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国内研究者論文紹介

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2016/05/18

ウマ子宮内膜における PGF分泌自己増幅機構の証明

論文タイトル
Evidence for a PGF2α auto-amplification system in the endometrium in mares
論文タイトル(訳)
ウマ子宮内膜における PGF分泌自己増幅機構の証明
DOI
10.1530/REP-15-0617
ジャーナル名
Reproduction BioScientifica
巻号
Vol.151 No.5 (73-82)
著者名(敬称略)
香西 圭輔、奥田 潔 他
所属
岡山大学農学部 環境生命科学研究科 動物生殖生理学研究室

抄訳

ウマにおいて、子宮内膜から分泌される prostaglandin F (PGF) は主要な黄体退行因子である。ウシやヒツジなど他の家畜において、PGFがPGF産生を刺激する自己増幅機構の存在が報告されている。本研究において、我々はウマ子宮内膜においてもPGF 自己増幅機構が存在するかどうかを調べた。黄体中期のウマへPGF製剤cloprostenol を投与し、血中 progesterone(P4) およびPGFmetabolite (PGFM) 濃度への影響を調べた。血中 P4濃度は cloprostenol 投与 45 分後減少し始め、24 時間後まで減少し続けた (P<0.05)。一方、血中 PGFM 濃度は cloprostenol 投与 4 時間後増加し始め、72 時間後まで増加し続けた (P<0.05)。子宮内膜におけるPGF receptor (PTGFR) mRNA 発現は黄体後期において、黄体初期および黄体退行期に比べ有意に高かった (P<0.05)。PGF は子宮内膜組織ならびに子宮内膜上皮および間質細胞におけるPGF 産生を有意に刺激した (P<0.05)。さらに、PGF は子宮内膜上皮および間質細胞におけるPGF 合成関連酵素PTGS2 mRNA 発現を有意に刺激した (P<0.05)。本研究の結果より、ウマ子宮内膜におけるPGF 自己増幅機構の存在が強く示唆された。

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2016/04/28

Paenibacillus sp. IK-5キトサナーゼ/グルカナーゼに存在するCBM32糖質結合モジュールのキトサン認識機構

論文タイトル
Mechanism of chitosan recognition by CBM32 carbohydrate-binding modules from a Paenibacillus sp. IK-5 chitosanase/glucanase
論文タイトル(訳)
Paenibacillus sp. IK-5キトサナーゼ/グルカナーゼに存在するCBM32糖質結合モジュールのキトサン認識機構
DOI
10.1042/BCJ20160045
ジャーナル名
Biochemical Journal Biochemical Society
巻号
Vol.473 No.8 (1085-1095)
著者名(敬称略)
新家 粧子、深溝 慶 他
所属
近畿大学 農学部 バイオサイエンス学科 バイオ分子化学研究室

抄訳

Paenibacillus sp. IK-5キトサナーゼ/グルカナーゼに存在する二つのCBM32糖質結合モジュール (DD1とDD2) のキトサン認識機構を明らかにするために、NMRおよびX線結晶構造解析によってそれらの構造を決定した。これらのモジュールは両方ともにβ−サンドイッチ・フォールドをコアとしてもち、コア構造の上下にはいくつかのループが存在していた。NMR滴定実験やDD2-キトサンオリゴ糖複合体結晶構造に基づいて、キトサンオリゴ糖はその非還元末端糖残基を、モジュール上部のループ部分と接触させながら、直立して結合することがわかった。その際、DD2のGlu14、Arg31、Tyr36、Glu61がキトサンとの相互作用を担っており、このうち、Ty36はDD1ではGlu36に置換されていた。そこで、DD1のGlu36をTyrに、DD2のTyr36をGluに変異させてキトサンとの親和性を調べた。その結果、36番目のアミノ酸はキトサンとの親和性を支配し、とりわけ、Glu側鎖とキトサンの非還元末端残基に存在する遊離アミノ基との静電的相互作用は重要であることがわかった。

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2016/04/06

卵巣の卵胞局所におけるレチノイン酸合成が排卵準備を完結させ,雌の妊孕性を担保する

論文タイトル
De novo-synthesized retinoic acid in ovarian antral follicles enhances FSH-mediated ovarian follicular cell differentiation and female fertility
論文タイトル(訳)
卵巣の卵胞局所におけるレチノイン酸合成が排卵準備を完結させ,雌の妊孕性を担保する
DOI
10.1210/en.2015-2064
ジャーナル名
Endocrinology Endocrine Society
巻号
Endocrinology Online: March 29, 2016
著者名(敬称略)
川合智子,矢中規之,JoAnne S. Richards,島田昌之
所属
広島大学 大学院生物圏科学研究科 生殖内分泌学,広島大学インキュベーション研究拠点 RCAS

