官である胎盤での過剰発現と表現型異常をきたす。また、刷込み記憶以外の体細胞エピゲノム記憶のうち、ヒストンアセチル化やH3K9me3などは不十分な再プログラム化が知られており、これがクローン胚の発生不全につながっている。SCNTから得られるエピゲノム情報は、体細胞クローン技術の改善への基盤となるとともに、エピゲノム異常の発生への影響を理解する上でも重要な知見をもたらす。

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2021/06/18

ウィスキーもろみ由来および発酵乳由来 Lactobacillus helveticus 菌株の生息域特異的な環境適応

論文タイトル
Niche-specific adaptation of Lactobacillus helveticus strains isolated from malt whisky and dairy fermentations
論文タイトル(訳)
ウィスキーもろみ由来および発酵乳由来Lactobacillus helveticus 菌株の生息域特異的な環境適応
DOI
10.1099/mgen.0.000560
ジャーナル名
Microbial Genomics
巻号
Microbial Genomics Volume 7 Issue 4
著者名(敬称略)
城戸 良彦 遠藤 明仁 他
所属
東京農業大学 生物産業学部 食香粧化学科 食の化学研究室

抄訳

L. helveticus はチーズを含む様々な発酵乳製品の製造に利用される代表的な発酵乳乳酸菌であり、その保健効果を利用したプロバイオティクス乳製品も多数開発されている。一方で、本菌はウィスキー発酵中のもろみからも見いだされることが知られている。この2つの生息域は微生物が生息するにあたり、栄養面及び環境ストレス面で大きく異なる。そこで本研究ではこの2つの環境から分離されたL. helveticus 菌株の生理学的性状及びゲノム性状を比較解析した。その結果、ウィスキー由来株はアルコール耐性を有しているのに対し、発酵乳由来株には見られなかった。また、麦芽糖であるマルトースや植物由来糖であるセロビオース、スクロースなどの代謝能はウィスキー由来株だけに特異的にみられた一方で、乳由来の糖であるラクトースやその構成糖であるガラクトースの代謝は発酵乳由来株だけに特異的にみられた。この糖代謝能の違いは比較ゲノム解析データからも完全にフォローされ、L. helveticus は環境にゲノムレベルで適応することで表現性状を大きく変化させていることが明らかとなった。また、進化学的研究により、L. helveticus は本来穀物発酵物中に生息していたものが乳環境中に適応していったことが示唆された。

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2021/06/16

18F-FDG-PET集積を示す良性副腎皮質腫瘍の病理学的・遺伝子学的特徴

論文タイトル
Characteristics of benign adrenocortical adenomas with 18F-FDG PET accumulation
論文タイトル(訳)
18F-FDG-PET集積を示す良性副腎皮質腫瘍の病理学的・遺伝子学的特徴
DOI
10.1530/EJE-20-1459
ジャーナル名
European Journal of Endocrinology
巻号
European Journal of Endocrinology Vol.185 Issue 1 (155–165)
著者名(敬称略)
石渡 一樹, 鈴木 佐和子 他
所属
千葉大学大学院医学研究院 内分泌代謝・血液・老年内科学

抄訳

18F-FDG-PET (PET) 集積で発見される良性副腎皮質腺腫が増えている。我々はその特徴を明らかにする目的で、PET を施行したコルチゾール産生腫瘍 30例 (26例の副腎腺腫と4例の副腎皮質癌)の臨床病理学的解析および遺伝子学的解析を行った。その結果、良性副腎皮質腺腫でも 65%と比較的高率にPET集積を認め、PET集積が高い症例は肉眼的に黒色調のblack adenomaが多く含まれていた。Black adenomaは脂肪成分が少ないため、PET集積を認める副腎皮質腺腫は、CT値が高く、MRIではT1・T2強調画像ともに高信号、opposed phaseで信号低下を認めず、131I-アドステロールシンチでは集積が減弱していた。Black adenomaの細胞内には障害を受けたミトコンドリアが豊富で、摘出副腎組織のRNA sequenceではLysosome pathwayやAutophagy pathwayに加えて、18F -FDGの取り込みに関与するGLUT 1.3を含むglycolysis pathwayをはじめとしたmetabolic pathwayが増加していた。PET集積を認める脂肪成分含有の少ない副腎腫瘍はBlack adenomaも念頭におき総合的な診断・治療決定が望まれる。

