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2006/02/08

下垂体ACTH産生細胞におけるCRFによるCRF受容体タイプ1の感受性低下にはG蛋白共役受容体キナーゼ (GRK) サブタイプ2が関与する

論文タイトル
G Protein-Coupled Receptor Kinase 2 Involvement in Desensitization of Corticotropin-Releasing Factor (CRF) Receptor Type 1 by CRF in Murine Corticotrophs 
論文タイトル(訳)
下垂体ACTH産生細胞におけるCRFによるCRF受容体タイプ1の感受性低下にはG蛋白共役受容体キナーゼ (GRK) サブタイプ2が関与する
DOI
10.1210/en.2005-0376
ジャーナル名
Endocrinology Endocrine Society
巻号
Endocrinology Vol. 147, No. 1 441-450
著者名(敬称略)
蔭山和則、花田小巻、森山貴子、二川原 健、崎原 哲、須田俊宏
所属
弘前大学医学部 内分泌・代謝・感染症内科

抄訳

各種ストレスによって視床下部で産生及び分泌されるcorticotropin-releasing factor (CRF)は、下垂体ACTH産生細胞におけるCRF 受容体タイプ1 (CRF R1) を介して、ACTHの合成、分泌を刺激する。同時に、CRFによるCRF R1の刺激は、次のCRF刺激に対するCRF R1の受容体感受性を一過性に低下させることがわかっている。受容体感受性の変化における細胞内シグナル伝達機構の上流には、G蛋白共役受容体キナーゼ (GRK) が関わっているとアドレナリンなど他のホルモン伝達系で報告されている。しかしながら、下垂体ACTH産生細胞でのGRKの発現とそのはたらきは不明である。当研究で我々は、ラット下垂体前葉細胞及び下垂体ACTH産生腫瘍細胞AtT-20を用いて、GRKのサブタイプの発現を調べ、更に同受容体キナーゼのdominant-negative 変異を下垂体腫瘍細胞に組み込むことで、CRFによるGRKのはたらきを証明した。Western blotting法及びPCR法により、CRK2 蛋白とmRNAの発現をラット下垂体前葉細胞及びAtT-20で認めた。更にdominant-negative GRK2を下垂体腫瘍細胞に組み込み、CRFの連続刺激を加えて、cAMPを指標にCRF受容体の感受性の変化について評価した。CRF連続刺激に対して、dominant-negative GRK2発現細胞では、非発現細胞に比較して、cAMP濃度の有意な増加を認めた。更に、PKA阻害薬の前投与によってもCRF連続刺激に対するcAMPの低下反応は抑制された。以上より、下垂体ACTH産生腫瘍細胞において、CRFによるCRF R1の感受性低下作用にはGRK2が関与していると考えられた。更に、同作用におけるPKA経路の関与が示唆された。

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2006/01/26

Oct3/4とCdx2の相互作用が栄養外胚葉の分化運命を決定する

論文タイトル
Interaction between Oct3/4 and Cdx2 Determines Trophectoderm Differentiation
論文タイトル(訳)
Oct3/4とCdx2の相互作用が栄養外胚葉の分化運命を決定する
DOI
10.1016/j.cell.2005.08.040
ジャーナル名
Cell Cell Press
巻号
Cell, Vol 123, 917-929, 2 December 2005
著者名(敬称略)
丹羽仁史 他
所属
理化学研究所 発生・再生科学総合研究所

抄訳

栄養外胚葉は、哺乳類発生過程で最初に分化し、将来胎盤を形成する細胞系譜 であるが、これまでこの過程を規定する分子機構は不明であった。胚性幹細胞 は、転写因子Oct3/4の発現抑制によって栄養外胚葉へと分化することが示され ていたが、我々は、同様の分化が別の転写因子Cdx2の強制発現によっても引き 起こされることを見いだした。Cdx2の機能は栄養外胚葉への分化には必要でな いが、栄養外胚葉幹細胞の自己複製には必須であった。初期胚では、8細胞期 までは全ての割球でCdx2とOct3/4が共発現しているが、これらは抑制性複合体 を形成し、お互いに抑制し合うことによって、最終的に栄養外胚葉ではCdx2、 内部細胞塊ではOct3/4という排他的発現が確立されることが示唆された。この ような細胞運命を決定する転写因子の直接の相互作用により分化運命が決定さ れる機構が、哺乳類の最初の分化を規定していると考えられる。

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2006/01/12

超高分解能X線構造化学で明らかになった[NiFe] ヒドロゲナーゼの活性化機構: Ready型からUnready型への変換

論文タイトル
Activation Process of [NiFe] Hydrogenase Elucidated by High-Resolution X-Ray Analyses: Conversion of the Ready to the Unready State
論文タイトル(訳)
超高分解能X線構造化学で明らかになった[NiFe] ヒドロゲナーゼの活性化機構: Ready型からUnready型への変換
DOI
10.1016/j.str.2005.07.018
ジャーナル名
Structure Cell Press
巻号
Structure, Vol 13, 1635-1642, November 2005
著者名(敬称略)
樋口芳樹1 緒方英明2 廣田俊3 他
所属
1 兵庫県立大学大学院生命理学研究科
2 マックスプランク研究所
3 京都薬科大学大学院薬学研究科

抄訳

ヒドロゲナーゼは水素分子の合成・分解を触媒する酵素である. この分子の機能は,将来,水素をエネルギーとして利用する時,いろいろな形で応用できる可能性を秘めている.[NiFe]ヒドロゲナーゼの酸化型(不活性型)には「Ni-A」と呼ばれるUnready型と「Ni-B」と呼ばれるReady型がある.我々は,Na2SとO2を使って,Ni-B型の酵素を100%Ni-A型に変換させる方法の開発に成功し,両者のNi-Fe活性部位の構造の違いを超高分解能X線解析法で明らかにした.Ni-B型はNiとFeの間に単原子のブリッジ配位子があり,Ni-A型はそれが2原子分子であった.Ni-A型のブリッジ配位子の構造とCOで活性阻害したCO結合型の構造の比較から,「不活性−Unready型」と「CO阻害型」の共通の特徴を見出した.これらの知見は,生物酵素のモデル化合物を合成するときに役立つと期待できる.

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