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国内研究者論文紹介

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ユサコでは日本人の論文が掲載された海外学術雑誌に注目して、随時ご紹介しております。

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2010/02/24

新規2型糖尿病感受性遺伝子KCNJ15の同定 ―肥満のない2型糖尿病で関連―

論文タイトル
Identification of KCNJ15 as a Susceptibility Gene in Asian Patients with Type 2 Diabetes Mellitus
論文タイトル(訳)
新規2型糖尿病感受性遺伝子KCNJ15の同定 ―肥満のない2型糖尿病で関連―
DOI
10.1016/j.ajhg.2009.12.009
ジャーナル名
American Journal of Human Genetics Cell Press
巻号
2010|Vol. 86|Issue 1|54-64
著者名(敬称略)
岡本好司※1、岩直子※2、他
所属
※1 東京大学医学部附属病院 腎臓・内分泌内科 先端腎疾患病態研究グループ
※2 東京女子医科大学大学院 医学研究科 第三内科学(糖尿病センター)

抄訳

アジア人に多い肥満を伴わない2型糖尿病の遺伝素因を解明するために、ゲノム全域を探索し、新規の糖尿病感受性遺伝子としてKCNJ15遺伝子を同定した。本遺伝子エクソン4に位置するSNP(rs3746876, C566T)のリスクアレルTを有する集団では2型糖尿病発症リスクが1.76倍となり、さらに肥満のない患者に限ると1.93~2.54倍に増加した。従来の報告においては2型糖尿病感受性SNPのリスクは2未満であることから、本遺伝子の発症リスクは大きいと考えられる。
 我々は罹患同胞対解析の結果から得られた染色体21番領域上の遺伝子を検討し、最終的に1568人の2型糖尿病患者と1700人の健常対照者を用いた解析によりKCNJ15遺伝子をつきとめた。また、デンマークとの共同研究の結果、本遺伝子の2型糖尿病との関連が極めて小さいことを見出し、遺伝背景における人種差を明らかにした。
 KCNJ15遺伝子は膵臓のインスリン分泌細胞で発現するチャネルをコードしており、培養インスリン分泌細胞に過剰発現させるとインスリン分泌が減少することも明らかにした。リスク型をもつ人では遺伝子のmRNAおよび蛋白の発現レベルが高く、本遺伝子は発症促進遺伝子と考えられる。今後、新しい糖尿病発症機構の解明とともに、新たな治療法や予防法の開発につながると期待される。

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2010/02/01

無尾両生類における水適応戦略 -アクアポリン分子の多様性-

論文タイトル
Water Adaptation Strategy in Anuran Amphibians: Molecular Diversity of Aquaporin
論文タイトル(訳)
無尾両生類における水適応戦略 -アクアポリン分子の多様性-
DOI
10.1210/en.2009-0841
ジャーナル名
Endocrinology Endocrine Society
巻号
2010|Vol. 151|No. 1|165-173
著者名(敬称略)
尾串雄次、田中滋康、他
所属
静岡大学創造科学技術大学院統合バイオサイエンス部門

