抄訳
クッシング病は、高コルチゾール血症下においてもACTH分泌が持続するという特徴をもつ。この分子的機序を明らかにする目的で、我々はマウスACTH産生腫瘍細胞株を用い、グルココルチコイドによるACTH放出抑制に対し11b-HSD阻害がどのような効果を持つかを調査した。この細胞株には11b-HSD2および11b-HSD1の両者が発現していた。Carbenoxoloneを用いてこれを阻害すると、グルココルチコイドによるネガティブフィードバックは有意に改善した。またcarbenoxoloneはコルチゾールによって誘導されるアポトーシスを増強した。この実験系には11b-HSD2の基質であるコルチゾールのみが投与されていたので、これらの所見は11b-HSD2が阻害された効果である可能性が高いと考えられた。ACTH産生腺腫でグルココルチコイド抑制がかかりにくいことの機序に、11b-HSD2の異所性発現が少なくとも部分的に関与している、と我々は結論した。11b-HSD2の阻害はクッシング病の薬物療法に応用できる可能性がある。