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国内研究者論文詳細

日本人論文紹介:詳細

2021/02/22

細胞内Nrf2発現量が化学発がんにおける食道上皮細胞の運命を決定する

論文タイトル
Cellular Nrf2 Levels Determine Cell Fate during Chemical Carcinogenesis in Esophageal Epithelium
論文タイトル(訳)
細胞内Nrf2発現量が化学発がんにおける食道上皮細胞の運命を決定する
DOI
10.1128/MCB.00536-20
ジャーナル名
Molecular and Cellular Biology
巻号
Molecular and Cellular Biology February 2021; volume 41,issue 2
著者名(敬称略)
堀内 真、山本 雅之 他
所属
東北大学大学院医学系研究科 医化学分野

抄訳

転写因子Nrf2は、生体防御酵素群の発現を誘導して、発がん物質に対する細胞保護効果を強める働きをする。一方、Nrf2欠失マウスでは種々の発がん物質に対する感受性が高まっており、化学発がんが起こりやすいことが知られている。しかし、従来のモデルではNrf2を全身性に欠失した状態のマウスでの化学発がんを検討しており、正常細胞とNrf2欠失細胞が混在する条件での化学発がんは調べられていなかった。本研究では、食道上皮においてNrf2欠失細胞と正常細胞がほぼ同等に混在するマウスを作出し、同マウスに発がん物質4-ニトロキノリン-1-オキサイド(4NQO)を投与して、同上皮における正常細胞とNrf2欠失細胞の挙動を検討した。本マウスの食道上皮においては、通常環境ではNrf2欠失細胞と正常細胞が混在した。しかし、4NQOを曝露した際にはNrf2欠失細胞が選択的に排除され、存在しなくなっていた。4NQOが誘導した腫瘍の大半はNrf2欠失細胞由来ではなく、Nrf2発現細胞由来であった。これらの結果から、化学発がん剤はNrf2欠失細胞ではなく、発現細胞を発がんに導くこと、また、Nrf2欠失細胞が食道上皮に出現しても、その組織環境から、直ぐに発がんする運命をたどる可能性は低いことが理解される。

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2021/02/15

若年女性における5年間の妊孕性温存治療及び妊娠転帰

論文タイトル
Oncofertility care in young women and the outcomes of pregnancy over the last 5 years
論文タイトル(訳)
若年女性における5年間の妊孕性温存治療及び妊娠転帰
DOI
10.2144/fsoa-2020-0169
ジャーナル名
Future Science OA
巻号
Future Science OA Published Online:2 Feb 2021
著者名(敬称略)
髙橋 小百合、堀江 昭史 他
所属
京都大学 医学研究科/医学専攻器官外科学講座婦人科学・産科学

抄訳

がん生殖医療において、がん治療後の適切な不妊治療を提供するため、2015年1月から2019年9月までに当院で妊孕性温存治療を受けた43歳以下の女性患者67例を対象に後方視的にデータを分析した。
対象患者は、乳がん患者28例、血液がん患者19例、その他のがん患者20例を含む67例であった。
乳がん患者は、がん治療開始前に妊孕性温存に関して当科を受診する割合が大きく、血液がん患者はがん治療開始前に妊孕性温存治療を受ける割合が小さい傾向を認めた。
20歳以上の患者のうち既婚者は計15例(25%)で同年代の一般女性の既婚率と比較して低く、そのうち5年間のフォロー中に新たに結婚した患者は4例であった。がん治療終了後の妊娠転帰として、ART (Assisted Reproductive Technology) を施行した患者は計3例であった。妊娠した患者は計9例でそのうちARTによる妊娠は2例であり、自然妊娠による妊娠例を7例認めた。
若年女性がん生存者の妊娠転帰を改善させるために生殖医療のみならず、がん治療終了後に妊娠を望む環境を整備すべく社会的支援を拡充する必要と、患者個々に応じた適切な妊娠方法を検討する必要があり、自然妊娠も実行可能な選択肢である。

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2021/02/08

KNDyニューロンが性腺刺激ホルモン分泌を制御し、卵胞発育を司る繁殖中枢であることを証明

論文タイトル
Direct evidence that KNDy neurons maintain gonadotropin pulses and folliculogenesis as the GnRH pulse generator
論文タイトル(訳)
KNDyニューロンが性腺刺激ホルモン分泌を制御し、卵胞発育を司る繁殖中枢であることを証明
DOI
10.1073/pnas.2009156118
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
PNAS February 2, 2021 118 (5) e2009156118
著者名(敬称略)
長江麻佑子、上野山賀久、束村博子 他
所属
名古屋大学 大学院生命農学研究科 動物科学専攻 動物生殖科学

