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国内研究者論文紹介

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ユサコでは日本人の論文が掲載された海外学術雑誌に注目して、随時ご紹介しております。

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2007/06/20

NELFはCBCと結合し,複製依存的ヒストンmRNAの3’末端プロセシングに関与する

論文タイトル
NELF Interacts with CBC and Participates in 3′ End Processing of Replication-Dependent Histone mRNAs
論文タイトル(訳)
NELFはCBCと結合し,複製依存的ヒストンmRNAの3’末端プロセシングに関与する
DOI
10.1016/j.molcel.2007.04.011
ジャーナル名
Molecular Cell 
巻号
May 2007|vol. 26 | No. 3 | 349-365
著者名(敬称略)
成田央,Tetsu M.C. Yung,山本淳一,坪井靖典,田辺秀之,田中亀代次,山口雄輝,半田宏
所属
東京工業大学 大学院生命理工学研究科

抄訳

負の転写伸長因子NELFは4つのサブユニットからなり,神経疾患や癌といった様々な疾病と関連している.我々は,NELFが核のキャップ結合因子CBCと相互作用し,両因子がさらにヒストンのステムループ結合因子SLBPと相互作用することで,複製依存的ヒストンmRNAの3’末端プロセシングを制御していることをここに報告する.驚くべきことに,NELFとCBCのいずれかが欠損すると,ポリA付加された異常なヒストンmRNAが蓄積する.さらにNELFは核内でヒストンの遺伝子座と相互作用し,我々がNELF bodiesと名付けた独自の核内構造を形成する.NELF bodiesはしばしばCajal bodiesやcleavage bodiesと空間的に重なる.以上の結果から,NELFのヒストンmRNAプロセシングにおける驚くべき役割が明らかとなり,NELFが転写の過程で様々なmRNAプロセシングの過程をコーディネートする因子の1つであることが示された

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2007/05/19

コンドロイチン硫酸合成酵素-3 (コンドロイチン合成酵素-2)はコンドロイチン合成酵素-1あるいはコンドロイチン重合化因子と相互作用してコンドロイチン鎖の重合に関与している

論文タイトル
Involvement of chondroitin sulfate synthase-3 (chondroitin synthase-2) in chondroitin polymerization through its interaction with chondroitin synthase-1 or chondroitin polymerizing factor
論文タイトル(訳)
コンドロイチン硫酸合成酵素-3 (コンドロイチン合成酵素-2)はコンドロイチン合成酵素-1あるいはコンドロイチン重合化因子と相互作用してコンドロイチン鎖の重合に関与している
DOI
10.1042/BJ20061876
ジャーナル名
Biochemical Journal Portland Press
巻号
April 2007|vol. 403 | 545-552
著者名(敬称略)
泉川 友美、宇山 徹、奥浦 由佳、菅原 一幸、北川 裕之
所属
神戸薬科大学生化学研究室

抄訳

コンドロイチン硫酸 (CS) は細胞表面や細胞外マトリックスに存在する直鎖状の硫酸化糖鎖で、コアタンパク質に結合したプロテオグリカン(PG)として存在し、様々な分子と相互作用することにより、細胞増殖・分化や形態形成などの生理作用を担っていることが知られている。CS鎖は、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)とグルクロン酸(GlcA)の二糖が数十回繰り返し重合した構造からなる。以前我々は、CS鎖の重合化がコンドロイチン合成酵素-1(ChSy-1) とCS鎖の重合化に必須の因子であるコンドロイチン重合化因子 (ChPF)の複合体により担われていることを報告した。最近、他のグループによってChSy-1との相同性によりコンドロイチン硫酸合成酵素-3 (CSS3)がクローニングされた。そこで、我々はCSS3がChSy-1と同様にChPFと複合体を形成して、CS鎖の重合化に関与しているかを検討した。さらに、HeLa細胞でCSS3を過剰発現あるいはその発現をRNAi法によりノックダウンし、細胞が産生するCS鎖の量を分析した。その結果、CSS3はChPFばかりでなく、ChSy-1とも相互作用し、それらの複合体は共にCS鎖の重合活性を示した。しかしながら、それらの複合体が合成するコンドロイチンの長さには違いが見られた。また、CSS3の発現量とHeLa細胞が産生するCS鎖の量は相関していた。これらの結果より、CSS3もCS鎖の重合化に関与していることが明らかとなり、CSS3をコンドロイチン合成酵素-2 (ChSy-2)と新たに名付けた。さらに本研究により、CS鎖の重合化は、ChSy-1、CSS3およびChPFの様々な組み合わせの複合体に担われていることが示唆された。

