本文へスキップします。

H1

国内研究者論文紹介

コンテンツ

ユサコでは日本人の論文が掲載された海外学術雑誌に注目して、随時ご紹介しております。

論文検索

(以下、条件を絞り込んで検索ができます。)

日本人論文紹介:検索
日本人論文紹介:一覧

2008/02/27

Short interfering RNAの電気的導入による標的分子のin vivo発現抑制:腫瘍の血管密度はその導入効率と正の相関を示す

論文タイトル
In vivo silencing of a molecular target by short interfering RNA electroporation: tumor vascularization correlates to delivery efficiency
論文タイトル(訳)
Short interfering RNAの電気的導入による標的分子のin vivo発現抑制:腫瘍の血管密度はその導入効率と正の相関を示す
DOI
10.1158/1535-7163.MCT-07-0319
ジャーナル名
Molecular Cancer Therapeutics 
巻号
January 1, 2008|Vol. 7|No. 1|211-221
著者名(敬称略)
武井佳史、他
所属
名古屋大学大学院医学系研究科  生物化学講座 分子生物学

抄訳

癌治療に有益な標的分子のスクリーニングには、多段階の作業を要する。その中でも、動物腫瘍モデルにおける標的遺伝子の発現抑制効果を評価する部分の作業が最も肝要である。しかし、short interfering RNA(siRNA)などに代表される標的遺伝子抑制薬の腫瘍への投与法は、現状その簡便性と効果において、まだ開発の余地が残る。本論文で、我々は『プレート&フォーク型』電極を用いた電気導入法によってsiRNAの腫瘍へのdeliveryに成功した。その導入効率は腫瘍内に流れた実効電流値と正の相関を示し、さらにその実効電流値は腫瘍内の微小血管密度と血管内皮増殖因子(VEGF)の発現量と相関した。siRNAを導入可能な実効電流値には閾値が存在した。腫瘍内血管密度とVEGF発現量がsiRNAの導入効率を決定すると結論した。以上の基礎検討をもとに、VEGFを標的分子とした治療法を検討した。VEGFに対するsiRNAを腫瘍に電気的に導入することにより、コントロール群と比べて腫瘍増殖を90%抑制した。さらに、長い投与間隔(20日)でのsiRNAの導入(治療)で十分な腫瘍増殖抑制効果が認められた。全身性に投与したsiRNAにおいても同法による治療効果を得た。我々の知見はsiRNAのin vivo電気導入における技術的基盤を提供するとともに、同法による簡便で、かつ効果の高いsiRNA導入技術は標的分子のin vivoスクリーニングに応用可能である。

論文掲載ページへ

2008/01/22

胃がんの罹患リスクと抗炎症作用のあるドコサヘキサエン酸の赤血球膜中濃度との関連

論文タイトル
Gastric Cancer Risk and Erythrocyte Composition of Docosahexaenoic Acid with Anti-inflammatory Effects
論文タイトル(訳)
胃がんの罹患リスクと抗炎症作用のあるドコサヘキサエン酸の赤血球膜中濃度との関連
DOI
10.1158/1055-9965.EPI-07-0655
ジャーナル名
Cancer Epidemiology Biomarkers & Prevention 
巻号
November 1, 2007|Vol. 16|No. 11|2406-2415
著者名(敬称略)
栗木清典、若井建志、松尾恵太郎、平木章夫、鈴木勇史、山村義孝、山雄健次、中村常哉、立松正衛、田島和雄
所属
愛知県がんセンター研究所疫学・予防部

抄訳

胃がんの発生機構の仮説として、Helicobacter pyloriに感染すると、胃の正常粘膜は炎症を惹起されて慢性炎症をきたし、萎縮性胃炎を経てがん化すると提唱されている。ドコサヘキサエン酸(DHA)には抗炎症作用があり、赤血球膜中のDHA濃度は、3ヶ月程度のDHA摂取量を反映する生体指標として適用されている。そこで、我々は、このDHA濃度を簡便で安価に測定できる方法を独自に開発し、胃がんの罹患リスクとの関連を検討した。DHA濃度の高値群は、低値群と比較して、胃がんリスクが約50%低かった。さらに、低分化型腺がんの場合と比較すると、DHA濃度の高値群における高分化型腺がんのリスクは顕著に低かった。以上の結果から、抗炎症作用のあるDHAの赤血球膜中の濃度は、胃がんの罹患リスクを検討する有用な生体指標であることが示唆された。そして、赤血球膜中のDHA濃度を高めることにより、胃がんに罹患するリスクの低減が期待される。

