抄訳
イソギンチャク、サンゴ、クラゲなどの刺胞動物は、固着性のポリプや遊泳性のメデューサなど多様な形態と生活様式を示す。ヒドラやネマトステラといった刺胞動物のポリプの発生・再生には幹細胞や増殖細胞が寄与する。しかしながら、ほとんどのクラゲ、特にメデューサの段階での基礎的な細胞メカニズムはほとんど不明であることから、特定の細胞タイプを識別するための方法を開発することが重要である。本論文では、ヒドロ虫綱クラゲ Cladonema pacificum(和名:エダアシクラゲ)の幹細胞様の増殖細胞を可視化するプロトコルを報告する。Cladonemaに特徴的な分岐した触手は成体まで継続的に成長し、再生能力を維持するため、増殖細胞や幹細胞によって組織化される細胞メカニズムを研究するための研究モデルとなる。幹細胞マーカーを用いた蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)により幹細胞様細胞を検出し、S期マーカーである5-ethynyl-2'-deoxyuridine(EdU)のパルス標識により増殖細胞を同定することが可能である。FISHとEdU標識の両方を組み合わせることで、活発に増殖している幹細胞を検出することができ、この技術は非モデル生物である他のクラゲや動物種にも広く応用することが可能である。