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2021/06/15

シロイヌナズナの全身性傷害シグナルを可視化する広視野リアルタイムイメージング法

論文タイトル
Wide-Field, Real-Time Imaging of Local and Systemic Wound Signals in Arabidopsis
論文タイトル(訳)
シロイヌナズナの全身性傷害シグナルを可視化する広視野リアルタイムイメージング法
DOI
10.3791/62114
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (172), e62114
著者名(敬称略)
上村 卓矢,豊田 正嗣 他
所属
埼玉大学 理学部 分子生物学科 理学部3号館

抄訳

傷害や害虫による食害を受けた植物では、被害局所のみならず遠く離れた未被害部位においても抵抗性反応が誘導される。私たちは傷害によって細胞外(アポプラスト領域)に放出されるグルタミン酸(Glu)がグルタミン酸受容体(GLR)を活性化し、それにより発生する長距離で高速なカルシウム(Ca2+)シグナルが全身性傷害応答の引き金となることを明らかにした。本プロトコルではGFP型のCa2+バイオセンサーとGluバイオセンサーを発現させたシロイヌナズナと広視野蛍光顕微鏡を用いて、傷害による全身性の高速Ca2+シグナルと細胞外のGlu濃度変化を可視化するリアルタイムイメージング法について示す。また長距離Ca2+シグナルを誘導するGluの処理方法についても紹介する。本システムを用いることで、植物のストレス応答機構における長距離シグナルネットワークを時空間的に理解することが可能となる。

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2021/06/15

上顎第二大臼歯周囲に4歯の過剰歯を認めた1例

論文タイトル
Four erupted supernumerary teeth around the maxillary second molar
論文タイトル(訳)
上顎第二大臼歯周囲に4歯の過剰歯を認めた1例
DOI
10.1136/bcr-2020-241213
ジャーナル名
BMJ Case Reports
巻号
BMJ Case Reports Vol.14 Issue 5 (2021)
著者名(敬称略)
冨永 浩平 佐々木 亮 岡本 俊宏
所属
東京女子医科大学病院 歯科口腔外科

抄訳

過剰歯の発生頻度は約1%であり、上顎前歯部が半数を占め、1歯ないし2歯の発生がほとんどである。4歯以上の過剰歯は鎖骨頭蓋異骨症やGardner症候群などに発生することが報告されているが、症候群を伴わない3歯以上の過剰歯は稀であり、そのうち片側片顎臼歯部に発生した症例は数少ない。 患者は26歳男性で、遺伝性疾患を示唆する所見はなく、過剰歯や大腸腫瘍などの家族歴は認めなかった。左側上顎第二大臼歯口蓋側に1歯、頬側に3歯の過剰歯を認めた。過剰歯はいずれも矮小歯で、歯冠の形態は不定型であった。歯根は単根で湾曲していた。過剰歯の約75%は埋伏しているが、本症例では全て萌出していた。過剰歯の発生には様々な説があるが、本症例では第二大臼歯、第三大臼歯との癒合はなく、発生時期も独立していることから歯胚・歯堤の過剰形成によるものと考えられた。

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2021/06/15

尿路病原性大腸菌の外膜蛋白質OmpXは、本菌の病原性と鞭毛発現に寄与する

論文タイトル
Roles of OmpX, an Outer Membrane Protein, on Virulence and Flagellar Expression in Uropathogenic Escherichia coli
論文タイトル(訳)
尿路病原性大腸菌の外膜蛋白質OmpXは、本菌の病原性と鞭毛発現に寄与する
DOI
10.1128/IAI.00721-20
ジャーナル名
Infection and Immunity
巻号
Infection and Immunity Volume 89 • Number 6 • May 2021
著者名(敬称略)
平川 秀忠 他
所属
群馬大学 大学院医学系研究科細菌学講座

