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国内研究者論文詳細

日本人論文紹介:詳細

2022/03/01

卵白タンパク質はロイシン含有量非依存的にラットの骨格筋成長を促進する

論文タイトル
Egg White Protein Promotes Developmental Growth in Rodent Muscle Independently of Leucine Content
論文タイトル(訳)
卵白タンパク質はロイシン含有量非依存的にラットの骨格筋成長を促進する
DOI
10.1093/jn/nxab353
ジャーナル名
The Journal of Nutrition
巻号
The Journal of Nutrition Vol. 152 Issue 1 (117–129)
著者名(敬称略)
木戸 康平, 川中 健太郎 他
所属
福岡大学スポーツ科学部

抄訳

ロイシン摂取が筋タンパク質合成の促進に寄与することを踏まえると、ロイシンを多く含むタンパク質の摂取が筋量の維持・増進に重要であると推測できる。しかしながら、ロイシン含有率がタンパク質の質を規定する唯一の因子であるかは不明である。そこで本研究では、それぞれ8.3%、7.7%、6.7%でロイシンを含有するカゼイン、卵白タンパク質、アルブミンを成長期の雄性ラットに14日間与え、骨格筋の成長に及ぼす影響を確認した。その結果、予想に反し、卵白タンパク質食を与えられたラットの長趾伸筋重量が最大となった。そこで次に、卵白タンパク質による筋成長促進作用の原因因子を同定するため、成長期の雄性ラットに対してカゼイン・卵白タンパク質・アルブミンを単回投与(0.3g/ 100g体重)し、投与1・3時間後の長趾伸筋に含まれる代謝物をメタボロミクスにて網羅的に解析した。その結果、タンパク質摂取による筋内アルギニン濃度の上昇が、カゼイン群と比較して卵白タンパク質群で有意に高いことが明らかになった。さらに、カゼインにアルギニンを添加し、卵白タンパク質とカゼインのアルギニン含有率を統一した飼料をラットに与えたところ、アルギニン無添加のカゼイン食より、アルギニンを添加したカゼイン食の方が長趾伸筋の成長を促進することが明らかになった。これらの結果から、卵白タンパク質は、カゼインよりラット骨格筋の成長を促進し、この成長促進効果がアルギニンによって一部説明できることが明らかになった。

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2022/02/25

ナトリウム・グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害薬カナグリフロジンは非糖尿病マウスの遅筋および速筋に異なる影響を及ぼす

論文タイトル
Differential effect of canagliflozin, a sodium–glucose cotransporter 2 (SGLT2) inhibitor, on slow and fast skeletal muscles from nondiabetic mice
論文タイトル(訳)
ナトリウム・グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害薬カナグリフロジンは非糖尿病マウスの遅筋および速筋に異なる影響を及ぼす
DOI
10.1042/BCJ20210700
ジャーナル名
Biochemical Journal
巻号
Biochemical Journal Vol.479, No.3 (332–342)
著者名(敬称略)
大塚 裕子 横溝 久 小川 佳宏 他
所属
九州大学大学院医学研究院病態制御内科学(第3内科)
九州大学病院 内分泌代謝・糖尿病内科

抄訳

骨格筋はグルコースのホメオスタシスを制御する主要な代謝器官であり、収縮特性に基づいて遅筋線維と速筋線維で構成される。遅筋線維は速筋線維に対して2~3倍のミトコンドリアを有してミオグロビンや酸化酵素が豊富で脂肪酸酸化によるエネルギー産生が効率的であり、持続的な活動に適する一方で、速筋線維は解糖系代謝が特徴で瞬発的な活動に適する。肥満、糖尿病では遅筋線維の減少が報告される一方で、加齢やサルコペニアでは速筋線維の減少が知られているが、遅筋と速筋を制御する機序は十分に解明されていない。SGLT2阻害薬は腎近位尿細管でのグルコースの尿中排泄を促進する経口血糖降下剤である。SGLT2阻害時の負のエネルギーバランスは、体重および脂肪量の減少に繋がる一方で、骨格筋においては筋萎縮やサルコペニアの誘発が懸念される。本研究では、非糖尿病C57BL/6JマウスにVehicleまたはSGLT2阻害薬カナグリフロジン(CANA)を自由摂餌下で投与して遅筋と速筋に及ぼす影響を検討した。SGLT2阻害時には、摂餌量増加に伴って速筋機能が亢進したが、遅筋機能は影響を受けず、遅筋・速筋の重量は維持された。CANA投与群の摂餌量をVehicle投与群の摂餌量に制限すると、CANA投与群の速筋の重量と機能が低下したが、遅筋への影響はみられなかった。メタボローム解析において自由摂餌下でSGLT2阻害時に速筋では解糖系代謝産物およびATPが増加し、遅筋では解糖系代謝産物が減少したがATPは維持された。アミノ酸と遊離脂肪酸はSGLT2阻害時に遅筋で増加したが、速筋では変化しなかった。更に遅筋と速筋の代謝物への影響は摂餌量制限で顕著となった。本研究はSGLT2阻害薬が糖代謝障害とは独立して遅筋と速筋に及ぼす影響の違いを明らかにすることで、サルコペニアのリスクが高い糖尿病患者におけるSGLT2阻害薬の使用について新しい知見を提供することが示唆される。