論文掲載ページへ

2008/01/07

カテプシンEは癌細胞膜上から可溶型TRAILを産生することで腫瘍増殖および転移を抑制する

論文タイトル
Cathepsin E Prevents Tumor Growth and Metastasis by Catalyzing the Proteolytic Release of Soluble TRAIL from Tumor Cell Surface
論文タイトル(訳)
カテプシンEは癌細胞膜上から可溶型TRAILを産生することで腫瘍増殖および転移を抑制する
DOI
10.1158/0008-5472.CAN-07-2048
ジャーナル名
Cancer Research 
巻号
November 15, 2007|Vol. 67|No. 22|10869-10878
著者名(敬称略)
川久保友世、山本健二*、他
所属
*九州大学大学院歯学研究院口腔常態制御学講座口腔機能分子科学

抄訳

カテプシンEは細胞内アスパラギン酸プロテアーゼであり、主に免疫系細胞等に限局的に発現している。本酵素は免疫細胞や癌細胞から細胞外に分泌されているが、その癌における役割については不明であった。本論文では、カテプシンEがin vitroおよびin vivoにおいて正常細胞に影響を及ぼさずに癌細胞特異的アポトーシスを引き起こすこと、またそれは本酵素が癌細胞特異的アポトーシス誘導因子として知られるTRAIL(TNF-related apoptosis inducing ligand)を癌細胞膜上から切断・遊離することで引き起こされるものと判明した。さらに、カテプシンE欠損マウスおよびカテプシンE過剰発現マウスを用いた実験において、宿主側カテプシンEの発現量が多いほど腫瘍増殖・転移は抑制され、リンパ球やマクロファージ等の免疫系細胞の浸潤・活性化が著しいことが示された。これらの結果から、カテプシンEは癌細胞表面からのTRAILの切断遊離、および免疫系細胞の活性化を通じて癌の増殖・転移を抑制していることがわかった。

論文掲載ページへ

2007/12/05

日本人新生児糖尿病の分子基盤

論文タイトル
Molecular Basis of Neonatal Diabetes in Japanese Patients
論文タイトル(訳)
日本人新生児糖尿病の分子基盤
DOI
10.1210/jc.2007-0486
ジャーナル名
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism Endocrine Society
巻号
October 2007|Vol. 92|No. 10|3979-3985
著者名(敬称略)
鈴木 滋、藤枝憲二、他
所属
旭川医科大学小児科学

抄訳

新生児糖尿病は臨床的に一過性糖尿病と永続型糖尿病に大別されてきたが、近年種々の原因遺伝子が同定されている。我々は、日本人患者31例の解析を行い、インプリンティングにより父由来アレルのみが発現する遺伝子領域である染色体6q24のコピー数異常を11例、KCNJ11遺伝子ヘテロ接合性変異を9例、ABCC8遺伝子ヘテロ接合性変異を2例、FOXP3遺伝子ヘミ接合性変異を1例に認めた。一過性糖尿病の中で6q24異常の全ての症例とKCNJ11遺伝子変異の2例が一過性糖尿病に見いだされ、その他の遺伝子異常は永続型糖尿病を呈した。2つのKCNJ11遺伝子変異(R50G、A174G)、2つのABCC8遺伝子変異(A90V、N1122D)、FOXP3遺伝子変異(P367L)が新規変異であった。6q24異常群とKCNJ11遺伝子異常群での臨床像を比較すると、6q24異常は、糖尿病発症は有意に早く、発症時の血糖値は有意に低く、糖尿病性ケトアシドーシスの頻度も有意に少なかった。随伴症状として、6q24異常では発症時巨舌を呈する割合が高く、2例のKCNJ11遺伝子変異はてんかん、発達遅滞を示した。日本人新生児糖尿病では6q24異常、KCNJ11遺伝子異常が主たる原因であり、これらの臨床像の違いを明らかにしたことは、発症時にどの遺伝子解析を第一に行えばよいかの指標となり得ると考えられた。