抄訳

ヒトや家畜を含む哺乳類において、キスペプチンニューロンは生殖機能に不可欠な繁殖中枢である。脳の視床下部弓状核に分布するキスペプチンニューロンは、キスペプチンのほかに、ニューロキニンBとダイノルフィンAも合成、分泌することから、これらの頭文字をとってKNDyニューロンとも呼ばれる。我々は、先天的不妊モデル動物 (全身性キスペプチン遺伝子ノックアウトラット) の脳内にキスペプチン遺伝子を人為的に導入して、2割以上のKNDyニューロンを復元させると、性腺刺激ホルモン分泌が回復し、卵胞が排卵可能なサイズにまで発育することを示した。また、脳内のキスペプチン遺伝子を後天的にノックアウトできるラットの作製にも成功し、9割以上のKNDyニューロンでキスペプチン遺伝子を喪失させると、KNDyニューロン以外のキスペプチンニューロン群が残存しても、卵胞発育に必要な性腺刺激ホルモン分泌が消失することを示した。これらの結果から、我々は、KNDyニューロンが性腺刺激ホルモン分泌を制御し、卵胞発育を司る繁殖中枢であることを証明するとともに、2割のKNDyニューロンの復元により繁殖機能を回復できることを示した。本知見は、家畜の繁殖障害の治療、ヒトの不妊治療などへの応用が期待される。

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2021/02/08

抗CD14抗体による可溶性CD14の安定化は、攪拌による血液成分検体中のプレセプシン値の増加を抑制する

論文タイトル
Antibody-mediated soluble CD14 stabilization prevents agitation-induced increases in presepsin levels in blood component specimens
論文タイトル(訳)
抗CD14抗体による可溶性CD14の安定化は、攪拌による血液成分検体中のプレセプシン値の増加を抑制する
DOI
10.2144/btn-2020-0136
ジャーナル名
BioTechniques
巻号
BioTechniques, Published Online:29 Jan 2021
著者名(敬称略)
森野 豪太、高橋 学 他
所属
岩手医科大学 救急・災害・総合医学講座 岩手県高度救命救急センター

抄訳

【目的】プレセプシンは新規感染症マーカーであり、日本国内で保険収載されています。最近攪拌によりプレセプシンが上昇するとする報告が散見されます。ただし、そのメカニズムは解明されていません。本研究では、振盪によるプレセプシン増加のメカニズムを明らかにすることを目的としました。
【方法】攪拌前と攪拌後のヒト血漿または血清検体をゲル濾過クロマトグラフィーを使用して分離し、ELISAによって分析しました。
【結果】攪拌した検体において、変性した可溶性CD14(以下sCD14)と変性sCD14の凝集と考えられた2つのピークを認め、sCD14自体は減少していることが確認されました。また攪拌後に検体に抗CD14抗体(F1024-1-3)を添加し、その検体をウェスタンブロックにて解析したところ、抗体を添加した検体では、変性したと考えられたsCD14は殆ど消失しました。また攪拌前に検体にF1024-1-3を添加すると凝集と考えられるピークは認められませんでした。
【結語】検体を攪拌すると、sCD14の変性や変性したsCD14の凝集が生じ、誤ってプレセプシンと測定されることによりプレセプシン値が上昇する可能性が示唆されました。抗CD14抗体であるF1024-1-3はsCD14の変性や変性したsCD14の凝集を抑制することにより、攪拌によるプレセプシンの増加を抑制できると考えられました。

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2021/02/05

マストミスは脳心筋炎ウイルスの潜在的なレゼルボアである

論文タイトル
Mastomys natalensis is a possible natural rodent reservoir for encephalomyocarditis virus
論文タイトル(訳)
マストミスは脳心筋炎ウイルスの潜在的なレゼルボアである
DOI
10.1099/jgv.0.001564
ジャーナル名
Journal of General Virology
巻号
Journal of General Virology First Published: 03 February 2021
著者名(敬称略)
岸本 麻衣、佐々木 道仁 他
所属
北海道大学 人獣共通感染症リサーチセンター 分子病態・診断部門

抄訳

脳心筋炎ウイルス(Encephalomyocarditis virus: EMCV)は、様々な種類の哺乳類動物に感染し、脳炎、心筋炎等の症状を引き起こす。とりわけ、養豚業や野生動物保護区においてEMCV感染による被害が問題となる。ヒトは感染動物との接触を通して感染することがあり、多くは無症状であるものの、稀に熱性疾患を呈する。我々は、ザンビアで採取した野生のげっ歯類動物マストミス(M. natalensis)からEMCVを分離し、ZM12/14株と命名した。ザンビアの野生げっ歯類動物179匹から採集した材料を用いてEMCVの感染状況を調査したところ、ウイルスゲノム陽性率は10.6%、中和抗体陽性率は18.4%であった。ゲノムおよび抗体陽性個体は全てマストミスであった。興味深いことに、高い中和抗体価を示した個体からもウイルスゲノムが検出された。以上の結果から、マストミスはEMCVの潜在的なレゼルボアであると考えられる。本研究は、数少ないアフリカにおけるEMCVの疫学研究であり、ザンビアにおいてEMCV感染が発生するリスクを明らかにしたものである。