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2022/02/21

p53の標的因子であるビタミンB2輸送体SLC52A1はミトコンドリア呼吸鎖複合体IIを活性化することで細胞老化を抑制する

論文タイトル
Riboflavin transporter SLC52A1, a target of p53, suppresses cellular senescence by activating mitochondrial complex II
論文タイトル(訳)
p53の標的因子であるビタミンB2輸送体SLC52A1はミトコンドリア呼吸鎖複合体IIを活性化することで細胞老化を抑制する
DOI
10.1091/mbc.E21-05-0262
ジャーナル名
Molecular Biology of the Cell
巻号
Molecular Biology of the Cell Volume 32, Issue 21
著者名(敬称略)
長野 太輝, 鎌田 真司 他
所属
神戸大学バイオシグナル総合研究センター

抄訳

 細胞老化はDNA損傷などのストレスにより誘導される永続的な分裂停止状態である。細胞老化の誘導には転写因子であるp53が重要な役割を担っているが、p53の標的遺伝子の中に細胞老化の抑制に働くものがあるかどうかは不明である。私たちはビタミンB2(リボフラビンとも呼ばれる)の輸送体であるSLC52A1(GPR172B/RFVT1)が細胞老化誘導ストレスに応答してp53依存的に発現誘導されることを以前報告したが、SLC52A1と細胞老化との関連は未解明であった。今回、私たちはSLC52A1がビタミンB2を細胞内に取り込むことで細胞老化を抑制することを見出した。取り込まれたビタミンB2はミトコンドリア呼吸鎖複合体IIを活性化させることにより、ミトコンドリア機能低下時に細胞老化を誘導するAMPK-p53経路を抑制することがわかった。本研究により、SLC52A1はp53の負のフィードバック制御により過剰な細胞老化を抑制することが示された。

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2022/02/16

細胞外ATPによるT細胞の細胞死にXk-Vps13a リン脂質スクランブラーゼが関与

論文タイトル
Requirement of Xk and Vps13a for the P2X7-mediated phospholipid scrambling and cell lysis in mouse T cells
論文タイトル(訳)
細胞外ATPによるT細胞の細胞死にXk-Vps13a リン脂質スクランブラーゼが関与
DOI
10.1073/pnas.2119286119
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
PNAS February 15, 2022 119 (7) e2119286119
著者名(敬称略)
領田 優太 長田 重一 他
所属
大阪大学 免疫学フロンティア研究センター 免疫・生化学

抄訳

本来細胞外には存在しないATP は炎症部位やがん組織で上昇し、ATP 受容体P2X7 を介して免疫応答を活性化する。この際、細胞膜の内層・外層間で⾮対称的に分布していたリン脂質はスクランブラーゼの作⽤によりその分布が変化し、細胞は速やかに死滅する。この過程でのリン脂質スクランブリングの責任分⼦を同定するため、CRISPR sgRNA ライブラリーによる遺伝⼦スクリーニングを⾏った。その結果、神経有棘⾚⾎球症の原因遺伝⼦であるXk 及びVps13a が同定された。そしてXk とVps13a は細胞膜上で複合体を形成していること、どちらを⽋損させてもP2X7 活性化に伴う細胞膜でのリン脂質スクランブリングが抑制され、細胞が死滅しないことを⾒出した。Xk はスクランブラーゼXkr8 のホモログであり、Vps13aはオルガネラ間のリン脂質輸送を担うタンパク質として報告されている。以上より、Xk-Vps13a 複合体がP2X7より何らかのシグナルを受けて活性化され 細胞膜上でリン脂質のスクランブリングを起こすと結論した。

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2022/02/16

無痛性の孤立性上腸間膜動脈自然解離

論文タイトル
Painless isolated spontaneous dissection of the superior mesenteric artery
論文タイトル(訳)
無痛性の孤立性上腸間膜動脈自然解離
DOI
10.1136/bcr-2021-248122
ジャーナル名
BMJ Case Reports
巻号
BMJ Case Reports Vol.14 No.12 (2021)
著者名(敬称略)
大高 行博 小和瀬 桂子
所属
群馬大学大学院医学系研究科 総合医療学

