本文へスキップします。

H1

国内研究者論文紹介

コンテンツ

ユサコでは日本人の論文が掲載された海外学術雑誌に注目して、随時ご紹介しております。

論文検索

(以下、条件を絞り込んで検索ができます。)

日本人論文紹介:検索
日本人論文紹介:一覧

2021/07/28

電子顕微鏡観察における生物試料のすぐれた微細構造保持のためのサンドイッチ凍結法

論文タイトル
Rapid Freezing using Sandwich Freezing Device for Good Ultrastructural Preservation of Biological Specimens in Electron Microscopy
論文タイトル(訳)
電子顕微鏡観察における生物試料のすぐれた微細構造保持のためのサンドイッチ凍結法
DOI
10.3791/62431
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (173), e62431
著者名(敬称略)
山口正視 他
所属
千葉大学・真菌医学研究センター

抄訳

生物試料の電子顕微鏡観察には、これまで、主に化学固定法による超薄切片法が用いられてきたが、この方法では、様々なアーティファクトが生じることが知られている。これを回避するために、近年、急速凍結・凍結置換固定法が用いられるようになった。サンドイッチ凍結法は、熱伝導のよい2枚の銅板に薄い試料をはさんで、液体プロパンに素早く投入することによって、氷晶のないガラス状凍結を得るすぐれた急速凍結法の一つである。この方法により、これまで、生きた酵母、真菌、細菌の高解像の自然な微細構造が観察されてきた。最近、サンドイッチ凍結法は、グルタルアルデヒド固定した培養細胞、動物細胞、ヒト組織でも、すぐれた微細構造の保持に有効であることがわかり、応用範囲が格段に広がった。
この論文は、最近、マリン・ワーク・ジャパン(株)が商品化した「サンドイッチ凍結装置」の使い方について、酵母や培養細胞などの細胞懸濁液、動物組織、およびウイルス試料のそれぞれの場合について、ビデオで手順を解説しものである。サンドイッチ凍結法は、30μmまでの生きた細胞懸濁液、0.2 mm までのグルタルアルデヒド固定した動物組織を無氷晶で凍結でき、高圧凍結法にかわるすぐれた方法となりうる。この論文では、凍結後の凍結置換、樹脂包埋、超薄切、切片染色の方法についても解説を行っている。

 

 

論文掲載ページへ

2021/06/29

患者由来がんオルガノイドを用いたin vitroハイスールプットアッセイ

論文タイトル
High-Throughput In Vitro Assay using Patient-Derived Tumor Organoids
論文タイトル(訳)
患者由来がんオルガノイドを用いたin vitroハイスールプットアッセイ
DOI
10.3791/62668
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (172), e62668
著者名(敬称略)
比嘉 亜里砂1、高木 基樹2 他
所属
1. 富士フイルム和光バイオソリューションズ株式会社
2. 福島県立医科大学 医療-産業トランスレーショナルリサーチセンター

抄訳

患者由来の腫瘍オルガノイド(PDO)は、従来の細胞培養モデルよりも疾患の再現性に優れた前臨床がんモデルとして期待されています。PDOは、腫瘍組織の構造や機能を正確に再現し、さまざまなヒト腫瘍から樹立することに成功しています。しかし、PDOはサイズが不均一で、培養中に大きなクラスターを形成するため、抗がん剤を評価する際に96ウェルや384ウェルプレートを用いたハイスループットアッセイシステム(HTS)や細胞解析には適していません。また、これらの培養やアッセイでは、マトリゲルなどの細胞外マトリックスを用いて腫瘍組織の足場を作る必要があります。そのため、PDOはスループットが低く、コストも高いため、適切なアッセイシステムを開発することが困難です。この問題を解決するために、我々が樹立したF-PDOを用いて、抗がん剤や免疫療法の効果を評価可能で、よりシンプルで精度の高いHTSを確立しました。

論文掲載ページへ

2021/06/15

シロイヌナズナの全身性傷害シグナルを可視化する広視野リアルタイムイメージング法

論文タイトル
Wide-Field, Real-Time Imaging of Local and Systemic Wound Signals in Arabidopsis
論文タイトル(訳)
シロイヌナズナの全身性傷害シグナルを可視化する広視野リアルタイムイメージング法
DOI
10.3791/62114
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (172), e62114
著者名(敬称略)
上村 卓矢,豊田 正嗣 他
所属
埼玉大学 理学部 分子生物学科 理学部3号館

抄訳

傷害や害虫による食害を受けた植物では、被害局所のみならず遠く離れた未被害部位においても抵抗性反応が誘導される。私たちは傷害によって細胞外(アポプラスト領域)に放出されるグルタミン酸(Glu)がグルタミン酸受容体(GLR)を活性化し、それにより発生する長距離で高速なカルシウム(Ca2+)シグナルが全身性傷害応答の引き金となることを明らかにした。本プロトコルではGFP型のCa2+バイオセンサーとGluバイオセンサーを発現させたシロイヌナズナと広視野蛍光顕微鏡を用いて、傷害による全身性の高速Ca2+シグナルと細胞外のGlu濃度変化を可視化するリアルタイムイメージング法について示す。また長距離Ca2+シグナルを誘導するGluの処理方法についても紹介する。本システムを用いることで、植物のストレス応答機構における長距離シグナルネットワークを時空間的に理解することが可能となる。