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2021/01/26

抗PD-1/PD-L1抗体阻害薬の再投与が有効であった転移性乳癌の一例

論文タイトル
Rechallenge of anti-PD-1/PD-L1 antibody showed a good response to metastatic breast cancer: a case report
論文タイトル(訳)
抗PD-1/PD-L1抗体阻害薬の再投与が有効であった転移性乳癌の一例
DOI
10.2217/imt-2020-0242
ジャーナル名
Immunotherapy
巻号
Immunotherapy Vol.13, No.3, 2021
著者名(敬称略)
大谷 陽子 他
所属
国立病院機構大阪医療センター 乳腺外科

抄訳

免疫チェックポイント阻害薬の再投与は乳癌以外の癌腫でいくつか報告があるが、乳癌での報告はない。今回アテゾリズマブ+nab-PTX既治療の転移性乳癌に、ペムブロリズマブが有効であった症例を経験したので報告する。
症例:55歳の女性が、乳房腫瘤と肺多発腫瘤影を指摘され紹介。左乳癌、トリプルネガティブ、cT4bN3cM1(縦隔リンパ節、肺、骨、皮膚転移)Stage Ⅳと診断された。IMpassion 130 (NCT02425891)に参加し、アテゾリズマブ+nab-PTX施行し、最良効果PRだった。原発巣のみがPDとなり、EC、エリブリン施行し、最良効果はそれぞれPR、PDであった。増大したのは原発巣と局所リンパ節転移のみで、他の転移巣は画像上消失を維持していたこともあり、局所コントロールのためにBt+Ax施行した。術後3ヶ月で初診時とは異なる部位に肺転移が出現した。手術時標本でMSI highであったため、ペムブロリズマブ施行し、最良効果PRだった。9か月経過した現在も病勢は安定している。
MSI high乳癌の割合は低いため、本症例は稀なシチュエーションだといえる。しかし、免疫チェックポイント阻害薬耐性となった場合でも、別の免疫チェックポイント阻害薬が有効である可能性が示唆された点は意義深い。

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2021/01/26

Citrobacter koseriは多量のATPを産生して樹状細胞を刺激しIL-33を発現させる。

論文タイトル
Citrobacter koseri stimulates dendritic cells to induce IL-33 expression via abundant ATP production
論文タイトル(訳)
Citrobacter koseriは多量のATPを産生して樹状細胞を刺激しIL-33を発現させる。
DOI
10.1099/jmm.0.001303
ジャーナル名
Journal of Medical Microbiology
巻号
Journal of Medical Microbiology First Published: 13 January 2021
著者名(敬称略)
片岡 嗣雄, 森 大気, 引頭 毅
所属
朝日大学 歯学部 口腔感染医療学講座 口腔微生物学分野

抄訳

食物アレルギーの発症は、腸内細菌叢の構成変化に伴う粘膜免疫系の破綻が原因の一つと考えられている。我々は、食物アレルギーモデルマウスの糞便中で最も多かったCitrobacter属細菌が、腸管上皮細胞のIL-33発現を誘導してアレルギーを増悪させることを既に報告した。本研究では、Citrobacter属細菌の樹状細胞におけるIL-33産生誘導について検討した。C. koseriJCM1658の生菌は、マウス樹状細胞株DC2.4においてIL-33発現を他の腸内細菌より強く誘導したが、抽出したLPSはToll-like receptor 4シグナルを介して発現を抑制した。さらに、他の腸内細菌より多く産生されたATPがP2X7レセプターを介してIL-33発現を誘導していた。以上のことから、C. koseriは、多量のATPを産生してIL-33発現を誘導することでアレルギー症状を増悪するが、そのLPSは症状を抑えている可能性が示された。

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2021/01/21

触刺激で誘発される疼痛様行動に重要な脊髄後角介在神経サブセット

論文タイトル
A subset of spinal dorsal horn interneurons crucial for gating touch-evoked pain-like behavior
論文タイトル(訳)
触刺激で誘発される疼痛様行動に重要な脊髄後角介在神経サブセット
DOI
10.1073/pnas.2021220118
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
PNAS January 19, 2021 118 (3) e2021220118
著者名(敬称略)
田島諒一,古賀啓祐,吉川優,八坂敏一,津田誠,他
所属
九州大学大学院薬学研究院薬理学分野
新潟医療福祉大学健康科学部健康栄養学科

