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国内研究者論文紹介

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ユサコでは日本人の論文が掲載された海外学術雑誌に注目して、随時ご紹介しております。

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日本人論文紹介:一覧

2006/06/08

Na+/H+交換体制御因子NHERFのERMタンパク質による認識の構造的基盤

論文タイトル
Structural Basis for NHERF Recognition by ERM Proteins
論文タイトル(訳)
Na+/H+交換体制御因子NHERFのERMタンパク質による認識の構造的基盤
DOI
10.1016/j.str.2006.01.015
ジャーナル名
Structure Cell Press
巻号
Structure | April 11, 2006 | vol. 14 | no. 4 | 777-789
著者名(敬称略)
箱嶋 敏雄 他
所属
奈良先端科学技術大学院大学 構造生物学分野(情報生命科学専攻)

抄訳

Na+/H+交換体制御因子NHERFはイオンチャネルや受容体を,ERMタンパク質への結合を介してアクチン細胞骨格へ繋ぎ止めるのに鍵となるアダプタータンパク質である.NHERFはERMタンパク質のFERMドメインに結合するが,接着分子に見つかっているFERMドメインへの結合に特徴的なモチーフ-1配列をもたない.今回のラデキシンFERMドメインとNHERF-1またはNHERF-2のC-末端ペプチドとの複合体結晶構造は,モチーフ-1と異なる 13残基のMDWxxxxx(L/I)Fxx(L/F)(モチーフ-2)配列に特異的なペプチド結合部位がFERMドメイン上存在することを明らかにした.この新規なモチーフ-2は,FERMドメインのサブドメインCとの疎水的な結合のために両親媒性のαらせんを形成する.両結合部位は完全には重なっていないが,モチーフ-2の結合は,サブドメインCに誘導適合のコンホメーション変化を起こし,接着分子との結合を妨害する.我々の研究は,膜タンパク質と細胞骨格の間の多彩なERMタンパク質による連結の構造的事例を提供している.

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2006/05/25

感染性ロタウイルスの2本鎖RNAゲノムへの部位特異的変異の導入のためのリバースジェネティクス系

論文タイトル
Reverse genetics system for introduction of site-specific mutations into the double-stranded RNA genome of infectious rotavirus
論文タイトル(訳)
感染性ロタウイルスの2本鎖RNAゲノムへの部位特異的変異の導入のためのリバースジェネティクス系
DOI
10.1073/pnas.0509385103
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences National Academy of Sciences
巻号
PNAS | March 21, 2006 | vol. 103 | no. 12 | 4646-4651
著者名(敬称略)
谷口孝喜 他
所属
藤田保健衛生大学医学部ウイルス・寄生虫学講座

抄訳

ゲノムが10~12本の2本鎖RNAからなるレオウイルス科の一員であるロタウイルスのリ バースジェネティクス系の開発に成功した。この系は、細胞質中に人工的なウイルス mRNAを供給するために、組み換えワクチニアウイルス由来のT7RNAポリメラーゼを利用 した。ヘルパーウイルス(ヒトロタウイルスKU株)の重感染により、細胞質中に転写 された、サルロタウイルスSA11株の完全長のVP4 mRNAがcDNA由来のSA11 VP4 RNA セグ メントを有したKU株を基本としたトランスフェクタントウイルスに含まれることにな る。真正のSA11 VP4 RNA遺伝子を有するトランスフェクタントウイルスに加え、さら に、SA11 VP4 ゲノム中の遺伝子マーカーとして、2つの制限酵素切断部位の両方また は一方を破壊するためにサイレント変異を導入した3種の感染性ロタウイルストランス フェクタントも本法で作成した。ロタウイルスのゲノムを人工的に操作することがで きることにより、ロタウイルスの複製と病原性の理解度を深める とともに、弱毒ワク チンベクターの構築のための方法として有用であろう。

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2006/05/11

NIK-333はヒトT細胞白血病ウイルス型感染T細胞株や成人T細胞白血病細胞のNF-κBシグナル経路を阻害し、細胞増殖を抑制する。

論文タイトル
NIK-333 inhibits growth of human T-cell leukemia virus type I-infected T-cell lines and adult T-cell leukemia cells in association with blockade of nuclear factor-κB signal pathway
論文タイトル(訳)
NIK-333はヒトT細胞白血病ウイルス型感染T細胞株や成人T細胞白血病細胞のNF-κBシグナル経路を阻害し、細胞増殖を抑制する。
DOI
10.1158/1535-7163.MCT-05-0434
ジャーナル名
Molecular Cancer Therapeutics 
巻号
Mol Cancer Ther. 2006;5:704-712
著者名(敬称略)
森直樹 他
所属
琉球大学・大学院医学研究科・感染制御医科学専攻 感染分子生物学講座・病原生物学分野

