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国内研究者論文詳細

日本人論文紹介:詳細

2022/01/05

くすぶり型と診断されたHTLV-1関連細気管支炎・肺胞異常症(HABA-B)にANK療法が奏功した1例

論文タイトル
Successful treatment of smouldering Human T cell Leukemia Virus Type1 associated bronchiolitis and alveolar abnormalities with amplified natural killer therapy
論文タイトル(訳)
くすぶり型と診断されたHTLV-1関連細気管支炎・肺胞異常症(HABA-B)にANK療法が奏功した1例
DOI
10.1136/bcr-2021-244619
ジャーナル名
BMJ Case Reports
巻号
BMJ Case Reports Vol.14 No.12 (2021)
著者名(敬称略)
長井 賢次郎
所属
医療法人えびのセントロクリニック

抄訳

ANK療法は、先ず、患者さんの血液からリンパ球を分離採取し、抗がん作用を高めるための培養を行います。 次に、がん細胞を傷害する能力を高め、数を増やしたナチュラルキラー(NK)細胞を体内に点滴する事で治療が始まります。 今回ANK療法を実施したのは、成人T細胞白血病くすぶり型と診断され、 ウイルス(HTLV-1)による気管支肺胞障害(HABA)がある81歳の女性患者にANK療法を行いました。 治療内容は、培養後のNK細胞を点滴にて週2回、合計8回実施しました。 その後、CTスキャンにて両側の びまん性粒状陰影の改善と全体の呼吸機能、そして患者の自覚症状が顕著に改善を認めました。また、ANK治療は通院にて実施しましたが、重篤な副作用は認めませんでした。 ANK療法は、高齢で化学療法が施行できない患者でも安全に治療でき効果も期待できる治療です。また、HABAの新たな治療法の一つになり得ます。

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2021/12/27

一価銅イオン(Cu+)の殺ウイルス活性を適用した、ヨウ化銅ナノ粒子塗付フィルムおよび布の新型コロナウイルス不活化への応用

論文タイトル
Application of Copper Iodide Nanoparticle-Doped Film and Fabric To Inactivate SARS-CoV-2 via the Virucidal Activity of Cuprous Ions (Cu+)
論文タイトル(訳)
一価銅イオン(Cu+)の殺ウイルス活性を適用した、ヨウ化銅ナノ粒子塗付フィルムおよび布の新型コロナウイルス不活化への応用
DOI
10.1128/AEM.01824-21
ジャーナル名
Applied and Environmental Microbiology
巻号
Applied and Environmental Microbiology Volume 87 • Number 24 • November 2021
著者名(敬称略)
武田 洋平 小川 晴子 他
所属
帯広畜産大学 獣医学研究部門 基礎獣医学分野 応用獣医学系

抄訳

本研究では、強いウイルス不活化活性を有する一価銅イオンを担持させたヨウ化銅ナノ粒子の新型コロナウイルス (SARS-CoV-2) 不活化活性およびその作用機序を解析した。ヨウ化銅ナノ粒子分散液とSARS-CoV-2を混合し一定時間反応させたところ、作用時間依存的なウイルス不活化が認められた。その際、ヨウ化銅ナノ粒子処理によりウイルスタンパク質が破壊され、その作用には一価銅イオン由来の活性酸素が寄与する可能性が示された。また、ヨウ化銅ナノ粒子処理によりウイルスゲノムが破壊される可能性も示された。更にヨウ化銅ナノ粒子塗付フィルムおよび布についてもSARS-CoV-2に対する殺ウイルス活性を評価した。その結果、同フィルムおよび布共に作用時間依存的なウイルス不活化活性を示した。本研究により、ヨウ化銅ナノ粒子を適用した抗ウイルス素材を環境中のSARS-CoV-2の不活化へ応用できる可能性が示された。

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2021/12/06

キュベット型高速フラッシュ蛍光光度計(FRRf)を用いた着生期のColacium sp.の光生理測定

論文タイトル
Measuring Photophysiology of Attached Stage of Colacium sp. by a Cuvette-Type Fast Repetition Rate Fluorometer
論文タイトル(訳)
キュベット型高速フラッシュ蛍光光度計(FRRf)を用いた着生期のColacium sp.の光生理測定
DOI
10.3791/63108
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (177), e63108
著者名(敬称略)
風間 健宏 他
所属
神戸大学大学院 人間発達環境学研究科