論文掲載ページへ

2021/05/20

ヒト造血幹細胞の静止期維持培養法

論文タイトル
A Culture Method to Maintain Quiescent Human Hematopoietic Stem Cells
論文タイトル(訳)
ヒト造血幹細胞の静止期維持培養法
DOI
10.3791/61938
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (171), e61938
著者名(敬称略)
小林 央, 田久保 圭誉
所属
国立国際医療研究センター研究所 生体恒常性プロジェクト

抄訳

造血幹細胞は分化した細胞を継続的に補充しながらヒトの造血機能を生涯にわたって維持しています。造血幹細胞は運命決定した前駆細胞と比べて細胞周期が静止していることが大きな特徴です。従来、ヒト造血幹細胞研究は表面マーカーで単離した造血幹細胞を免疫不全マウスに移植することで幹細胞活性を評価されてきました。しかし、移植をすると造血幹細胞は静止期性が失われ、定常状態での挙動と異なることが最近の研究からわかってきて、より生理的条件下での造血幹細胞の挙動を理解する実験モデルが求められていました。本プロトコルでは、骨髄の微小環境(低酸素かつ脂質に富む)を模倣し、サイトカインの濃度を最適化することで、培養下で未分化かつ静止状態を維持する方法を示します。これにより試験管内での造血幹細胞の静止状態を再現することで、造血幹細胞の定常状態の特性に対する理解が深まり、造血幹細胞を実験的に操作することが可能になります。

論文掲載ページへ

2021/04/28

蛍光相関分光法 (FCS)を用いたタンパク質凝集体の検出

論文タイトル
Detection of Protein Aggregation using Fluorescence Correlation Spectroscopy
論文タイトル(訳)
蛍光相関分光法 (FCS)を用いたタンパク質凝集体の検出
DOI
10.3791/62576
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (170), e62576, doi:10.3791/62576 (2021)
著者名(敬称略)
北村 朗 他
所属
北海道大学 大学院先端生命科学研究院 細胞機能科学研究室

抄訳

タンパク質の凝集体は,筋萎縮性側索硬化症(ALS),アルツハイマー病(AD),パーキンソン病(PD),ハンチントン病(HD)など神経変性疾患における特徴である.可溶性あるいは拡散性のタンパク質のオリゴマーや凝集体を検出・解析するために,単一分子感度を有し,拡散速度や一粒子輝度を検出できる蛍光相関分光法(FCS)が用いられてきた.しかしながら,FCSを用いてタンパク質の凝集体を検出するための適切な手順やノウハウは,依然広く共有されているとは言えない.ここでは,凝集タンパク質であるALS関連TDP-43タンパク質の25kDa C末端断片 (TDP25) とスーパーオキシドディスムターゼ1 (SOD1) の拡散特性を,細胞破砕液,または生細胞中で解析するための標準的なFCS法の手順を示す.典型的な結果として,マウス神経芽細胞腫Neuro2a細胞で発現させた緑色蛍光タンパク質(GFP)標識TDP25の凝集体由来の高輝度粒子が,細胞破砕液の可溶性画分に含まれていた.また,GFPで標識したALSに関連変異型SOD1を生細胞内で測定すると遅い拡散速度を示した.このように本論では,FCSを用いてタンパク質凝集体をその拡散特性から検出する手順を紹介する.

論文掲載ページへ

2020/12/08

消化管癌におけるゲノムワイドDNAメチル化解析

論文タイトル
Genome-Wide Analysis of DNA Methylation in Gastrointestinal Cancer
論文タイトル(訳)
消化管癌におけるゲノムワイドDNAメチル化解析
DOI
10.3791/61355
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (163), e61355
著者名(敬称略)
杉本 起一
所属
順天堂大学医学部下部消化管外科学

抄訳

DNAメチル化は、癌研究において重要かつ頻繁に認められるエピジェネティックな変化であり、その網羅的解析は、消化管悪性腫瘍におけるDNAメチル化を正確に解析するために有用である。 DNAメチル化の多方面におけるトランスレーショナルな意義を最大限活かすためには、DNAメチル化網羅的解析がどのように実行されるかを理解する必要がある。
DNAメチル化網羅的解析に用いられるMicroarray platformは、近年、飛躍的な進歩を遂げた。特に、Whole genome bisulfite sequencing (WGBS)と比較して、コストと処理時間において優れており、ヒトゲノムにおけるDNAメチル化網羅的解析の複雑な評価に用いられるようになった。
本プロトコールでは、DNAメチル化網羅的解析が消化管悪性腫瘍のバイオマーカー同定にどのように用いられるかについて、詳細な説明がなされており、特に、正確な結果を得るために必要な3つのステップについて理解することが重要であることを示している。