抄訳

成人T細胞白血病(ATL)はヒトT細胞白血病ウイルス型(HTLV-)感染を原因とする難治性の白血病である。また、新規合成レチノイドであるNIK-333は現在、原発性肝がんの術後再発予防効果を検討する臨床試験が行われている。今回、我々はATLの新規治療法を開発する目的で、NIK-333のHTLV-感染T細胞株およびATL患者白血病細胞(ATL細胞)に対する作用を調べた。NIK-333はHTLV-感染T細胞株およびATL細胞の増殖を抑制し、細胞周期のG1期停止とアポトーシスを誘導した。一方、健常人の末梢血単核球の生存に及ぼす影響は軽微であった。NIK-333処理はHTLV-感染T細胞株およびATL細胞のサイクリンD1、サイクリンD2、cIAP2およびXIAPタンパク質の発現を抑制した。さらに、NIK-333はHTLV-感染T細胞株のNF-κB活性を阻害した。免疫不全マウスの皮下にHTLV-感染T細胞株を移植後、100 mg/kgのNIK-333を隔日経口投与したところ、対照群と比べて腫瘍の増殖抑制効果を認めた。今回の我々の研究結果はNIK-333のATL治療薬としての可能性を示すものである。

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2006/04/27

骨髄内骨髄移植法を用いた骨粗鬆症の治療

論文タイトル
Treatment of Senile Osteoporosis in SAMP6 Mice by Intra-Bone Marrow Injection of Allogeneic Bone Marrow Cells
論文タイトル(訳)
骨髄内骨髄移植法を用いた骨粗鬆症の治療
DOI
10.1634/stemcells.2005-0068
ジャーナル名
Stem Cells 
巻号
Stem Cells 24: 399-405, 2006
著者名(敬称略)
池原 進 他
所属
関西医科大学病理学第一講座

抄訳

老化促進マウス(SAM)のサブタイプSAMP6は、早期に骨粗鬆症を発症する。我々は、これまで骨髄内骨髄移植によって、ドナーの造血系の細胞のみならず、間葉系の細胞も置換できることを見出した(Blood 97: 3292-3299, 2001)。そこで、SAMP6を用いて、骨粗鬆症の予防を試み、正常マウスの全骨髄細胞(造血幹細 胞と間葉幹細胞を含む)を骨髄内に移植することによって、予防に成功した(Stem Cells 20: 542-551, 2002)。レシピエントの骨髄ストローマ細胞は、ドナー側に置換していることも確認した。 今回、骨粗鬆症発症後のSAMP6に若齢(8週齢)の正常マウスの骨髄細胞を骨髄内骨髄移植することによって、治療も可能であることを明らかにした。 将来、骨髄内骨髄移植が、ヒトで安全に実施できるようになれば、骨粗鬆症の根本治療 になることが期待される。

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2006/04/20

テロメア長短縮酵母株を利用したフォワードケミカルジェネティクスアプローチによるテロメラーゼ阻害剤の同定。

論文タイトル
Telomerase Inhibitors Identified by a Forward Chemical Genetics Approach Using a Yeast Strain with Shortened Telomere Length
論文タイトル(訳)
テロメア長短縮酵母株を利用したフォワードケミカルジェネティクスアプローチによるテロメラーゼ阻害剤の同定。
DOI
10.1016/j.chembiol.2005.11.010
ジャーナル名
Chemistry and Biology Cell Press
巻号
Chemistry and Biology, Vol 13, 183-190, February 2006
著者名(敬称略)
中井龍一郎 石田浩幸 浅井章良 小川はる美  山本恵啓 川崎秀紀 秋永士朗 水上民夫 山下順範
所属
協和発酵工業株式会社 医薬研究センター協和発酵工業株式会社 バイオフロンティア研究所

抄訳

テロメラーゼは、癌細胞選択的に発現し、その不死化能に寄与することから、抗癌剤の分子標的として注目されている。我々は、テロメラーゼの発現制御により、テロメア長を改変した酵母株を調製した。テロメア長の短い酵母株に選択的な増殖抑制作用を指標にして、テロメア・テロメラーゼに作用する化合物を探索した結果、微生物産物ライブラリーから骨格の異なる3化合物、クロラクトマイシン、UCS1025A、ラディシコールを活性物質として同定した。クロラクトマイシンは、酵素系および細胞系においてヒト癌細胞のテロメラーゼを阻害したことから、ヒトテロメラーゼに対して直接作用する化合物であることが明らかとなった。さらに、クロラクトマイシン存在下で癌細胞の長期培養試験を実施した結果、細胞分裂回数に依存したテロメア長の短縮、および、増殖抑制作用が認められた。以上の結果から、クロラクトマイシンは、テロメラーゼ阻害剤としてのコンセプトを満たす新しいリード化合物であり、かつ、酵母のテロメア長に着目したフォワードケミカルジェネティクスアプローチのアッセイ系は、ヒトテロメラーゼ阻害剤の探索系として有用であることが示唆された。