抄訳

高速フラッシュ蛍光光度計(FRRf)は、様々な藻類における光化学系II(PSII)の光吸収断面積(σPSII)、最大量子収率(Fv/Fm)、実効量子収率 (Fq′/Fm′) 、非光化学消光 (NPQNSV) を測定できるが、その研究対象のほとんどが、浮遊性藻類に集中している。本論文は、キュベット型FRRfを用いた、着生期(動物プランクトンに付着した状態)の付着性藻類Colacium sp.のPSII光生理測定法について記述したものである。まず基質動物プランクトン(Scapholeberis mucronata、和名アオムキミジンコ)の個体密度が、ベースライン蛍光と、Colacium sp.のクロロフィル蛍光に与える影響について調べ、5個体/mL以下なら無視できることを示した。次に典型的な測定結果として、野外で得られた着生期Colacium sp.と、培養で得られた浮遊期Colacium sp.の測定例を示した。最後に、着生期と浮遊期それぞれの光生理に対するCaおよびMnの添加効果の例を示した。

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2021/11/15

ほ乳動物の卵子と受精卵に蓄えられる脂肪滴量の恒常的な調節

論文タイトル
Homeostatic regulation of lipid droplet content in mammalian oocytes and embryos
論文タイトル(訳)
ほ乳動物の卵子と受精卵に蓄えられる脂肪滴量の恒常的な調節
DOI
10.1530/REP-21-0238
ジャーナル名
Reproduction
巻号
Reproduction Volume 162 (2021): Issue 6 (Dec 2021) R99–R109
著者名(敬称略)
伊林 恵美 塚本 智史 他
所属
量子科学技術研究開発機構 量子生命・医学部門 生物研究推進室

抄訳

脂肪滴は、トリアシルグリセロールなどの中性脂肪がリン脂質の一重膜で覆われたオルガネラである。近年の研究から、脂肪滴は中性脂肪を貯蔵するだけでなく、様々な生理機能に関与していることが明らかになっている。脂肪滴はほとんどの真核細胞に存在するが、その大きさや量は異なる。ほ乳動物の卵子に脂肪滴が含まれることは古くから知られている。ブタやウシの卵子には多量の脂肪滴が含まれるため細胞質が黒ずんでいるが、マウスやヒトの卵子は少量のため半透明である。脂肪滴量が多い動物ほど、脂肪滴は卵子成熟や初期胚発生に必要だと考えられてきたが、脂肪滴を除去しても胚発生は正常に起こることから、脂肪滴の存在意義はよく分かっていない。しかし、最近の研究から、脂肪滴が着床に重要な役割を果たしていることや(脂肪滴が少量であっても)適量の脂肪滴が初期胚発生に必須であることが明らかになっている。このことから、ほ乳動物の初期胚発生過程では脂肪滴量は緻密に制御されていると考えられる。本総説では、ほ乳動物の卵子や受精卵における脂肪滴の生理学的役割について、近年の脂肪滴研究から明らかになった知見に基づいて解説する。

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2021/11/12

進化的新機軸としての哺乳類の顔面

論文タイトル
Mammalian face as an evolutionary novelty
論文タイトル(訳)
進化的新機軸としての哺乳類の顔面
DOI
10.1073/pnas.2111876118
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
PNAS November 2, 2021 118 (44) e2111876118
著者名(敬称略)
東山 大毅 他
所属
東京大学医学系研究科 分子細胞生物学専攻 代謝生理化学教室

抄訳

従来、顎の解剖学的枠組みは、脊椎動物の間で一定のパターンに制約されていると考えられてきた。しかし哺乳類の顔は、その前端が可動式の鼻で構成されている点で特徴的であり、また骨格や神経など解剖学的構造の配置が他の四肢動物とはズレている。本研究は、哺乳類特有の顔が祖先的制約を大幅に逸脱し、新たな結合関係を得て初めて進化し得た進化的新機軸であることを示した。我々は様々な羊膜類胚を用いた比較形態学的解析やトランスジェニックマウスを用いた分子発生学解析を行い、哺乳類以外の四肢動物において前上顎骨(上あごの最前端の骨要素)を形成する発生原基が、哺乳類の上あごにはほとんど寄与せず、むしろ突出した鼻部を形成することを明らかにした。これに対しこれまで前上顎骨と認識されてきた哺乳類の口先の骨は、実際はその大部分が上顎突起に由来する中上顎骨(septomaxilla)に入れ替わっている。我々は以上の変化が実際に化石記録に見出せることも確認した。これまで認識されていなかったこのような再編成が鼻と口の形態-機能的な分離を可能にし、哺乳類の進化における高感度の触覚や嗅覚機能などの重要な革新を可能にしたのだろう。