抄訳

尿路病原性大腸菌(UPEC)は、尿路感染症を引き起こす主要な起因菌である。本菌は、尿路系細胞に侵入しマイクロコロニーを形成する。本菌のマイクロコロニーは、様々な抗菌薬や宿主の免疫系に対して耐性を示すため、これがUPEC感染症の難治化につながると考えられている。本論文では、UPECの外膜蛋白質の1つであるOmpXが、腎臓に対する病原性に寄与することを明らかにした。ompX遺伝子を欠損させると、腎臓上皮細胞内におけるマイクロコロニー形成能が大きく低下し、それに伴って経尿道感染マウスの腎臓への感染が低減された。一方で、ompX欠損株は、野生型と比較して、鞭毛の発現量が低下しており、その結果不完全な運動性が見られた。鞭毛の構成成分であるフラジェリン蛋白質をコードする遺伝子fliCを欠損させると、ompX欠損株と同様、腎臓上皮細胞内におけるマイクロコロニー形成能が大きく低下した。さらに、fliC欠損株からompXを欠損させても、さらなるマイクロコロニー形成能の低下は観察されなかった。以上の結果から、UPECの鞭毛は、腎臓上皮細胞に対する病原性に関与すること、そしてOmpXはその鞭毛の発現に寄与することが示された。本研究結果は、UPECのOmpXが、新たな病原性因子であり、本菌による感染症に対する治療標的になりうる可能性を示唆している。

 

 

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2021/06/08

CX3CL1-CX3CR1シグナルの欠損は、肥満による慢性炎症とインスリン抵抗性を増悪させる

論文タイトル
CX3CL1-CX3CR1 Signaling Deficiency Exacerbates Obesity-induced Inflammation and Insulin Resistance in Male Mice
論文タイトル(訳)
CX3CL1-CX3CR1シグナルの欠損は、肥満による慢性炎症とインスリン抵抗性を増悪させる
DOI
10.1210/endocr/bqab064
ジャーナル名
Endocrinology
巻号
Endocrinology Vol.162 Issue 6 (bqab064)
著者名(敬称略)
永島田 まゆみ 他
所属
金沢大学医薬保健研究域保健学系 医療科学領域 病態検査学講座

抄訳

肥満による慢性炎症とインスリン抵抗性の発症・遷延化において、骨髄から脂肪組織、肝臓等へ単球・マクロファージ等の炎症細胞を浸潤・集積させるケモカインは重要な役割を果たす。40種以上のケモカインの多くは肥満の進展に伴い発現が増加するが、我々は、唯一持続的に発現が減少するケモカインCX3CL1(fractalkine)を見出した。今回、CX3CL1の受容体CX3CR1を欠損したマウスに、高脂肪食による肥満を誘導し(DIO-KO)、慢性炎症、及びインスリン抵抗性の形成におけるCX3CL1-CX3CR1シグナルの役割を検討した。
DIO-KOの代謝表現型解析から、CX3CL1-CX3CR1シグナルの欠損は、脂肪組織に浸潤するマクロファージの極性を抗炎症性M2から炎症惹起性M1優位へとダイナミックにシフトさせ、脂肪組織の炎症を誘導、遷延化し、インスリン抵抗性を増悪させることが明らかとなった。また、肥満に伴い低下したCX3CL1-CX3CR1シグナルの回復は、インスリン抵抗性を減弱させた。以上のことからCX3CL1-CX3CR1シグナルは、肥満における慢性炎症やインスリン抵抗性の発症に深く関与することが示された

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2021/06/01

胃腺腫と亜急性連合性脊髄変性症を合併した自己免疫性胃炎の一例

論文タイトル
Autoimmune gastritis concomitant with gastric adenoma and subacute combined degeneration of the spinal cord
論文タイトル(訳)
胃腺腫と亜急性連合性脊髄変性症を合併した自己免疫性胃炎の一例
DOI
10.1136/bcr-2021-242836
ジャーナル名
BMJ Case Reports
巻号
BMJ Case Reports Vol.14 Issue 5 (2021)
著者名(敬称略)
谷口 正浩 仲瀬 裕志
所属
札幌医科大学 医学部 消化器内科学講座

