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国内研究者論文紹介

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ユサコでは日本人の論文が掲載された海外学術雑誌に注目して、随時ご紹介しております。

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2023/09/05

abalone asfa-like virusの病原性、ゲノム解析と構造:Asfarviridae科に分類される証拠

論文タイトル
Pathogenicity, genomic analysis and structure of abalone asfa-like virus: evidence for classification in the family Asfarviridae
論文タイトル(訳)
abalone asfa-like virusの病原性、ゲノム解析と構造:Asfarviridae科に分類される証拠
DOI
https://doi.org/10.1099/jgv.0.001875
ジャーナル名
Journal of General Virology
巻号
Vol 104 Issue 8
著者名(敬称略)
松山 知正 他
所属
国立研究開発法人水産研究・教育機構 水産技術研究所 養殖部門 病理部

抄訳

アワビ類に対して高病原性を示すabalone asfa-like virus(AbALV)は、部分ゲノム配列解析から豚に強い伝染性と致死性を示すアフリカ豚熱ウイルス(ASFV)との近縁性が報告されていた。ASFVは既知の二本鎖DNAウイルスの中で、節足動物内で増殖し脊椎動物に伝播する唯一の種である。また、近縁種が見つかっておらずAsfarviridae科に属する唯一のウイルスである。本論文では全ゲノム解析と粒子形態に基づき、AbALVをAsfarviridae科に分類する根拠を示した。AbALVのゲノムは約281kbpの直鎖状で309遺伝子が予測され、ASFVと同様に両端には繰り返し配列が存在した。両ウイルスのゲノム中央領域のシンテニーは保存的であった。ビリオンの大きさは約200 nmで形態的にASFVと類似した。ゲノム構造とビリオン形態が類似すること、いずれも前口動物に感染することから、AbALVはAsfarviridae科に分類されることが示唆された。AbALVの特性解析は、アワビ養殖における感染症被害の軽減に貢献するだけでなく、進化的起源が不明確なASFVの理解を進める新たな視点を提供するだろう。

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2023/08/23

高水圧によって誘起されるSaccharomyces cerevisiaeのCWI経路活性化は、アクアグリセロポリンFps1を介したグリセロールの排出を促進する

論文タイトル
Activation of CWI pathway through high hydrostatic pressure, enhancing glycerol efflux via the aquaglyceroporin Fps1 in Saccharomyces cerevisiae
論文タイトル(訳)
高水圧によって誘起されるSaccharomyces cerevisiaeのCWI経路活性化は、アクアグリセロポリンFps1を介したグリセロールの排出を促進する
DOI
10.1091/mbc.E23-03-0086
ジャーナル名
Molecular Biology of the Cell
巻号
Molecular Biology of the Cell Volume 34, Issue 9
著者名(敬称略)
阿部 文快 他
所属
青山学院大学理工学部 化学・生命科学科 分子遺伝学研究室

抄訳

真菌の細胞壁は、浸透圧の変化や毒物、あるいは物理的なストレスから細胞を守る最初のバリアとして機能する。私たちは、高水圧にさらされた出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeが、浸透圧調節機構と細胞壁完全性(CWI)経路を活性化し、高水圧ストレスに適応するメカニズムを明らかにした。25MPa(約250 kg/㎠)という高水圧下で酵母が増殖するためには、膜貫通型メカノセンサーWsc1が不可欠であることをつきとめた。すなわち、水圧上昇に伴う水の過剰流入によって細胞が膨潤すると、Wsc1がCWI経路を活性化する。その後、下流のMAPキナーゼSlt2がアクアグリセロポリンFps1をリン酸化することで、グリセロールの排出が促進し、細胞への水の流入が停止する。このようにして浸透圧調節が適切に行われ、酵母は高水圧下で破裂するのを回避していたのである。CWI経路を介した高水圧適応のメカニズムは、真菌だけでなくほ乳動物細胞に適用できる可能性もあり、細胞のメカノセンシングに関する新たな洞察を提供するものと期待される。