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2021/10/29

間質性肺炎合併肺癌術後急性増悪を予測する術前CT所見:多施設ケースコントロール研究

論文タイトル
Preoperative CT Findings for Predicting Acute Exacerbation of Interstitial Pneumonia
After Lung Cancer Surgery: A Multicenter Case-Control Study
論文タイトル(訳)
間質性肺炎合併肺癌術後急性増悪を予測する術前CT所見:多施設ケースコントロール研究
DOI
10.2214/AJR.21.25499
ジャーナル名
American Journal of Roentgenology
巻号
American Journal of Roentgenology Vol.217 No.4
著者名(敬称略)
小澤 良之 他
所属
名古屋市立大学大学院医学研究科 放射線医学分野

抄訳

間質性肺炎合併肺癌患者における術後急性増悪の発症を予測するCT所見の調査のため、急性増悪群(AE群)31例、非増悪群(no-AE群)61例につき術前CT所見を比較した。 術前CT上、AE群、no-AE群で通常型間質性肺炎パターンは各々58%、74%にみられた(p=.16)。すりガラス病変の範囲(%)は平均±標準偏差で各々6.3±5.4、3.9±3.8 (p=.03)、コンソリデーションは0.5±1.2、0.1±0.3 (p=.009)、平均肺動脈幹径(mm)は28±4、26±3 (p=.02)で有意差を認めた。 CT所見のみの術後急性増悪予測モデルでは、独立予測因子はすりガラス病変 (オッズ比(OR)=2.8)、コンソリデーション病変 (OR=9.4)、肺動脈幹径 (OR=4.2)であり、このモデルのarea under the curveは 0.75で、陽性的中率71%、陰性的中率77%であった。

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2021/10/19

一過性デキサメサゾン負荷による雄マウスにおける遷延性高血糖とDpp-4遺伝子プロモーター領域のヒストンアセチル化

論文タイトル
Transient Dexamethasone Loading Induces Prolonged Hyperglycemia in Male Mice With Histone Acetylation in Dpp-4 Promoter
論文タイトル(訳)
一過性デキサメサゾン負荷による雄マウスにおける遷延性高血糖とDpp-4遺伝子プロモーター領域のヒストンアセチル化
DOI
10.1210/endocr/bqab193
ジャーナル名
Endocrinology
巻号
Endocrinology Vol. 162 Issue 12 (bqab193)
著者名(敬称略)
宇都 飛鳥, 宮下 和季 他
所属
慶應義塾大学医学部 内科学教室 腎臓内分泌代謝内科

抄訳

糖質コルチコイドを用いたステロイド治療の中止後も高血糖が改善せず、糖尿病が遷延すると「メタステロイド糖尿病」と称されるが、その詳細な病態は解明されていない。本研究では、一時的にステロイド治療を受けその後中止した当院通院患者の、血糖値の経時推移を評価し、もともと耐糖能異常を有しない群において、ステロイド中止後の高血糖が遷延する傾向にあることを見出した。野生型マウスにデキサメサゾン(Dexa)を1か月間負荷して中止したところ、Dexa中止後も持続する高血糖を認めた。その機構を検討したところ、glucagon-like peptide 1 (GLP-1)の分解酵素であるdipeptidyl peptidase-4 (DPP-4)の活性亢進を見出した。Dpp-4遺伝子プロモーター領域のヒストンアセチル化が亢進していたことから、Dexa負荷後の遷延する耐糖能異常にDpp-4遺伝子のエピゲノム変容が関与すると結論した。培養細胞を用いて、Dexa負荷に伴うDpp-4遺伝子エピゲノム変容機構を検討したところ、ヒストンアセチル基転移酵素(histone acetyl- transferase : HAT)と、ヒストン脱アセチル化酵素であるサーチュインの双方が、Dpp-4遺伝子の発現とエピゲノム変容に関与すると考えられた。以上から、糖質コルチコイドによる高血糖ならびにメタステロイド糖尿病に対して、Dpp-4遺伝子のエピゲノム変容に着目した治療が有用であると示唆された。

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2021/10/07

成体マウス初代口蓋上皮細胞(ケラチノサイト)の単離と培養

論文タイトル
Isolation and Culture of Primary Oral Keratinocytes from the Adult Mouse Palate
論文タイトル(訳)
成体マウス初代口蓋上皮細胞(ケラチノサイト)の単離と培養
DOI
10.3791/62820
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (175), e62820
著者名(敬称略)
泉健次、佐田亜衣子
所属
新潟大学大学院医歯学総合研究科 生体組織再生工学分野
熊本大学国際先端医学研究機構 皮膚再生・老化学講座