抄訳

がんや糖尿病などで神経系が障害を受けた場合、神経障害性疼痛が発症することがあります。特に、皮膚に軽く触れるような刺激でも痛みがでる「アロディニア」は、モルヒネが効き難く、治療に難渋する痛みです。通常、触刺激で痛みがでることはありませんが、なぜ神経障害後にはそれが起こるのでしょうか?
今回の研究では、そのメカニズムの解明につながる重要な神経細胞(AAV-NpyP神経:AAVに搭載したNPYプロモーターで制御される神経)を特定し、それが神経障害性アロディニアに深く関わることを世界で初めて明らかにしました。この神経は脊髄の表層に局在し、神経障害後にアロディニアを呈しているネズミでは活動性が低下していました。さらに、その低下した神経活動を高めるとアロディニアが緩和され、逆に、正常のネズミの神経活動を人工的に低下させるとアロディニアが発症しました。したがって、今回特定した神経の活動を高める化合物が見つかれば、神経障害性疼痛に有効な治療薬の開発につながる可能性があります。

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2021/01/21

CCKレポーターマウスを用いた腸管内分泌I細胞における栄養素感知に関わる遺伝子発現について

論文タイトル
Gene expression of nutrient-sensing molecules in I cells of CCK reporter male mice
論文タイトル(訳)
CCKレポーターマウスを用いた腸管内分泌I細胞における栄養素感知に関わる遺伝子発現について
DOI
10.1530/JME-20-0134
ジャーナル名
Journal of Molecular Endocrinology
巻号
Vol.66 Issue 1 (11–22)
著者名(敬称略)
加藤 朋子, 原田 範雄, 稲垣 暢也 他
所属
京都大学大学院医学研究科 糖尿病・内分泌・栄養内科学

抄訳

CCKは、炭水化物、たんぱく質、脂肪など栄養素の摂取時に腸管内分泌I細胞から分泌される。生体内でI細胞と腸管上皮細胞を区別することが困難であるため、I細胞における栄養素感知に関わる分子の遺伝子発現は不明な点が多い。本研究では、赤色蛍光タンパク質tdTomato (Tomato)が内在性CCKプロモーターの活性化によって生成されるCCKレポーターマウスを作製した。蛍光顕微鏡下でTomato陽性細胞は上部小腸、下部小腸、大腸に発現していた。フローサイトメーター解析では、Tomato陽性細胞は腸管上皮細胞あたり各々0.95、0.54、0.06%の割合で発現していた。CCK mRNAはTomato陰性細胞に比較してTomato陽性細胞で高発現した。脂肪酸受容体GPR120、GPR40、GPR43、GPR119 mRNAは、小腸Tomato陽性細胞で特異的に発現していた。糖輸送担体SGLT1、GLUT2、GLUT5 mRNAは、Tomato陽性および陰性細胞で発現し、特に上部小腸で高かった。ペプチド輸送担体PEPT1 mRNAと受容体GPR93 mRNAはTomato陽性と陰性細胞で発現していたが、CaSR mRNAは上部小腸Tomato陽性細胞で特異的に高発現していた。以上のCCKレポーターマウスの解析から、I細胞は消化管に広く存在し、様々な栄養素感知に関わる分子を発現していることが明らかとなった。

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2020/12/08

消化管癌におけるゲノムワイドDNAメチル化解析

論文タイトル
Genome-Wide Analysis of DNA Methylation in Gastrointestinal Cancer
論文タイトル(訳)
消化管癌におけるゲノムワイドDNAメチル化解析
DOI
10.3791/61355
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (163), e61355
著者名(敬称略)
杉本 起一
所属
順天堂大学医学部下部消化管外科学

抄訳

DNAメチル化は、癌研究において重要かつ頻繁に認められるエピジェネティックな変化であり、その網羅的解析は、消化管悪性腫瘍におけるDNAメチル化を正確に解析するために有用である。 DNAメチル化の多方面におけるトランスレーショナルな意義を最大限活かすためには、DNAメチル化網羅的解析がどのように実行されるかを理解する必要がある。
DNAメチル化網羅的解析に用いられるMicroarray platformは、近年、飛躍的な進歩を遂げた。特に、Whole genome bisulfite sequencing (WGBS)と比較して、コストと処理時間において優れており、ヒトゲノムにおけるDNAメチル化網羅的解析の複雑な評価に用いられるようになった。
本プロトコールでは、DNAメチル化網羅的解析が消化管悪性腫瘍のバイオマーカー同定にどのように用いられるかについて、詳細な説明がなされており、特に、正確な結果を得るために必要な3つのステップについて理解することが重要であることを示している。

 

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2020/12/07

微生物は多繊毛化によって最大遊泳効率を獲得している

論文タイトル
Swimming microorganisms acquire optimal efficiency with multiple cilia
論文タイトル(訳)
微生物は多繊毛化によって最大遊泳効率を獲得している
DOI
10.1073/pnas.2011146117
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
PNAS December 1, 2020 117 (48) 30201-30207
著者名(敬称略)
大森俊宏 他
所属
東北大学大学院工学研究科ファインメカニクス専攻/医工学研究科医工学専攻