抄訳

ビタミンA欠乏は,雌の繁殖(生殖)能力を減退させることが知られているが,卵巣における役割はほとんど解明されていない.我々は, 発情期において,顆粒膜細胞でFSH依存的にRA合成酵素群の発現が上昇し,それがRA受容体を介して遺伝子発現を誘導することを見いだした. さらに,RA合成抑制剤投与により,新規合成されるRAが排卵刺激を感受するLH受容体(Lhcgr)の顆粒膜細胞での発現を誘導し,それが排卵だけでなく卵成熟,受精および胚発生いずれをも促進することを明らかとした.ビタミンA欠乏飼料を給餌されたマウスにおいても,排卵抑制により発情期が延長する繁殖障害を呈した.これらの異常はRA投与により改善されたことから,雌の繁殖能力は,卵巣の卵胞局所におけるRA新規合成に依存することがはじめて明らかとなった.この成果は,ビタミンA欠乏のみでなくそれをRAに変換する酵素群の発現あるいは活性異常が,ヒトの不妊症や家畜の繁殖障害を引き起こす可能性を示している.

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2016/03/25

哺乳類の睡眠時間におけるカルシウム依存的過分極の関与

論文タイトル
Involvement of Ca2+-Dependent Hyperpolarization in Sleep Duration in Mammals
論文タイトル(訳)
哺乳類の睡眠時間におけるカルシウム依存的過分極の関与
DOI
10.1016/j.neuron.2016.02.032
ジャーナル名
Neuron Cell Press
巻号
Neuron Online March 17
著者名(敬称略)
多月文哉 上田泰己 他
所属
東京大学大学院医学系研究科 機能生物学専攻 薬理学講座 システムズ薬理学分野

抄訳

睡眠を制御する因子は主にハエを用いたフォワードジェネティクスによる探索で、体内時計に関係した遺伝子を中心に複数特定されてきた。しかしながら、体内時計とは別に睡眠時間を直接制御している遺伝子(睡眠時間制御因子)は未解明のままであった。フォワードジェネティクスは表現型から遺伝子に遡るため、多くの時間とコストを要し、従来の睡眠測定法も脳波測定用の電極を頭蓋骨に装着する手術が必要であるため、侵襲が大きく、多くの時間とコストがかかっていた。近年、本研究グループは、遺伝子と表現型を直接結びつけることができるリバースジェネティクスに注目し、高速に遺伝子改変動物を作製することができる技術(トリプルCRISPR法)と、高速に睡眠表現型を解析することができる手法(SSS)を開発した(Sunagawa et al., 2016)。今回、本研究グループは神経細胞のコンピュータシミュレーションにより睡眠時間制御因子を絞り込み、トリプルCRISPR法で作成された候補遺伝子のKOマウスの睡眠をSSSで測定することで検証を行った。その結果、Cacna1g, Cacna1h (電位依存性カルシウムチャネル)、Kcnn2, Kcnn3 (カルシウム依存性カリウムチャネル)、Camk2a, Camk2b (カルシウムイオン・カルモジュリン依存性プロテインキナーゼII)KOマウスが顕著な睡眠時間の減少を示す一方で、Atp2b3 (カルシウムポンプ)ノックアウトマウスは顕著な睡眠時間の増加を示し、カルシウムイオン関連経路が睡眠時間制御因子の役割を担うことを明らかにした.

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2016/03/25

淡水湖から分離された新属新種Sulfurirhabdus autotrophica

論文タイトル
Sulfurirhabdus autotrophica gen nov sp nov isolated from a freshwater lake
論文タイトル(訳)
淡水湖から分離された新属新種Sulfurirhabdus autotrophica
DOI
10.1099/ijsem.0.000679
ジャーナル名
International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology Microbiology Society
巻号
Int J Syst Evol Microbiol, January 2016 66: 113-117
著者名(敬称略)
渡邉 友浩、小島 久弥、福井 学
所属
北海道大学 低温科学研究所 微生物生態学分野

抄訳

Sulfuricellales目を代表する唯一の属であるSulfuricellaは、化学合成独立栄養性の硫黄酸化細菌Sulfuricella denitrificansのみから構成される。本論文では、本属に近縁な新規硫黄酸化細菌を分離し、その形態的、生理生化学的、化学分類学的な特徴を報告する。BiS0株は琵琶湖の堆積物から限界希釈法によって分離された。細胞形態は桿状(1.4−4.6×0.4−0.7 µm)でグラム染色陰性だった。二酸化炭素の固定と酸素を電子受容体とした無機硫黄化合物の酸化によって生育した。温度0−32℃、塩化ナトリウム濃度0−546.4 mM、pH 5.2−8.1で生育が認められ、至適な生育条件は温度15−22℃、塩化ナトリウム濃度0-66.7 mM、pH6.1−6.3だった。16S rRNA遺伝子配列に基づく系統解析の結果、本菌株は最も近縁な純粋培養株Sulfuricella denitrificansと96.3%の配列相同性を示した。本研究結果に基づき、BiS0株を代表とする新属新種Sulfurirhabdus autotrophicaを提唱する。

