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国内研究者論文紹介

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ユサコでは日本人の論文が掲載された海外学術雑誌に注目して、随時ご紹介しております。

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2023/07/25

BAG6は、RhoAのユビキチン依存的分解を介してストレスファイバーの形成を制御する

論文タイトル
BAG6 supports stress fiber formation by preventing the ubiquitin-mediated degradation of RhoA
論文タイトル(訳)
BAG6は、RhoAのユビキチン依存的分解を介してストレスファイバーの形成を制御する.
DOI
10.1091/mbc.E22-08-0355
ジャーナル名
Molecular Biology of the Cell
巻号
Molecular Biology of the Cell Volume 34, Issue 4
著者名(敬称略)
宮内 真帆、川原 裕之 他
所属
東京都立大学理学部生命科学科 細胞生化学研究室

抄訳

 RhoA低分子量GTPaseは、ストレスファイバー形成の調節を介して、細胞の形態・接着・移動・浸潤などを制御する。これまでの研究から、RhoAタンパク質はCUL3ユビキチンリガーゼにより分解誘導されうることが知られていたが、このプロセスがどのように調節されているかは明らかではなかった。本論文で我々は、RhoAの安定性はBAG6シャペロンにより支えられていることを見出した。BAG6ノックダウンはCUL3ユビキチンリガーゼによるRhoAの認識と分解を促進し、ストレスファイバーやフォーカルアドヒージョンの減少、ひいては細胞遊走の低下を誘導する。重要なことに、これらの表現型はRhoAの過剰発現、あるいはCUL3ノックダウンなどによりレスキューされた。さらに、BAG6によるRhoA認識は疎水性相互作用を介していることも判明した。BAG6による疎水領域の認識は、構造不良タンパク質の認識メカニズムと共通していることから、BAG6を介したタンパク質品質管理系とアクチンファイバー構築の制御系にはクロストークがありうることが本論文で初めて示唆された。

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2023/07/25

コレステロールとアクチンの視点から見た細胞膜:シンガー・ニコルソン流動モザイクモデル50周年を記念した新しい細胞膜モデル

論文タイトル
Cholesterol- and actin-centered view of the plasma membrane: updating the Singer–Nicolson fluid mosaic model to commemorate its 50th anniversary
論文タイトル(訳)
コレステロールとアクチンの視点から見た細胞膜:シンガー・ニコルソン流動モザイクモデル50周年を記念した新しい細胞膜モデル
DOI
10.1091/mbc.E20-12-0809
ジャーナル名
Molecular Biology of the Cell
巻号
Molecular Biology of the Cell Volume 34, Issue 5
著者名(敬称略)
楠見 明弘 他
所属
沖縄科学技術大学院大学 膜協同性ユニット

抄訳

 細胞膜の理解に関して、全く違った二つの視点が存在する。一つは、細胞膜は元来のシンガー・ニコルソンの流動モザイクモデルによって記述される単純な流体、というものである。他方は、細胞膜は、数千の分子種が互いに様々な相互作用をすることで形成され、かつ常に変化するクラスタとドメインからなっており、細胞膜の構造と分子動態を説明する単純な規則は存在しないとするものである。現在では、後者の見方が一般的である。しかし、何らかの規則は見いだせないものであろうか? 本総説で、我々は、細胞膜の二つのもっとも主要な構成要素であるコレステロールとアクチン線維の観点から細胞膜を見ることが、細胞膜の組織化、動態、および機能の作動機構を理解するための優れた視点を提供すると提案する。特に、細胞膜内で共存するアクチンによる区画(仕切り)と脂質ラフトドメイン、および、それらの相互作用が細胞膜の構成に重要であり、それらがどのように細胞膜の機能を遂行するかについて述べる。この視点から、流動モザイクモデルをさらに発展させた新しい細胞膜モデルを提案する。

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2023/07/21

ATM依存性のCHD7リン酸化は、放射線被ばく胎児における形態形成とカップルしたDSBストレス応答を制御している

論文タイトル
ATM–dependent phosphorylation of CHD7 regulates morphogenesis-coupled DSB stress response in fetal radiation exposure
論文タイトル(訳)
ATM依存性のCHD7リン酸化は、放射線被ばく胎児における形態形成とカップルしたDSBストレス応答を制御している
DOI
10.1091/mbc.E22-10-0450
ジャーナル名
Molecular Biology of the Cell
巻号
Molecular Biology of the Cell Volume. 34, Issue. 5
著者名(敬称略)
野田 朝男 他
所属
放射線影響研究所 分子生物科学部