抄訳

上腸間膜動脈(SMA)の孤立性自然解離は稀であるが、主な初発症状が腹痛であることから急性腹症の鑑別疾患の一つとなる。加えて、文献上は無症候性(6.7〜35.7%)または無痛性(19.7%)の孤立性SMA自然解離の症例報告も散見され、腹痛を伴わずに受診する場合もあることには注意が必要である。自験例は60代前半の男性で、高血圧症と10年来の2型糖尿病治療歴があり、突然の嘔気と嘔吐により緊急受診となった。腹部造影CTにて偽腔開存型の孤立性SMA解離を同定した(Sakamoto分類II型)。さらにカラー・ドプラー超音波検査では、偽腔の陰陽徴候を伴う渦巻き状エコーを認め、偽腔内血流の前後運動が示唆された。絶食および降圧療法のみで保存的に治療し、腹部症状は軽快し解離の進行もなかった。本症例では長期の糖尿病罹患に伴う痛覚鈍麻により、消化器症状のみを伴う無痛性SMA解離を生じたと考えられた。無痛性の孤立性SMA自然解離は稀ではあるものの、代謝疾患や神経障害による感覚鈍麻を有する場合には見落とす可能性があるので留意したい。

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2022/02/16

ヒトiPS細胞から分化させた下垂体前葉におけるプロラクチン(PRL)産生細胞の機能評価

論文タイトル
Functional Lactotrophs in Induced Adenohypophysis Differentiated From Human iPS Cells
論文タイトル(訳)
ヒトiPS細胞から分化させた下垂体前葉におけるプロラクチン(PRL)産生細胞の機能評価
DOI
10.1210/endocr/bqac004
ジャーナル名
Endocrinology
巻号
Endocrinology Vol. 163 Issue 3 (bqac004)
著者名(敬称略)
三宅 菜月, 永井 孝,須賀 英隆 他
所属
須賀 英隆:名古屋大学大学院医学系研究科 糖尿病・内分泌内科学
三宅 菜月, 永井 孝:名古屋大学大学院医学系研究科 産婦人科学

抄訳

 これまでヒトiPS細胞から下垂体前葉を分化誘導し、機能的な副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)産生細胞を作成する方法を報告してきたが、PRL産生細胞については検討していなかった。PRLは乳汁分泌に関与するホルモンで、主に下垂体前葉で産生、分泌される。また、高PRL血症は月経異常や不妊の主な原因の一つである。今回、ヒトiPS細胞から分化誘導した下垂体前葉オルガノイドにおけるPRL産生細胞の機能を評価した。
 下垂体前葉に分化誘導した凝集体からPRLの分泌が確認され、経時的に分泌能力が増加した。蛍光免疫染色および免疫電子顕微鏡法でPRL産生細胞の存在を確認した。PRL分泌は、種々のPRL分泌促進薬によって亢進し、ブロモクリプチンによって抑制された。また細胞塊中心部の視床下部組織にはドパミン作動性神経が存在し、PRL産生細胞への接続が示唆されたことから、ドパミンによる調節機構も再現できている可能性が示された。
 ヒトiPS細胞からヒト生体内と同様の分泌反応性を示す下垂体PRL産生細胞を作成した。今後、創薬研究や腫瘍化のメカニズムの研究などに活用できるとともに、下垂体の再生医療へとつながることが期待される。

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2022/02/15

マウス気管の運動性繊毛における中心微小管形成と同調的波打ち運動のためにはCAMSAP3が必要

論文タイトル
Tracheal motile cilia in mice require CAMSAP3 for the formation of central microtubule pair and coordinated beating
論文タイトル(訳)
マウス気管の運動性繊毛における中心微小管形成と同調的波打ち運動のためにはCAMSAP3が必要
DOI
10.1091/mbc.E21-06-0303
ジャーナル名
Molecular Biology of the Cell
巻号
Molecular Biology of the Cell Volume 32, Issue 20
著者名(敬称略)
斉藤 弘子, 竹市 雅俊 他
所属
理化学研究所 生命機能科学研究センター

抄訳

 気管は、口と肺をつなぐ空気の通り道で、その内部を常にきれいに保つ必要がある。そのため内腔を被う上皮細胞の表面には繊毛がびっしり生えており、これが同調して波打つことにより粘液流を生み出して異物などを排除する。繊毛が波打ち運動するためには、その構成要素たる9組の周辺微小管と一対の「中心微小管」(9+2構造)の働きが必要だが、中心微小管の形成のしくみは謎に包まれている。本研究は、微小管のマイナス端に結合しそのプラス端側の伸長を支えるタンパク質CAMSAP3のノックアウトマウスを解析し、これが失われると気管繊毛の同調運動が乱れ、また、中心微小管が消滅することを発見。さらに、正常マウスの繊毛では、CAMSAP3の一部が中心微小管のマイナス端辺りに濃縮していた。以上の観察から、CAMSAP3は中心微小管の形成に関わり、繊毛の同調運動のために必要であると結論している。ヒトの呼吸器疾患と関係するかどうかについては今後の研究課題だ。

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2022/02/15

p52SHCはRAF非依存的にERKの持続的な活性化を調節する

論文タイトル
p52Shc regulates the sustainability of ERK activation in a RAF-independent manner
論文タイトル(訳)
p52SHCはRAF非依存的にERKの持続的な活性化を調節する
DOI
10.1091/mbc.E21-01-0007
ジャーナル名
Molecular Biology of the Cell
巻号
Molecular Biology of the Cell Volume 32, Issue 19
著者名(敬称略)
吉澤 亮, 佐甲 靖志 他
所属
国立研究開発法人理化学研究所 佐甲細胞情報研究室

