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国内研究者論文紹介

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ユサコでは日本人の論文が掲載された海外学術雑誌に注目して、随時ご紹介しております。

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2022/05/20

メゾスコピックスケールからミクロスコピックスケールの神経細胞イメージングに対応した組織透明化技術

論文タイトル
A Tissue Clearing Method for Neuronal Imaging from Mesoscopic to Microscopic Scales
論文タイトル(訳)
メゾスコピックスケールからミクロスコピックスケールの神経細胞イメージングに対応した組織透明化技術
DOI
10.3791/63941
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (183), e63941
著者名(敬称略)
山内 健太(筆頭著者)、日置 寛之(連絡著者)
所属
順天堂大学大学院 医学研究科 脳回路形態学講座 (山内 健太、日置 寛之)

抄訳

我々は、メゾスコピックスケールからミクロスコピックスケールの組織構造の可視化に強みを持つ組織透明化技術、ScaleSF法の開発に成功している(Furuta, Yamauchi et al., iScience; 25:103601)。ScaleS法の改変法であるScaleSF法は、組織透明化に必要不可欠な反応以外を削ぎ落とすことにより組織の透明化と組織構造の保持の両立を可能とした。ScaleSF法では、三つの水溶性溶液と反応させることにより、1 mm厚の脳組織を15時間以内に透明にすることができる。本論文では、ScaleSF法を用いたメゾスコピックからミクロスコピックのスケールの神経細胞のイメージングの詳細を動画付きで紹介する。本論文で示す一連の手法は、神経回路構造を解き明かし、神経系の情報処理基盤を明らかにする上で極めて有用である。

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2022/05/19

ポリエチレンイミンナノパーティクルによるmicroRNA-mimic/inhibitorの腎へのデリバリーおよび治療効果

論文タイトル
Delivery of Exogenous Artificially Synthesized miRNA Mimic to the Kidney using Polyethylenimine Nanoparticles in Several Kidney Disease Mouse Models
論文タイトル(訳)
ポリエチレンイミンナノパーティクルによるmicroRNA-mimic/inhibitorの腎へのデリバリーおよび治療効果
DOI
10.3791/63302
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (183), e63302
著者名(敬称略)
矢内克典、森下義幸
所属
自治医科大学附属さいたま医療センター 腎臓内科

抄訳

【背景】microRNA(miRNA)は腎障害進展に関与し、人工合成したmiRNA-mimic/ inhibitorは腎臓病の新規遺伝子治療になる可能性がある。本研究ではカチオン性ポリマーのポリエチレンイミンナノパーティクル[(PEI-NPs(non-viralキャリア)]を用いて、代表的な腎疾患モデルマウス(糖尿病性腎症、片側尿管狭窄誘導腎線維化、虚血再灌流AKI)においてPEI-NPsのmiRNAの腎へのデリバリー効果と、標的miRNAのoverexpression/knockdownおよび腎疾患治療効果について検討した。
【方法】PEI-NPsとCy3標識miRNA複合体を作成し、miRNAのデリバリー効果を蛍光顕微鏡で検討した。次にmicroarray、過去の報告、データベース(miRbase)から選出した、治療効果が期待できると予想したPEI-NPs-miRNA-mimic/inhibitor (N/P比=6)を各腎疾患モデルに尾静脈投与し、腎でのmiRNAのoverexpression/knockdown効果をqRT-PCRで検討し、治療効果を組織、qRT-PCR、免疫染色、microarray、Western blottingで検討した。
【結果】PEI-NPsは各腎疾患モデルマウスでmiRNAを腎にデリバリーし、overexpression/knockdown可能であり、PEI-NPs-miRNA-mimic/inhibitorにより腎障害抑制効果を認めた。
【結語】PEI-NPsはmiRNA-mimic/inhibitorのin vivoでの腎へのデリバリーに有効であり、PEI-NPs-miRNA-mimic/inhibitorは腎疾患の新規遺伝子治療法となる。

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2022/04/06

ゼブラフィッシュ仔魚の脊髄運動ニューロンにおける光遺伝学を用いたTDP-43の相転移誘導

論文タイトル
Optogenetic Phase Transition of TDP-43 in Spinal Motor Neurons of Zebrafish Larvae
論文タイトル(訳)
ゼブラフィッシュ仔魚の脊髄運動ニューロンにおける光遺伝学を用いたTDP-43の相転移誘導
DOI
10.3791/62932
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (180), e62932
著者名(敬称略)
浅川 和秀 他
所属
国立遺伝学研究所 遺伝形質研究系 発生遺伝学研究室

