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国内研究者論文紹介

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ユサコでは日本人の論文が掲載された海外学術雑誌に注目して、随時ご紹介しております。

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2022/09/05

覚醒マウスにおけるミクログリア動態と神経活動の生体内同時イメージング

論文タイトル
Simultaneous Imaging of Microglial Dynamics and Neuronal Activity in Awake Mice
論文タイトル(訳)
覚醒マウスにおけるミクログリア動態と神経活動の生体内同時イメージング
DOI
10.3791/64111
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (186), e64111
著者名(敬称略)
丸岡 久人、岡部 繁男 他
所属
東京大学大学院医学系研究科・医学部 神経細胞生物学

抄訳

脳機能は末梢組織由来の信号の影響を絶えず受けるため、脳のグリア細胞がそのような信号を神経細胞に伝える仕組みを解明することは、近年重要性が増している臓器間ネットワークの全容を解明する上で極めて重要である。脳の免疫細胞であるミクログリアは神経回路形成と維持に深く関与していることから、ミクログリアと神経回路との相互作用の検証に資する生体内イメージング技術の確立が求められている。そこで本論文では、覚醒マウスのミクログリア動態と神経活動を同時にイメージングする技術について解説する。ミクログリアがEGFPで標識されるCX3CR1-EGFPトランスジェニックマウスの第一次視覚野第2/3層に、アデノ随伴ウイルスを用いて赤色蛍光カルシウムインディケータータンパク質であるR-CaMPを発現させた。また同時に注入部位の直上に観察窓を設置した。術後4週間後、生体内2光子イメージングにより覚醒マウスからミクログリア動態と神経活動をサブ秒の時間分解能で同時に記録することができた。本技術により、末梢の免疫状態に反応するミクログリア動態と脳の内部状態を符号化している神経活動との相互作用を明らかにすることが期待できる。

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2022/08/30

マウス脳の広範囲にわたってカルシウムイメージングが可能な頭蓋窓の簡便な作製法

論文タイトル
In Vivo Wide-Field and Two-Photon Calcium Imaging from a Mouse using a Large Cranial Window
論文タイトル(訳)
マウス脳の広範囲にわたってカルシウムイメージングが可能な頭蓋窓の簡便な作製法
DOI
10.3791/64224
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (186), e64224
著者名(敬称略)
真仁田 聡、喜多村 和郎 他
所属
山梨大学医学部・大学院総合研究部 生理学講座神経生理学教室

抄訳

本研究では、市販されている食品用ラップ、透明シリコーンプラグ、およびカバーガラスを用いて大型(6x3mm)の頭蓋窓の作製方法を開発しました。この窓を用いて広視野および2光子カルシウムイメージングが同一マウスより実施でき、神経細胞やグリア細胞の単一細胞レベルの活動や細胞集団の活動を観察できます。この大きな窓にもかかわらず、激しい脳振動は観察されず、また1ヶ月以上、脳表面の状態は良好に保たれ高品質イメージングが可能でした。さらに、カルシウムセンサーを発現するアデノ随伴ウイルスの薄膜を表面に形成したラップで大型頭蓋窓を作製すると広範囲の大脳皮質の細胞にカルシウムセンサーを発現させることができ、広視野および2光子カルシウムイメージングが実施できました。この技術によって、大きな頭蓋窓を既存のものより簡易かつ安価に作ることができ、行動中のマウスにおける神経やグリア細胞の活動の詳細が観察できます。

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2022/08/16

ヒドロ虫綱クラゲCladonema pacificumにおける幹細胞様細胞のFISH法とEdUラベリングによる検出

論文タイトル
Fluorescent In Situ Hybridization and 5-Ethynyl-2'-Deoxyuridine Labeling for Stem-like Cells in the Hydrozoan Jellyfish Cladonema pacificum
論文タイトル(訳)
ヒドロ虫綱クラゲCladonema pacificumにおける幹細胞様細胞のFISH法とEdUラベリングによる検出
DOI
10.3791/64285
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (186), e64285
著者名(敬称略)
冨士田壮佑(筆頭)、倉永英里奈、三浦正幸、中嶋悠一朗(責任・連絡) 
所属
東北大学大学院生命科学研究科(冨士田, 倉永)
東京大学大学院薬学系研究科(三浦、中嶋)