抄訳

長年にわたり、上皮幹細胞に関する研究は、ヒトやマウスの皮膚を主な対象として行われてきた。口腔粘膜に位置する上皮幹細胞は、そのユニークな機能と特徴から近年注目されている。口腔粘膜上皮幹細胞は、バリア機能の維持に必須の役割を果たすとともに、再生治療への応用のための細胞ソースとしても有用である。しかし、成体マウスの口腔粘膜組織より、初代培養細胞(ケラチノサイト)を効率的に単離・培養するプロトコールがないためにin vitroでの解析が限られていた。我々は、マウス口蓋組織から口腔初代ケラチノサイトを単離するための方法を確立した。低カルシウム条件では、ケラチノサイトは増殖性あるいは幹細胞様の状態で維持され、継代数を増やしても分化は抑制された。マーカー発現解析の結果、培養した口腔ケラチノサイトは基底細胞マーカーのp63、K14、α6-integrinを発現し、分化マーカーのK13と線維芽細胞マーカーのPDGFRαは陰性であった。本培養法により、口腔粘膜上皮幹細胞の機能を研究するための下流のアプリケーションに適した、長期的に培養可能な細胞が得られた。

 

 

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2021/09/21

Stenotrophomonas maltophilia K279a 株が産生するカテコール型シデロフォアの同定と構造的特徴

論文タイトル
Identification and structural characterisation of a catecholate-type siderophore produced by Stenotrophomonas maltophilia K279a
論文タイトル(訳)
Stenotrophomonas maltophilia K279a 株が産生するカテコール型シデロフォアの同定と構造的特徴
DOI
10.1099/mic.0.001071
ジャーナル名
Microbiology
巻号
Microbiology Volume 167, Issue 7
著者名(敬称略)
久富 敦、田中 尚人 他
所属
東京農業大学大学院 農学研究科 環境共生学専攻

抄訳

多くの細菌は鉄を利用する際にシデロフォアを産生する。シデロフォア産生は病原性に関与していることも報告があり、シデロフォア構造を解明することは医薬品開発への応用に期待ができる。Stenotrophomonas maltophilia は、肺炎を引き起こすグラム陰性菌であり、様々な環境に棲息しシデロフォアを産生する。S. maltophiliaの産生するシデロフォア構造を解明することは病原性の制御への応用に期待ができるが、そのシデロフォア構造は未知である。そこで、本研究ではS. maltophiliaの産生するシデロフォア構造の解明を目的とした。逆相HPLCを用いてS. maltophilia K279a 株の培養物からシデロフォアを精製した。シデロフォア構造は、LC-MSや1H, 13C NMRを用いて解析した。S. maltophilia K279a 株は、エンテロバクチンのモノマー分子である2,3-dihydroxybenzoyl-L-serine(DHBS)を産生することが明らかとなった。同時に、S. maltophilia K279aはDHBSと鉄の複合体を取り込むことを示唆した。また、エンテロバクチン生合成遺伝子の一部が欠損していることが影響しS. maltophilia はDHBSを産生することが考えられた。これらの結果はS. maltophilia による感染の制御に期待できる。

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2021/09/15

玄米摂取はZucker ratにおいて非アルコール性脂肪肝の発症をレチノイン酸生合成経路の活性化によって抑制する

論文タイトル
Brown Rice Inhibits Development of Nonalcoholic Fatty Liver Disease in Obese Zucker (fa/fa) Rats by Increasing Lipid Oxidation Via Activation of Retinoic Acid Synthesis
論文タイトル(訳)
玄米摂取はZucker ratにおいて非アルコール性脂肪肝の発症をレチノイン酸生合成経路の活性化によって抑制する
DOI
10.1093/jn/nxab188
ジャーナル名
Journal of Nutrition
巻号
Journal of Nutrition Vol.151 Issue 9 (2705–2713)
著者名(敬称略)
松本 雄宇, 山本 祐司 他
所属
東京農業大学 応用生物科学部 農芸化学科栄養生化学研究室

抄訳

 肥満は、脂質異常症、高血圧、2型糖尿病の原因となるばかりでなく非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)の原因であります。放置すると肝硬変、肝癌へと変遷することが知られておりますが、基本的に食事カロリーの制限と運動の推奨が治療戦略であり、積極的な治療方法はまだ確立されていないのが現状です。
 本研究ではNAFLDを発症することが報告されているZucker fatty ラットにAIN-93Gを基本飼料として飼料中の炭水化物源を白米や玄米に置き換えた飼料を調製し100日間与えたところ、AIN-93Gを給餌したラットは脂肪肝を発症したにもかかわらず、白米、特に玄米で置き換えを行った飼料群では、脂肪肝の形成の抑制がみられました。解析の結果、玄米摂取により肝臓中のビタミンAの活性本体であるレチノイン酸生合成経路が上昇していたことがわかりました。レチノイン酸は核内受容体を介して、脂肪酸の分解(β酸化)に関わる因子の遺伝子発現を制御することから玄米に含まれる未知成分がレチノイン酸生合成を高め、脂質代謝改善を促すことでNAFLDの改善効果が現れたものと考察しています。著者らは、肥満によるNAFLD発症が、玄米をたべることで、予防・抑制できることと、その作用機序がこれまで報告例のない「ビタミンA代謝を亢進」することで脂質代謝を改善することを明らかにしました。