論文掲載ページへ

2007/11/02

フコガングリオシドα-fucosyl(α-galactosyl)-GM1:新規に同定されたPC12細胞の神経突起発生を誘導する脂質膜ラフト成分

論文タイトル
Fucoganglioside α-fucosyl(α-galactosyl)-GM1: a novel member of lipid membrane microdomain components involved in PC12 cell neuritogenesis
論文タイトル(訳)
フコガングリオシドα-fucosyl(α-galactosyl)-GM1:新規に同定されたPC12細胞の神経突起発生を誘導する脂質膜ラフト成分
DOI
10.1042/BJ20070090
ジャーナル名
Biochemical Journal Portland Press
巻号
October 2007|vol. 407|part 1|31-40
著者名(敬称略)
山崎泰広、端川 勉、他
所属
独立行政法人理化学研究所脳科学総合研究センター神経構築技術開発チーム

抄訳

真核細胞の形質膜の脂質外層板には、コレステロール成分の多い脂質ラフトとよばれるクラスター状の微小区画が形成されている。脂質ラフトにはガングリオシド(シアル酸を含むスフィンゴ糖脂質の総称)が集積していることが知られているが、ラフトのガングリオシドの分子構成やそれらの生物機能の発現機構についての詳細は不明である。本研究では著者によって作製されたラフトに対するモノクローン抗体(PR#1)を用い、ラフトの新たなガングリオシド成分としてフコガングリオシドFuc(Gal)-GM1 {α-fucosyl(α-galactosyl)-GM1}を同定した。PC12細胞膜上のFuc(Gal)-GM1はPR#1抗体によって刺激されるとPC12細胞に細胞質突起の発生をうながし、神経成長因子(NGF)と共役的にはたらいて、PC12細胞の神経細胞への分化を促進した。細胞内シグナル伝達にはSrc族キナーゼのFynとYesが関与していた。この機構は相同のガングリオシドの伝達機構(Trk AとERKSキナーゼが関与する)とはまったく異なっていた。形質膜脂質ラフトはガングリオシドの構成の違いによって、機能的に分化したプラットホームを細胞内シグナル伝達機構に提供していることを示唆している。

論文掲載ページへ

2007/10/09

女性ホルモンによる骨量維持作用は破骨細胞内の核内受容体と細胞死誘導因子を介する

論文タイトル
Estrogen Prevents Bone Loss via Estrogen Receptor α and Induction of Fas Ligand in Osteoclasts
論文タイトル(訳)
女性ホルモンによる骨量維持作用は破骨細胞内の核内受容体と細胞死誘導因子を介する
DOI
10.1016/j.cell.2007.07.025
ジャーナル名
Cell Cell Press
巻号
October 2007|vol. 130|issue 5|811-823
著者名(敬称略)
中村 貴、加藤茂明、他
所属
東京大学分子細胞生物学研究所核内情報研究分野

抄訳

高齢化社会に伴い、老年期における骨粗鬆症による生活レベルの低下、特に女性の閉経後骨粗鬆症は大きな社会問題であります。しかしながら、閉経に伴って減少する女性ホルモンの骨組織に対する効果は不明でした。
本論文では、女性ホルモン欠乏によって引き起こされる骨吸収促進による骨減少に着目し、骨組織、特に破骨細胞における核内女性ホルモン受容体(ERα)の機能を、遺伝子改変マウスを用い解析しました。その結果、女性ホルモンが破骨細胞内のERαに結合することによって、Fas Ligandの遺伝子発現が亢進し、アポトーシスを引き起こし、破骨細胞寿命を短縮することで骨吸収を抑制することが、初めて明らかになりました。
本研究の成果は、女性ホルモンの骨組織における重要な作用点が、骨吸収をつかさどる破骨細胞であることを、脊椎動物の生体内で初めて発見したことです。今後の骨粗鬆症治療開発の一助となることが期待されます。