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2007/04/19

DYRK2はDNA損傷によって核に移行しp53セリン46をリン酸化してアポトーシスを誘導する

論文タイトル
DYRK2 Is Targeted to the Nucleus and Controls p53 via Ser46 Phosphorylation in the Apoptotic Response to DNA Damage
論文タイトル(訳)
DYRK2はDNA損傷によって核に移行しp53セリン46をリン酸化してアポトーシスを誘導する
DOI
10.1016/j.molcel.2007.02.007
ジャーナル名
Molecular Cell 
巻号
March 2007|vol. 25 | no. 5 | 725-738
著者名(敬称略)
吉田清嗣、他
所属
東京医科歯科大学 難治疾患研究所ゲノム応用医学研究部門 分子遺伝分野

抄訳

細胞ではDNA損傷が生じると、それに応答して多くの分子が活性化されることが知られている。なかでもp53はDNA傷害によって細胞周期を止めたり、アポトーシスを誘導するが、どのような仕組みでこれらの機能を使い分けているのか、不明だった。近年、p53のセリン46のリン酸化がp53AIP1の発現を誘導し、アポトーシスによる細胞死が惹起されることが明らかにされた。すなわちこのセリン46をリン酸化する酵素(キナーゼ)は、p53を介したアポトーシス誘導に必須である。にもかかわらず、そのキナーゼは同定されていない。本研究で我々はそのセリン46キナーゼとしてDYRK2を同定した。DNA 損傷によりDYRK2は細胞質から核に移動し、p53のセリン46をリン酸化する。このリン酸化によりp53AIP1の発現とアポトーシス誘導が認められた。一方、細胞内でのDYRK2の発現をRNA干渉により消失させると、p53セリン46のリン酸化が起きなくなり、アポトーシス誘導も有意に抑えられた。これらの結果から、DYRK2はセリン46のリン酸化によりp53のアポトーシス誘導機能を制御していることが明らかとなった。

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2007/03/19

弾性線維形成におけるトロポエラスチンのドメイン16と17

論文タイトル
Domains 16 and 17 of tropoelastin in elastic fiber formation
論文タイトル(訳)
弾性線維形成におけるトロポエラスチンのドメイン16と17
DOI
10.1042/BJ20061145
ジャーナル名
Biochemical Journal Portland Press
巻号
February 2007|vol. 402 | no. 1 | 63-70
著者名(敬称略)
輪千 浩史、里 史明、中澤 順次、野中 里紗、Szabo Zoltan、Urban Zsolt、安永 卓男、前田 衣織、岡元 孝二、Starcher Barry、Li Dean、Mecham Robert、瀬山 義幸
所属
星薬科大学臨床化学教室

抄訳

先天的な突然変異はタンパク機能にとって重要な領域を同定するのに役立つ。私たちは、大動脈弁狭窄症(SVAS)で見られるエラスチン遺伝子の800-3G>C変異について検討した。家族性SVAS患者から得た初代皮膚線維芽細胞のmRNAからトロポエラスチンのエクソン16と17の欠損体を検出した。このエクソン16-17を欠損したトロポラスチン(Δ16-17)を網膜色素上皮細胞に遺伝子導入したところタンパク合成および分泌は認められたが、蛍光免疫染色およびデスモシン測定によるΔ16-17のエラスチン線維形成は正常に比べ低かった。固相結合実験において、Δ16-17はfibrillin-1やfibulin-5との結合に変化は認められず、Δ16-17の自己集合が低下することがわかった。さらに、ネガティブ染色による電子顕微鏡観察は、Δ16-17が線維性の重合体形成が低下することを認めた。ドメイン16は、線維形成するために必要なβシート構造を構築できるドメイン30と高い相同性を有している。以上のことから、私たちは、ドメイン16と17はトロポエラスチンの自己集合とエラスチン線維形成に重要であると結論づけた。本研究は、相同分子の相互作用によるエラスチン分子内ドメインがエラスチン線維形成 に必須な役割を担っていることを最初に報告するものである。