抄訳

遊泳微生物が運動することによって作られる微細な「流れ」は、微生物個体群の凝集や、分布を決定づけるキーファクタとなります。本研究では、繊毛と呼ばれる運動器官が生み出す流れを解析することで、微生物の運動エネルギに新しいスケーリング則を提示し、微生物が複数の繊毛を駆使することで、最適な泳ぎ方を獲得していることを明らかにしました。
もし、繊毛数を一定のまま、体長を大きくすると、遊泳効率は体長の3乗に比例して低下します。しかし、繊毛数を増やすことで、効率が100倍も高められ、最大効率が得られる最適な繊毛数密度が存在することを発見しました。最適な繊毛数が体表面にある場合、遊泳効率は体長に反比例して減少します。我々が推定した最適な繊毛数密度は、実際の微生物(微細藻類、繊毛虫など)の数密度と一致しており、この結果は、現存の遊泳微生物が遊泳効率を最大化することで生き残ってきたことを示唆しています。

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2020/11/30

脳梗塞急性期および亜急性期におけるうつ病の予測評価尺度

論文タイトル
Effective tools to predict depression in acute and subacute phase of ischemic stroke
論文タイトル(訳)
脳梗塞急性期および亜急性期におけるうつ病の予測評価尺度
DOI
10.1176/appi.neuropsych.20040076
ジャーナル名
Journal of Neuropsychiatry and Clinical Neurosciences
巻号
Journal of Neuropsychiatry and Clinical Neurosciences Published Online:22 Oct 2020
著者名(敬称略)
三上 克央
所属
東海大学医学部 医学科総合診療学系 精神科学

抄訳

脳卒中後1年以内のうつ病の頻度は高いが、脳卒中の急性期および亜急性期にその後のうつ病発症のリスクを予測した研究はほとんどない。 本研究は、脳梗塞の急性期および亜急性期に、代表的な評価尺度であるMADRSとPHQ-9により、脳梗塞慢性期の大うつ病発症を予測すること を目的とした。脳梗塞発症6週以内の入院患者に対し、ベースラインと脳梗塞発症後3、6、9、12ヵ月(脳梗塞慢性期)にうつ病とうつ状態 を評価した。 うつ病は構造化面接SCIDを使用し、うつ状態はPHQ-9およびMADRSにより評価した。同定された因子は予測判別力を受動者動作特性曲線下面積 (AUROC)により検定した。各予測因子の閾値は感度と特異度を考慮して決定した。脳梗塞の急性期および亜急性期にうつ病に該当しない48 名中、脳梗塞慢性期にうつ病を発症した患者は5名(10.4%)であった。脳梗塞急性期および亜急性期のMADRS とPHQ-9のAUROC は0.83 と0.88 であり、両尺度ともに脳梗塞慢性期のうつ病発症を予測する有意に優れた尺度と考えられた。また、感度と特異度を考慮すると、脳梗塞急性期 および亜急性期に、MADRSのカットオフ値は11、PHQ-9は9であった。脳梗塞の急性期および亜急性期にMADRSスコアが11以上、PHQ-9スコアが9以 上の患者は、脳梗塞慢性期に大うつ病発症のリスクが高いことが示唆された。特にPHQ-9は、短時間で評価可能な自己評価尺度であり、脳梗塞の 急性期に関わる臨床医が、慢性期にうつ病発症を予測する有益な尺度と考えられた。

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2020/11/26

主要な終末糖化産物であるNε-カルボキシメチルリジンの食事摂取は高山スタディでの日本人成人の死亡リスク上昇とは関連がなかった

論文タイトル
Dietary Intake of Nε-carboxymethyl-lysine, a Major Advanced Glycation End Product, is Not Associated with Increased Risk of Mortality in Japanese Adults in the Takayama Study
論文タイトル(訳)
主要な終末糖化産物であるNε-カルボキシメチルリジンの食事摂取は高山スタディでの日本人成人の死亡リスク上昇とは関連がなかった
DOI
10.1093/jn/nxaa230
ジャーナル名
Journal of Nutrition
巻号
Journal of Nutrition Volume.150 Issue.10
著者名(敬称略)
永田 知里 他
所属
岐阜大学大学院医学系研究科 疫学・予防医学分野

