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国内研究者論文紹介

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ユサコでは日本人の論文が掲載された海外学術雑誌に注目して、随時ご紹介しております。

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日本人論文紹介:一覧

2025/04/18

成体マウスにおけるElovl1欠損後の時間依存的な表皮セラミド組成変化と皮膚バリア機能の関係

論文タイトル
Relationship between time-dependent epidermal ceramide composition changes and skin barrier function in adult mice
論文タイトル(訳)
成体マウスにおけるElovl1欠損後の時間依存的な表皮セラミド組成変化と皮膚バリア機能の関係
DOI
10.1091/mbc.E24-12-0551
ジャーナル名
Molecular Biology of the Cell
巻号
Molecular Biology of the Cell Vol. 36, No. 5
著者名(敬称略)
平沼大雅、佐々貴之、木原章雄
所属
北海道大学大学院薬学研究院 生化学研究室

抄訳

セラミドの中でもアシルセラミドと結合型セラミドは皮膚バリア形成に重要である。しかし、これらのセラミド産生に関与する遺伝子のノックアウト(KO)マウスは新生児致死であるため、成体マウスにおけるKOの影響は不明であった。本研究では、脂肪酸伸長酵素遺伝子Elovl1のタモキシフェン誘導性コンディショナルKOマウスを作成した。タモキシフェン投与後、アシルセラミド濃度は5日目から減少し始め、10日目には脂質ラメラ形成障害と表皮肥厚が観察された。15日目には結合型セラミドが減少し、経皮水分蒸散量が増加した。その他のセラミド量の変化や脂肪酸部位の短鎖化も観察されたが、それらの時間経過はセラミドの種類によって異なっていた。本研究では、アシルセラミドとタンパク質結合型セラミドが成体の皮膚バリア維持に重要であることを明らかにすると共に、遺伝子発現、表皮形態、セラミド組成の変化など、皮膚バリア機能の低下に対する代償機構を見出した。

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2025/04/15

Aspergillus属菌からの遺伝子の水平伝播を伴ったHansfordia pulvinataの菌寄生性におけるデオキシホメノンの適応進化

論文タイトル
Adaptive evolution of sesquiterpene deoxyphomenone in mycoparasitism by Hansfordia pulvinata associated with horizontal gene transfer from Aspergillus species
論文タイトル(訳)
Aspergillus属菌からの遺伝子の水平伝播を伴ったHansfordia pulvinataの菌寄生性におけるデオキシホメノンの適応進化
DOI
10.1128/mbio.04007-24
ジャーナル名
mBio
巻号
mBio Volume 16  Issue 4  e04007-24
著者名(敬称略)
前田和弥 飯田祐一郎
所属
摂南大学農学部植物病理学研究室

抄訳

トマト葉かび病は、世界的にトマト生産に深刻な経済的損失をもたらしている。育種によって、Cf抵抗性遺伝子を持つ品種が開発されてきたが、葉かび病菌は新たな系統(レース)へと進化することで、これらの抵抗性品種を打破した。さらに、複数の化学殺菌剤に対する耐性を獲得していることから、持続可能な新たな防除法が求められている。葉かび病菌に寄生する菌寄生菌H. pulvinataは、生物防除剤として期待される。寄生性メカニズムの解明を目的に本研究では、菌寄生菌が産出する抗菌性セスキテルペンdeoxyphomenoneを解析した。我々は、菌寄生菌とAspergillus属の両方でdeoxyphomenone生合成遺伝子クラスター(DPH)を同定し、比較ゲノム解析によって菌寄生菌はDPH遺伝子クラスターをAspergillus属の祖先種から水平伝播によって獲得したことを明らかにした。またAspergillus属では内因性の胞子形成制御因子として機能していたdeoxyphomenone が、菌寄生菌では寄生性に有利な外因性の抗菌性物質として利用するように適用進化したと考えられた。以上のことから、菌寄生は、菌類における水平伝播を促進するメカニズムの一つである可能性が示唆された。