抄訳

神経変性疾患には、凝集したタンパク質が蓄積するという特徴と、ある特定の神経細胞のタイプが変性するという特徴がある。この二つの特徴の因果関係は、理論的には、疾患に対して脆弱な神経細胞において疾患に関連するタンパク質を相転移させることで検証可能であると考えられるが、実際にはそのような実験手法は限られている。この論文で我々は、小型熱帯魚ゼブラフィッシュの脊髄運動ニューロンにおいて、DNA/RNA結合タンパク質TDP-43の相転移を誘導することで、筋萎縮性側索硬化症(ALS)における運動ニューロンの変性をモデル化する手法を紹介する。ゼブラフィッシュ仔魚は身体組織の透明性が高いために、光を吸収すると相転移を起こす光遺伝学型TDP-43を脊髄運動ニューロンで発現させた仔魚に向かって青色のLED光を照射するだけで、TDP-43の相転移や凝集体の形成を誘導することができる。このプロトコルを用いれば、ALSに対して脆弱な細胞環境において進行するTDP-43の相転移の研究が可能になり、異常なTDP-43の相転移が、運動ニューロンや身体運動に与える影響をより詳しく解析できるようになると期待される。

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2021/12/06

キュベット型高速フラッシュ蛍光光度計(FRRf)を用いた着生期のColacium sp.の光生理測定

論文タイトル
Measuring Photophysiology of Attached Stage of Colacium sp. by a Cuvette-Type Fast Repetition Rate Fluorometer
論文タイトル(訳)
キュベット型高速フラッシュ蛍光光度計(FRRf)を用いた着生期のColacium sp.の光生理測定
DOI
10.3791/63108
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (177), e63108
著者名(敬称略)
風間 健宏 他
所属
神戸大学大学院 人間発達環境学研究科

抄訳

高速フラッシュ蛍光光度計(FRRf)は、様々な藻類における光化学系II(PSII)の光吸収断面積(σPSII)、最大量子収率(Fv/Fm)、実効量子収率 (Fq′/Fm′) 、非光化学消光 (NPQNSV) を測定できるが、その研究対象のほとんどが、浮遊性藻類に集中している。本論文は、キュベット型FRRfを用いた、着生期(動物プランクトンに付着した状態)の付着性藻類Colacium sp.のPSII光生理測定法について記述したものである。まず基質動物プランクトン(Scapholeberis mucronata、和名アオムキミジンコ)の個体密度が、ベースライン蛍光と、Colacium sp.のクロロフィル蛍光に与える影響について調べ、5個体/mL以下なら無視できることを示した。次に典型的な測定結果として、野外で得られた着生期Colacium sp.と、培養で得られた浮遊期Colacium sp.の測定例を示した。最後に、着生期と浮遊期それぞれの光生理に対するCaおよびMnの添加効果の例を示した。

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2021/10/07

成体マウス初代口蓋上皮細胞(ケラチノサイト)の単離と培養

論文タイトル
Isolation and Culture of Primary Oral Keratinocytes from the Adult Mouse Palate
論文タイトル(訳)
成体マウス初代口蓋上皮細胞(ケラチノサイト)の単離と培養
DOI
10.3791/62820
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (175), e62820
著者名(敬称略)
泉健次、佐田亜衣子
所属
新潟大学大学院医歯学総合研究科 生体組織再生工学分野
熊本大学国際先端医学研究機構 皮膚再生・老化学講座

抄訳

長年にわたり、上皮幹細胞に関する研究は、ヒトやマウスの皮膚を主な対象として行われてきた。口腔粘膜に位置する上皮幹細胞は、そのユニークな機能と特徴から近年注目されている。口腔粘膜上皮幹細胞は、バリア機能の維持に必須の役割を果たすとともに、再生治療への応用のための細胞ソースとしても有用である。しかし、成体マウスの口腔粘膜組織より、初代培養細胞(ケラチノサイト)を効率的に単離・培養するプロトコールがないためにin vitroでの解析が限られていた。我々は、マウス口蓋組織から口腔初代ケラチノサイトを単離するための方法を確立した。低カルシウム条件では、ケラチノサイトは増殖性あるいは幹細胞様の状態で維持され、継代数を増やしても分化は抑制された。マーカー発現解析の結果、培養した口腔ケラチノサイトは基底細胞マーカーのp63、K14、α6-integrinを発現し、分化マーカーのK13と線維芽細胞マーカーのPDGFRαは陰性であった。本培養法により、口腔粘膜上皮幹細胞の機能を研究するための下流のアプリケーションに適した、長期的に培養可能な細胞が得られた。