 

論文掲載ページへ

2020/09/14

マウスへのレシニフェラトキシン脳室内投与法および疼痛行動解析

論文タイトル
Intracerebroventricular Treatment with Resiniferatoxin and Pain Tests in Mice
論文タイトル(訳)
マウスへのレシニフェラトキシン脳室内投与法および疼痛行動解析
DOI
10.3791/57570
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (163), e57570, doi:10.3791/57570 (2020)
著者名(敬称略)
福島 章紘、藤井 萌子、小野 秀樹
所属
武蔵野大学大学院薬科学研究科 薬科学専攻

抄訳

Transient receptor potential vanilloid type 1 (TRPV1)の強力なアゴニストであるレシニフェラトキシン(RTX)はTRPV1の長期的な脱感作を引き起こす。この脱感作モデルはTRPV1の機能を調べる方法のひとつとして用いられてきた。本稿ではRTXのマウス脳室内投与法を紹介するとともに、末梢TRPV1刺激および機械刺激を用いた疼痛試験法も併せて紹介する。RTX脳室内投与群は対照群と同等の疼痛反応を示したが、脳室内投与群ではアセトアミノフェンの鎮痛作用が抑制されたことから、RTX脳室内投与は中枢選択的なTRPV1脱感作を誘導することが示唆された。これまで末梢組織でのTRPV1の機能について多くの報告がなされているが、脳内TRPV1の機能については不明な点が多い。本マウスモデルは、中枢神経系に存在するTRPV1およびTRPV1発現細胞の生理機能の探索に用いることが可能と考えられた。なお本手法は他の薬物の中枢作用研究にも応用可能である。

論文掲載ページへ

2020/07/22

IgA腎症で変動するmicroRNAについてモデルマウスを用いて解析する方法

論文タイトル
Detection of microRNA Expression in the Kidneys of Immunoglobulin a Nephropathic Mice
論文タイトル(訳)
IgA腎症で変動するmicroRNAについてモデルマウスを用いて解析する方法
DOI
10.3791/61535
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (161), e61535, doi:10.3791/61535 (2020)
著者名(敬称略)
金子 昌平 他
所属
自治医科大学附属さいたま医療センター 腎臓内科

抄訳

IgA腎症は末期腎不全に至る原因不明の原発性糸球体腎炎である。近年、microRNAがIgA腎症の病態や発症に関与すると報告されており、将来の新規バイオマーカーや新規治療対象になり得ることから、今後のさらなる研究が必要とされる。しかし、ヒト腎臓をサンプルとする研究は侵襲が大きく、一方で小動物を用いて研究する方法は確立していない。我々はIgA腎症モデルマウス(HIGAマウス)を用いてIgA腎症とmicroRNAの関連について解析する方法を報告した。HIGAマウスの腎臓からtotal RNAを抽出し、逆転写PCR法を実施することにより、IgA腎症で変動するmicroRNAを定量的に評価する事が出来る。この方法によりヒト腎臓を採取することなくIgA腎症とmicroRNAの関連について解析することが可能となる。

論文掲載ページへ

2020/05/27

静脈グラフトを用いた血行再建手術における動脈圧負荷での内膜肥厚に関する研究のためのウサギ頚静脈置換モデル

論文タイトル
A Rabbit Venous Interposition Model Mimicking Revascularization Surgery using Vein Grafts to Assess Intimal Hyperplasia under Arterial Blood Pressure
論文タイトル(訳)
静脈グラフトを用いた血行再建手術における動脈圧負荷での内膜肥厚に関する研究のためのウサギ頚静脈置換モデル
DOI
10.3791/60931
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (159), e60931, doi:10.3791/60931 (2020)
著者名(敬称略)
西尾 博臣、升本 英利 他
所属
京都大学大学院医学研究科 心臓血管外科学

抄訳

 静脈グラフト(移植片)は、虚血性疾患の血行再建手術における自家血管グラフトとして一般的に使用されていますが、静脈に対する動脈圧負荷による内膜肥厚のため、長期開存性は依然として低いままです。本プロトコルは、ウサギ頚静脈を同側頚動脈に移植することにより、実験的に静脈内膜肥厚を再現するものです。このプロトコルは体表・皮下脂肪層までの深さの外科的処置のみで完結でき、切開の範囲も限られているため、動物にとって侵襲が低く、移植後の長期観察が可能です。このプロトコルにより、研究者は移植された静脈グラフトの内膜肥厚の進行を抑制する方法に関する研究を行うことができます。例えばこのプロトコルを使用して、我々はこれまでに、血管平滑筋細胞の表現型を増殖型から分化型(非増殖型)に制御することが知られているmicroRNA-145による静脈グラフトの内膜肥厚抑制効果を示すことが出来ました。

論文掲載ページへ