抄訳

 アダプタータンパク質のp52SHC(SHC)およびGRB2はどちらも、細胞表面受容体からERK経路へのシグナル伝達を仲介する。私たちはSHCおよびGRB2の役割を調べるために、これらのタンパク質をMCF7細胞内に発現させ、分化誘導因子により刺激した際の、細胞膜への移行ダイナミクスを計測した。その結果、SHCは持続的に膜局在するのに対してGRB2は一過的に膜局在することがわかった。ERKの核局在化はSHCと同様に持続的であったが、SHCをノックダウンすると応答量が減少し、さらに一過的になったことから、SHCはERKの初期応答と持続的な核局在化の両方に寄与していることがわかった。さらに阻害剤等を用いた解析から、ERKの初期応答はSHC-GRB2-RAF経路に依存していたのに対して、ERKの持続的な応答はRAF非依存的にMEKを活性化するSHC-PI3K経路に依存していることがわかった。またERBB-1受容体の過剰発現によってもSHCとERKのダイナミクスは共に一過的となり、その様な細胞では、細胞運命決定のバイアスも分化から増殖へとシフトした。このようにSHCはERKシグナルにおいてGRB2とは異なる機能を有している事が示唆された。

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2022/02/15

傍腫瘍性舞踏病を呈した胆嚢癌の1例

論文タイトル
Paraneoplastic chorea associated with gallbladder cancer
論文タイトル(訳)
傍腫瘍性舞踏病を呈した胆嚢癌の1例
DOI
10.1136/bcr-2021-247080
ジャーナル名
BMJ Case Reports
巻号
BMJ Case Reports Vol.14 No.12 (2021)
著者名(敬称略)
柳 昌宏 須田 烈史
所属
金沢市立病院 消化器内科

抄訳

症例は81歳女性.1週間前からの左上下肢の投げ出すような不随意運動を主訴に受診した.頭部MRIでは,明らかな異常はなかった.血液検査でも,明らかな異常はなく,各種自己抗体も陰性であったが,腫瘍マーカーのCA19-9が著明に上昇していた.造影CTを撮影したところ,胆嚢腫瘍および肝内にリング状に濃染する多発腫瘤を認めた.多発肝転移を伴う切除不能胆嚢癌と診断し,組織診断のため胆嚢腫瘍に対して超音波内視鏡下穿刺吸引生検を行ったところ,肝様腺癌が検出された.左上下肢の不随意運動については,胆嚢癌の傍腫瘍性神経症候群としての傍腫瘍性舞踏病と診断した.ジェムザール+シスプラチンによる化学療法を開始したところ,腫瘍は縮小し,不随意運動も完全に消失した.傍腫瘍性舞踏病は非常に稀であり,急速に進行し,薬剤に抵抗性であることが多く,症状はしばしば非対称性,片側性である.ステロイドやハロペリドールの有効性も報告されているが,根本治療は背景腫瘍に対する治療(手術や化学療法など)である.成人発症の舞踏運動,特に高齢者や体重減少を伴う症例,片側性の症状を呈する症例では,悪性腫瘍の存在も疑うべきである.

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2022/02/15

妊娠中期総コレステロール値と在胎不当過小(SGA)・過大児(LGA)の関連:子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)

論文タイトル
Association of Maternal Total Cholesterol With SGA or LGA Birth at Term: the Japan Environment and Children’s Study
論文タイトル(訳)
妊娠中期総コレステロール値と在胎不当過小(SGA)・過大児(LGA)の関連:子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)
DOI
10.1210/clinem/dgab618
ジャーナル名
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism
巻号
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism Vol.107 Issue1 (ee118–e129)
著者名(敬称略)
金子 佳世, 伊藤 由起 他
所属
名古屋市立大学 大学院医学研究科 環境労働衛生学分野

抄訳

 母体の血中コレステロールは、胎生期発育において重要な役割を果たす。本研究は、妊娠中期の総コレステロール値(TC)と在胎不当過小・過大児(SGA/LGA)は関連するか、明らかにすることを目的とした。エコチル調査参加の、各種疾患の既往や妊娠中貧血のない単胎正期産の母親と、新生児先天性異常、遺伝子異常の無い子どもで、解析に必要な変数の揃った母子37449組を対象とした。妊娠中期TC値の1標準偏差(35.33mg/dL)減少毎のSGAのオッズ比は1.20(95%信頼区間1.15-1.25)、1標準偏差増加毎のLGAのオッズ比は1.13(95%信頼区間1.09-1.16)だった。また、妊娠前のBMIや妊娠中体重増加量が正常な者に限定しても、同様の結果が得られた。今回HDLコレステロール値や中性脂肪の影響は検討しておらず、今後、妊娠期における適正な脂質プロファイルの検討が必要である。