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2007/02/14

ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤はグリコデリンの発現誘導を介してヒト子宮内膜腺癌細胞の運動能を亢進する

論文タイトル
Histone deacetylase inhibitors stimulate cell migration in human endometrial adenocarcinoma cells through up-regulation of glycodelin
論文タイトル(訳)
ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤はグリコデリンの発現誘導を介してヒト子宮内膜腺癌細胞の運動能を亢進する
DOI
10.1210/en.2006-0896
ジャーナル名
Endocrinology Endocrine Society
巻号
February 2007|vol. 148 | no. 2 | 896-902
著者名(敬称略)
内田 浩、丸山哲夫、小野政徳、太田邦明、梶谷 宇、 升田博隆、長島 隆、荒瀬 透、浅田弘法、吉村泰典
所属
慶應義塾大学医学部産婦人科学教室 生殖内分泌研究室

抄訳

ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACI)は細胞分化・増殖に影響を及ぼし、新しい抗腫瘍薬として注目されている。これまでに我々は、ヒト子宮内膜腺癌細胞株Ishikawaを用いた研究で、HDACIの添加が子宮内膜分泌期優位タンパク質であるグリコデリンの発現誘導を介して形態的・機能的分化を引き起こすことを報告した。卵巣ホルモンに依存せずに子宮内膜の分化誘導が期待できるHDACIは、分化誘導能のみでなく運動亢進能もあわせ持っており、その促進効果はともにグリコデリンの発現誘導を介していることが本研究の結果から明らかとなった。グリコデリンが子宮内膜上皮の運動能を亢進することは、発現時期である分泌期に、腺細胞が移動して複雑な腺管構造を構築するためには合目的である。一方で、今後HDACIが抗腫瘍薬として使用された際に、分化誘導・増殖抑制効果を以ても抗腫瘍効果に乏しい場合、子宮内膜癌などではグリコデリンの発現増加を介して腫瘍細胞の浸潤・転移をも亢進してしまう可能性も懸念される。

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2007/01/14

P90 RSK-1は神経型一酸化窒素(NO)合成酵素と結合しNO産生を阻害する

論文タイトル
p90 RSK-1 associates with and inhibits neuronal nitric oxide synthase
論文タイトル(訳)
P90 RSK-1は神経型一酸化窒素(NO)合成酵素と結合しNO産生を阻害する
DOI
10.1042/BJ20060580
ジャーナル名
Biochemical Journal Portland Press
巻号
January 2007 | vol. 401 | part 2 | 391-398
著者名(敬称略)
宋涛、杉本勝良、居原秀、水谷顕洋、波多野直哉、 久米広大、神戸敏江、山口文徳、徳田雅明、渡邊泰男
所属
昭和薬科大学 薬理学研究室

抄訳

細胞の生存・増殖を制御するERK(extracellular signal-regulated kinase)は神経細胞の生存と死の相反するシグナルに関与している。酸化ストレスの関与が指摘されているが標的分子も含めて十分に理解されていない。本稿では、ERKの下流で働くp90リボゾーマルS6キナーゼ1(RSK-1)が、神経型一酸化窒素(NO)合成酵素と結合し、その部位特異的リン酸化によって、NO産生を抑制することを細胞レベルで明らかにした。神経細胞の生死に関わるERキナーゼシグナルの一部はRSK-1/NO産生制御を介して発現しているのかも知れない。

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2006/12/14

FRETプローブを用いた、PI3-KによるRalA活性制御の可視化

論文タイトル
Regulation of RalA GTPase by phosphatidylinositol 3-kinase as visualized by FRET probes
論文タイトル(訳)
FRETプローブを用いた、PI3-KによるRalA活性制御の可視化
DOI
10.1042/BST0340851
ジャーナル名
Biochemical Society Transaction Portland Press
巻号
October 2006 | vol. 34 | part 5 | 851-854
著者名(敬称略)
吉崎尚良、青木一洋、中村岳史、松田道行
所属
国立循環器病センター研究所 循環器形態部