抄訳

終末糖化産物(AGE)は様々な慢性疾患の発症に関与すると考えられているが、食品中のAGEの健康影響については未だ不明である。そこで本研究は、主要なAGEであるNε-カルボキシメチルリジン(CML)の一般成人における食事からの摂取量を推定し、全死亡、死因別死亡リスクとの関連を評価した。CML摂取量の推定は、LC-MS測定による食品中CML含有量データベースを用いた。対象者は、高山スタディ参加者、35歳以上の男性13,355名、女性15,724名で、1992年に自記式の調査票に回答を得た。CML摂取を含む食習慣の評価はこのベースライン時の食物摂頻度調査票による。16年の追跡期間中に男性2,901名、女性2,438名の死亡が認められた。男性ではCML高摂取群(上位1/4)は低摂取群(下位1/4)に比べ、全死亡リスクは、ハザード比0.89 (95% CI 0.79-1.00, P-trend = 0.047)と低下していた。女性では、層化因子により、CML摂取と死亡リスクは、正負ともに関連性が認められた。本研究の日本人成人における結果は、CML摂取による死亡リスク上昇を支持するものではなかった。

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2020/11/17

Sphingobium sp. SYK-6株のシリンガ酸脱メチル酵素遺伝子desAの転写制御システム

論文タイトル
The Syringate O-Demethylase Gene of Sphingobium sp. Strain SYK-6 Is Regulated by DesX, while Other Vanillate and Syringate Catabolism Genes Are Regulated by DesR
論文タイトル(訳)
Sphingobium sp. SYK-6株のシリンガ酸脱メチル酵素遺伝子desAの転写制御システム
DOI
10.1128/AEM.01712-20
ジャーナル名
Applied and Environmental Microbiology
巻号
Applied and Environmental Microbiology Volume 86, Issue 22
著者名(敬称略)
荒木 拓馬、上村直史、政井 英司 他
所属
長岡技術科学大学・生物機能工学専攻 微生物代謝工学研究室

抄訳

リグニンの有効利用法として、リグニンを化学的に低分子化し、得られる芳香族化合物を微生物の代謝能により有価物に変換する技術が注目されている。Sphingobium sp. SYK-6株は、リグニンの主要な分解物であるシリンガ酸およびバニリン酸を代謝する過程でポリマー原料となる中間代謝物を生成する。SYK-6株を基盤としたリグニン変換システムを構築するには、これら化合物の取り込みおよび分解酵素遺伝子を同定し、その転写制御系を明らかにする必要がある。本研究では、SYK-6株のシリンガ酸脱メチル酵素遺伝子desAの転写制御が、IclR型転写制御因子DesXによって負に制御されること、DesXによる負の制御は、シリンガ酸またはバニリン酸存在下で解除されることを明らかにした。以上の結果と、MarR型転写制御因子DesRによるligMdesBの転写制御系に関する知見から、SYK-6株のシリンガ酸・バニリン酸代謝制御系の全体像が明らかとなった。

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2020/11/10

ジーンキューブ®マイコプラズマ・ニューモニエのマクロライド耐性肺炎マイコプラズマ検出能の評価

論文タイトル
Evaluation of GENECUBE Mycoplasma for the detection of macrolide-resistant Mycoplasma pneumoniae
論文タイトル(訳)
ジーンキューブ®マイコプラズマ・ニューモニエのマクロライド耐性肺炎マイコプラズマ検出能の評価
DOI
10.1099/jmm.0.001264
ジャーナル名
Journal of Medical Microbiology
巻号
Journal of Medical Microbiology First Published: 03 November 2020
著者名(敬称略)
森永 芳智 他
所属
富山大学 学術研究部医学系 微生物学講座

抄訳

 肺炎マイコプラズマのマクロライド系薬への耐性獲得は、適正な治療と診断を行う上で無視できない。分子学的手法は、本菌同定と本菌の薬剤耐性に関連する23SリボソームRNA遺伝子変異の同定の手段として期待されている。自動核酸検査システムであるジーンキューブ®マイコプラズマ・ニューモニエの薬剤耐性検出能を評価した。
 変異型を模した合成オリゴヌクレオチドでの検証では、軽度耐性のA2067Gの判定に一部エラーを認めたが、高度耐性である2063位と2064位は再現性良く正しく判定できた。
 臨床検体での検証では、9医療施設で収集された肺炎マイコプラズマ陽性の中咽頭検体から核酸を精製し、含まれる23SリボソームRNA遺伝子のサンガーシークエンス解析を行った。本システムは26.9%の検体を点変異ありと判定した。本システムで捉えた変異株はシークエンス解析でも全て変異型であり、2063位、2064位、2617位の変異がそれぞれ97%、3%、0%であった。
 本システムは、臨床的に重要なマクロライド耐性肺炎マイコプラズマを信頼して同定できる検査法である。