抄訳

イソギンチャク、サンゴ、クラゲなどの刺胞動物は、固着性のポリプや遊泳性のメデューサなど多様な形態と生活様式を示す。ヒドラやネマトステラといった刺胞動物のポリプの発生・再生には幹細胞や増殖細胞が寄与する。しかしながら、ほとんどのクラゲ、特にメデューサの段階での基礎的な細胞メカニズムはほとんど不明であることから、特定の細胞タイプを識別するための方法を開発することが重要である。本論文では、ヒドロ虫綱クラゲ Cladonema pacificum(和名:エダアシクラゲ)の幹細胞様の増殖細胞を可視化するプロトコルを報告する。Cladonemaに特徴的な分岐した触手は成体まで継続的に成長し、再生能力を維持するため、増殖細胞や幹細胞によって組織化される細胞メカニズムを研究するための研究モデルとなる。幹細胞マーカーを用いた蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)により幹細胞様細胞を検出し、S期マーカーである5-ethynyl-2'-deoxyuridine(EdU)のパルス標識により増殖細胞を同定することが可能である。FISHとEdU標識の両方を組み合わせることで、活発に増殖している幹細胞を検出することができ、この技術は非モデル生物である他のクラゲや動物種にも広く応用することが可能である。

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2022/08/12

げっ歯類動物の頭部に一定の加速度を生じる受動的頭部上下動の適用

論文タイトル
Application of Passive Head Motion to Generate Defined Accelerations at the Heads of Rodents
論文タイトル(訳)
げっ歯類動物の頭部に一定の加速度を生じる受動的頭部上下動の適用
DOI
10.3791/63100
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (185), e63100
著者名(敬称略)
筆頭著者:前川 貴郊、 連絡著者:澤田 泰宏
所属
国立障害者リハビリテーションセンター研究所運動機能系障害研究部

抄訳

運動は様々な病気や運動器機能障害に効果を持つことが広く認められており、脳の疾患に対しても効果的であることが分かっている。しかしながら、運動効果の分子メカニズムの詳細は分かっていない。多くの身体運動、特にジョギングやウォーキングなどの有酸素運動では、足の着地時に頭部を含めた全身に衝撃が加わる。このことから、運動が持つ全身の恒常性維持の効果に物理的刺激を介した調節機構が関与している可能性が考えられる。この仮説を検証するために、適度な速度で運動させた時にげっ歯類の頭部に加わる加速度と同程度の上下方向の加速度を、受動的上下動によって、マウスの頭部に加えた。受動的頭部上下動は、脳内組織液を流動させ、前頭前皮質の神経細胞に物理的刺激を与え、セロトニン2A受容体の分布を細胞の表面から内部へと変化させ、セロトニンに対する応答性を低下させた。以上より、受動的頭部上下動が脳機能を調節し得ることが明らかとなった。本論文では受動的頭部振動を与える方法を記載している。

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2022/08/08

CUBICを用いたマウス腎臓の3次元免疫染色法

論文タイトル
Whole-Kidney Three-Dimensional Staining with CUBIC
論文タイトル(訳)
CUBICを用いたマウス腎臓の3次元免疫染色法
DOI
10.3791/63986
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (185), e63986
著者名(敬称略)
長谷川 頌、南學 正臣
所属
東京大学医学部附属病院 腎臓・内分泌内科

抄訳

腎臓病が進行するメカニズムには未解明の点が多く、その原因の一つとして腎臓の構造や機能を立体的・包括的に把握する手段がないことが挙げられる。腎臓には様々な構造が存在するが、既存の病理学的手法は組織の断面の観察にとどまっており、障害による腎臓の構造や機能の変化を3次元で捉えることができなかった。
組織透明化は3次元構造を保ったまま組織の内部構造を観察するために発展してきた手法である。著者たちは東京大学システムズ薬理学教室との共同研究で、組織透明化手法CUBICと3次元免疫染色を組み合わせてマウス腎臓の様々な構造(交感神経、動脈、糸球体、近位尿細管、集合管)を可視化する手法を確立し、それを応用することで「急性腎障害後の腎交感神経障害 (Kidney Int. 2019;96:129-138.)」および「糖尿病腎症における腎エネルギー代謝変化 (Kidney Int. 2020;97:934-950.)」など様々な腎臓病の病態を明らかにしてきた。
本論文は、上記の研究で用いた腎臓の3次元病態解析の詳細な手順をビデオプロトコルの形で解説したものである。