抄訳

低分子量Gタンパク質は細胞内シグナル伝達機構においてスイッチ分子として働く。その役割は単に、シグナルを中継するだけでなく、細胞内の複数のシグナルを統合したり、分岐したりしている。例えばRalAはRas、Rac、PI3-Kの3つのカスケードからシグナルが入力される。我々は、このような複雑なシグナル伝達カスケードを明らかにするために蛍光共鳴エネルギー移動を応用したバイオセンサーを開発し解析に用いている。我々はこれまでにRasファミリーGタンパク質、リン酸化酵素、リン脂質等のFRETプローブを開発し、上皮増殖因子(EGF)刺激によりRasは形質膜上で緩やかな勾配を持った活性化を示すこと、またRalAは葉状仮足上で限局した活性化しか示さないことを明らかにした。本総説では、EGF刺激により、PI3-Kの代謝産物であるフォスファチジルイノシトール3リン酸(PIP3)は形質膜上で均一に分布すること、それに対しPIP3の代謝産物フォスファチジルイノシトール(3,4)2リン酸[PI(3,4)P2]は細胞辺縁でより高い分布を示すこと、またAktの活性化の局在とタイムコースがPI(3,4)P2の分布の変化と相関することを示し、RalAの限局した活性制御におけるPI(3,4)P2とAktの関与について考察する。そしてRasとPI3-KシグナルはRalGEFで収束しRalAの活性の限局化につながること示す。

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2006/11/24

本態性高血圧患者におけるオステオポンチンと頸動脈硬化

論文タイトル
Osteopontin and carotid atherosclerosis in patients with essential hypertension
論文タイトル(訳)
本態性高血圧患者におけるオステオポンチンと頸動脈硬化
DOI
10.1042/CS20060074
ジャーナル名
Clinical Science Portland Press
巻号
November 2006 | vol. 111 | part 5 | 319-324
著者名(敬称略)
倉田美恵、大蔵隆文、渡邉早苗、福岡富和、檜垣實男
所属
愛媛大学大学院 病態情報内科学

抄訳

生活の欧米化に伴い,動脈硬化性疾患の罹患率が増加している。適切な治療介入のためにはより早期の段階でのリスクの層別化が必要であり,有用なバイオマーカーが求めらる。私たちは,頸動脈エコーで測定した頸動脈内膜中膜複合体壁厚(intima-media thickness)IMTや,Doppler法を用いて測定した相対的拡張期血流速度(拡張期平均血流速度(Vd)/収縮期平均血流速度(Vs))が高血圧性臓器障害の進展と相関することを報告してきた。近年,アルドステロンが血圧上昇のみでなく,炎症を惹起することで動脈硬化を促進していることが明らかになってきた。アルドステロンが誘導する炎症性サイトカインとしてオステオポンチン(OPN)が報告されており,動脈硬化巣において細胞接着,遊走,増殖,炎症性細胞の活性化に関与している。今回私達は有症候性の心血管イベントの既往を持たない76人の高血圧患者において血漿OPN濃度と高血圧性臓器障害との関係を検討した。OPN濃度を中央値で2群にわけ,患者背景を比較したところ,高値群において低値群よりもIMTは肥厚しておりVd/Vsは低下していた。IMT, Vd/Vsはそれぞれ年齢,脈圧,OPNで規定された。また,OPNは年齢,脈圧,LDLコレステロール値などの動脈硬化危険因子との関連を認めなかったが,アルドステロンと正の相関を認めた。さらに,アルドステロンはOPNの独立した規定因子であった。本態性高血圧患者において血漿OPN値が頸動脈硬化と相関したことから,血漿OPN濃度は動脈硬化の指標の一つになると考えられた。

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2006/11/02

アデノベクターに基づいた遺伝子治療用ベクター生産に対するシルクタンパク質セリシンの効果

論文タイトル
Effect of the silk protein sericin on the production of adenovirus-based gene-therapy vectors
論文タイトル(訳)
アデノベクターに基づいた遺伝子治療用ベクター生産に対するシルクタンパク質セリシンの効果
DOI
10.1042/BA20060077
ジャーナル名
Biotechnology and Applied Biochemistry 
巻号
September 2006 | vol. 45 | part 2 | 59-64
著者名(敬称略)
柳原佳奈、寺田聡、三木正雄、佐々木真宏、山田英幸
所属
福井大学工学部 生物応用化学科 分子生物物理研究グループ