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2022/02/14

細胞種により異なるRNAポリメラーゼ転写産物が相分離を介したDBC1核内構造体の形成に関与する

論文タイトル
Distinct RNA polymerase transcripts direct the assembly of phase-separated DBC1 nuclear bodies in different cell lines
論文タイトル(訳)
細胞種により異なるRNAポリメラーゼ転写産物が相分離を介したDBC1核内構造体の形成に関与する
DOI
10.1091/mbc.E21-02-0081
ジャーナル名
Molecular Biology of the Cell
巻号
Molecular Biology of the Cell Volume 32, Issue 21
著者名(敬称略)
萬年 太郎, 廣瀬 哲郎 他
所属
萬年 太郎:立命館大学 生命科学部生命医科学科 プロテオミクス研究室
廣瀬 哲郎:大阪大学大学院 生命機能研究科 RNA生体機能研究室

抄訳

 哺乳類細胞核に存在する様々な核内構造体は、RNA合成やプロセシング、RNP分子装置の生合成の場として知られている。これまでに、特異的なRNAが骨格としていくつかの核内構造体の形成に働いていることが明らかなってきた。今回我々は、RNase感受性を示す2つの核内構造体(大腸がん由来HCT116細胞のDBC1核内構造体[DNB]と子宮頸がん由来HeLa細胞のSam68核内構造体[SNB])が、異なるRNAポリメラーゼ転写産物を骨格として形成されること、さらにDNBとSNBが相分離様の相互作用を介して形成されていることを明らかにした。このことから、これらの核内構造体は相分離を介して相互作用するRNAやタンパク質を変化させることで異なる機能を担っている可能性が示唆された。次にDNBの新規構成因子の探索のため免疫沈降-MS解析をおこない、HNRNPLとHNRNPKを同定した。また、DNB構成因子のsiRNAにより、DBC1とHNRNPLがDNBの形成に必須であることを明らかにした。さらにHNRNPLがDNBの形成にどのように関与しているのか解析した結果、HNRNPLのRNA結合ドメインと天然変性領域が細胞内でのDNB形成とin vitroでの液滴形成に関与していることが明らかになった。このことから、DNB形成にはHNRNPLとRNAやタンパク質との多価相互作用による相分離の誘導が必要であることが示唆された。

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2022/02/09

沖縄トラフ伊平屋北海丘熱水域のMethyloprofundus属メタン酸化細菌群集とその推定優占種の培養

論文タイトル
Multispecies Populations of Methanotrophic Methyloprofundus and Cultivation of a Likely Dominant Species from the Iheya North Deep-Sea Hydrothermal Field
論文タイトル(訳)
沖縄トラフ伊平屋北海丘熱水域のMethyloprofundus属メタン酸化細菌群集とその推定優占種の培養
DOI
10.1128/AEM.00758-21
ジャーナル名
Applied and Environmental Microbiology
巻号
Applied and Environmental Microbiology Volume 88 • Number 2 • January 2022
著者名(敬称略)
平山 仙子 他
所属
国立研究開発法人海洋研究開発機構 超先鋭研究開発部門 超先鋭研究プログラム

抄訳

Methyloprofundus属細菌は海洋性の好気的メタン酸化(資化)細菌である。本属を代表するイガイ科二枚貝の共生細菌が精力的に研究される一方、自由生活型の種を対象とした研究は数える程しかない。沖縄トラフ伊平屋北海丘(沖縄本島北西160 km)の深海熱水活動域では、本属共生細菌をもつ二枚貝が大規模なコロニーを形成している。我々はここに自由生活種も生息している可能性が高いと考え、熱水の影響の異なる4地点(水深約1,000 m)でMethyloprofundus属細菌群集をターゲットに遺伝子解析を行った。その結果、自由生活型と推定される161もの種相当グループを検出し、群集構造の違いと熱水の影響の強さが関係している可能性を見出した。並行して行った培養実験では、群集の優占種且つ新種と推定されるメタン酸化細菌の集積培養に成功し、ゲノム解析により厳しい環境での生存競争に有利と考えられる機能遺伝子を複数見つけた。過去の知見と合わせると、Methyloprofundus属細菌は低酸素環境も含め世界の様々な海洋環境に遍在している可能性がある。

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2022/02/09

リン脂質フリッパーゼとSfk1はエルゴステロールの細胞膜への保持に必須である

論文タイトル
Phospholipid flippases and Sfk1 are essential for the retention of ergosterol in the plasma membrane
論文タイトル(訳)
リン脂質フリッパーゼとSfk1はエルゴステロールの細胞膜への保持に必須である
DOI
10.1091/mbc.E20-11-0699
ジャーナル名
Molecular Biology of the Cell
巻号
Molecular Biology of the Cell Volume 32, Issue 15
著者名(敬称略)
岸本 拓磨, 田中 一馬 他
所属
北海道大学 遺伝子病制御研究所 分子間情報分野