論文掲載ページへ

2007/07/19

マイクロアレイ解析によるホルモン不応性前立腺癌の分子的特徴

論文タイトル
Molecular Features of Hormone-Refractory Prostate Cancer Cells by Genome-Wide Gene Expression Profiles
論文タイトル(訳)
マイクロアレイ解析によるホルモン不応性前立腺癌の分子的特徴
DOI
10.1158/0008-5472.CAN-06-4040
ジャーナル名
Cancer Research 
巻号
June 1 2007|vol. 67 | No. 11 | 5117-5125
著者名(敬称略)
中川 英刀
所属
東京大学 医科学研究所 ヒトゲノム解析センター

抄訳

前立腺癌の臨床において最も大きな問題は、ホルモン療法に抵抗性となった前立腺癌の出現である。通常、前立腺癌の増殖は男性ホルモンに強く依存しており、男性ホルモンの分泌を抑制する内科的/外科的去勢によって、前立腺癌の増殖は抑制される。しかし、その約20-30%は最終的にホルモン不応性となり、より癌としての悪性度が増し、化学療法にも抵抗性で、患者を死に至らしめる。我々は、このホルモン不応性前立腺癌の分子的特徴を解明するため、採取困難な臨床のホルモン不応性前立腺癌25検体より癌細胞のみをマイクロダイセクションを行い、cDNAマイクロアレルにてゲノムワイドでの遺伝子発現プロファイルを作製した。同時に10検体の通常の前立腺癌においても、同様にゲノムワイドでの遺伝子発現プロファイルを作製し、比較を行った。その結果、遺伝子発現パターンにおいて、ホルモン不応性前立腺癌は、通常の前立腺癌と明らかに異なっており、ホルモン不応性前立腺癌において、発現変化がある遺伝子を106個同定した。その中には、アンドロゲン受容体やHLA等がふくまれ、これらの遺伝子発現変化は、ホルモン不応性前立腺癌のおけるホルモン療法耐性や、より悪性度の高い表現系に強く関与するものと考えられる。これらの遺伝子発現プロファイルは、前立腺癌の発生や進展機構の解明のみならず、新規の分子標的薬の開発に有用と考える。

論文掲載ページへ

2007/06/20

NELFはCBCと結合し,複製依存的ヒストンmRNAの3’末端プロセシングに関与する

論文タイトル
NELF Interacts with CBC and Participates in 3′ End Processing of Replication-Dependent Histone mRNAs
論文タイトル(訳)
NELFはCBCと結合し,複製依存的ヒストンmRNAの3’末端プロセシングに関与する
DOI
10.1016/j.molcel.2007.04.011
ジャーナル名
Molecular Cell 
巻号
May 2007|vol. 26 | No. 3 | 349-365
著者名(敬称略)
成田央,Tetsu M.C. Yung,山本淳一,坪井靖典,田辺秀之,田中亀代次,山口雄輝,半田宏
所属
東京工業大学 大学院生命理工学研究科

抄訳

負の転写伸長因子NELFは4つのサブユニットからなり,神経疾患や癌といった様々な疾病と関連している.我々は,NELFが核のキャップ結合因子CBCと相互作用し,両因子がさらにヒストンのステムループ結合因子SLBPと相互作用することで,複製依存的ヒストンmRNAの3’末端プロセシングを制御していることをここに報告する.驚くべきことに,NELFとCBCのいずれかが欠損すると,ポリA付加された異常なヒストンmRNAが蓄積する.さらにNELFは核内でヒストンの遺伝子座と相互作用し,我々がNELF bodiesと名付けた独自の核内構造を形成する.NELF bodiesはしばしばCajal bodiesやcleavage bodiesと空間的に重なる.以上の結果から,NELFのヒストンmRNAプロセシングにおける驚くべき役割が明らかとなり,NELFが転写の過程で様々なmRNAプロセシングの過程をコーディネートする因子の1つであることが示された

論文掲載ページへ

2007/05/19

コンドロイチン硫酸合成酵素-3 (コンドロイチン合成酵素-2)はコンドロイチン合成酵素-1あるいはコンドロイチン重合化因子と相互作用してコンドロイチン鎖の重合に関与している