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2021/09/07

小児肺移植後の吸気筋トレーニングの効果

論文タイトル
Effects of inspiratory muscle training after lung transplantation in children
論文タイトル(訳)
小児肺移植後の吸気筋トレーニングの効果
DOI
10.1136/bcr-2020-241114
ジャーナル名
BMJ Case Reports
巻号
BMJ Case Reports Vol.14 Issue 7 (2021)
著者名(敬称略)
山鹿 隆義 山本 周平 酒井 康成 市山 崇史
所属
健康科学大学健康科学部理学療法学科

抄訳

肺移植後の患者に呼吸リハビリテーションは重要とされている。しかし、肺移植後の呼吸リハビリテーションは確立しておらず、小児肺移植後の吸気筋トレーニングの効果は不明である.我々は,肺移植後の小児患者に吸気筋トレーニングを導入し、呼吸機能と呼吸困難を改善できるかどうかを検討した.症例は13歳の男児で、再生不良性貧血に対する同種骨髄移植後に移植片対宿主病による肺病変により、両側生体肺移植を実施された。その後、自宅退院したが、肺機能検査の値は年齢予測値と比較し、低値であり、日常生活は呼吸困難により制限があった。この症例に最大吸気圧の約30%の強さの吸気筋トレーニングを1日2回、2カ月間実施した。その結果、最大吸気圧の向上だけでなく、肺機能検査の値や呼吸困難の改善を認めた。小児肺移植後の吸気筋トレーニングは、呼吸機能や呼吸困難の改善に役立つ可能性を示した。

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2021/09/07

ペリセントロメア領域のノンコーディングRNAはCTCFの機能を阻害し、炎症性遺伝子群の発現を亢進させる

論文タイトル
Pericentromeric noncoding RNA changes DNA binding of CTCF and inflammatory gene expression in senescence and cancer
論文タイトル(訳)
ペリセントロメア領域のノンコーディングRNAはCTCFの機能を阻害し、炎症性遺伝子群の発現を亢進させる
DOI
10.1073/pnas.2025647118
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
PNAS August 31, 2021 118 (35) e2025647118
著者名(敬称略)
宮田 憲一、高橋 暁子 他
所属
公益財団法人 がん研究会 がん研究所 細胞老化プロジェクト

抄訳

加齢に伴い体内に蓄積した老化細胞は様々な炎症性蛋白質を分泌するSASP (Senescence-Associated Secretory Phenotype)をおこすことで、周囲の組織に炎症や発がんを誘発する。そのため、超高齢化社会を迎えた我が国においてSASP制御機構の解明が重要な課題とされている。本研究ではエピゲノム解析の結果から、老化細胞ではゲノムの反復配列(ペリセントロメア領域)の染色体が開き、この領域からノンコーディングRNA(サテライトII RNA)の転写が亢進していることを見出した。また、サテライトII RNAは適切な染色体構造の維持に重要なCTCFと結合し、その機能を阻害することで染色体間相互作用を変化させ、炎症性遺伝子群(SASP遺伝子群)の転写を促すことを明らかにした。さらに、がん微小環境においてがん細胞だけでなく、がん関連間質細胞(CAFs: Cancer Associated Fibroblasts)においてもサテライトII RNAが高発現しがんの悪性化に寄与していることが示唆された。これらの結果より、サテライトII RNAによる新たなSASP制御機構が解明され、サテライトII RNAが加齢性疾患の新規治療標的となりうる可能性が示唆された。

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2021/09/03

SPATA33はカルシニューリンをミトコンドリアに局在させることにより精子運動性を制御する

論文タイトル
SPATA33 localizes calcineurin to the mitochondria and regulates sperm motility in mice
論文タイトル(訳)
SPATA33はカルシニューリンをミトコンドリアに局在させることにより精子運動性を制御する
DOI
10.1073/pnas.2106673118
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
PNAS August 31, 2021 118 (35) e2106673118
著者名(敬称略)
宮田 治彦 伊川 正人 他
所属
大阪大学 微生物病研究所・附属遺伝情報実験センター 遺伝子機能解析分野