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2006/04/13

FHITは炎症刺激により制御をうけ、Prostaglandin E2を介した癌進展を抑制する。

論文タイトル
FHIT Is Up-Regulated by Inflammatory Stimuli and Inhibits Prostaglandin E2-Mediated Cancer Progression
論文タイトル(訳)
FHITは炎症刺激により制御をうけ、Prostaglandin E2を介した癌進展を抑制する。
DOI
10.1158/0008-5472.CAN-05-2509
ジャーナル名
Cancer Research 
巻号
Cancer Research 66, 2683-2690, March 1, 2006
著者名(敬称略)
森正樹 三森功士  他
所属
九州大学生体防御医学研究所

抄訳

大腸発癌や進展において“炎症”は重要であり、アラキドン酸経路の分子 (COX2/PGE2)が注目されている。Mimoriらは癌抑制遺伝子FHITが、環境因子暴 露により変異を起こしやすいタイプの癌抑制遺伝子であること(食道 癌; Mori M, Cancer Res 1999)(肺癌;Sozzi G, Cancer Res1997)、さらに大腸癌 の悪性度や予後に関連すること(Mori M, Mimori K. Cancer Res 2001)を示し た。さらに本編では、大腸癌におけるPGE2とFHITとの直接的な関係を調べた結 果、FHITは PGE2活性と細胞増殖能を抑制することで、炎症に起因する大腸癌 進展を制御しうること を明らかにした。

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2006/04/06

IkBNSは、TLR依存性のあるサブセットの遺伝子発現を抑制し、炎症反応を負に制御する。

論文タイトル
IkBNS Inhibits Induction of a Toll-like Receptor-Dependent Genes and Limits Inflammation
論文タイトル(訳)
IkBNSは、TLR依存性のあるサブセットの遺伝子発現を抑制し、炎症反応を負に制御する。
DOI
10.1016/j.immuni.2005.11.004
ジャーナル名
Immunity Cell Press
巻号
Immunity, Vol 24, 41-51, January 2006
著者名(敬称略)
竹田潔  他
所属
九州大学生体防御医学研究所

抄訳

自然免疫系の活性化を誘導するToll-like receptor (TLR)を介した免疫応答は、様々な機構により負に制御されている。しかしながら、TLRを介したシグナル伝達経路の活性化を抑制する機構に比して、その遺伝子発現を負に制御する機構はまだ不明な点が多い。我々は、TLR刺激で誘導される核に発現するIkB分子IkBNSが、NF-kBの活性抑制によりTLR依存性のあるサブセットの遺伝子発現を負に制御していることを明らかにした。IkBNSノックアウトマウス由来のマクロファージや樹状細胞は、TLR刺激により3時間以降に誘導されるIL-6, IL-12p40の発現が上昇していた。一方、TLR刺激により1時間以内に誘導される遺伝子や、転写因子IRF-3を介して誘導される遺伝子の発現は正常と変わらなかった。LPS刺激によるIL-6プロモーターでのNF-kBの活性化が、IkBNSノックアウトマウス由来の細胞では遷延化していた。このことから、IkBNSはTLR刺激後遅れて誘導される遺伝子のプロモーター特異的にNF-kBの活性化を抑制していることが示唆された。さらに、IkBNSノックアウトマウスは、エンドトキシンショックやデキストラン硫酸ナトリウム投与による腸管炎症に極めて感受性が高かった。これらの結果から、IkNSがNF-kBの活性制御を通じたTLR依存性の遺伝子発現の抑制により、炎症反応を負に制御している事が明らかになった。

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2006/03/24

HIV-1 VprはDNA二重鎖切断を誘導する

論文タイトル
HIV-1 Vpr Induces DNA Double-Strand Breaks 
論文タイトル(訳)
HIV-1 VprはDNA二重鎖切断を誘導する
DOI
10.1158/0008-5472.CAN-05-3144
ジャーナル名
Cancer Research 
巻号
Cancer Research 66, 627-631, January 15, 2006
著者名(敬称略)
立和名 博昭 1,2志村 まり2中井(村上)智嘉子2徳永 研三3滝沢 由政1,2佐多 徹太郎3胡桃坂 仁志 1石坂 幸人2
所属
1. 早稲田大学大学院理工学研究科電気・情報生命工学科
2. 国立国際医療センター難治性疾患研究部
3. 国立感染症研究所感染病理部