抄訳

自己免疫性胃炎(AIG)は、自己免疫機序による壁細胞の破壊、胃底腺領域の萎縮を特徴とする慢性胃炎である。AIGは胃腫瘍やビタミンB12欠乏を引き起こし、後者は悪性貧血や神経障害の原因となりうる。今回、胃腺腫と亜急性連合性脊髄変性症(SCD)を合併したAIGの一例を経験した。 症例は62歳の女性で、貧血精査のため当科に紹介となった。血液検査で軽度の大球性貧血、ビタミンB12低値を認め、上部消化管内視鏡検査(EGD)で胃体部優位の萎縮性胃炎と胃体部に扁平隆起を認めた。AIGによるビタミンB12欠乏及び早期胃癌を疑い、追加検査の結果判明後にビタミンB12投与と内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を予定した。EGDの数日後から歩行障害が出現し、神経内科での神経診察、MRI検査の結果、SCDと診断された。ビタミンB12投与で神経症状、貧血は改善し、抗壁細胞抗体及び抗内因子抗体陽性、血清ガストリン高値、ペプシノーゲンI低値を認めたことからAIGと診断した。その後、胃腫瘍に対しESDを施行し、病理組織検査は腺腫の診断であった。胃腺腫とSCDを合併したAIGは稀であり、AIGの早期診断と合併症に対する適切な対応の重要性が示唆された一例と考え報告する。

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2021/05/26

仮想現実技術ガイド下リハビリテーションが功を奏した小脳性運動失調の1例

論文タイトル
Case of cerebellar ataxia successfully treated by virtual reality-guided rehabilitation
論文タイトル(訳)
仮想現実技術ガイド下リハビリテーションが功を奏した小脳性運動失調の1例
DOI
10.1136/bcr-2021-242287
ジャーナル名
BMJ Case Reports
巻号
BMJ Case Reports Vol.14 Issue 5 (2021)
著者名(敬称略)
瀧本 和大
所属
医療法人えいしん会 岸和田リハビリテーション病院

抄訳

症例は40歳代の男性。右小脳および脳幹梗塞後の運動失調に対するリハビリテーション目的で当院転院となった。転院後3週間の理学療法的介入で患者の日常生活動作はFunctional Impedance Measure で101から124に改善した。しかしながら、フォークリフト運転手としての業務に必要なバランス機能の向上には至らなかった。この改善目的に仮想現実(VR)技術を用いたリハビリテーション用医療機器、mediVRカグラ🄬ガイド下でのバランス訓練(VR訓練)を導入した。VR訓練を平日に約40分間、2週間行ったところ、運動失調の評価尺度であるScale for the Assessment and Rating of Ataxiaは5点から1点に、Functional Balance Scale は48点から56点に、Mini-Balance Evaluation Systems Test は20点から28点に改善した。体幹動揺は臨床的に消失し、患者は職場復帰を果たした。

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2021/05/26

カルシウムの経口投与は消化管でのカルシウム感知受容体活性化によるPYY分泌促進を介してラットの摂食量を減少させる

論文タイトル
Acute Oral Calcium Suppresses Food Intake Through Enhanced Peptide-YY Secretion Mediated by the Calcium-Sensing Receptor in Rats
論文タイトル(訳)
カルシウムの経口投与は消化管でのカルシウム感知受容体活性化によるPYY分泌促進を介してラットの摂食量を減少させる
DOI
10.1093/jn/nxab013
ジャーナル名
Journal of Nutrition
巻号
Journal of Nutrition Volume 151 Issue 5 (1320–1328)
著者名(敬称略)
五十嵐 晶帆, 比良 徹 他
所属
北海道大学大学院農学研究院 基盤研究部門生物機能化学分野 食品栄養学研究室

抄訳

ヒトや実験動物においてカルシウムを補足した食事を摂取する事で体重や摂食量が減少することが報告されているが、その作用機序は明らかになっていない。本研究では、ラットにカルシウムを単回経口投与することによる食欲への影響とその作用機序について、消化管ホルモンの観点から検討した。塩化カルシウム溶液を経口投与すると、その後の摂食量が減少した。ペプチド-YY(PYY)は、食欲抑制作用をもつ消化管ホルモンであり、PYYのブロッカーとの共投与によってカルシウム投与による摂食量の減少はキャンセルされた。また、十二指腸内への液体飼料投与による門脈中PYY濃度上昇は、カルシウムの添加によって増強され、この増強作用はカルシウム感知受容体(CaSR)のアンタゴニストによってキャンセルされた。以上から、カルシウムの経口投与が消化管のCaSRを活性化し、それに伴うPYY分泌増強を介して食欲が抑制される可能性が示された。