抄訳

放射線で生じるゲノム損傷のうち、修復が困難なDNA二重鎖切断 (DSB)は細胞に重大な影響を及ぼします。このような損傷を持つ細胞に特徴的な遺伝子発現を調べる過程で、転写因子CHD7 (Chromodomain Helicase DNA binding protein 7) がATM依存的にリン酸化されていることを今回見つけました。CHD7はユビキタスな転写因子ですが、胎児発生期においては、神経冠細胞から目、口、耳や脳などの神経感覚器官や心臓の形態形成を司る転写因子として機能します。この形態形成転写因子タンパク質が放射線によりリン酸化され、ゲノム中の修復が困難なDSB部位に集積するという結果から、形態形成期には転写とカップルしたDSB修復機構が存在するのではないかと思われます。形態形成・器官形成という不可逆でcriticalな生物過程を遂行するために、この転写因子は自身がDSB修復機能も持つように進化してきたのではないでしょうか。              CHD7のハプロ不全は胎児に広範な先天性形成異常1 (congenital malformation) を誘発する事が知られています。放射線でも胎児の形態形成異常2が誘発されます。胎児の放射線被ばくにおいて、CHD7がDSB修復反応に優先的に動員された場合は、形態形成活性の一時的な低下(ハプロ不全のような状況)が予想されます。これが放射線誘発胎児形態形成異常の原因のひとつになっているのではないかと私たちは考えています。つまり、軽度・中程度のゲノム損傷の場合、CHD7は傷の修復と神経冠形態形成を同時にうまくやりくりして危機的状況を乗り越えることができるが、もしもゲノム損傷が多すぎると、形態形成がおろそかになり先天性形成異常が起こりやすくなる、ということと理解します。 注1:以前は「奇形」と言う言葉が使われました。 注2:胎児は「被ばく一世(胎内被ばく)」です。遺伝影響(親の生殖細胞被ばくによる二世影響)とは区別して考える必要があります。

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2023/07/18

カポジ肉腫関連ヘルペスウイルスORF67.5は、ターミナーゼ複合体構成因子として機能する

論文タイトル
Kaposi’s Sarcoma-Associated Herpesvirus ORF67.5 Functions as a Component of the Terminase Complex
論文タイトル(訳)
カポジ肉腫関連ヘルペスウイルスORF67.5は、ターミナーゼ複合体構成因子として機能する
DOI
10.1128/jvi.00475-23
ジャーナル名
Journal of Virology
巻号
Journal of Virology June 2023  Volume 97  Issue 6  e00475-23
著者名(敬称略)
祝迫 佑紀 藤室 雅弘 他
所属
京都薬科大学 細胞生物学分野

抄訳

カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)は感染者の免疫不全時にカポジ肉腫やB細胞性リンパ腫を引き起こすヒトヘルペスウイルスである。単純ヘルペスウイルスやヒトサイトメガロウイルス等の他のヘルペスウイルスと異なり、KSHVのカプシド形成はほとんど解明されていない。特に、複製後の前駆体ウイルスDNAのプロセッシング(ターミナルリピート部分での切断)に関わると推測されているKSHVのターミナーゼ複合体は不明な点が多い。他のヘルペスウイルスとの相同性から、KSHVターミナーゼ複合体はKSHVがコードするORF7、ORF29、ORF67.5遺伝子産物によって構成されると推測される。我々は以前、ORF7欠損KSHVは、正常なウイルス産生を行うことができず、さらに新規形態の未成熟カプシドを形成することを報告し、これを”Soccer ball-like capsid”と名付けた。本論文では、ORF67.5欠損KSHVもまた、”Soccer ball-like capsid"を形成することを証明した。さらに、ORF67.5はターミナルリピートの切断、感染性ウイルスの産生、およびORF7とORF29の相互作用の増強に必要であった。ORF67.5には、ヒトヘルペスウイルスホモログ間で高度に保存された領域がいくつかある。これら保存領域はウイルス産生に必要であり、ORF67.5とORF7との相互作用にも必要であることを明らかにした。これらの結果はAIにて予測したKSHVターミナーゼ複合体構造モデルによっても支持された。本論文は、ORF67.5がKSHVターミナーゼ複合体の形成と前駆体ウイルスDNAのターミナルリピート部位での切断に必須であることを示す初めての報告である。

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2023/07/11

アミノ酸源の添加が最少培地におけるShewanella oneidensis MR-1株の発酵増殖を促進する

論文タイトル
Supplementation with Amino Acid Sources Facilitates Fermentative Growth of Shewanella oneidensis MR-1 in Defined Media
論文タイトル(訳)
アミノ酸源の添加が最少培地におけるShewanella oneidensis MR-1株の発酵増殖を促進する
DOI
10.1128/aem.00868-23
ジャーナル名
Applied and Environmental Microbiology
巻号
Applied and Environmental Microbiology 27 June 2023 e00868-23
著者名(敬称略)
池田壮汰 高妻篤史 他
所属
東京薬科大学生命科学部生命エネルギー工学研究室