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2023/08/17

Stenotrophomonas属のblaL1-like遺伝子多様性:公開ゲノムデータに基づく洞察

論文タイトル
Diversity of bla L1-like genes in Stenotrophomonas species: insights from genome analysis of publicly available genome sequences
論文タイトル(訳)
Stenotrophomonas属のblaL1-like遺伝子多様性:公開ゲノムデータに基づく洞察
DOI
10.1128/aac.00673-23
ジャーナル名
Antimicrobial Agents and Chemotherapy
巻号
Antimicrobial Agents and Chemotherapy 16 August 2023 e00673-23
著者名(敬称略)
山田 景土 他
所属
東邦大学 医学部微生物・感染症学講座

抄訳

 Stenotrophomonas属は土壌など環境に広く分布するグラム陰性桿菌であり、Stenotrophomonas maltophiliaは同属の代表的な菌種である。S. maltophiliaは種得意的なメタロβラクタマーゼ(L1)を産生し、多くのβラクタム系抗菌薬に耐性を示す。このL1をコードする遺伝子(blaL1)は同一種の中でも、配列多様性を示すとされていた。この研究では、この多様性を示す理由を探る為、公開データベースで利用可能なゲノム配列を用いて分子系統解析を行った。その結果、これまで、S. maltophiliaと考えらていた菌種が、多くの未登録の類縁菌種からなる"S. maltophilia complex"であることが確認された。blaL1の多様性は、この種の多様性に関連している事が明らかになり、加えて、blaL1はゲノム配列よりも塩基配列の相同性が低い事が明らかになった。以上より、blaL1の多様性は種の多様性およびblaL1の進化速度に起因している可能性が示された。

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2023/08/07

日本人乳児と高齢者におけるRSウイルスに関連した入院および外来費用

論文タイトル
Inpatient and outpatient costs associated with respiratory syncytial virus in Japanese infants and older adults
論文タイトル(訳)
日本人乳児と高齢者におけるRSウイルスに関連した入院および外来費用
DOI
10.2217/fvl-2023-0069
ジャーナル名
Future Virology
巻号
Future Virology, Ahead of Print
著者名(敬称略)
五十嵐 中 他
所属
横浜市立大学 医学群 健康社会医学ユニット、東京大学大学院 薬学系研究科 医薬政策学

抄訳

目的:日本におけるRSウイルス(RSV)感染症に対する医療費を分析する。
方法:JMDCとMDVの2つの商用レセプトデータベースを用いて、RSVと診断された乳児(12カ月未満)と高齢者(60歳以上)のコホートにおける医療費、入院期間および集中治療室滞在期間を後ろ向きに評価した。また、RSVに感染していない乳児を含めた全乳児のコホートでパリビズマブの使用量と費用を分析した。
結果:入院患者の平均医療費は、JMDCの乳児(n=13,752)、MDVの乳児(n=22,142)、MDVの高齢者(n=165)で、それぞれ369,767円、373,480円、865,723 円であった。生後1カ月未満、危険因子あり、または重症RSVの乳児はより高い医療費を要した。乳児(JMDC)におけるパリビズマブの12カ月未満までの平均累積費用は890,259円であった。
結論:RSVは乳児および高齢者に多大な経済的負担をもたらす。

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2023/07/26

肝線維化のメカニズム解明に向けたヒトiPS細胞由来肝臓モデルの開発

論文タイトル
Using human induced pluripotent stem cell-derived liver cells to investigate the mechanisms of liver fibrosis in vitro
論文タイトル(訳)
肝線維化のメカニズム解明に向けたヒトiPS細胞由来肝臓モデルの開発
DOI
10.1042/BST20221421
ジャーナル名
Biochemical Society Transactions
巻号
Biochem Soc Trans (2023) 51 (3): 1271-1277.
著者名(敬称略)
厚井 悠太、木戸 丈友
所属
東京大学 定量生命科学研究所 附属高度細胞多様性研究センター