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2020/11/02

骨芽細胞・骨細胞のビタミンD受容体(VDR)は、in vivoにおいても活性型ビタミンD [1α,25(OH)2D3] による骨吸収促進作用に不可欠である

論文タイトル
The Vitamin D Receptor in Osteoblast-Lineage Cells Is Essential for the Proresorptive Activity of 1α,25(OH)2D3 In Vivo
論文タイトル(訳)
骨芽細胞・骨細胞のビタミンD受容体(VDR)は、in vivoにおいても活性型ビタミンD [1α,25(OH)2D3] による骨吸収促進作用に不可欠である
DOI
10.1210/endocr/bqaa178
ジャーナル名
Endocrinology
巻号
Endocrinology Vol.161 No.11 (bqaa178)
著者名(敬称略)
森 智紀, 中道 裕子 他
所属
松本歯科大学 総合歯科医学研究所 硬組織機能解析

抄訳

活性型ビタミンD製剤は骨吸収を抑制するため、骨粗鬆症治療薬として用いられている。対照的にビタミンD過剰症では、骨吸収の亢進が認められる。一方、骨芽細胞と造血細胞の共存培養系において、活性型ビタミンDは骨芽細胞のVDRを介して破骨細胞分化を促進する。しかしこれまでに、活性型ビタミンDに関して、in vivoにおける骨吸収抑制作用機構についての報告は多数あるものの、骨吸収促進作用についての研究報告はなかった。本論文では、活性型ビタミンDの骨吸収促進作用と血清カルシウム(Ca)上昇作用および体重減少作用の因果関係について、野生型マウスへの抗RANKL(破骨細胞分化因子)中和抗体投与による骨吸収抑制実験および、骨芽細胞・骨細胞特異的VDR欠損(Ob-VDR-cKO)マウスを用いた実験により調べた。その結果、1α,25(OH)2D3が骨芽細胞・骨細胞のVDRを介して骨吸収促進作用を発揮し、その骨吸収促進作用が、血清Ca上昇作用および体重減少作用の発現に必須であることを示した。

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2020/11/02

室傍核ダイノルフィンAニューロンは低栄養による生殖機能抑制を仲介する

論文タイトル
Paraventricular Dynorphin A Neurons Mediate LH Pulse Suppression Induced by Hindbrain Glucoprivation in Female Rats
論文タイトル(訳)
室傍核ダイノルフィンAニューロンは低栄養による生殖機能抑制を仲介する
DOI
10.1210/endocr/bqaa161
ジャーナル名
Endocrinology
巻号
Endocrinology Vol.161 No.11 (bqaa161)
著者名(敬称略)
土田 仁美, 束村 博子 他
所属
名古屋大学 大学院生命農学研究科 動物科学専攻 動物生殖科学

抄訳

哺乳類では、低栄養に陥ると生殖機能が抑制され、次の妊娠を回避するメカニズムが脳内に備わっている。ヒトや家畜を含む動物の生殖機能は、視床下部弓状核に局在するキスペプチンニューロンが、視床下部の性腺刺激ホルモン放出ホルモンニューロンを刺激し、ひいては下垂体からの性腺刺激ホルモン放出を促すことによってコントロールされる。我々は、後脳第4脳室に2デオキシ-D-グルコース(2DG、グルコース利用阻害剤)を投与した低栄養モデル雌ラットにおいて、室傍核のダイノルフィンAニューロンに神経活性化マーカが発現し、ダイノルフィン受容体(KOR)拮抗剤の脳内投与が2DGによる性腺刺激ホルモン分泌の抑制を阻害すること、また弓状核キスペプチンニューロンにKORが発現することを示した。以上より、低栄養時には、室傍核を起始核とするダイノルフィンAニューロンが活性化され、直接弓状核のキスペプチンニューロンを抑制することにより生殖機能が抑制されることが明らかとなった。本知見が、家畜の繁殖障害やヒトの生殖医療における不妊治療などに応用されることが期待される。

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2020/10/19

緑膿菌のニトロソ化ストレスに対する低濃度マクロライドの効果: 緑膿菌と多剤耐性緑膿菌の比較

論文タイトル
Effect of Sub-MICs of Macrolides on the Sensitivity of Pseudomonas aeruginosa to Nitrosative Stress: Effectiveness against P. aeruginosa with and without Multidrug Resistance
論文タイトル(訳)
緑膿菌のニトロソ化ストレスに対する低濃度マクロライドの効果: 緑膿菌と多剤耐性緑膿菌の比較
DOI
10.1128/AAC.01180-20
ジャーナル名
Antimicrobial Agents and Chemotherapy
巻号
Antimicrobial Agents and Chemotherapy Volume 64, Issue 10
著者名(敬称略)
清水 健 他
所属
千葉大学大学院 医学研究院 病原細菌制御学