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2021/05/25

地下生息する齧歯類、ハダカデバネズミにおけるミネラルコルチコイド受容体の重複と多様化

論文タイトル
Diversification of mineralocorticoid receptor genes in a subterranean rodent, the naked mole-rat
論文タイトル(訳)
地下生息する齧歯類、ハダカデバネズミにおけるミネラルコルチコイド受容体の重複と多様化
DOI
10.1530/JME-20-0325
ジャーナル名
Journal of Molecular Endocrinology
巻号
Journal of Molecular Endocrinology Volume 66 Issue 4 (299–311)
著者名(敬称略)
岡 香織, 三浦 恭子 他
所属
熊本大学大学院生命科学研究部 老化・健康長寿学講座

抄訳

ハダカデバネズミはアフリカのサバンナの地下に生息する小型齧歯類である。水にアクセスできない環境に暮らすことから、飲水はせず、水分摂取は餌に頼っている。我々はハダカデバネズミの浸透圧調節機構を明らかにするため、体液恒常性に関わる遺伝子の発現制御に重要な遺伝子、ミネラルコルチコイド受容体(nuclear receptor subfamily 3 group C member 2、MR)のクローニング及び機能解析を行なった。ほとんどの脊椎動物は単一のMRホモログを持つが、興味深いことにハダカデバネズミでは遺伝子重複が起き、2種類のMR遺伝子が生じていた。このうちMR1は他生物種のMRと高い相同性を持ち、発現パターンも類似していたのに対し、もう一方のMR2はDNAやリガンドとの結合に必要なドメインを欠損し、ホルモン産生に関わる組織などに高い発現が見られた。MR2は単独では転写活性化能を持たないものの、MR1と共発現することでその転写活性を亢進することが明らかとなった。MRの遺伝子重複はこれまでフタコブラクダでしか報告がなく、水の乏しい環境におけるMRシグナル伝達の調節に第二のMRが関わっている可能性が示唆される。

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2021/05/20

ヒト造血幹細胞の静止期維持培養法

論文タイトル
A Culture Method to Maintain Quiescent Human Hematopoietic Stem Cells
論文タイトル(訳)
ヒト造血幹細胞の静止期維持培養法
DOI
10.3791/61938
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (171), e61938
著者名(敬称略)
小林 央, 田久保 圭誉
所属
国立国際医療研究センター研究所 生体恒常性プロジェクト

抄訳

造血幹細胞は分化した細胞を継続的に補充しながらヒトの造血機能を生涯にわたって維持しています。造血幹細胞は運命決定した前駆細胞と比べて細胞周期が静止していることが大きな特徴です。従来、ヒト造血幹細胞研究は表面マーカーで単離した造血幹細胞を免疫不全マウスに移植することで幹細胞活性を評価されてきました。しかし、移植をすると造血幹細胞は静止期性が失われ、定常状態での挙動と異なることが最近の研究からわかってきて、より生理的条件下での造血幹細胞の挙動を理解する実験モデルが求められていました。本プロトコルでは、骨髄の微小環境(低酸素かつ脂質に富む)を模倣し、サイトカインの濃度を最適化することで、培養下で未分化かつ静止状態を維持する方法を示します。これにより試験管内での造血幹細胞の静止状態を再現することで、造血幹細胞の定常状態の特性に対する理解が深まり、造血幹細胞を実験的に操作することが可能になります。

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2021/05/20

妊娠ヒツジ栄養膜細胞と子宮上皮の密着部位におけるフィブリン形成

論文タイトル
Formation of fibrin at sights of conceptus adhesion in the ewe
論文タイトル(訳)
妊娠ヒツジ栄養膜細胞と子宮上皮の密着部位におけるフィブリン形成
DOI
10.1530/REP-20-0531
ジャーナル名
Reproduction
巻号
Reproduction Volume 161 Issue 6 (709–720)
著者名(敬称略)
松野 雄太, 今川 和彦 他
所属
東海大学 総合農学研究所

抄訳

哺乳類の妊娠には着床が必須である。着床には胚・栄養膜細胞の子宮上皮への接着とそれに続く密着が必要であり、様々な分子が関与している。しかし、その接着や密着を維持する分子は十分に明らかにされていない。本研究では、ヒツジの胚・栄養膜細胞が分泌するタンパク質において,接着や密着を維持する新たな候補を同定することを目的とした。
着床期の妊娠ヒツジから採取した胚・栄養膜細胞と子宮内膜のRNAシークエンス(RNA-seq)解析と、子宮灌流液のiTRAQ解析を実施した。mRNA発現とタンパク質発現の網羅的解析によって、胚・栄養膜細胞から分泌されるタンパク質を同定し、凝固(coagulation cascade)の遺伝子オントロジーに関連するタンパク質に富むことを明らかにした。また、胚・栄養膜細胞における凝固因子、フィブリノーゲン、線溶因子の転写産物の発現量は、接着前や接着直後に比べて密着後で有意に高く、in situ hybridization法、ウェスタンブロット法、免疫組織化学染色法による解析でも支持された。さらに、胚・栄養膜細胞と子宮上皮の密着部位にフィブリンが形成されることを明らかにした。
本研究によって、フィブリン形成が胚・栄養膜細胞と子宮上皮の密着を維持する新たな候補であることが示された。