抄訳

水棲種を除く多くの無尾両生類は、下腹部皮膚から水を吸収し、膀胱に貯蔵した尿から水を再吸収することで、生体の水バランスを維持している。本研究により、生息域の異なる無尾類のアクアポリン(AQP)を解析・比較した結果、無尾類には基本的に、下腹部皮膚と膀胱にそれぞれ固有の抗利尿ホルモン依存性AQP(下腹部皮膚型と膀胱型)が発現していることが判明した。さらに、これらのAQPの発現様式の変化が、無尾類の多様な水環境への適応能と深く関連していることが示唆された。陸棲や樹上棲のカエルでは、生理学的な研究から、抗利尿ホルモンに応答して下腹部皮膚から効率よく水を吸収することが知られていたが、これらの種では、膀胱型AQPが下腹部皮膚型AQPとともに下腹部皮膚に発現していた。対照的に、水中棲のツメガエルでは、下腹部皮膚は抗利尿ホルモンに応答せず、水透過性も極めて低いことが知られていたが、この種では、下腹部皮膚型AQP(AQP-x3)mRNAからの翻訳が認められなかった。AQP-x3のアミノ酸配列を他種と比較すると、C末端側にCys273を基点として11アミノ酸残基長い配列 (CT tail) が認められた。このCysをSerや終始コドンに変えた変異体(C273SまたはC273Stop)をツメガエル卵発現系で調べると、野生型AQP-x3のcRNAではタンパク質発現は見られないが、C273SおよびC273StopのcRNAではタンパク質発現が見られ、これらのAQPタンパク質により水透過能が亢進した。また、アマガエルの腎臓型AQPであるAQP-h2Kでは、cRNAからタンパク質が発現するが、AQP-h2KにCT tailを付加したキメラ分子のcRNAでは、タンパク質が発現しなかった。これらの結果から、ツメガエルでは、AQP-x3のCT tailをコードする33個のヌクレオチドに、タンパク質発現を抑制する機能があり、これにより下腹部皮膚からの過剰な水透過が抑制され、ツメガエルの水中生活への適応が保証されていると考えられる。本研究により、1790年代のR. Townson博士の発見以来蓄積されてきた無尾類の水吸収特性や生息域に応じた相違に関する研究成果が、分子レベルで理解できるようになった。

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2009/12/22

視床下部オレキシンは交感神経を活性化することによって摂食に伴う骨格筋でのグルコース利用を亢進する

論文タイトル
Hypothalamic Orexin Stimulates Feeding-Associated Glucose Utilization in Skeletal Muscle via Sympathetic Nervous System
論文タイトル(訳)
視床下部オレキシンは交感神経を活性化することによって摂食に伴う骨格筋でのグルコース利用を亢進する
DOI
10.1016/j.cmet.2009.09.013
ジャーナル名
Cell Metabolism Cell Press
巻号
2009|Vol. 10|Issue 6|466-480
著者名(敬称略)
志内哲也、箕越靖彦、他
所属
自然科学研究機構生理学研究所発達生理学研究系 生殖・内分泌系発達機構研究部門 総合研究大学院大学生命科学研究科 生理科学専攻

抄訳

オレキシンニューロンは睡眠・覚醒レベルや動機付け行動を制御する。我々は、マウス、ラットの視床下部腹内側核(VMH)にオレキシンを投与するとVMHニューロンを直接興奮させ、骨格筋を支配する交感神経活動を選択的に上昇させることによって骨格筋のグルコースの取込みが亢進することを見いだした。さらに、インスリンによるグルコース取込みおよびグリコーゲン合成促進作用が増加した。白色脂肪組織ではこのような作用は見られなかった。オレキシンによる作用はβアドレナリン受容体遺伝子欠損マウスでは認められず、このマウスの骨格筋、および血管など骨格筋周辺細胞にβ2 受容体遺伝子を発現させるとオレキシンによるグルコース代謝促進作用が回復した。さらに我々は、自発的にサッカリン溶液を摂取するよう動機付けしたマウスにサッカリンを摂取させると、オレキシンニューロンが活性化し、これにより、インスリンによるグルコース代謝が骨格筋において選択的に増強することを見いだした。以上より、オレキシンおよびVMHにおけるオレキシン受容体は、強い動機付けによる摂食行動と味覚刺激によって活性化し、筋交感神経−β2 受容体経路を介して骨格筋でのグルコース代謝調節作用を促進すると考えられる。

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2009/11/10

EDAR の多型はシャベル型切歯の遺伝的決定因子のひとつである

論文タイトル
A Common Variation in EDAR Is a Genetic Determinant of Shovel-Shaped Incisors
論文タイトル(訳)
EDAR の多型はシャベル型切歯の遺伝的決定因子のひとつである
DOI
10.1016/j.ajhg.2009.09.006
ジャーナル名
American Journal of Human Genetics Cell Press
巻号
2009|Vol. 85|Issue 4|528-535
著者名(敬称略)
木村亮介、他
所属
琉球大学亜熱帯島嶼科学超域研究推進機構