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2022/08/03

後肢懸垂モデルラットにおける廃用性歩容変化を包括的に理解する

論文タイトル
Comprehensive Understanding of Inactivity-induced Gait Alteration in Rodents
論文タイトル(訳)
後肢懸垂モデルラットにおける廃用性歩容変化を包括的に理解する
DOI
10.3791/63865
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (185), e63865
著者名(敬称略)
太治野  純一(筆頭)、伊藤 明良(連絡) 他
所属
オハイオ州立大学ウェクスナーメディカルセンター
京都大学大学院医学研究科 人間健康科学系専攻

抄訳

生体における廃用性変化は筋や骨の萎縮にとどまらず、動作の質的変化にも及ぶことが知られている。これらの動作変化を包括的に評価するため、ビデオ画像の3次元動作解析が近年用いられるようになった。しかし、統一された指標や評価基準は確立されておらず、同手法の普及を妨げる一因となっている。
そこで本論文では、3次元動作解析の手順を普遍的な形で示すことを目的に、後肢懸垂モデルラットの歩行動作解析を実施した。
Wistarラットを尾部懸垂によって後肢を免荷する懸垂群と通常飼育の対象群に分け、介入2週間後のトレッドミル上の歩行を3次元動作解析装置を用いて評価した。対象群と較べ、懸垂群では立脚相における膝・足関節の過伸展および股関節高位を示した。
3次元動作解析は客観性など利点が多い反面、検者によって実験手順が異なるなど普遍的な用法の周知は不足している。同手法の普及のためには、個別応用の元となる汎用性の高い基礎的知見が多く共有されることが望まれる。

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2022/07/19

生体内二光子イメージング法によるマウス海馬ミクログリアの慢性観察

論文タイトル
In vivo Chronic Two-Photon Imaging of Microglia in the Mouse Hippocampus
論文タイトル(訳)
生体内二光子イメージング法によるマウス海馬ミクログリアの慢性観察
DOI
10.3791/64104
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (185), e64104
著者名(敬称略)
亀井 亮佑、岡部 繁男 他
所属
東京大学大学院医学系研究科 神経細胞生物学

抄訳

脳の免疫細胞であるミクログリアは、シナプス可塑性や神経活動を調節し、神経回路の維持に寄与している。近年、ミクログリアの脳領域ごとの不均一性が注目され、特に海馬では、神経回路の発達やその記憶に関連した機能に、ミクログリアによるシナプスリモデリングが関与しているようだ。海馬ミクログリアの挙動を生体内で観察する意義は大きいが、手術により生じる炎症が問題となる。
本論文では、マウス海馬CA1全層のミクログリアを、生体内で慢性的に二光子観察する方法を解説する。この方法では、術直後の炎症は数週以内に鎮静化し、以降1か月以上にわたって、静止型ミクログリアの突起の形態変化を解析することができる。ラミファイド型ミクログリアの長期かつ高分解能なイメージングには、手術侵襲の最小化とイメージング手法の最適化が肝要である。神経細胞とミクログリアとの二色イメージング法も提示し、海馬の複数細胞種の相互作用の観察基盤を提供する。本手法により、海馬におけるミクログリア機能の解明が進展することが期待される。

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2022/07/08

植物透明化技術によるイネの芽や茎の深部の蛍光観察

論文タイトル
Deep Fluorescence Observation in Rice Shoots via Clearing Technology
論文タイトル(訳)
植物透明化技術によるイネの芽や茎の深部の蛍光観察
DOI
10.3791/64116
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (184), e64116
著者名(敬称略)
新美陽子 水多陽子 他
所属
名古屋大学大学院生命農学研究科
名古屋大学高等研究院・トランスフォーマティブ生命分子研究所

抄訳

 近年、屈折率の均一化や自家蛍光物質の除去によって、生物体内の構造を保ったまま立体的に観察する透明化技術が開発されている。しかしイネでは、根や葉など薄い組織の観察のみにとどまっていた。その原因として、茎など硬く厚い組織や、茎頂など撥水性の葉に包まれた組織は透明化溶液が浸透しにくいといった点が挙げられる。
 そこで本論文では、プロトコルの最適化をおこない、適切な組織固定ののちにビブラトームで目的部位以外を取り除き、透明化試薬に浸漬した。その結果、透明化試薬の浸透性および均一性が向上し、さらに処理時間が短縮された。共焦点顕微鏡で観察したところ、茎から茎頂、そして幼穂までの内部構造を広視野、かつ連続的に観察することができた。
 本手法はイネだけでなく、硬くて厚い組織や層構造を持つ植物など、これまで透明化が困難であった他の植物にも有効であると考えられる。