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2021/05/18

ユビキチン化CK5/6の細胞質内蓄積により印環細胞形態を示した基底細胞癌の一例

論文タイトル
Basal cell carcinoma with signet ring cell morphology accumulating the ubiquitinated cytokeratin 5/6
論文タイトル(訳)
ユビキチン化CK5/6の細胞質内蓄積により印環細胞形態を示した基底細胞癌の一例
DOI
10.1136/bcr-2021-241993
ジャーナル名
BMJ Case Reports
巻号
BMJ Case Reports Vol.14 Issue 4 (2021)
著者名(敬称略)
渡邊 理子、榎本克彦 他
所属
秋田赤十字病院 形成外科

抄訳

基底細胞癌にはいくつかの亜型が存在するが、印環細胞形態を示す基底細胞癌は極めて稀である。われわれは79歳男性の頬に生じた印環細胞形態を示す基底細胞癌を経験し病理組織学的検討を行った。腫瘍は基底細胞癌に特徴的な胞巣辺縁の柵状配列を示し、柵状配列内側の腫瘍細胞の多くに細胞質内の好酸性細顆粒状物質の貯留により核が細胞辺縁に圧排される、いわゆる印環細胞形態を認めた。これまでの英文症例報告17例では印環細胞の細胞質内にケラチンあるいは筋上皮分化を示す物質貯留が報告されている。免疫染色で本症例では筋上皮マーカーの貯留は確認されず基底細胞ケラチンであるCK5/6が陽性を示した。さらにCK5/6貯留部位に一致してユビキチンプロテアソームタンパク質分解システムの構成要素であるユビキチンの発現を認めた。角化細胞のケラチン分子の分解にはユビキチンプロテアソームシステムが関与している。したがって、本症例でみられたユビキチン化CK5/6細胞質内蓄積による印環細胞形態は、癌化により基底細胞ケラチンであるCK5/6分解系に異常が生じていることを示唆している。

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2021/05/10

腎臓におけるアンモニアトランスポーターRhcgのアルドステロンによる発現調節機序の検討

論文タイトル
Regulation of Rhcg, an ammonia transporter, by aldosterone in the kidney
論文タイトル(訳)
腎臓におけるアンモニアトランスポーターRhcgのアルドステロンによる発現調節機序の検討
DOI
10.1530/JOE-20-0267
ジャーナル名
Journal of Endocrinology
巻号
Journal of Endocrinology Volume 249 Issue 2 (95–112)
著者名(敬称略)
江口 剛人, 泉 裕一郎 他
所属
熊本大学大学院生命科学研究部 腎臓内科学分野

抄訳

腎臓の役割の一つに酸(H+)排泄があり、生体の酸塩基平衡の維持に重要である。H+はアンモニア(NH3)とともにアンモニウムイオン(NH4+)として尿中へ排泄される。その調節はアルドステロンとカリウム(K+)によるとされるが、詳細な機序は分かっていない。NH3は、集合尿細管間在細胞に発現するトランスポーターRhesus C glycoprotein (Rhcg)により排泄される。今回、アルドステロンによるRhcgの発現調節機序について検討した。C57BL/6Jマウスにアルドステロンを持続皮下投与すると、尿細管細胞膜上のRhcgの発現が増加した。アルドステロンとともに塩化カリウム(KCl)の飲水投与によりK+を負荷すると、Rhcg発現の増加が抑制された。次に、副腎摘出マウスに塩化アンモニウム(NH4Cl)の飲水投与によるH+負荷を施した上で、アルドステロンまたはvehicleを持続皮下投与した。副腎摘出はH+負荷により誘導されるRhcgの発現を阻害し、アルドステロンはRhcgの発現を回復させた。さらに、間在細胞由来細胞株(IN-IC細胞)を用いてRhcgの発現調節の機序について検討した。アルドステロンはRhcgの細胞膜上の発現を増加させ、ミネラロコルチコイド受容体阻害薬とPKC阻害薬はそれぞれアルドステロンの作用を阻害した。また、細胞外K+濃度の上昇はアルドステロンの作用を阻害した。
今回の検討により、腎臓におけるRhcgを介した酸排泄調節機序の一端が明らかとなった。