抄訳

Ectodysplasin A receptor (EDAR )は、歯、毛髪、汗腺など外胚葉由来器官の発生に関わる遺伝子であり、近年、非同義多型であるEDAR T1540C(V370A)が毛髪の太さと関連することが示された。また、1540Cの分布は、モンゴロイド特有の形態形質であるシャベル型切歯の分布ともよく一致する。本研究では、東京および先島諸島(宮古島および石垣島)における202人を対象に、シャベル型切歯を中心とした歯形態とEDAR 遺伝子型との関連を、調整した歯列模型およびDNA試料を用いて解析した。その結果、個体の1540Cアリルの保有数は、シャベル型のグレードと非常に強く相関していることが観察された(7.7×10−10)。また、歯全体の大きさや近遠心径の大きさとも有意な正の相関が見られた。したがって、このアジア人特異的な非同義多型は、歯や毛髪といった複数の可視的形質と関連することが示されたことになり、その他にも関連する形質が存在するかもしれない。この多型には東アジアにおいて自然選択が働いてきたことが示唆されているが、選択圧および選択の対象となった形質に関しては未だ謎である。

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2009/10/27

Wnt5タンパク質はマボヤ胚の脊索のインターカレーションに必要である

論文タイトル
Wnt5 is required for notochord cell intercalation in the ascidian Halocynthia roretzi
論文タイトル(訳)
Wnt5タンパク質はマボヤ胚の脊索のインターカレーションに必要である
DOI
10.1042/BC20090042
ジャーナル名
Biology of the Cell 
巻号
2009|Vol. 101|part 11|645-659
著者名(敬称略)
庭野智子、高鳥直士、熊野 岳、西田宏記
所属
大阪大学大学院理学研究科生物科学専攻発生生物学研究室

抄訳

多くの動物の胚は発生中に体が前後に長くなっていく。これは、胚細胞が左右から正中面に向けて移動し、互いの間に入り込んでいく収斂と伸張運動 によっている。Wntタンパク質はこの細胞運動に 深く関わっていることが示されてきた。ホヤ胚を使ってWntタンパク質を欠如させたり過剰に産生させたりした結果、尾の中心を貫いている脊索の収斂運動に異常が見られ、細胞が互いの間に入り込ん でいくことができなくなった。また、一部の脊索細胞のみでWntタンパク質を欠如させたり過剰に産生させたりしたモザイク解析の結果は、Wntタンパク質が脊索細胞自体で必要とされ、その作用機構が 細胞自律的であることが示唆された。Wntタンパク質は脊索細胞でオートクライン的に働いているようである。

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2009/10/02

外科的に切除された肝細胞癌(HCC)における拡散強調画像(DWI)―画像上の特徴、見かけの拡散係数(ADC)計測と病理組織学的分化度の比較

論文タイトル
Diffusion-Weighted Imaging of Surgically Resected Hepatocellular Carcinoma: Imaging Characteristics and Relationship Among Signal Intensity, Apparent Diffusion Coefficient, and Histopathologic Grade
論文タイトル(訳)
外科的に切除された肝細胞癌(HCC)における拡散強調画像(DWI)―画像上の特徴、見かけの拡散係数(ADC)計測と病理組織学的分化度の比較
DOI
10.2214/AJR.08.1424
ジャーナル名
American Journal of Roentgenology American Roentgen Ray Society
巻号
2009|Vol. 193|Issue 2|438-444
著者名(敬称略)
那須克宏、他
所属
筑波大学大学院人間総合科学研究科疾患制御医学専攻応用放射線医学分野