抄訳

肝臓には実質的な機能を担う肝細胞に加えて、肝非実質細胞(肝類洞内皮細胞、肝星細胞など)が存在する。これらの肝非実質細胞は、肝線維化の進行において重要な役割を果たしている。特に肝星細胞は、種々の肝障害に応答し、コラーゲン等の細胞外基質を産生して線維化を誘導し、病態の進行に直接的に影響を与える細胞である。線維化の病態を正しく理解して新たな治療法を開発するために、我々を含めた研究グループは、ヒトiPS細胞から肝非実質細胞を作製するシステムを構築してきた。また、これらの細胞を用いたヒト肝臓モデルを開発し、肝線維化のメカニズム解析や新たな治療薬のスクリーニングを実施してきた。本論文では、ヒトiPS細胞から肝非実質細胞への分化誘導系のこれまでの動向、並びに、肝非実質細胞を用いたヒト肝臓モデルの有用性と今後の展望について概説している。

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2023/07/25

BAG6は、RhoAのユビキチン依存的分解を介してストレスファイバーの形成を制御する

論文タイトル
BAG6 supports stress fiber formation by preventing the ubiquitin-mediated degradation of RhoA
論文タイトル(訳)
BAG6は、RhoAのユビキチン依存的分解を介してストレスファイバーの形成を制御する.
DOI
10.1091/mbc.E22-08-0355
ジャーナル名
Molecular Biology of the Cell
巻号
Molecular Biology of the Cell Volume 34, Issue 4
著者名(敬称略)
宮内 真帆、川原 裕之 他
所属
東京都立大学理学部生命科学科 細胞生化学研究室

抄訳

 RhoA低分子量GTPaseは、ストレスファイバー形成の調節を介して、細胞の形態・接着・移動・浸潤などを制御する。これまでの研究から、RhoAタンパク質はCUL3ユビキチンリガーゼにより分解誘導されうることが知られていたが、このプロセスがどのように調節されているかは明らかではなかった。本論文で我々は、RhoAの安定性はBAG6シャペロンにより支えられていることを見出した。BAG6ノックダウンはCUL3ユビキチンリガーゼによるRhoAの認識と分解を促進し、ストレスファイバーやフォーカルアドヒージョンの減少、ひいては細胞遊走の低下を誘導する。重要なことに、これらの表現型はRhoAの過剰発現、あるいはCUL3ノックダウンなどによりレスキューされた。さらに、BAG6によるRhoA認識は疎水性相互作用を介していることも判明した。BAG6による疎水領域の認識は、構造不良タンパク質の認識メカニズムと共通していることから、BAG6を介したタンパク質品質管理系とアクチンファイバー構築の制御系にはクロストークがありうることが本論文で初めて示唆された。

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2023/07/25

コレステロールとアクチンの視点から見た細胞膜:シンガー・ニコルソン流動モザイクモデル50周年を記念した新しい細胞膜モデル

論文タイトル
Cholesterol- and actin-centered view of the plasma membrane: updating the Singer–Nicolson fluid mosaic model to commemorate its 50th anniversary
論文タイトル(訳)
コレステロールとアクチンの視点から見た細胞膜:シンガー・ニコルソン流動モザイクモデル50周年を記念した新しい細胞膜モデル
DOI
10.1091/mbc.E20-12-0809
ジャーナル名
Molecular Biology of the Cell
巻号
Molecular Biology of the Cell Volume 34, Issue 5
著者名(敬称略)
楠見 明弘 他
所属
沖縄科学技術大学院大学 膜協同性ユニット