論文タイトル
Involvement of chondroitin sulfate synthase-3 (chondroitin synthase-2) in chondroitin polymerization through its interaction with chondroitin synthase-1 or chondroitin polymerizing factor
論文タイトル(訳)
コンドロイチン硫酸合成酵素-3 (コンドロイチン合成酵素-2)はコンドロイチン合成酵素-1あるいはコンドロイチン重合化因子と相互作用してコンドロイチン鎖の重合に関与している
DOI
10.1042/BJ20061876
ジャーナル名
Biochemical Journal Portland Press
巻号
April 2007|vol. 403 | 545-552
著者名(敬称略)
泉川 友美、宇山 徹、奥浦 由佳、菅原 一幸、北川 裕之
所属
神戸薬科大学生化学研究室

抄訳

コンドロイチン硫酸 (CS) は細胞表面や細胞外マトリックスに存在する直鎖状の硫酸化糖鎖で、コアタンパク質に結合したプロテオグリカン(PG)として存在し、様々な分子と相互作用することにより、細胞増殖・分化や形態形成などの生理作用を担っていることが知られている。CS鎖は、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)とグルクロン酸(GlcA)の二糖が数十回繰り返し重合した構造からなる。以前我々は、CS鎖の重合化がコンドロイチン合成酵素-1(ChSy-1) とCS鎖の重合化に必須の因子であるコンドロイチン重合化因子 (ChPF)の複合体により担われていることを報告した。最近、他のグループによってChSy-1との相同性によりコンドロイチン硫酸合成酵素-3 (CSS3)がクローニングされた。そこで、我々はCSS3がChSy-1と同様にChPFと複合体を形成して、CS鎖の重合化に関与しているかを検討した。さらに、HeLa細胞でCSS3を過剰発現あるいはその発現をRNAi法によりノックダウンし、細胞が産生するCS鎖の量を分析した。その結果、CSS3はChPFばかりでなく、ChSy-1とも相互作用し、それらの複合体は共にCS鎖の重合活性を示した。しかしながら、それらの複合体が合成するコンドロイチンの長さには違いが見られた。また、CSS3の発現量とHeLa細胞が産生するCS鎖の量は相関していた。これらの結果より、CSS3もCS鎖の重合化に関与していることが明らかとなり、CSS3をコンドロイチン合成酵素-2 (ChSy-2)と新たに名付けた。さらに本研究により、CS鎖の重合化は、ChSy-1、CSS3およびChPFの様々な組み合わせの複合体に担われていることが示唆された。

論文掲載ページへ

2007/04/19

DYRK2はDNA損傷によって核に移行しp53セリン46をリン酸化してアポトーシスを誘導する

論文タイトル
DYRK2 Is Targeted to the Nucleus and Controls p53 via Ser46 Phosphorylation in the Apoptotic Response to DNA Damage
論文タイトル(訳)
DYRK2はDNA損傷によって核に移行しp53セリン46をリン酸化してアポトーシスを誘導する
DOI
10.1016/j.molcel.2007.02.007
ジャーナル名
Molecular Cell 
巻号
March 2007|vol. 25 | no. 5 | 725-738
著者名(敬称略)
吉田清嗣、他
所属
東京医科歯科大学 難治疾患研究所ゲノム応用医学研究部門 分子遺伝分野

抄訳

細胞ではDNA損傷が生じると、それに応答して多くの分子が活性化されることが知られている。なかでもp53はDNA傷害によって細胞周期を止めたり、アポトーシスを誘導するが、どのような仕組みでこれらの機能を使い分けているのか、不明だった。近年、p53のセリン46のリン酸化がp53AIP1の発現を誘導し、アポトーシスによる細胞死が惹起されることが明らかにされた。すなわちこのセリン46をリン酸化する酵素(キナーゼ)は、p53を介したアポトーシス誘導に必須である。にもかかわらず、そのキナーゼは同定されていない。本研究で我々はそのセリン46キナーゼとしてDYRK2を同定した。DNA 損傷によりDYRK2は細胞質から核に移動し、p53のセリン46をリン酸化する。このリン酸化によりp53AIP1の発現とアポトーシス誘導が認められた。一方、細胞内でのDYRK2の発現をRNA干渉により消失させると、p53セリン46のリン酸化が起きなくなり、アポトーシス誘導も有意に抑えられた。これらの結果から、DYRK2はセリン46のリン酸化によりp53のアポトーシス誘導機能を制御していることが明らかとなった。

論文掲載ページへ