抄訳

カルシニューリンはカルシウム依存性の脱リン酸化酵素であり、免疫応答を含む様々な生命現象に関わっている。精子特異的なカルシニューリン (精子カルシニューリン) は、受精に必要な精子の運動性を制御しており、男性避妊薬の有望な標的だと考えられている。しかし、精子カルシニューリンと免疫細胞のカルシニューリンはアミノ酸配列が類似しており、精子カルシニューリンを阻害すると免疫機能も抑制されてしまう可能性がある。そのため、精子特異的にカルシニューリンの機能を制御する機構の解明が望まれていた。本研究では、カルシニューリンとの相互作用に関わるPxIxIT配列を含み、且つ精巣特異的に発現する遺伝子をin silicoで探索した。同定した3つの遺伝子のノックアウト (KO) マウスを作製したところ、SPATA33が精子カルシニューリンと相互作用することを見つけた。Spata33のKOマウスは、精子カルシニューリンのKOマウスと同様に精子運動性と生殖能力の低下を示した。さらに、Spata33のKO精巣ではカルシニューリンがミトコンドリアから消失していた。SPATA33はカルシニューリンをミトコンドリアに局在させることにより精子の運動性を制御していると考えられる。SPATA33を標的にすることで、精子特異的にカルシニューリンの機能を阻害する男性避妊薬の開発が期待される。

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2021/09/01

ヒトパルボウイルスB19感染症による全身性浮腫

論文タイトル
Generalised edema with human parvovirus B19 infection
論文タイトル(訳)
ヒトパルボウイルスB19感染症による全身性浮腫
DOI
10.1136/bcr-2021-243130
ジャーナル名
BMJ Case Reports
巻号
BMJ Case Reports Vol.14 Issue 7 (2021)
著者名(敬称略)
早野 聡史 押川 英仁
所属
熊本赤十字病院

抄訳

46歳女性が14日前からの全身浮腫と息切れにて来院した。彼女は1週間で6kgの体重増加を認めた。1ヶ月前に先行する発熱・倦怠感があり、関節痛はなかったが、体幹や四肢に紅斑を認めていた。身体所見では、両側性の下腿の圧痕性浮腫を認めた。また、胸部X線検査では、両側の胸水が貯留していた。その後、ヒトパルボウイルスB19(B19V)IgM(9.80)が陽性だったため、B19Vによる全身性浮腫と診断した。浮腫は少量の利尿薬の内服で改善を認めた。 B19V感染症による心不全や腎不全を伴わない全身浮腫の症例が報告されている。胎児と違って、成人のB19V感染症では心不全や溶血などは起こりにくく、本症例では、心筋炎・心外膜炎などを疑う所見はなく、心不全徴候も認めなかった。病因はまだ解明されておらず、発症から浮腫の期間は多くの場合、4-13日ほどであり、体重は2.5-7kg程度増加する。成人の急性発症の全身浮腫を認めた場合、B19V感染症も鑑別に挙げる必要がある。

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2021/09/01

成人XLH25例における合併症の頻度

論文タイトル
Incidence of Complications in 25 Adult Patients With X-linked Hypophosphatemia
論文タイトル(訳)
成人XLH25例における合併症の頻度
DOI
10.1210/clinem/dgab282
ジャーナル名
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism
巻号
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism Vol.106 Issue9 (e3682–e3692)
著者名(敬称略)
加藤 創生, 伊東 伸朗 他
所属
東京大学医学部附属病院 腎臓・内分泌内科

抄訳

X連鎖性低リン血症性低リン血症性くる病 (X-linked hypophosphatemic rickets:XLH)では成人期に骨軟化症以外の合併症を呈するが、頻度・重症度についてのまとまった報告は少ない。
今回我々は、成人XLH25例の脊椎CT、股関節・膝関節・アキレス腱Xp、腹部超音波検査、聴力検査の結果を後方視的に解析し、骨軟化症以外の合併症についてまとめた。前縦靭帯・後縦靭帯・黄色靭帯骨化症の重症度評価にOA・OP・OY indexを用い、OA/OP/OY indexの合計をOS indexとして脊柱靭帯骨化症の重症度の指標とした。また、股関節・膝関節の骨棘評価にはKellgren-Lawrence (KL) gradeを用いた。25例中20例(80%)で脊柱靭帯骨化を認め、OA/OP/OY/OS indexの中央値(range)はそれぞれ2(0-22), 0(0-15), 6(0-13), 12(0-41)であった。股関節骨棘・膝関節骨棘はそれぞれ24例(96%)、17例(68%)で認め、KL gradeの中央値はそれぞれ3および2であった。アキレス腱付着部症、腎石灰化、聴力障害はそれぞれ、17例(72%)、17例(72%)、8例(32%)で認めた。本検討によって、成人XLHの異所性骨化の頻度は一般人口と比較して高く、また重症であることが明らかとなった。今後は若年成人の脊柱靭帯骨化症や関節骨棘、および年齢にかかわらずそれらが顕著な症例では、未診断のXLHが背景にある可能性を考慮したい。