抄訳

HIV-1 感染により伴う高い悪性腫瘍の発症は、AIDSの免疫不全に伴う他のオンコウイルスであるEpstein-Barr Virus, human herpes virus 8 などの共感染が主要な原因因子とされている。しかし一方、AIDSが発症する以前より、悪性腫瘍の発現頻度が高いことも報告されている。これらは、HIV-1感染自体が、腫瘍因子である可能性を示唆する。我々は、HIV-1感染により、DNA二重鎖切断 (Double Strand Breaks; DSBs)が誘導されることを見出した。HIV-1アクセサリー遺伝子Vprの変異型ウイルスでは、DSBsが著しく抑制されたこと、Vpr強発現細胞およびVprリコンビナントを用いたin vitro実験系においてもDSBsが認められたことから、VprはDSBsの責任因子の一つであることが示唆された。Vpr自体にヌクレアーゼ活性は認められなかったが、VprはDNA(2本鎖、1本鎖)に結合し、特にVpr C末端領域がDNA結合の責任領域であることを認めた。また、C末端領域を欠失したVprはDSBsの誘導能を抑制したことから、VprのDNA結合は、DSBsの必要因子として機能していることも示唆された。近年、DNA 損傷シグナルはがん化初期過程で観察されることが報告されている。VprによるDSBsが、HIV-1感染に伴う腫瘍頻度の増大や悪性化を誘導しうること、今後HIV-1のウイルス量とゲノム状態の経過観察が肝要であることを提唱した。

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2006/03/09

ACTH産生腫瘍細胞において、11b-HSDの阻害はグルココルチコイド抑制の障害を解除しアポトーシスを誘導する

論文タイトル
Inhibition of 11b-Hydroxysteroid Dehydrogenase Eliminates Impaired Glucocorticoid Suppression and Induces Apoptosis in Corticotroph Tumor Cells 
論文タイトル(訳)
ACTH産生腫瘍細胞において、11b-HSDの阻害はグルココルチコイド抑制の障害を解除しアポトーシスを誘導する
DOI
10.1210/en.2005-0544
ジャーナル名
Endocrinology Endocrine Society
巻号
Endocrinology Vol. 147, No. 2 769-772
著者名(敬称略)
二川原健1,2 岩崎泰正1 他
所属
1. 高知大学医学部内分泌代謝腎臓内科
2. 弘前大学医学部内分泌代謝感染症内科

抄訳

クッシング病は、高コルチゾール血症下においてもACTH分泌が持続するという特徴をもつ。この分子的機序を明らかにする目的で、我々はマウスACTH産生腫瘍細胞株を用い、グルココルチコイドによるACTH放出抑制に対し11b-HSD阻害がどのような効果を持つかを調査した。この細胞株には11b-HSD2および11b-HSD1の両者が発現していた。Carbenoxoloneを用いてこれを阻害すると、グルココルチコイドによるネガティブフィードバックは有意に改善した。またcarbenoxoloneはコルチゾールによって誘導されるアポトーシスを増強した。この実験系には11b-HSD2の基質であるコルチゾールのみが投与されていたので、これらの所見は11b-HSD2が阻害された効果である可能性が高いと考えられた。ACTH産生腺腫でグルココルチコイド抑制がかかりにくいことの機序に、11b-HSD2の異所性発現が少なくとも部分的に関与している、と我々は結論した。11b-HSD2の阻害はクッシング病の薬物療法に応用できる可能性がある。

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2006/02/23

サル下部側頭皮質における持続的な連合記憶信号

論文タイトル
Active Maintenance of Associative Mnemonic Signal in Monkey Inferior Temporal Cortex
論文タイトル(訳)
サル下部側頭皮質における持続的な連合記憶信号
DOI
10.1016/j.neuron.2005.09.028
ジャーナル名
Neuron Cell Press
巻号
Neuron, Vol 48, 839-848, 08 December 2005
著者名(敬称略)
竹田真己 他
所属
東京大学大学院医学系研究科統合生理学教室

抄訳

我々は様々な視覚情報を将来の行動に備えて持続的に心の内に留めることができる。こうした能力は分散化された神経機構によって成り立っていると考えられている。有力な仮説としては、前頭前野はこの神経機構に関与しているが、視覚システムの最終ステージである下部側頭皮質は関与していないというものである。本研究では、マカクサルの下部側頭皮質において、連合記憶によって想起された視覚情報は、干渉刺激が提示されても持続的にコードされることを示した。この結果は視覚情報を積極的に持続させる神経機構に前頭前野だけでなく下部側頭皮質も関わっていることを示唆している。

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