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2016/03/15

がん細胞のフェロトーシスにはリソソームの機能が必要である

論文タイトル
An essential role for functional lysosomes in ferroptosis of cancer cells
論文タイトル(訳)
がん細胞のフェロトーシスにはリソソームの機能が必要である
DOI
10.1042/BJ20150658
ジャーナル名
Biochemical Journal Biochemical Society
巻号
Vol.473 No.6 (769-777)
著者名(敬称略)
鳥居 征司 他
所属
群馬大学 生体調節研究所 分泌制御分野 生体情報シグナル研究センター

抄訳

  変異Ras発現がん細胞に対する抗腫瘍化合物の開発により、細胞内の遊離鉄に依存する新しいタイプの細胞死「フェロトーシス」が見出され、注目されている。本研究でフェロトーシスの分子機序の解析を進めたところ、オートファジー・リソソーム関連阻害剤が細胞死を抑制することを見つけた。蛍光プローブを用いて細胞中の活性酸素種(ROS)を解析すると、Ras発現がん細胞においてROSはミトコンドリアに加えリソソームに検出された。また細胞死の主因とされる脂質過酸化も、エンドソーム周辺領域からの拡散が観察された。リソソーム関連阻害剤は細胞内外からの鉄供給を抑えることで、リソソーム由来のROS産生を抑制し、結果としてフェロトーシスを阻害することが判明した。 本研究結果は、がん細胞が示す鉄取り込みやオートファジー機能の亢進がROS発現(酸化ストレス)を高め、抗癌剤によるフェロトーシス感受性に関わることを示している。

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2016/03/10

日本国内と周辺における水産生物資源の放射性同位体汚染のリスク評価

論文タイトル
Risk assessment of radioisotope contamination for aquatic living resources in and around Japan
論文タイトル(訳)
日本国内と周辺における水産生物資源の放射性同位体汚染のリスク評価
DOI
10.1073/pnas.1519792113
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences National Academy of Sciences
巻号
PNAS Published online before print February 29, 2016
著者名(敬称略)
岡村 寛 他
所属
国立研究開発法人 水産総合研究センター 中央水産研究所

抄訳

福島第一原発事故によって放出された放射性物質による日本産水産物の汚染度の定量化を行った。厚生労働省のデータベースを利用し,20114月から20153月の放射性セシウム(セシウム134とセシウム137)の測定値を使用した。県と魚種(養殖魚等を除く)の組み合わせで,1646の異なる水産物のデータを使用した。しかし,データには検出限界値未満とされたものが多くあり,従来の方法では汚染度の評価が困難であった。我々が新しく開発した統計モデルを利用することにより,検出限界値未満が多いデータに対しても汚染度の評価が可能となった。その結果,汚染度は全体に低く,海産魚の汚染は従来考えられているほど高くないことが分かった。しかし,天然の淡水魚の汚染は相対的に高いことから,今後も引き続きモニタリングを継続することが重要である(ただし,市場に流通する淡水魚の多くは養殖魚であり,汚染度の高い淡水魚が一般家庭で食べられる可能性は低いであろう)。

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2016/03/02

piRNA前駆体の3'末端を削りこむカイコTrimmerの同定と機能解析

論文タイトル
Identification and Functional Analysis of the Pre-piRNA 3′Trimmer in Silkworms
論文タイトル(訳)
piRNA前駆体の3'末端を削りこむカイコTrimmerの同定と機能解析
DOI
10.1016/j.cell.2016.01.008
ジャーナル名
Cell Cell Press
巻号
Cell Vol.164 No.5 (2016/Feb./25) p962-973
著者名(敬称略)
泉 奈津子 , 泊 幸秀 他
所属
東京大学 分子細胞生物学研究所

抄訳

 piRNA(PIWI-interacting RNA)は、動物の生殖巣においてトランスポゾンの発現抑制に機能する小分子RNAである。piRNAは、成熟型より少し長い前駆体RNAがPIWIタンパク質に取り込まれ、その3'末端が削りこまれることによりつくられる。piRNA前駆体を成熟型の長さまで削るヌクレアーゼ「Trimmer(トリマー)」の存在はこれまで予想されていたが、分子実体は不明であった。
 本研究ではpiRNAを発現するカイコ卵巣由来の培養細胞BmN4を用いた生化学的解析から、PNLDC1(PARN (polyA specific ribonuclease) -like domain containing 1)をカイコTrimmerとして同定した。Trimmerは、PARNと相同性のあるヌクレアーゼドメインを有する機能未知のタンパク質で、先行研究においてトリミングへの関与が示唆されていたPIWIタンパク質結合因子Papiと相互作用する。Trimmerには膜貫通ドメインが予測され、ミトコンドリア画分に存在することから、Papiと同様にミトコンドリア外膜タンパク質だと考えられた。興味深いことにTrimmerは単独では機能できず、piRNA前駆体のトリミングにはPapiを必要とすることが明らかとなった。また、PapiのPIWIタンパク質結合能およびRNA結合能がトリミングに必要であることから、PapiはpiRNA前駆体を取りこんだPIWIタンパク質をTrimmerにリクルートする役割があると考えられた。さらにpiRNA前駆体の3'末端が削りこまれ成熟型になることが、piRNAの安定性や機能発揮に重要であることを見出した。上記の結果は、ミトコンドリア膜上でTrimmerとPapiが協働してpiRNA前駆体の末端を削りこむというトリミングの分子機構とその意義を明らかにしたものである。