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2021/08/31

S1PR3-G12バイアスド作動薬ALESIAによるがん飢餓療法の可能性

論文タイトル
S1PR3–G12-biased agonist ALESIA targets cancer metabolism and promotes glucose starvation
論文タイトル(訳)
S1PR3-G12バイアスド作動薬ALESIAによるがん飢餓療法の可能性
DOI
10.1016/j.chembiol.2021.01.004
ジャーナル名
Cell Chemical Biology
巻号
Cell Chemical Biology Volume 28, Issue 8, August 19, 2021
著者名(敬称略)
萩原 正敏 豊本 雅靖
所属
京都大学大学院医学研究科・医学部 形態形成機構学

抄訳

がん組織は周辺の正常組織に比べて、組織重量あたりのグルコース量が著しく低下している。この現象は、がん細胞がワールブルグ効果によって多量のグルコースを消費していることに起因する。そこで我々は、低グルコース環境下のみでがん細胞増殖阻害を示す化合物を表現型スクリーニングで見出し、その化合物の標的分子と作用機序を解明した。本化合物はスフィンゴシン-1-リン酸(S1P)受容体S1PR3に結合するが、内因性リガンドのS1Pとは異なるバイアスド作用によって一酸化窒素産生を促進し、がん細胞のプログラム細胞死を引き起こすことが判明した。本化合はXenograftモデルマウスにおいても抗腫瘍作用を示し、がん細胞だけをグルコース飢餓で死滅させる副作用の少ない新しい抗がん剤として期待できるため、ALESIA; Anti-cancer Ligand Enhancing Starvation-Induced Apoptosisと命名した。

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2021/08/17

頭頸部傍神経節腫の遺伝子変異の鑑別におけるMR画像とCTの評価

論文タイトル
Assessment of MR Imaging and CT in Differentiating Hereditary and Nonhereditary Paragangliomas
論文タイトル(訳)
頭頸部傍神経節腫の遺伝子変異の鑑別におけるMR画像とCTの評価
DOI
10.3174/ajnr.A7166
ジャーナル名
American Journal of Neuroradiology
巻号
American Journal of Neuroradiology Vol. 42 No.7
著者名(敬称略)
太田 義明 他
所属
ミシガン大学神経放射線

抄訳

背景: 頭頸部の傍神経節腫は,コハク酸脱水素酵素ファミリーの遺伝子変異と関連することが報告されている。本研究は、頭頸部の傍神経節腫におけるコハク酸デヒドロゲナーゼ遺伝子変異を従来型C TとM R Iの画像的特徴や拡散強調画像により検出できるかどうかを評価したものである。 方法: 2015年1月から2020年1月の観察期間で、48病変(コハク酸デヒドロゲナーゼ遺伝子変異陽性30病変、コハク酸デヒドロゲナーゼ遺伝子変異陰性18病変を対象とした。従来型CTとMRIの画像的特徴とADC値を上記2群間で比較した。診断性能における2群間の差はt-testを用いて評価した。P値<.05を有意とした。 結果: ADCの平均値と最大値、正規化されたADCの平均値と最大値に2群間で統計的な有意差が認められた。従来型C TとM R Iの画像的特徴やA D Cの最小値、正規化されたADC値には有意差は認められなかった。 結論: ADC値は、頭頸部のコハク酸デヒドロゲナーゼ変異陽性を検出できる画像バイオマーカーである。

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2021/08/13

正常肝患者における左下横隔静脈の血管造影解剖
―門脈圧亢進症の治療戦略へのインパクト―

論文タイトル
Anatomy of Left Inferior Phrenic Vein in Patients Without Portal Hypertension
論文タイトル(訳)
正常肝患者における左下横隔静脈の血管造影解剖 ―門脈圧亢進症の治療戦略へのインパクト―
DOI
10.2214/AJR.20.23106
ジャーナル名
American Journal of Roentgenology
巻号
American Journal of Roentgenology Vol.217 No.2
著者名(敬称略)
荒木 拓次 他
所属
山梨大学医学部放射線医学講座