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2025/04/15

クロカタゾウムシの共生細菌ナルドネラの全ゲノム解読

論文タイトル
Complete genome of the mutualistic symbiont “Candidatus Nardonella sp.” Pin-AIST from the black hard weevil Pachyrhynchus infernalis
論文タイトル(訳)
クロカタゾウムシの共生細菌ナルドネラの全ゲノム解読
DOI
10.1128/mra.01083-24
ジャーナル名
Microbiology Resource Announcements
巻号
Microbiology Resource Announcements Vol. 14, No. 4
著者名(敬称略)
水谷 雅希 柿澤 茂行 他
所属
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 モレキュラーバイオシステム研究部門

抄訳

クロカタゾウムシという昆虫の細胞内に共生する細菌Nardonellaのゲノム決定に関する報告です。ゲノムサイズは226,287 bpと極小であり、既報のNardonellaゲノムと高い相同性を示しました。Nardonellaはクロカタゾウムシにチロシンを供給することで、その硬い外骨格の形成を助けることが知られており、今回のゲノム解読の結果においてもチロシン合成系遺伝子が高度に保存されていることが分かりました。

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2025/04/15

糸状菌におけるゲノム上の隣接遺伝子のRNA編集が抗ウイルス応答を制御する

論文タイトル
RNA editing of genomic neighbors controls antiviral response in fungi
論文タイトル(訳)
糸状菌におけるゲノム上の隣接遺伝子のRNA編集が抗ウイルス応答を制御する
DOI
10.1016/j.chom.2025.02.016
ジャーナル名
Cell Host & Microbe
巻号
Cell Host & Microbe Volume 33, Issue 4
著者名(敬称略)
本田 信治 他
所属
福井大学 医学部 看護学科 基盤看護学分野 生命基礎科学研究室
著者からのひと言
糸状菌に保存された、後生動物とは異なる仕組みの新規RNA編集酵素を発見! 隣接遺伝子old-zaoは、カビ自身の"免疫暴走"とも言える過剰応答を引き起こして病気を誘導する、ユニークな抗ウイルス機構を制御します。この独自のRNA編集システムは、新たな遺伝子工学ツールとしての可能性を秘めるだけでなく、その仕組みを人為的に操作して病原糸状菌を弱毒化させる、新しい生物防除法への応用も期待されます。本号のPreviewでも紹介され、無料公開中です!

抄訳

アカパンカビをモデルに、糸状菌の抗ウイルス応答におけるRNA編集の役割を調査した。その結果、ゲノム上で隣接するA-to-I RNA編集酵素「old」とジンクフィンガー転写因子「zao」が、ウイルス感染応答を制御することを発見した。特にOLD酵素は、zao mRNA上の未成熟終止コドン(PSC)を標的に、タンパク質合成を中断するはずのシグナルをトリプトファンをコードするよう編集する。このPSC編集によって機能的な全長型ZAOタンパク質が合成され、その量が抗ウイルス応答の強弱を切り替える「分子スイッチ」として機能する。通常、このスイッチは適切に制御されて無症状感染を維持するが、主要な抗ウイルス防御機構であるRNAi(RNA干渉)経路が欠損すると、このシステムが過剰に活性化し、植物の過敏感反応にも似た重篤な症状(免疫暴走)を引き起こす。この「old-zao」遺伝子モジュールは、他の主要な糸状菌でも進化的に保存されていることが示唆された。

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2025/04/15

ミカンキジラミの共生細菌カルソネラ日本系統の全ゲノム解読

論文タイトル
Complete genome of the mutualistic symbiont “Candidatus Carsonella ruddii” from a Japanese island strain of the Asian citrus psyllid Diaphorina citri
論文タイトル(訳)
ミカンキジラミの共生細菌カルソネラ日本系統の全ゲノム解読
DOI
10.1128/mra.01082-24
ジャーナル名
Microbiology Resource Announcements
巻号
Microbiology Resource Announcements Vol. 14, No. 4
著者名(敬称略)
水谷 雅希 柿澤 茂行 他
所属
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 モレキュラーバイオシステム研究部門