抄訳

 緑膿菌は元々特定の薬剤に対する抵抗性を保持しているため、緑膿菌感染症の治療に用いることができる薬剤は限定されている。さらに近年の多剤耐性緑膿菌の出現は緑膿菌感染症対策に大きな問題となっている。
 低濃度マクロライド療法は緑膿菌感染症の治療法として、すでに確立されているが、多剤耐性緑膿菌に対しての有効性は検討されていない。低濃度のマクロライドは緑膿菌に対して直接的な殺菌効果を持たないので、その効果は生体防御機構に対する緑膿菌の抵抗性の低下を導くことによるものと考えられている。ニトロソ化ストレスとは生体防御機構が産生する一酸化窒素(NO)のような反応性窒素を含む化学物質によって生じるストレスのことを示し、この効果によって生体防御機構は病原細菌を殺菌する。そこで我々はニトロソ化ストレスに対する低濃度マクロライドの効果を緑膿菌と多剤耐性緑膿菌を用いて解析した。その結果、緑膿菌 13株ではsub-MICのマクロライド処理によってNOに対する抵抗性が有意に低下した。一方、多剤耐性緑膿菌34株を用いた結果では、NOに対する抵抗性に有意な低下は見出せなかった。しかし、多剤耐性緑膿菌34株の中で現在世界において大きな問題になっているハイリスククローンST235 27株に限定した場合には、NOに対する抵抗性が有意に低下した。

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2020/10/19

還元的条件で百日咳菌を培養するとIII型分泌装置から分泌される病原因子の産生は抑制される

論文タイトル
Transcriptional Downregulation of a Type III Secretion System under Reducing Conditions in Bordetella pertussis
論文タイトル(訳)
還元的条件で百日咳菌を培養するとIII型分泌装置から分泌される病原因子の産生は抑制される
DOI
10.1128/JB.00400-20
ジャーナル名
Journal of Bacteriology
巻号
Journal of Bacteriology Volume 202, Issue 21
著者名(敬称略)
後藤 雅貴、桑江 朝臣 他
所属
北里大学大学院感染制御科学府 細菌感染制御学研究室

抄訳

百日咳菌はヒトの気道に感染し、激しい咳を主症状とする百日咳を引き起こす。百日咳菌は「III型分泌装置」と呼ばれる針状の病原因子分泌装置を菌体膜上に保持している。菌はIII型分泌装置を介して病原因子 (III型分泌タンパク質) をヒトの細胞質内に注入することにより病原性を発揮する。しかし、百日咳菌がIII型分泌タンパク質を効率良く産生する培養条件は見出されていなかった。本研究では、還元剤であるアスコルビン酸 (ビタミンC) を培地から除去することにより、百日咳菌がIII型分泌タンパク質を効率的に産生することを発見した。また、この条件で培養した百日咳菌がIII型分泌タンパク質依存的な哺乳類細胞の膜破壊を誘導することを見出した。アスコルビン酸以外の還元剤を培地に添加した場合でも、III型分泌タンパク質の産生が抑制されたことから、百日咳菌は環境中の酸化還元電位を感知し、III型分泌タンパク質の産生を制御することが示唆された。

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2020/10/13

P4-ATPaseの細胞内局在はそのN末あるいはC末の細胞質領域によって決定される

論文タイトル
The N- or C-terminal cytoplasmic regions of P4-ATPases determine their cellular localization
論文タイトル(訳)
P4-ATPaseの細胞内局在はそのN末あるいはC末の細胞質領域によって決定される
DOI
10.1091/mbc.E20-04-0225
ジャーナル名
Molecular Biology of the Cell
巻号
Molecular Biology of the Cell Volume 31, Issue 19(2093-2155)
著者名(敬称略)
岡本 小百合, 内藤 朋樹, 申 惠媛他
所属
京都大学大学院 薬学研究科 生体情報制御学分野

抄訳

 生体膜は脂質二重層からなり、その内葉と外葉の間で脂質組成は非対称に保たれている。P4-ATPaseは、膜脂質を外葉から内葉へと転移(フリップ)することで脂質非対称性を調整するフリッパーゼである。これまでに私たちは、ほとんどのP4-ATPaseが小胞体で生合成された後、CDC50と相互作用することで小胞体から輸送されることを示した。そのうち、ATP10A、ATP10D、ATP11A、ATP11Cは細胞膜に、ATP10BとATP11Bは特定のエンドソームに局在することを報告した。しかしながら、これらの細胞内局在がどのようにして決定されるかは不明であった。膜10回貫通型タンパク質であるP4-ATPaseのN末端とC末端はサイトゾル側に存在する。本研究では、ATP10ファミリーではN末領域が、ATP11ファミリーではC末領域が細胞膜や特定のエンドソームへの局在に必須であり、これらの領域に局在化シグナルが存在することを示唆した。特に、ATP10BのN末領域に存在するジロイシン配列が、後期エンドソームへの輸送のシグナルになることを示した。このような局在化シグナルを介したP4-ATPaseの細胞内局在における分子メカニズムの解明が今後の課題である。

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