 

 

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2021/07/28

電子顕微鏡観察における生物試料のすぐれた微細構造保持のためのサンドイッチ凍結法

論文タイトル
Rapid Freezing using Sandwich Freezing Device for Good Ultrastructural Preservation of Biological Specimens in Electron Microscopy
論文タイトル(訳)
電子顕微鏡観察における生物試料のすぐれた微細構造保持のためのサンドイッチ凍結法
DOI
10.3791/62431
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (173), e62431
著者名(敬称略)
山口正視 他
所属
千葉大学・真菌医学研究センター

抄訳

生物試料の電子顕微鏡観察には、これまで、主に化学固定法による超薄切片法が用いられてきたが、この方法では、様々なアーティファクトが生じることが知られている。これを回避するために、近年、急速凍結・凍結置換固定法が用いられるようになった。サンドイッチ凍結法は、熱伝導のよい2枚の銅板に薄い試料をはさんで、液体プロパンに素早く投入することによって、氷晶のないガラス状凍結を得るすぐれた急速凍結法の一つである。この方法により、これまで、生きた酵母、真菌、細菌の高解像の自然な微細構造が観察されてきた。最近、サンドイッチ凍結法は、グルタルアルデヒド固定した培養細胞、動物細胞、ヒト組織でも、すぐれた微細構造の保持に有効であることがわかり、応用範囲が格段に広がった。
この論文は、最近、マリン・ワーク・ジャパン(株)が商品化した「サンドイッチ凍結装置」の使い方について、酵母や培養細胞などの細胞懸濁液、動物組織、およびウイルス試料のそれぞれの場合について、ビデオで手順を解説しものである。サンドイッチ凍結法は、30μmまでの生きた細胞懸濁液、0.2 mm までのグルタルアルデヒド固定した動物組織を無氷晶で凍結でき、高圧凍結法にかわるすぐれた方法となりうる。この論文では、凍結後の凍結置換、樹脂包埋、超薄切、切片染色の方法についても解説を行っている。

 

 

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2021/06/29

患者由来がんオルガノイドを用いたin vitroハイスールプットアッセイ

論文タイトル
High-Throughput In Vitro Assay using Patient-Derived Tumor Organoids
論文タイトル(訳)
患者由来がんオルガノイドを用いたin vitroハイスールプットアッセイ
DOI
10.3791/62668
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (172), e62668
著者名(敬称略)
比嘉 亜里砂1、高木 基樹2 他
所属
1. 富士フイルム和光バイオソリューションズ株式会社
2. 福島県立医科大学 医療-産業トランスレーショナルリサーチセンター

抄訳

患者由来の腫瘍オルガノイド(PDO)は、従来の細胞培養モデルよりも疾患の再現性に優れた前臨床がんモデルとして期待されています。PDOは、腫瘍組織の構造や機能を正確に再現し、さまざまなヒト腫瘍から樹立することに成功しています。しかし、PDOはサイズが不均一で、培養中に大きなクラスターを形成するため、抗がん剤を評価する際に96ウェルや384ウェルプレートを用いたハイスループットアッセイシステム(HTS)や細胞解析には適していません。また、これらの培養やアッセイでは、マトリゲルなどの細胞外マトリックスを用いて腫瘍組織の足場を作る必要があります。そのため、PDOはスループットが低く、コストも高いため、適切なアッセイシステムを開発することが困難です。この問題を解決するために、我々が樹立したF-PDOを用いて、抗がん剤や免疫療法の効果を評価可能で、よりシンプルで精度の高いHTSを確立しました。

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2021/06/15

シロイヌナズナの全身性傷害シグナルを可視化する広視野リアルタイムイメージング法

論文タイトル
Wide-Field, Real-Time Imaging of Local and Systemic Wound Signals in Arabidopsis
論文タイトル(訳)
シロイヌナズナの全身性傷害シグナルを可視化する広視野リアルタイムイメージング法
DOI
10.3791/62114
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (172), e62114
著者名(敬称略)
上村 卓矢,豊田 正嗣 他
所属
埼玉大学 理学部 分子生物学科 理学部3号館