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2021/05/10

ヒト血清中可溶型T-カドヘリンの同定と臨床パラメーターとの関連

論文タイトル
Identification and Clinical Associations of 3 Forms of Circulating T-cadherin in Human Serum
論文タイトル(訳)
ヒト血清中可溶型T-カドヘリンの同定と臨床パラメーターとの関連
DOI
10.1210/clinem/dgab066
ジャーナル名
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism
巻号
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism Vol.106 Issue5 (1333–1344)
著者名(敬称略)
福田 士郎, 喜多 俊文 他
所属
大阪大学大学院医学系研究科 内分泌・代謝内科学

抄訳

T-カドヘリン(T-cad)は、アディポネクチンによるエクソソームの生合成と分泌を媒介し、心臓血管組織を保護し、筋肉の再生を促進し、移植間葉系幹細胞による治療的心保護作用を発揮するGPIアンカー型カドヘリンです。GWAS研究では、T-cad遺伝子座が、心血管疾患のリスクとグルコース恒常性に加えて、血漿アディポネクチンレベルに強く影響すること知られています。
新規にモノクローナル抗体を作出することで、血中には130kDa体、100kDa、および30kDaの3種の可溶型T-cadが存在することを明らかにしました。新しく開発したELISAシステムを使用してそれらを同時に測定すると、アディポネクチンとの結合は認められなかったものの、130kDa体T-cadが血漿アディポネクチン値と正の相関があることがわかりました(r = 0.28、p <0.001)。また、30kDa体T-cadは、糖尿病患者のいくつかの臨床パラメーターと関連していました。疾患マーカーおよびバイオマーカーとしての重要性や生理活性についてさらに研究する必要があると考えています。

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2021/05/06

アラビアガム由来のアラビノガラクタン・プロテインの資化性のために必要なBifidobacterium longum subsp. longumの新規糖質分解酵素3-O-α-D-galactosyl-α-L-arabinofuranosidase

論文タイトル
Novel 3-O-α-d-Galactosyl-α-l-Arabinofuranosidase for the Assimilation of Gum Arabic Arabinogalactan Protein in Bifidobacterium longum subsp. Longum
論文タイトル(訳)
アラビアガム由来のアラビノガラクタン・プロテインの資化性のために必要なBifidobacterium longum subsp. longumの新規糖質分解酵素3-O-α-D-galactosyl-α-L-arabinofuranosidase
DOI
10.1128/AEM.02690-20
ジャーナル名
Applied and Environmental Microbiology
巻号
Applied and Environmental Microbiology May 2021; volume 87,issue 10
著者名(敬称略)
佐々木 優紀、藤田 清貴 他
所属
鹿児島大学農学部食料生命科学科 食品機能科学コース応用糖質化学研究室

抄訳

アラビアガム由来のアラビノガラクタン・プロテインはビフィズス菌B. longumの特定の菌株だけに利用される食物繊維であることが分かっていましたが、どのような仕組みで利用されているのか不明でした。私たちはアラビアガムの分解のために必要な鍵酵素3-O-α-D-galactosyl-α-L-arabinofuranosidase(GAfase)を発見しました。GAfaseはアラビアガムの末端の二糖を切断する酵素です。この酵素によって切り出されたオリゴ糖を利用することでビフィズス菌が増えるだけではなく、本来アラビアガムの分解能力を持たないB. longumの増殖も促進することを明らかにしました。これは、GAfaseの作用によってアラビアガムの複雑な糖鎖構造の一部が分解され、他の酵素が作用しやすくなったためです。本研究は、アラビアガムの複雑な糖鎖構造を分解する能力が、ビフィズス菌の特定の菌株が持つ鍵酵素に依存したものであることを詳細に解析したものであり、この分解によって生ずる残渣が他の腸内細菌との共生関係にも影響していることを明らかにしたものです。

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