抄訳

Shewanella oneidensis MR-1株は環境細菌の多様なエネルギー代謝能力を解明するためのモデルとしてよく研究されており、金属酸化物やフマル酸などの様々な電子受容体を利用できることが知られている。一方、本株は乳酸発酵に必要な遺伝子を備えているにも関わらず、電子受容体を含まない最少培地中では糖を発酵して増殖することができない。本論文ではなぜMR-1株が糖発酵により増殖できないのかを明らかにするために、電子受容体(フマル酸)存在下と非存在下でのトランスクリプトームを比較した。その結果、電子受容体非存在下(発酵条件)では、細胞増殖に必要な炭素代謝(TCAサイクルやアミノ酸合成等)に関与する多くの遺伝子の発現が抑制されていた。また、最少培地中にアミノ酸源(トリプトンやアミノ酸混合液)を添加した培地では、本株が糖発酵により増殖できることも明らかになった。以上の結果から、MR-1株は電子受容体が欠乏した際にエネルギー消費を最小化するために環境中からアミノ酸を取り込むように代謝を制御しており、そのために最少培地における発酵増殖が阻害されていることが示唆された。

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2023/07/10

免疫細胞の浸潤研究に適した血液脳関門構成内皮細胞の分化誘導

論文タイトル
Differentiation of Human Induced Pluripotent Stem Cells to Brain Microvascular Endothelial Cell-Like Cells with a Mature Immune Phenotype
論文タイトル(訳)
免疫細胞の浸潤研究に適した血液脳関門構成内皮細胞の分化誘導
DOI
10.3791/65134
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (195), e65134
著者名(敬称略)
松尾欣哉 西原秀昭 他
所属
山口大学大学院医学系研究科臨床神経学講座
山口大学医学部 神経・筋難病治療学講座

抄訳

血液脳関門 (blood-brain barrier:BBB) の破綻は種々の神経疾患でみられる病理所見だが,患者由来BBB検体の入手が困難であることが研究の障壁であった.我々はヒト人工多能性幹細胞 (human induced pluripotent stem cell:hiPSC)から脳微小血管内皮細胞様細胞を誘導する手法を開発し,患者由来BBBモデルを用いた研究を可能にした.まずWnt/β-cateninシグナルを活性化しhiPSCを内皮前駆細胞に分化させ,磁気ビーズを用いた細胞選別でCD31陽性細胞を採取した.一定の割合で含まれる平滑筋様細胞を複数回の継代によって分離し,BBBの特性をもった純粋な内皮細胞を得た.本モデルは,ヒト初代培養細胞同等のバリア機能を有し,既存のhiPSC 由来 in vitro BBB モデルと比べ,形態および発現遺伝子が高純度な内皮細胞の性質を有することと,適切な接着分子が発現している利点があり,BBBと免疫細胞との相互作用の研究に有効なモデルである.

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2023/07/07

ラット間における腹部異所性心移植の手術手技の改良と新規大動脈弁逆流モデルの開発

論文タイトル
Modified Heterotopic Abdominal Heart Transplantation and a Novel Aortic Regurgitation Model in Rats
論文タイトル(訳)
ラット間における腹部異所性心移植の手術手技の改良と新規大動脈弁逆流モデルの開発
DOI
10.3791/64813
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (196), e64813
著者名(敬称略)
辻 重人 嶋田 正吾 他
所属
東京大学医学部附属病院 心臓外科

抄訳

50年以上前からマウスやラット間における腹部異所性心移植が報告されており、様々な改良がなされてきた。今回我々は、移植手技において心筋保護を強化する改良を行うことで、移植心の機能を維持し、初学者でも高い成功率を達成できる手術手技を確立した。①心臓摘出前にドナーの腹部大動脈を切開・瀉血してドナー心の負荷軽減を図ること、②心筋保護液をドナー心の冠動脈に注入すること、③吻合操作中にドナー心の持続的な局所冷却を行うこと、の3点が手技のポイントである。
加えて、右頚動脈からカテーテルを挿入し、エコーガイド下で大動脈弁を穿刺する従来の大動脈弁逆流モデルとは異なる、腹部異所性心移植を用いた新たな大動脈弁逆流モデルを開発した。ドナー心摘出後に腕頭動脈からガイドワイヤーを挿入し、大動脈弁を穿刺して大動脈弁逆流を作成した上でレシピエントへ移植する方法である。既存のモデルと比較して穿刺手技が容易であり、また大動脈弁逆流を作成したドナー心はレシピエントの循環に直接影響しないため、既存のモデルと比較してより重度な大動脈弁逆流モデルが作成可能と考えている。