抄訳

遺伝子治療においてアデノウイルスベクターは目的遺伝子を運ぶ手段として広く用いられている。アデノベクターは一般的にHEK293細胞を培養することによって生産されており、その培養は非常に高価な定義された無血清培地やウシ胎仔血清(FBS)の添加を必要とする。そのため、高価であり、狂牛病や家畜由来の内因性レトロウイルスのような感染の懸念がある。本論文では、アデノベクター生産のためのFBSの代替添加因子としてカイコ由来タンパク質セリシンを利用することを報告する。293細胞に対するセリシンの増殖促進効果を検討したところ、FBSの効果には劣るものの、0.025~0.4%のセリシン存在下では293細胞は明らかに増殖し、特に0.1%セリシン存在下ではより優れた増殖促進効果が見られた。そこで、0.1%セリシンを用いてアデノベクター生産性の向上を検討した。低力価(MOI 0.03)のアデノベクター pAxCAiLacZを293細胞に感染させアデノベクターを生産させた場合、0.1%セリシン存在下では5%FBS存在下のほぼ3倍高いベクター力価を示した。しかしながら、高力価(MOI 3.7)のアデノベクターを感染させて生産したところ、セリシン存在下ではFBS存在下に比べてわずかに高い力価を示した。この場合、セリシン又はFBS添加培養において生産したアデノベクターの力価が生産の限界であり、生産が飽和に達していたことが示唆される。また、これらのセリシンによるアデノベクター生産性の向上はLacZ活性を測定することによっても検証した。アデノベクター生産性の向上の一つの要因として、セリシンの細胞死保護効果に着目し検討したところ、細胞死の指標であるLDH活性がセリシン添加培養では減少した。この結果より、セリシンによる生産細胞の延命効果が生産性の向上に関与していることが示唆された。これらをふまえて、セリシンはBSEやレトロウイルスような感染の懸念を伴わないアデノベクター生産のための有用で効率的な代替因子であるように思われる。

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2006/09/08

カベオリンはWnt-3a依存性のLRP6の細胞内移行とβ-カテニンの蓄積に必要である

論文タイトル
Caveolin Is Necessary for Wnt-3a-Dependent Internalization of LRP6 and Accumulation of β-Catenin
論文タイトル(訳)
カベオリンはWnt-3a依存性のLRP6の細胞内移行とβ-カテニンの蓄積に必要である
DOI
10.1016/j.devcel.2006.07.003
ジャーナル名
Developmental Cell Cell Press
巻号
Developmental Cell | August, 2006 | vol. 11 | no. 2 | 213-223
著者名(敬称略)
山本英樹, 米門秀行, 菊池章
所属
広島大学大学院医歯薬学総合研究科探索医科学講座分子細胞情報学

抄訳

β-カテニンを介するWntシグナル伝達経路(Wnt/β-カテニン経路)は、動物の初期発生や癌の発症や進展において重要な役割を果たしている。一回膜貫通型のWnt受容体low-density lipoprotein receptor-related protein 6 (LRP6) はAxinと結合し、Wnt依存性のβ-カテニンの蓄積を促進する。しかし、LRP6の細胞内移行の分子機構やその細胞内移行のβ-カテニン経路の活性化における役割については不明である。今回、私共はLRP6がカベオリンを介して細胞内移行し、LRP6の細胞内小胞輸送を制御する分子がWnt-3a依存性のLRP6の細胞内移行のみならず、β-カテニンの蓄積にも必要であることを見出した。また、Wnt-3a刺激によりLRP6はカベオリンと結合すると共にグリコーゲン合成酵素リン酸化酵素-3β (GSK-3β) によりリン酸化され、Axinとの結合が増強した。さらに、カベオリンはLRP6を介してAxinと複合体を形成することにより、Axinとβ-カテニンの結合を抑制した。したがって、カベオリンはLRP6の細胞内移行やWnt/β-カテニン経路の活性化に重要な役割を果たしていると考えられる。

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