抄訳

ミカンキジラミという昆虫の細胞内に共生する細菌Carsonellaのゲノム決定に関する報告です。ゲノムサイズは173,958 bpと極小であり、既報のゲノムと高い相同性を示しました。ミカンキジラミはカンキツグリーニング病(huanglongbing)という植物の重要病害の病原体を媒介するベクターとして知られており、Carsonellaはミカンキジラミにアミノ酸等を供給することでその生育をサポートしていると考えられています。

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2025/04/15

真核微細藻類および原核海洋細菌由来DHA合成酵素における2つのケト合成酵素ドメインの基質特異性

論文タイトル
Substrate specificities of two ketosynthases in eukaryotic microalgal and prokaryotic marine bacterial DHA synthases
論文タイトル(訳)
真核微細藻類および原核海洋細菌由来DHA合成酵素における2つのケト合成酵素ドメインの基質特異性
DOI
10.1073/pnas.2424450122
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.122 No.12
著者名(敬称略)
尾形 海斗, 仲間 陸, 小笠原 泰志, 大利 徹 他
所属
北海道大学 大学院工学研究院 応用生物化学研究室
著者からのひと言
 DHAなどのPUFAは魚に多く含まれ、脳や心臓の健康を支える成分として知られています。微細藻類や海洋細菌が真の生産者ですが、複数の機能ドメインからなる巨大酵素であるDHA合成酵素が、厳密に制御された2炭素鎖伸長反応と還元反応を繰り返すことで炭素数22のDHAを特異的に生合成します。我々はPUFA合成酵素の仕組みに興味を持って研究をしていますが、本論文ではDHA合成酵素において2つのKSドメインの協同が重要であることを示しました。PUFAの効率的な発酵生産につながる重要な成果です。

抄訳

 ドコサヘキサエン酸 (DHA) は健康成分として知られる炭素数22の多価不飽和脂肪酸 (PUFA) であり、その生合成にはDHA合成酵素が関与します。真核微細藻類や原核海洋細菌由来のDHA合成酵素中には炭素鎖を2つずつ反復して伸長するケト合成酵素 (KS) ドメインが2つ (KSAとKSB/C) 含まれています。本研究では、2つのKSドメインの基質特異性を、組換え酵素とほぼ全ての中間体を用いたin vitro実験で解析しました。その結果、KSAは炭素数6、12、18の中間体を、KSBは炭素数8、14、20の中間体を特異的に認識すること、また、炭素数2、4、10の中間体は両ドメインによって認識されて鎖伸長反応が起こることを明らかにしました。これらの結果は、2つのKSドメインが中間体基質のチオエステル近傍の構造によって巧妙に使い分けられていることを示唆します。本研究は、DHA合成酵素の基質選択メカニズムを詳細に解明した初の包括的解析であり、PUFA合成の分子機構の理解を深めるとともに、DHAの効率的な生産技術の開発に貢献する可能性があります。

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2025/04/14

蛍光顕微鏡観察に基づいたトリコスポロン酵母の種間多様性解析

論文タイトル
Analyses of hyphal diversity in Trichosporonales yeasts based on fluorescent microscopic observations
論文タイトル(訳)
蛍光顕微鏡観察に基づいたトリコスポロン酵母の種間多様性解析
DOI
10.1128/spectrum.03210-24
ジャーナル名
Microbiology Spectrum
巻号
Microbiology Spectrum Vol. 13, No. 4
著者名(敬称略)
青木 敬太 他
所属
東京農業大学総合研究所酵母多様性生物学・分類学研究室
著者からのひと言
現在,酵母は世界中で2,000種程存在すると考えられていますが,私達が利用しているのは子嚢菌のパン酵母などごく僅かです.酵母の研究は歴史的に子嚢菌の酵母をモデルに進みましたが,担子菌にも面白い酵母がたくさんいます.今回の我々の研究でも,トリコスポロン目酵母の様々な性質が明らかになりました.今後,子嚢菌酵母にはないユニークな性質を見つけられるのではないかと期待しています.