抄訳

 ホスファチジルセリン(PS)などのリン脂質は細胞膜内層で非対称な分布を示すが、その生理的意義は完全に解明されていない。この非対称性は、PSなどを細胞膜内層に輸送するフリッパーゼや著者らが見出した出芽酵母細胞膜タンパク質Sfk1により維持される。本論文では、フリッパーゼおよびSfk1が制御する細胞膜リン脂質非対称性は、細胞に必須な機能を有することを明らかにした。これらの因子の機能が同時に喪失した場合、リン脂質非対称性が崩壊し、それに伴い生育阻害と多岐にわたる細胞膜の異常を引き起こした。この原因究明を進めた結果、リン脂質非対称性の崩壊が、細胞膜の酵母ステロール保持機能を低下させ、それが原因で生育阻害や細胞膜異常を引き起こすことを見出した。また、新たに開発したステロールプローブによる解析から、Sfk1がステロールの物理状態を調整することで細胞膜ステロールの維持に貢献する可能性も示唆された。このような結果から本論文では、リン脂質非対称性を介した細胞膜ステロール維持という新たな生理学的機序を解明した。

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2022/02/08

高血圧患者における血管周囲腔に沿った水拡散係数の変化

論文タイトル

An Investigation of Water Diffusivity Changes along the Perivascular Space in Elderly Subjects
with Hypertension

論文タイトル(訳)
高血圧患者における血管周囲腔に沿った水拡散係数の変化
DOI
10.3174/ajnr.A7334
ジャーナル名
American Journal of Neuroradiology
巻号
American Journal of Neuroradiology Vol. 43 No.1
著者名(敬称略)
菊田 潤子 他
所属
順天堂大学医学部附属順天堂医院

抄訳

近年、脳内の老廃物排泄機構としてのGlymphatic system仮説が注目されている。Glymphatic systemは、脳脊髄液が動脈の血管周囲腔から脳実質内に流入し、間質液との交換とともに脳実質内の老廃物を洗い流し、静脈血管周囲腔から排泄するという仮説である。本研究は高血圧患者の血管周囲腔に沿った水拡散係数(The analysis along the perivascular space index:ALPS index)の変化を調査した。まず、高血圧患者群63例、対照群63例の頭部MRIの拡散強調画像を用いて、左右大脳半球とその平均値のALPS indexを算出した。次に、高血圧患者群と対照群のALPS indexの群間比較を行った。さらに、すべての被験者の左右大脳半球、およびその平均値のALPS indexと最高血圧値、最低血圧値、平均血圧値、脈圧値の相関関係を調査した。その結果、高血圧患者群は対照群と比較して左大脳半球と平均ALPS indexが有意に低く(P <0.05)、左右大脳半球とその平均のALPS indexと最高血圧値、最低血圧値、平均血圧値、および脈圧値に有意な負の相関がみられた。本研究は、高血圧患者における血管周囲腔に沿った水拡散係数の変化を認め、高血圧症がGlymphatic systemの障害を引き起こす可能性が示唆された。

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2022/02/07

酸性で発現誘導する大腸菌遺伝子hdeDのよるLrhAを介したべん毛合成抑制

論文タイトル
The hdeD Gene Represses the Expression of Flagellum Biosynthesis via LrhA in Escherichia coli K-12
論文タイトル(訳)
酸性で発現誘導する大腸菌遺伝子hdeDのよるLrhAを介したべん毛合成抑制
DOI
10.1128/JB.00420-21
ジャーナル名
Journal of Bacteriology
巻号
Journal of Bacteriology Volume 204 • Number 1 • January 2022
著者名(敬称略)
山中 幸 山本 兼由 他
所属
法政大学 生命科学部 生命機能学科

抄訳

強酸性環境下に晒された大腸菌は、細胞内プロトンを酵素反応で消費し生存する。このグルタミン酸依存的酸耐性(GAD)機構に関する遺伝子群GADクラスターは強酸性で発現誘導される。本論文では、GADクラスターにある唯一機能が不明だった小さな膜タンパク質コード遺伝子hdeDの機能を明らかとした。
hdeDプロモーターは、グリセロールを炭素源とする最小培地で誘導された。hdeD欠失株では、べん毛合成および運動性に関連する全ての遺伝子発現が増加させ、それはべん毛合成の転写活性化因子FlhDCのリプレッサーLrhAの遺伝子プロモーター活性の抑制に起因していた。実際、hdeD, gadE, lrhA欠失株は菌体あたりのべん毛数が増加し運動性が向上した。
推定したHdeD構造分析から、HdeDは中性付近の微細なpH変化を感知する新しい膜センサーであることが示唆された。したがって、強酸性環境下に晒された大腸菌はHdeD合成を誘導し、その後増殖可能な中性域環境に移った時、HdeD依存的にべん毛合成を停止させ、細胞エネルギーを細胞分裂に集約するはたらきを推定した。このシステムは、大腸菌などヒト消化器で下痢などを引き起こす病原性細菌にとって、経口侵入から胃を経て腸管上で集団形成するため、重要であると考えられる。

 

 