抄訳

目的:DWIにおけるHCCの信号強度とADCを病理組織学的分化度(以下分化度)と比較すること。
対象と方法:外科的に切除されたHCC 125結節に対してDWIおよびT2WIにおける信号強度を視覚的に3段階に分類し分化度と比較した。ADCと分化度の相関についても検討した。
結果:DWIにおいて周囲肝実質よりも高信号を示したHCCは114結節であった。これはT2WIにおいて同様の高信号を示した結節が90結節であったことに比べて有意に高い頻度であった。分化度が低下するに従ってDWIでの信号が高くなる傾向が見られたが、この傾向はT2WIでは指摘できなかった。HCCの平均ADCは1.43±0.32×10-3 mm2/secであり過去の報告とほぼ同様であった。ADCと分化度との間には有意な相関は指摘できなかった。
結論:HCCの分化度とADCとの間には明らかな相関はないが、DWIにおける信号強度は分化度が低下するほど高くなる傾向が見られた。しかしながらDWIにおける信号強度から分化度を類推するのはオーバーラップの大きさから困難と思われた。

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2009/07/29

DNAマーカーによる栽培イチゴのジェノタイピング法:研究室間共同試験による妥当性確認

論文タイトル
Genotyping of Strawberry (Fragaria × ananassa Duch.) Cultivars by DNA Markers: Interlaboratory Study
論文タイトル(訳)
DNAマーカーによる栽培イチゴのジェノタイピング法:研究室間共同試験による妥当性確認
DOI
0
ジャーナル名
Journal of AOAC INTERNATIONAL 
巻号
2009|Vol. 92|Issue 3|896-906
著者名(敬称略)
國久美由紀、他
所属
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構野菜茶業研究所業務用野菜研究チーム

抄訳

栽培イチゴ(Fragaria × ananassa Duch.)の品種識別を目的として開発された25のDNAマーカー(Cleavage Amplified Polymorphic Sequence[CAPS]マーカー)について、14研究機関の参画によるブラインド試験を行い、開発技術のジェノタイピング(遺伝子型決定)能力の妥当性を確認した。その結果、12マーカーの感度および特異性は100%、別の12マーカーでは95%以上、残りの1マーカーでは90%以上であることが確認された。このことから、開発されたジェノタイピング法は高い再現性があり、実際に栽培イチゴの品種特定を行う際には有用なツールとなることが示された。本論文は、DNAマーカーによる作物のジェノタイピング法について統計的に妥当性を確認した初めての報告である。

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2009/07/01

毛乳頭細胞によるケラチノサイト増殖に対するWntとandrogenの作用機構

論文タイトル
Keratinocyte Growth Inhibition through the Modification of Wnt Signaling by Androgen in Balding Dermal Papilla Cells
論文タイトル(訳)
毛乳頭細胞によるケラチノサイト増殖に対するWntとandrogenの作用機構
DOI
10.1210/jc.2008-1053
ジャーナル名
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism Endocrine Society
巻号
April 2009|Vol. 94|Issue 4|1288-1294
著者名(敬称略)
北川朋子、他
所属
京都府立医科大学大学院医学研究科皮膚科学

抄訳

Wntは形態形成や細胞分化に関与する細胞間シグナル伝達因子の1つであり、毛包形成を促進する。男性ホルモンであるandrogenは部位特異的に毛の成長を退行させることが知られている。そこで、我々はandrogenが発毛促進因子Wntのシグナルを調節し、発毛・脱毛に影響を与えているとの仮説を立てた。毛乳頭細胞とKeratinocyte(KC)の共培養系を確立し、Wnt3aとandrogenの付加によるKC増殖効果を調べた。男性型脱毛症患者由来毛乳頭細胞では、Wnt3aによるKCの増殖促進効果はandrogenによって有意に抑制された。またandrogenは細胞内でのアンドロゲン受容体とWntの下流因子の共核移行を亢進させ、Wntシグナルの下流の転写因子の転写活性を抑制した。また男性型脱毛症患者由来毛乳頭細胞におけるアンドロゲン受容体のたんぱく量は健常者と比べて有意に高値であった。以上より、男性型脱毛症患者由来毛乳頭細胞においては、アンドロゲン受容体の量的・質的な差異が、Wntシグナルの抑制に関与していると示唆された。