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2023/07/06

Alicyclobacillaceae科の新属新種の土壌細菌Collibacillus ludicampi

論文タイトル
Collibacillus ludicampi gen. nov., sp. nov., a new soil bacterium of the family Alicyclobacillaceae
論文タイトル(訳)
Alicyclobacillaceae科の新属新種の土壌細菌Collibacillus ludicampi
DOI
https://doi.org/10.1099/ijsem.0.005827
ジャーナル名
International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology
巻号
Volume 73, Issue 5
著者名(敬称略)
城島 透、森 美穂
所属
近畿大学 農学部 環境管理学科

抄訳

新規な中程度好熱性、好気性細菌TP075株は、日本の運動場の土から単離された。TP075株は桿菌であり、好気性で芽胞を形成し、水酸化カリウム法によりグラム陽性と判定された。増殖の最適pHは4.0-5.0、最適温度は47-50℃であった。ドラフトゲノム配列から、GC含量は46.5%と判明した。主要な脂肪酸は、分岐鎖脂肪酸(iso-C15:0, anteiso-C15:0, and iso-C16:0)であった。16SリボソームRNA遺伝子による分子系統解析の結果、TP075株は、Alicyclobacillaceae科の細菌であり、Effusibacillus consociatus CCUG53762T (92.6%)、およびTumebacillus soil CAU11108T (92.5%)に対して最も高い類似性を示した。ゲノム解析の結果、TP075株は、Effusibacillus pohliae DSM 22757に対して最も高い類似性を示し、average amino acid identity (AAI)は62.7%、average nucleotide identity (gANI)は70.86%であった。以上の結果より、TP075株は、新属の新種であり、Collibacillus ludicampi、基準株はTP075株(JCM34430=TBRC15186)として提案された。

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2023/07/06

イメグリミンとメトホルミンの併用療法はdb/dbマウスにおいて膵β細胞保護作用を示す

論文タイトル
Protective Effects of Imeglimin and Metformin Combination Therapy on β-Cells in db/db Male Mice
論文タイトル(訳)
イメグリミンとメトホルミンの併用療法はdb/dbマウスにおいて膵β細胞保護作用を示す
DOI
10.1210/endocr/bqad095
ジャーナル名
Endocrinology
巻号
Endocrinology, Volume 164, Issue 8, August 2023, bqad095
著者名(敬称略)
西山 邦幸, 白川 純 他
所属
群馬大学 生体調節研究所 代謝疾患医科学分野

抄訳

本研究では、糖尿病治療薬であるイメグリミンとメトホルミンとの併用療法の、2型糖尿病モデルマウスであるdb/dbマウスにおける効果を検証した。イメグリミンとメトホルミンとの併用療法により、インスリン分泌のグルコース応答性回復、膵β細胞増殖促進、および膵β細胞アポトーシス抑制が認められた。膵島の網羅的遺伝子発現解析により、イメグリミンとメトホルミンの併用は、アポトーシス関連遺伝子群の発現を制御することが示された。db/dbマウスの単離膵島や膵β細胞株に直接イメグリミンとメトホルミンを添加しても、同様にアポトーシスが抑制された。以上より、イメグリミンとメトホルミンの併用は、直接作用により膵β細胞保護効果を有し、膵β細胞機能や量を維持する2型糖尿病治療に有用であることが示唆された。

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2023/07/03

細胞の成長ゆらぎがクローン集団をより速く成長させる

論文タイトル
Noise-driven growth rate gain in clonal cellular populations
論文タイトル(訳)
細胞の成長ゆらぎがクローン集団をより速く成長させる
DOI
10.1073/pnas.1519412113
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
PNAS March 22, 2016 vol. 113 no. 12 3251–3256
著者名(敬称略)
橋本幹弘 若本祐一他
所属
東京大学 大学院総合文化研究科 広域科学専攻 相関基礎科学系

抄訳

同じ遺伝情報をもつクローン細胞を同じ環境に置いたとしても、個々の細胞のさまざまな性質(表現型)には、しばしば大きなばらつきが観察されます。このような「表現型ゆらぎ」は遺伝情報と異なり子孫細胞に安定に継承されないため、これまでその進化的意義については十分に理解されてきませんでした。今回のこの論文では、大腸菌のクローン細胞集団を1細胞レベルの精度で100世代以上の長期にわたって連続観察可能な計測システムを開発し、これを用いることで、細胞レベルの成長ゆらぎが大きいほど、それら細胞によって構成される細胞集団がより速く成長できることを定量的に明らかにしました。この結果は、表現型ゆらぎの明確な進化的意義を示すとともに、細胞集団の成長能が細胞の平均的な成長能と定量的には必ずしも一致しないという興味深い事実を実験的に確認するものです。さらにこの論文では、異なる環境条件下での成長ゆらぎの間に成立する新たな定量的法則も発見し、この法則に基づいて、成長ゆらぎの情報から各生物種の成長率の原理的上限を知ることができる可能性も示唆しています。

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