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2022/02/07

腸管出血性大腸菌が産生する志賀毒素1の酸素による産生増強

論文タイトル
Enhanced production of Shiga toxin 1 in enterohaemorrhagic Escherichia coli by oxygen
論文タイトル(訳)
腸管出血性大腸菌が産生する志賀毒素1の酸素による産生増強
DOI
10.1099/mic.0.001122
ジャーナル名
Microbiology
巻号
Microbiology Volume 167, Issue 12, 2021
著者名(敬称略)
清水 健 他
所属
千葉大学大学院医学研究院 病原細菌制御学

抄訳

腸管出血性大腸菌(EHEC)は主要な病原因子として志賀毒素1(Stx1)と志賀毒素2(Stx2)を産生する。EHECの感染部位は腸管なので、感染時にはEHEC近傍の酸素濃度は変化する。そこで感染時における病原因子の発現調節を明らかにするために、酸素によるStx1産生への影響を解析した。EHEC標準株であるEDL933株を培養してStx1産生を測定したところ、酸素濃度が上昇するとStx1産生は増強することが明らかになった。酸素によるStx1産生の増強のEHECに対する一般性を確認するために、さらに40株のEHECを用いて解析を行ったが、全てのEHEC株において酸素濃度の上昇でStx1産生は増強した。この酸素濃度の上昇によるStx1産生の増強はEHECの増殖が呼吸条件であっても、発酵条件であっても同様に確認された。Stx1の産生はFe2+濃度によって活性が制御されている転写因子Furによって調節されている。FurはFe2+が結合している時にはstx1プロモーターに結合して、転写を抑制している。しかし、酸素濃度が上昇するとFe2+は水に不溶性なFe3+に酸化され、そのためにFe2+の量が減少することが明らかになった。Fe2+の減少はFe2+が結合している活性型Furを不活性型Furにし、それによってFurがstx1プロモーターから乖離することによって、Stx1産生が増強することが考えられた。このような酸素濃度の上昇は感染時、EHECが嫌気的な腸管内から微好気環境である腸管上皮細胞に接着する過程で起こっていると考えられる。

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2022/02/03

化学固定耐性を備えた緑色の可逆的スイッチング能を持つEos蛍光タンパク質派生型の開発

論文タイトル
Development of a green reversibly photoswitchable variant of Eos fluorescent
protein with fixation resistance
論文タイトル(訳)
化学固定耐性を備えた緑色の可逆的スイッチング能を持つEos蛍光タンパク質派生型の開発
DOI
10.1091/mbc.E21-01-0044
ジャーナル名
Molecular Biology of the Cell
巻号
Molecular Biology of the Cell Volume 32, Issue 21
著者名(敬称略)
大菅 光雄, 末次 志郎 他
所属
奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域 分子医学細胞生物学

抄訳

 超解像顕微鏡は、光の回折限界を超えて、高精度で蛍光タンパク質の局在を決定します。超解像顕微鏡技術には、蛍光の確率的活性化によって1分子の蛍光タンパク質の局在座標を同定し、座標を積算することでタンパク質局在を示す画像を再構築する光活性化局在顕微鏡(PALM)が含まれます。PALMによる単一分子局在化の決定では、1分子が画像上で分離できる必要があることから、画像ごとに分析できる分子の数は、限られています。したがって、細胞内の多数の分子の局在座標を得るには、多くの画像の取得が必要で、時間を要するために、観察対象の細胞の化学固定がよく用いられています。しかし、ほとんどの蛍光タンパク質は化学固定時に蛍光を減弱します。緑色の可逆的にフォトスイッチ可能であるが、化学固定耐性のない蛍光タンパク質Skylan-S、および、固定耐性を持つ緑から赤の光変換蛍光タンパク質mEos4bは、ともにEosタンパク質の派生型(変異体)です。本研究では、Skylan-SとmEOS4bのアミノ酸置換を組み合わせ、緑色の可逆的にフォトスイッチ可能かつ固定耐性のあるEOS派生型を開発し、fixiation-resisitant (fr) Skylan-S (frSkylan-S)としました。frSkylan-Sタンパク質は、Skylan-Sと同様に励起光によって蛍光を発すると同時に不活性化されますが、紫外光による照射によって再活性化され、さらに、Skylan-Sよりもアルデヒド化学固定後に蛍光を保持します。frSkylan-S融合タンパク質のα-チューブリンとクラスリン軽鎖は、化学固定を用いたPALM観察において十分な質の再構成画像をもたらしました。さらに、frSkylan-Sは、抗体染色と組み合わせることができました。したがって、frSkylan-Sは、アルデヒド化学固定条件下でのPALMイメージングに適した緑色蛍光タンパク質と考えられます。

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2022/01/28

同じ身体部位における身体図式の多重表現

論文タイトル
Multiple representations of the body schema for the same body part
論文タイトル(訳)
同じ身体部位における身体図式の多重表現
DOI
10.1073/pnas.2112318119
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
PNAS January 25, 2022 119 (4) e2112318119
著者名(敬称略)
松宮 一道
所属
東北大学大学院情報科学研究科 応用情報科学専攻 認知情報学分野