抄訳

 細胞膜の理解に関して、全く違った二つの視点が存在する。一つは、細胞膜は元来のシンガー・ニコルソンの流動モザイクモデルによって記述される単純な流体、というものである。他方は、細胞膜は、数千の分子種が互いに様々な相互作用をすることで形成され、かつ常に変化するクラスタとドメインからなっており、細胞膜の構造と分子動態を説明する単純な規則は存在しないとするものである。現在では、後者の見方が一般的である。しかし、何らかの規則は見いだせないものであろうか? 本総説で、我々は、細胞膜の二つのもっとも主要な構成要素であるコレステロールとアクチン線維の観点から細胞膜を見ることが、細胞膜の組織化、動態、および機能の作動機構を理解するための優れた視点を提供すると提案する。特に、細胞膜内で共存するアクチンによる区画(仕切り)と脂質ラフトドメイン、および、それらの相互作用が細胞膜の構成に重要であり、それらがどのように細胞膜の機能を遂行するかについて述べる。この視点から、流動モザイクモデルをさらに発展させた新しい細胞膜モデルを提案する。

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2023/07/21

ATM依存性のCHD7リン酸化は、放射線被ばく胎児における形態形成とカップルしたDSBストレス応答を制御している

論文タイトル
ATM–dependent phosphorylation of CHD7 regulates morphogenesis-coupled DSB stress response in fetal radiation exposure
論文タイトル(訳)
ATM依存性のCHD7リン酸化は、放射線被ばく胎児における形態形成とカップルしたDSBストレス応答を制御している
DOI
10.1091/mbc.E22-10-0450
ジャーナル名
Molecular Biology of the Cell
巻号
Molecular Biology of the Cell Volume. 34, Issue. 5
著者名(敬称略)
野田 朝男 他
所属
放射線影響研究所 分子生物科学部

抄訳

放射線で生じるゲノム損傷のうち、修復が困難なDNA二重鎖切断 (DSB)は細胞に重大な影響を及ぼします。このような損傷を持つ細胞に特徴的な遺伝子発現を調べる過程で、転写因子CHD7 (Chromodomain Helicase DNA binding protein 7) がATM依存的にリン酸化されていることを今回見つけました。CHD7はユビキタスな転写因子ですが、胎児発生期においては、神経冠細胞から目、口、耳や脳などの神経感覚器官や心臓の形態形成を司る転写因子として機能します。この形態形成転写因子タンパク質が放射線によりリン酸化され、ゲノム中の修復が困難なDSB部位に集積するという結果から、形態形成期には転写とカップルしたDSB修復機構が存在するのではないかと思われます。形態形成・器官形成という不可逆でcriticalな生物過程を遂行するために、この転写因子は自身がDSB修復機能も持つように進化してきたのではないでしょうか。              CHD7のハプロ不全は胎児に広範な先天性形成異常1 (congenital malformation) を誘発する事が知られています。放射線でも胎児の形態形成異常2が誘発されます。胎児の放射線被ばくにおいて、CHD7がDSB修復反応に優先的に動員された場合は、形態形成活性の一時的な低下(ハプロ不全のような状況)が予想されます。これが放射線誘発胎児形態形成異常の原因のひとつになっているのではないかと私たちは考えています。つまり、軽度・中程度のゲノム損傷の場合、CHD7は傷の修復と神経冠形態形成を同時にうまくやりくりして危機的状況を乗り越えることができるが、もしもゲノム損傷が多すぎると、形態形成がおろそかになり先天性形成異常が起こりやすくなる、ということと理解します。 注1:以前は「奇形」と言う言葉が使われました。 注2:胎児は「被ばく一世(胎内被ばく)」です。遺伝影響(親の生殖細胞被ばくによる二世影響)とは区別して考える必要があります。