抄訳

担子菌のトリコスポロン目には,酵母型と菌糸型を持つ二形性の酵母が多く分類されます.菌糸型は真菌症の原因となるため,二形性の機序や種の簡便な同定法は重要な課題になります。私達は今までに,重症化すると死ぬこともある深在性トリコスポロン症の原因菌の菌糸がマグネシウムを添加することにより過度に伸長することを見つけていました.本論文では,この効果がトリコスポロン目の二形性酵母の間で共通かどうかを調べると共に,酵母の分類指標の一つになるかどうかを検討しました.その結果,マグネシウムの菌糸伸長効果はトリコスポロン目の二形性酵母で共通なことがわかりました.一方,菌糸の伸長と共に現れる隔壁の多重化や液胞の増大といった特徴はトリコスポロン目の中でもトリコスポロン属に偏って現れることがわかりました.よって,本研究の成果は,菌糸の形成メカニズムや分類研究に役立つと期待されます.

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2025/04/11

皮膚病原糸状菌が産生する抗バクテリア化合物viomelleinの再発見とその生合成遺伝子クラスターの同定

論文タイトル
Rediscovery of viomellein as an antibacterial compound and identification of its biosynthetic gene cluster in dermatophytes
論文タイトル(訳)
皮膚病原糸状菌が産生する抗バクテリア化合物viomelleinの再発見とその生合成遺伝子クラスターの同定
DOI
10.1128/aem.02431-24
ジャーナル名
Applied and Environmental Microbiology
巻号
Applied and Environmental Microbiology Ahead of Print
著者名(敬称略)
二宮 章洋 萩原 大祐 他
所属
筑波大学生命環境学群 生命地球科学研究群 生命環境系

抄訳

糸状菌は生物活性を有する多様な化合物を生産する。そのような化合物は、自然環境中の生存競争に寄与し、病原菌であれば宿主への感染にも貢献すると考えられる。世界中で多くの患者が罹患している皮膚病原糸状菌に関して、生物活性を持つ化合物に関する研究は限られている。本研究では、感染部位における皮膚微生物叢との相互作用の理解を目指し、Trichophyton rubrumにおいて抗バクテリア活性を示す化合物を探索した。赤色色素化合物として知られていたviomelleinが強い抗バクテリア活性を示すことを明らかにし、トランスクリプトーム解析や遺伝子破壊実験によりその生合成遺伝子クラスター(vioクラスター)を同定した。麹菌を宿主としたvioクラスター遺伝子の再構成実験により、nor-toralactoneからviomelleinに至る生合成経路を示した。また、vioクラスターは皮膚病原糸状菌に広く保存されており、多くの皮膚病原糸状菌株がviomelleinだけでなく構造類似体のxanthomegninやvioxanthinも産生することができた。本研究により、皮膚病原糸状菌が産生する抗バクテリア化合物の分子実体を明らかになり、皮膚微生物叢と病原菌の相互作用を理解する上での重要な知見が提供された。

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2025/04/09

原発性アルドステロン症に対する手術適応評価における副腎静脈サンプリングの最適なLateralization Indexの検討

論文タイトル
Assessing Lateralization Index of Adrenal Venous Sampling for Surgical Indication in Primary Aldosteronism
論文タイトル(訳)
原発性アルドステロン症に対する手術適応評価における副腎静脈サンプリングの最適なLateralization Indexの検討
DOI
10.1210/clinem/dgae336
ジャーナル名
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism
巻号
Volume 110, Issue 4, April 2025, Pages e1084–e1093
著者名(敬称略)
小林 洋輝 他
所属
日本大学医学部 内科学系 腎臓高血圧内分泌内科学分野
著者からのひと言
本研究は、原発性アルドステロン症に対する外科的治療の適応判断に用いられる副腎静脈サンプリングのLateralization Index(LI)について、国際的な大規模コホートと患者意識調査を基に最適カットオフ値を提示した初の研究である。本研究結果により、手術の必要性を判断するための国際的に標準的な判定方法を確立したことでグローバルな視点からこの病気の診断、治療の標準化に貢献できる。