抄訳

意図的な運動は、脳内の身体表現(身体図式と呼ばれる)に依存し、身体図式の異常が運動障害を引き起こす。身体図式は、約1世紀もの間、脳内に一つだけ存在し、すべての運動に対して共通に用いられると考えられてきた。しかし、私たちはしばしば複数の運動を同時に実行しているが、複数の運動時に身体図式がどのように働いているのかは不明だった。本研究では、複数の運動時の身体図式を計測するために、被験者に、自分の目と左手の人差し指で同時に、自分の右手の様々な部位(指先や関節)を指すように教示した。その結果、目と左手が同時に同じ右手の部位を指しているにも関わらず、目で指した結果に比べると左手で指した結果から得られた右手形状(つまり、身体図式)は、より歪んでいた。さらに、この身体図式を形成するための感覚情報の利用も、目と左手で異なっていた。これらの結果は、身体図式が運動効果器ごとに脳内で別々に表現されていることを示している。本知見は、運動障害を有する患者の身体図式を理解するための新たな方法の開発につながることが期待される。

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2022/01/26

終神経に存在するニューロペプチドFF(NPFF)と生殖腺刺激ホルモン放出ホルモン3(GnRH3)が協調してオス性行動のモチベーションを昂進する

論文タイトル
Co-existing Neuropeptide FF and Gonadotropin-Releasing Hormone 3 Coordinately Modulate Male Sexual Behavior
論文タイトル(訳)
終神経に存在するニューロペプチドFF(NPFF)と生殖腺刺激ホルモン放出ホルモン3(GnRH3)が協調してオス性行動のモチベーションを昂進する
DOI
10.1210/endocr/bqab261
ジャーナル名
Endocrinology
巻号
Endocrinology Vol. 163 Issue 2 (bqab261)
著者名(敬称略)
馬谷 千恵, 岡 良隆 他
所属
東京大学 大学院 理学系研究科 生物科学専攻

抄訳

一般に動物は、雌雄が体の内外からの情報を用いて、互いを異性として認め、繁殖期に性行動を行うことで、生殖により子孫を残す。しかし、脳が情報を受けてから動物が性行動を示すまでの神経機構については、多くが不明であった。本研究では、様々な感覚入力を受けることが報告されている終神経GnRHニューロンに着目し、これらが作る2つの神経ペプチドGnRH3とNPFFの遺伝子をノックアウト(KO)したメダカを作出し、メダカの性行動を解析した。すると、一方のペプチドだけをKO(単独KO)したオスメダカでは、最終的には性行動ができるものの、性行動の多くのパートが、野生型と比べて遅れて生じるようになった。一方、両ペプチドKOオスメダカでは、単独KOメダカで観察されたような性行動の遅れがなくなった。これらの結果から、同じニューロンの作る複数の神経ペプチドがバランスよく脳内に作用することで、オス性行動のモチベーションを昂進することが考えられた。

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2022/01/25

非小細胞肺癌のリンパ節転移評価におけるdual-energy CTから算出された電子密度値の有用性 ―従来のCT画像およびFDG PET/CTとの対比―

論文タイトル
Dual-Energy CT–Derived Electron Density for Diagnosing Metastatic Mediastinal Lymph Nodes in Non–Small Cell Lung Cancer: Comparison With Conventional CT and FDG PET/CT Findings
論文タイトル(訳)
非小細胞肺癌のリンパ節転移評価におけるdual-energy CTから算出された電子密度値の有用性 ―従来のCT画像およびFDG PET/CTとの対比―
DOI
10.2214/AJR.21.26208
ジャーナル名
American Journal of Roentgenology
巻号
American Journal of Roentgenology Vol.218 No.1 (2022)
著者名(敬称略)
長野 広明 内匠 浩二 他
所属
鹿児島大学大学院医歯学総合研究科放射線診断治療学

抄訳

近年、新しいCTの撮像法であるdual-energy CTが臨床導入され、ヨード密度画像や電子密度画像など新たな解析画像を取得することが可能となった。電子密度画像は、軟部組織内構造を評価しうる新たな定量画像となる可能性を秘めている。本研究では、非小細胞肺癌のリンパ節転移診断におけるdual-energy CTの電子密度値の有用性を評価し、従来のCT評価項目やFDG PET/CTでの評価と比較を行った。電子密度値は、非転移リンパ節と比較して転移リンパ節において有意に低い値であった(P <0.005)。正常リンパ節構造と比較して一般的な結合組織はその内部の電子密度が低いと報告されている。非転移リンパ節と比較して、転移リンパ節内での癌細胞の存在による間質性組織の増加が今回の結果に影響したものと推測された。その他のCT画像所見やFDG PET/CT所見との組み合わせ診断では、リンパ節短径との組み合わせ(診断能82.9%、感度54.5%、特異度94.0%)およびFDG PET/CT陽性との組み合わせ(診断能82.1%、感度60.6%、特異度90.5%)で、短径とFDG PET/CT陽性それぞれ単独と比較して診断能を有意に向上させた(それぞれP <0.05)。

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