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2023/07/18

カポジ肉腫関連ヘルペスウイルスORF67.5は、ターミナーゼ複合体構成因子として機能する

論文タイトル
Kaposi’s Sarcoma-Associated Herpesvirus ORF67.5 Functions as a Component of the Terminase Complex
論文タイトル(訳)
カポジ肉腫関連ヘルペスウイルスORF67.5は、ターミナーゼ複合体構成因子として機能する
DOI
10.1128/jvi.00475-23
ジャーナル名
Journal of Virology
巻号
Journal of Virology June 2023  Volume 97  Issue 6  e00475-23
著者名(敬称略)
祝迫 佑紀 藤室 雅弘 他
所属
京都薬科大学 細胞生物学分野

抄訳

カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)は感染者の免疫不全時にカポジ肉腫やB細胞性リンパ腫を引き起こすヒトヘルペスウイルスである。単純ヘルペスウイルスやヒトサイトメガロウイルス等の他のヘルペスウイルスと異なり、KSHVのカプシド形成はほとんど解明されていない。特に、複製後の前駆体ウイルスDNAのプロセッシング(ターミナルリピート部分での切断)に関わると推測されているKSHVのターミナーゼ複合体は不明な点が多い。他のヘルペスウイルスとの相同性から、KSHVターミナーゼ複合体はKSHVがコードするORF7、ORF29、ORF67.5遺伝子産物によって構成されると推測される。我々は以前、ORF7欠損KSHVは、正常なウイルス産生を行うことができず、さらに新規形態の未成熟カプシドを形成することを報告し、これを”Soccer ball-like capsid”と名付けた。本論文では、ORF67.5欠損KSHVもまた、”Soccer ball-like capsid"を形成することを証明した。さらに、ORF67.5はターミナルリピートの切断、感染性ウイルスの産生、およびORF7とORF29の相互作用の増強に必要であった。ORF67.5には、ヒトヘルペスウイルスホモログ間で高度に保存された領域がいくつかある。これら保存領域はウイルス産生に必要であり、ORF67.5とORF7との相互作用にも必要であることを明らかにした。これらの結果はAIにて予測したKSHVターミナーゼ複合体構造モデルによっても支持された。本論文は、ORF67.5がKSHVターミナーゼ複合体の形成と前駆体ウイルスDNAのターミナルリピート部位での切断に必須であることを示す初めての報告である。

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2023/07/11

アミノ酸源の添加が最少培地におけるShewanella oneidensis MR-1株の発酵増殖を促進する

論文タイトル
Supplementation with Amino Acid Sources Facilitates Fermentative Growth of Shewanella oneidensis MR-1 in Defined Media
論文タイトル(訳)
アミノ酸源の添加が最少培地におけるShewanella oneidensis MR-1株の発酵増殖を促進する
DOI
10.1128/aem.00868-23
ジャーナル名
Applied and Environmental Microbiology
巻号
Applied and Environmental Microbiology 27 June 2023 e00868-23
著者名(敬称略)
池田壮汰 高妻篤史 他
所属
東京薬科大学生命科学部生命エネルギー工学研究室

抄訳

Shewanella oneidensis MR-1株は環境細菌の多様なエネルギー代謝能力を解明するためのモデルとしてよく研究されており、金属酸化物やフマル酸などの様々な電子受容体を利用できることが知られている。一方、本株は乳酸発酵に必要な遺伝子を備えているにも関わらず、電子受容体を含まない最少培地中では糖を発酵して増殖することができない。本論文ではなぜMR-1株が糖発酵により増殖できないのかを明らかにするために、電子受容体(フマル酸)存在下と非存在下でのトランスクリプトームを比較した。その結果、電子受容体非存在下(発酵条件)では、細胞増殖に必要な炭素代謝(TCAサイクルやアミノ酸合成等)に関与する多くの遺伝子の発現が抑制されていた。また、最少培地中にアミノ酸源(トリプトンやアミノ酸混合液)を添加した培地では、本株が糖発酵により増殖できることも明らかになった。以上の結果から、MR-1株は電子受容体が欠乏した際にエネルギー消費を最小化するために環境中からアミノ酸を取り込むように代謝を制御しており、そのために最少培地における発酵増殖が阻害されていることが示唆された。

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