抄訳

左下横隔静脈は門脈圧亢進症の胃静脈瘤の排血路となりうる静脈であるが、正常肝患者での血管解剖はまとまった報告がない。今回、副腎静脈側からの左下横隔静脈造影血管解剖を分類評価した。逆行性左下横隔静脈造影を行った214例が対象。血管造影分類1型:造影剤が横隔膜下水平枝に到達71.5% (153/214); 1a:1本の主静脈で連続22.4% (48/214)、1b: 数本の細い静脈が吻合しながら到達49.0% (105/214)、2型: 造影剤が横隔膜下水平枝に到達しない28.5% (61/214); 2a: 非常に細く未発達6.5% (14/214)、2b:吻合枝から体循環静脈に流出11.2% (24/214)、2c: 門脈に流出10.7% (23/214)であった。門脈の描出は2c型以外にも1ab型などで17.3%(37/214)で認められ、門脈の吻合は28.0% (60/214)で確認された。左下横隔静脈は複雑な解剖的形態を持ち、門脈との吻合が28%で認められた。この吻合が胃静脈瘤の原型となると推測された。

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2021/08/06

多成分系であることがクモ糸高機能発現に必須である。

論文タイトル
Multicomponent nature underlies the extraordinary mechanical properties of spider dragline silk
論文タイトル(訳)
多成分系であることがクモ糸高機能発現に必須である。
DOI
10.1073/pnas.2107065118
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
PNAS August 3, 2021 118 (31) e2107065118
著者名(敬称略)
河野 暢明, 荒川 和晴 他
所属
慶應義塾大学先端生命科学研究所

抄訳

ジョロウグモ亜目のクモ牽引糸は、優れた伸縮性と引張強度を兼ね備えた比類のない強靭さが特徴であり、持続可能なバイオポリマー素材としての産業応用が期待されている。本研究では、クモ牽引糸の分子組成を明らかにするとともに、その機械的特性の発現における構成要素の役割を明らかにすることを目的として、ジョロウグモ亜目の4種のクモを対象に、高品質なゲノム配列の決定、絹糸腺のトランスクリプトミクス、牽引糸タンパクのプロテオミクスを組み合わせたマルチオミクス解析を行った。その結果、ジョロウグモ亜科に特有のクモ糸遺伝子スピドロインであるMaSp3Bと、スピドロイン以外のいくつかのSpiCEタンパク質が一貫して存在していることが確認された。これらの成分を人工的に合成し、in vitroで組み合わせたところ、従来考えられていたMaSp1とMaSp2に加えて、新規に見つかったMaSp3BとSpiCEを持つ多成分系であることがクモ牽引糸の機械的特性を実現するために不可欠であることがわかった。

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2021/08/05

後脳におけるグルコース利用率の低下により活性化する、後脳グルコースセンサーと視床下部を結ぶ神経伝達経路の形態学的解析

論文タイトル
Morphological Analysis of the Hindbrain Glucose Sensor-Hypothalamic Neural Pathway Activated by Hindbrain Glucoprivation
論文タイトル(訳)
後脳におけるグルコース利用率の低下により活性化する、後脳グルコースセンサーと視床下部を結ぶ神経伝達経路の形態学的解析
DOI
10.1210/endocr/bqab125
ジャーナル名
Endocrinology
巻号
Endocrinology Volume 162 Issue 9 (bqab125)
著者名(敬称略)
佐藤 真梨萌, 松田 二子 他
所属
東京大学 大学院 農学生命科学研究科 獣医学専攻 獣医繁殖育種学研究室

抄訳

後脳には、低栄養を感知し、糖新生や摂食、生殖機能を制御する機構が存在する。これまでのin vitro実験により、後脳の第4脳室(4V)を裏打ちする上衣細胞が、グルコースセンサーである可能性が示唆されてきた。本研究では、4V上衣細胞がグルコース利用率の低下を感知することをin vivoで証明すると同時に、低栄養時に生理機能を制御する、4V上衣細胞を起点とした神経伝達経路を同定することを目的とした。グルコース代謝阻害剤を雄ラットの4Vに0.5時間投与すると、4V上衣細胞が最初に活性化することを組織学的手法により明らかにした。また、1時間投与した場合は、血糖値上昇、摂食量増加及び血中テストステロン濃度低下が生じるほか、4V上衣細胞に加え、後脳のカテコールアミン神経細胞及びニューロペプチドY(NPY)神経細胞、視床下部の副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン神経細胞及びNPY神経細胞が活性化することを発見した。以上の結果から、4V上衣細胞はグルコース利用率の低下を感知し、後脳の神経細胞ならびに視床下部の神経細胞を介して、生理機能を制御する可能性が示唆された。

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