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2016/03/01

CD8+CD122+CD49dlow制御性T細胞は、Fas/FasLを介した細胞傷害によって活性化T細胞を殺すことでT細胞の恒常性を維持する。

論文タイトル
CD8+CD122+CD49dlow regulatory T cells maintain T-cell homeostasis by killing activated T cells via Fas/FasL-mediated cytotoxicity
論文タイトル(訳)
CD8+CD122+CD49dlow制御性T細胞は、Fas/FasLを介した細胞傷害によって活性化T細胞を殺すことでT細胞の恒常性を維持する。
DOI
10.1073/pnas.1525098113
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences National Academy of Sciences
巻号
PNAS Published online before print February 11, 2016,
著者名(敬称略)
赤根 和之、鈴木 治彦 他
所属
名古屋大学 大学院医学系研究科 分子細胞免疫学

抄訳

Fas/FasL経路は古くから知られるアポトーシス経路であるが、生体内でどのタイミング、どの細胞集団で働いているかの詳細は不明であった。我々は、細胞増殖の制御を測定するin vitro細胞培養実験系を構築し、さらにはin vivoのアッセイを行い、CD8+T細胞のどの分画が制御活性を持つかを検討した結果、in vitro、in vivoともにCD8+CD122+CD49dlow分画に制御活性が高いことを発見した。Fas分子の働かないlprマウスとFasLの働かないgldマウスを用い、Fas/FasL経路に異常があるとこの制御経路が働かないことをin vitroとin vivo双方において証明した。この結果、Fas及びFasLは活性化T細胞とCD8+CD122+CD49dlow制御性T細胞との間で働き、免疫反応の収束時に活性化T細胞にアポトーシスを誘導して数を減らす作用が重要とわかった。さらに、MHC class I分子を欠損するCD8+T細胞はこの抑制作用を受けないことから、CD8+制御性T細胞が働くにはTCRとMHC class Iとの相互作用が必要であることが証明された。

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2016/02/25

代謝型グルタミン酸受容体mGluR1は発達期小脳における平行線維シナプス除去とそれによる異種入力支配のテリトリー化を駆動する

論文タイトル
Territories of heterologous inputs onto Purkinje cell dendrites are segregated by mGluR1-dependent parallel fiber synapse elimination
論文タイトル(訳)
代謝型グルタミン酸受容体mGluR1は発達期小脳における平行線維シナプス除去とそれによる異種入力支配のテリトリー化を駆動する
DOI
10.1073/pnas.1511513113
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences National Academy of Sciences
巻号
Published online before print February 8
著者名(敬称略)
市川 量一 他
所属
札幌医科大学 医学部 医学科 解剖学第一講座

抄訳

発生初期の神経系では、過剰でしかも重複する神経回路が多く見られる。しかし、生後早期の神経活動の亢進がシナプス回路の選択的強化と除去を引き起こし、それによってその冗長な神経回路は機能的な神経回路へと改築される。これまで、骨格筋を支配する脊髄運動神経や小脳プルキンエ細胞を支配する登上線維などで、入力線維が競合することにより多重支配から単一支配へ移行し、その結果として適正な神経回路が形成されることが明らかにされた。プルキンエ細胞には興奮性線維としてもう一種類、平行線維が入力する。しかし、そのシナプス回路がどのような発達変化を遂げるのかは不明であった。本研究により、以下の点が明らかになった。生後早期のマウスのプルキンエ細胞では樹状突起の全域に渡って平行線維シナプスが形成されるが、生後15-20日の間にて樹状突起の近位部から平行線維シナプスが除去されることで成体でみられるようなシナプス分布が完成する。具体的には、近位部に局在する登上線維シナプステリトリーと遠位部に局在する平行線維シナプステリトリーとに、シナプス分布が分離することである。また、この平行線維シナプスの除去作用には、プルキンエ細胞に発現する代謝型グルタミン酸受容体mGluR1-PKCgamma系が重要な役割を果たしていることが判明した。

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