抄訳

原発性アルドステロン症(primary aldosteronism; PA)の外科的治療適応を判断する際には、副腎静脈サンプリング(adrenal venous sampling; AVS)によるアルドステロンの左右比(lateralization index; LI)が指標として推奨されている。しかし、どの程度のLIで手術による治癒が期待できるか、明確なカットオフ値はこれまで確立されていなかった。本国際多施設共同研究では、PA患者1,550例(11カ国・16施設)の後ろ向きコホートを対象に、AVS所見から手術で治癒しうるPA(片側性PA)を識別するための最適LIカットオフ値を検討した。 まず、外科手術に対する治癒期待に関する患者側の意向も考慮したカットオフ設定を行うため、日本人PA患者82名に対してアンケート調査を実施し、手術を決断するために必要と考える治癒率の中央値が80%であることを確認した。これを踏まえ、LIのカットオフ値は「治癒率80%の陽性的中率」を達成する水準として設定された。その結果、最適LIカットオフ値はACTH非刺激時で3.8、ACTH刺激時で3.4と算出された。さらに、CTでの副腎結節の存在、ならびに対側抑制(contralateral suppression: CR<0.4)が、外科的治療により治癒し得るPAの独立した予測因子であることが示され、これらの指標をLIと組み合わせることで予測精度は大幅に向上した。本研究により、AVSにおけるLIの最適カットオフ値が初めて明確化された。加えて、CT所見や対側抑制を併用することで、PAに対する外科的治療の適応をより精密に判断できる可能性が示唆された。

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2025/04/08

SARS-CoV-2感染が遷延しレムデシビル耐性を示した免疫不全患者の臨床的・分子生物学的背景

論文タイトル
Clinical and molecular landscape of prolonged SARS-CoV-2 infection with resistance to remdesivir in immunocompromised patients
論文タイトル(訳)
SARS-CoV-2感染が遷延しレムデシビル耐性を示した免疫不全患者の臨床的・分子生物学的背景
DOI
10.1093/pnasnexus/pgaf085
ジャーナル名
PNAS Nexus
巻号
PNAS Nexus Volume 4, Issue 4
著者名(敬称略)
入山 智沙子 市川 貴也(執筆者) 他
所属
藤田医科大学医学部 血液内科学
北海道大学医学研究院 病原微生物学教室
著者からのひと言
免疫不全者にとっては、COVID-19は未だ脅威な感染症です。本症例のような持続感染は、血液内科医であれば一度は経験するであろう決して珍しくない事象ですが、その体内で何が起こっているのか未だ不明な点が多いです。本研究は、3例の持続感染者において、ウイルス遺伝子の時間的多様性を明らかにするともに、薬剤耐性ウイルスの性状を実験室内で解析した点でユニークであると言えます。「ベッドサイド(臨床)からベンチ(基礎)まで」を体現した研究であり、今後のCOVID-19診療の一助となることに期待します。

抄訳

血液悪性疾患などの免疫不全患者では、SARS-CoV-2感染が遷延(持続感染)し、難治性となる場合がある。我々は、持続感染を起こした悪性リンパ腫患者3例について、病理学的およびウイルス学的に詳細に解析した。全症例において抗ウイルス薬治療が奏功せず、ウイルスRNA量が1ヶ月以上高いレベルで維持された。2例が死亡し、病理解剖ではサイトメガロウイルスの再活性化や細菌/真菌の重複感染を認めた。ウイルス遺伝子を次世代シーケンサーにて解析したところ、様々な変異が蓄積し、それらの変異頻度が経時的に変化していることが明らかとなった。また、レムデシビルの標的分子であるNSP12にV792I・M794Iの変異が検出された。これらの変異を持つウイルスに対して薬剤感受性試験および病原性試験を行なった結果、V792I・M794I変異はともにレムデシビルに対して耐性化を示し、病原性は減弱していることが判明した。
【結語】薬剤耐性ウイルスの出現抑制を目的とした抗ウイルス薬の早期投与や併用療法など、生命予後の改善を目指した新たな治療戦略の考案が重要である。

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