抄訳

傷害や害虫による食害を受けた植物では、被害局所のみならず遠く離れた未被害部位においても抵抗性反応が誘導される。私たちは傷害によって細胞外(アポプラスト領域)に放出されるグルタミン酸(Glu)がグルタミン酸受容体(GLR)を活性化し、それにより発生する長距離で高速なカルシウム(Ca2+)シグナルが全身性傷害応答の引き金となることを明らかにした。本プロトコルではGFP型のCa2+バイオセンサーとGluバイオセンサーを発現させたシロイヌナズナと広視野蛍光顕微鏡を用いて、傷害による全身性の高速Ca2+シグナルと細胞外のGlu濃度変化を可視化するリアルタイムイメージング法について示す。また長距離Ca2+シグナルを誘導するGluの処理方法についても紹介する。本システムを用いることで、植物のストレス応答機構における長距離シグナルネットワークを時空間的に理解することが可能となる。

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2021/05/20

ヒト造血幹細胞の静止期維持培養法

論文タイトル
A Culture Method to Maintain Quiescent Human Hematopoietic Stem Cells
論文タイトル(訳)
ヒト造血幹細胞の静止期維持培養法
DOI
10.3791/61938
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (171), e61938
著者名(敬称略)
小林 央, 田久保 圭誉
所属
国立国際医療研究センター研究所 生体恒常性プロジェクト

抄訳

造血幹細胞は分化した細胞を継続的に補充しながらヒトの造血機能を生涯にわたって維持しています。造血幹細胞は運命決定した前駆細胞と比べて細胞周期が静止していることが大きな特徴です。従来、ヒト造血幹細胞研究は表面マーカーで単離した造血幹細胞を免疫不全マウスに移植することで幹細胞活性を評価されてきました。しかし、移植をすると造血幹細胞は静止期性が失われ、定常状態での挙動と異なることが最近の研究からわかってきて、より生理的条件下での造血幹細胞の挙動を理解する実験モデルが求められていました。本プロトコルでは、骨髄の微小環境(低酸素かつ脂質に富む)を模倣し、サイトカインの濃度を最適化することで、培養下で未分化かつ静止状態を維持する方法を示します。これにより試験管内での造血幹細胞の静止状態を再現することで、造血幹細胞の定常状態の特性に対する理解が深まり、造血幹細胞を実験的に操作することが可能になります。

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2021/04/28

蛍光相関分光法 (FCS)を用いたタンパク質凝集体の検出

論文タイトル
Detection of Protein Aggregation using Fluorescence Correlation Spectroscopy
論文タイトル(訳)
蛍光相関分光法 (FCS)を用いたタンパク質凝集体の検出
DOI
10.3791/62576
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (170), e62576, doi:10.3791/62576 (2021)
著者名(敬称略)
北村 朗 他
所属
北海道大学 大学院先端生命科学研究院 細胞機能科学研究室

抄訳

タンパク質の凝集体は,筋萎縮性側索硬化症(ALS),アルツハイマー病(AD),パーキンソン病(PD),ハンチントン病(HD)など神経変性疾患における特徴である.可溶性あるいは拡散性のタンパク質のオリゴマーや凝集体を検出・解析するために,単一分子感度を有し,拡散速度や一粒子輝度を検出できる蛍光相関分光法(FCS)が用いられてきた.しかしながら,FCSを用いてタンパク質の凝集体を検出するための適切な手順やノウハウは,依然広く共有されているとは言えない.ここでは,凝集タンパク質であるALS関連TDP-43タンパク質の25kDa C末端断片 (TDP25) とスーパーオキシドディスムターゼ1 (SOD1) の拡散特性を,細胞破砕液,または生細胞中で解析するための標準的なFCS法の手順を示す.典型的な結果として,マウス神経芽細胞腫Neuro2a細胞で発現させた緑色蛍光タンパク質(GFP)標識TDP25の凝集体由来の高輝度粒子が,細胞破砕液の可溶性画分に含まれていた.また,GFPで標識したALSに関連変異型SOD1を生細胞内で測定すると遅い拡散速度を示した.このように本論では,FCSを用いてタンパク質凝集体をその拡散特性から検出する手順を紹介する.

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