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2009/05/18

PHドメインのみから構成されるタンパク質PHLDA3はp53によって制御を受ける新規Akt抑制因子である

論文タイトル
PH Domain-Only Protein PHLDA3 Is a p53-Regulated Repressor of Akt
論文タイトル(訳)
PHドメインのみから構成されるタンパク質PHLDA3はp53によって制御を受ける新規Akt抑制因子である
DOI
10.1016/j.cell.2008.12.002
ジャーナル名
Cell Cell Press
巻号
February 2009|Vol. 136|Issue 3|535-550
著者名(敬称略)
川瀬竜也、大木理恵子、他
所属
国立がんセンター研究所細胞増殖因子研究部

抄訳

多くのがんにおいて、がん遺伝子Aktが活性化していることが知られており、Akt活性化はがん化を強く促進する要因の一つであると考えられている。Aktは正常細胞ではがん抑制遺伝子p53によって、活性化が抑制されている。ところが、がんのほとんどのものではp53の機能不全が認められており、がん細胞ではAktが抑制されなくなっている。
我々は、これまで機能未知であったPHLDA3遺伝子が、p53によって誘導される遺伝子であることを見いだし、PHLDA3がp53によるAkt抑制を担う重要な遺伝子であることを初めて明らかにした。PHLDA3タンパク質は、Aktタンパク質の活性化に必須な細胞膜移行のステップを抑制する機能がある。
がん抑制において、非常に強いがん化能を持つAktの活性を制御することはとても重要である。実際に、PHLDA3の発現を抑制した細胞ではAktの異常な活性化が認められるとともに細胞ががん化していることが示された。さらに、ヒト肺がん(LCNEC)においてPHLDA3遺伝子の高頻度な欠損が認められた。これらのがん組織では正常組織と比較してPHLDA3の発現低下とAkt活性の上昇が認められ、PHLDA3の異常ががん化の原因となっている可能性が考えられた。肺がんを始めとして、ほとんどのがんでAktは異常に活性化している。PHLDA3はAktを直接抑制することができるため、今回得られた知見がこれらのがんの治療や診断法の開発につながることが期待される。

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2009/04/06

硬膜動静脈瘻のシャント部位の同定におけるDynaCT Digital Angiographyの有用性

論文タイトル
Efficacy of DynaCT Digital Angiography in the Detection of the Fistulous Point of Dural Arteriovenous Fistulas
論文タイトル(訳)
硬膜動静脈瘻のシャント部位の同定におけるDynaCT Digital Angiographyの有用性
DOI
10.3174/ajnr.A1395
ジャーナル名
American Journal of Neuroradiology  American Society of Neuroradiology
巻号
American Journal of Neuroradiology Vol. 30, No. 3 (487-491)
著者名(敬称略)
日宇 健 他
所属
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科病態解析・制御学講座神経病態制御学

抄訳

【目的】硬膜動静脈瘻(DAVF)に対する治療においてシャント部位を特定することが治療戦略上必要不可欠である。脳血管撮影装置SIEMENS製AXIOM dBAから得られるDynaCT digital angiographyの有用性について検討した。
【方法】2006年以降のDAVF連続14症例(海綿静脈洞部7例、横-S状静脈洞部4例、テント部1例、上矢状静脈洞部2例)を対象とした。全例で外頸あるいは内頸動脈本幹からのrotational angiographyを施行し、このデータを用いて非差分画像からDynaCT digital angiographyを作製し、fistula point、feeder、drainerについて2D-DSAと比較検討した。
【結果】DynaCTではいずれも全例で同定され、特にfistula pointは周囲の骨との位置関係まで詳細に確認された。2D-DSAと比較し8例(57%)、12個の有用な情報が得られた。内訳はfistula point(n=7)、 feeder(n=1)、retrograde leptomeningeal drainageの同定(n=1)、drainer(n=1)、venous anomaly(n=2)であった。
【結論】DynaCTは空間分解能、密度分解能に優れ、シャント部位を含めたDAVFのすべての血管構築の評価が可能であった。このことはDAVFの血管内治療あるいは直達手術の際に非常に有用であり、また今後シャント部位を特定することで血管内治療におけるtarget embolizationへの応用も期待される。

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