【図の説明】
イネの形質転換体の幼穂(左)から茎基部(右)までの蛍光画像。黄色のシグナルは核に局在するOsMADS15-mOrangeの蛍光、水色のシグナルは蛍光色素で染色した細胞壁を示す。

 

 

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2022/06/30

化学物質刺激による線虫C. elegansの連合学習と記憶の形成

論文タイトル
Aversive Associative Learning and Memory Formation by Pairing Two Chemicals in Caenorhabditis elegans
論文タイトル(訳)
化学物質刺激による線虫C. elegansの連合学習と記憶の形成
DOI
10.3791/64137
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (184), e64137
著者名(敬称略)
澁谷 海大、丸山 一郎 他
所属
沖縄科学技術大学院大学情報処理生物学ユニット

抄訳

線虫C. elegansは細胞や分子レベルでの学習や記憶の研究に適したモデル生物である。その神経系は比較的単純で、全てのニューロンの化学的・電気的シナプスによる繋がりが連続超薄切片の電子顕微鏡画像から再構成されている。本論文では、プロパノールと塩酸をそれぞれ条件刺激、無条件刺激としてC. elegansに学習させ、短期記憶と長期記憶を形成させる方法を詳述する。C. elegansはプロパノールに引き寄せられ、塩酸を避ける性質がある。ところが、プロパノールと塩酸を同時に連合学習させると、C. elegansはプロパノールに引き寄せられなくなる。さらに、短期記憶と長期記憶形成の両方に、NMDA受容体が必須であることが、C. elegans突然変異体の解析から判明した。C. elegansでは6種類の介在ニューロンでのみNMDA受容体が発現していることから、これらの介在ニューロンが形成するネットワークに記憶が保存されていると考えられる。

介在ニューロンAVAを蛍光タンパク質でラベルしたC. elegans

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2022/06/29

前核期胚顕微注入でのノックインマウスおよびFloxマウスの作製

論文タイトル
Zygote Microinjection for Creating Gene Cassette Knock-in and Flox Alleles in Mice
論文タイトル(訳)
前核期胚顕微注入でのノックインマウスおよびFloxマウスの作製
DOI
10.3791/64161
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (184), e64161
著者名(敬称略)
谷本 陽子、三上 夏輝 他
所属
筑波大学生命科学動物資源センター
筑波大学 トランスボーダー医学研究センター
筑波大学実験動物学研究室

抄訳

CRISPR-Cas技術の発展は、迅速かつ容易な遺伝子改変マウスの作製を可能にした。特にノックアウトマウスや点変異マウスは、マウス前核期胚に電気穿孔でCRISPR因子(および一本鎖DNAドナー)を導入する簡便な方法で作出できる。その一方、1000塩基対以上の遺伝子カセットノックイン(KI)マウスやFloxマウスは、主にCRISPR因子と二本鎖DNAドナーを前核期胚に顕微注入することで作製される。
筑波大学生命科学動物資源センターは、日本を含む数カ国の大学・研究所・製薬会社からの依頼を受けて、これまでに200種類以上の遺伝子カセットKIマウス系統と110種類以上のFloxマウス系統を前核期胚顕微注入法で作製してきた。これらのゲノム編集マウス作製プロジェクトには、BALB/c・C3H/HeJ・C57BL/6Nなどの近交系マウスを用いたものもあるが、そのほとんどはC57BL/6J近交系マウスを用いたものである。電気穿孔法と異なり、様々な近交系マウスの前核期胚顕微注入は容易ではない。しかし、単一近交系遺伝背景の遺伝子カセットKIマウスやFloxマウスは、遺伝子ヒト化マウス・蛍光レポーターマウス・コンディショナルノックアウトマウスモデルにおいて極めて重要である。そこで本論文では、C57BL/6Jマウスの前核期胚にCRISPR因子と二本鎖DNAドナーを顕微注入し、遺伝子カセットKIマウスおよびFloxマウスを作製するためのプロトコルを紹介する。更に、過排卵誘発や胚移植などの周辺技術と作製タイムラインについても概説する。

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