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国内研究者論文紹介

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ユサコでは日本人の論文が掲載された海外学術雑誌に注目して、随時ご紹介しております。

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2009/05/18

PHドメインのみから構成されるタンパク質PHLDA3はp53によって制御を受ける新規Akt抑制因子である

論文タイトル
PH Domain-Only Protein PHLDA3 Is a p53-Regulated Repressor of Akt
論文タイトル(訳)
PHドメインのみから構成されるタンパク質PHLDA3はp53によって制御を受ける新規Akt抑制因子である
DOI
10.1016/j.cell.2008.12.002
ジャーナル名
Cell Cell Press
巻号
February 2009|Vol. 136|Issue 3|535-550
著者名(敬称略)
川瀬竜也、大木理恵子、他
所属
国立がんセンター研究所細胞増殖因子研究部

抄訳

多くのがんにおいて、がん遺伝子Aktが活性化していることが知られており、Akt活性化はがん化を強く促進する要因の一つであると考えられている。Aktは正常細胞ではがん抑制遺伝子p53によって、活性化が抑制されている。ところが、がんのほとんどのものではp53の機能不全が認められており、がん細胞ではAktが抑制されなくなっている。
我々は、これまで機能未知であったPHLDA3遺伝子が、p53によって誘導される遺伝子であることを見いだし、PHLDA3がp53によるAkt抑制を担う重要な遺伝子であることを初めて明らかにした。PHLDA3タンパク質は、Aktタンパク質の活性化に必須な細胞膜移行のステップを抑制する機能がある。
がん抑制において、非常に強いがん化能を持つAktの活性を制御することはとても重要である。実際に、PHLDA3の発現を抑制した細胞ではAktの異常な活性化が認められるとともに細胞ががん化していることが示された。さらに、ヒト肺がん(LCNEC)においてPHLDA3遺伝子の高頻度な欠損が認められた。これらのがん組織では正常組織と比較してPHLDA3の発現低下とAkt活性の上昇が認められ、PHLDA3の異常ががん化の原因となっている可能性が考えられた。肺がんを始めとして、ほとんどのがんでAktは異常に活性化している。PHLDA3はAktを直接抑制することができるため、今回得られた知見がこれらのがんの治療や診断法の開発につながることが期待される。

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2009/04/06

硬膜動静脈瘻のシャント部位の同定におけるDynaCT Digital Angiographyの有用性

論文タイトル
Efficacy of DynaCT Digital Angiography in the Detection of the Fistulous Point of Dural Arteriovenous Fistulas
論文タイトル(訳)
硬膜動静脈瘻のシャント部位の同定におけるDynaCT Digital Angiographyの有用性
DOI
10.3174/ajnr.A1395
ジャーナル名
American Journal of Neuroradiology  American Society of Neuroradiology
巻号
American Journal of Neuroradiology Vol. 30, No. 3 (487-491)
著者名(敬称略)
日宇 健 他
所属
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科病態解析・制御学講座神経病態制御学

抄訳

【目的】硬膜動静脈瘻(DAVF)に対する治療においてシャント部位を特定することが治療戦略上必要不可欠である。脳血管撮影装置SIEMENS製AXIOM dBAから得られるDynaCT digital angiographyの有用性について検討した。
【方法】2006年以降のDAVF連続14症例(海綿静脈洞部7例、横-S状静脈洞部4例、テント部1例、上矢状静脈洞部2例)を対象とした。全例で外頸あるいは内頸動脈本幹からのrotational angiographyを施行し、このデータを用いて非差分画像からDynaCT digital angiographyを作製し、fistula point、feeder、drainerについて2D-DSAと比較検討した。
【結果】DynaCTではいずれも全例で同定され、特にfistula pointは周囲の骨との位置関係まで詳細に確認された。2D-DSAと比較し8例(57%)、12個の有用な情報が得られた。内訳はfistula point(n=7)、 feeder(n=1)、retrograde leptomeningeal drainageの同定(n=1)、drainer(n=1)、venous anomaly(n=2)であった。
【結論】DynaCTは空間分解能、密度分解能に優れ、シャント部位を含めたDAVFのすべての血管構築の評価が可能であった。このことはDAVFの血管内治療あるいは直達手術の際に非常に有用であり、また今後シャント部位を特定することで血管内治療におけるtarget embolizationへの応用も期待される。

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2009/03/18

自己免疫性甲状腺疾患の新たな自己抗原:抗ペンドリン抗体

論文タイトル
Pendrin Is a Novel Autoantigen Recognized by Patients with Autoimmune Thyroid Diseases
論文タイトル(訳)
自己免疫性甲状腺疾患の新たな自己抗原:抗ペンドリン抗体
DOI
10.1210/jc.2008-1732
ジャーナル名
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism Endocrine Society
巻号
February 2009|Vol. 94|No. 2|442-448
著者名(敬称略)
吉田明雄、他
所属
鳥取大学大学院医学系研究科機能再生医科学専攻遺伝子再生医療学講座再生医療学部門

抄訳

ペンドリンは先天性難聴と甲状腺ヨード有機化障害をきたすペンドレット症候群の原因遺伝子である。甲状腺濾胞内膜に存在し、ヨードの甲状腺濾胞内への放出をおこなう。ペンドリンは甲状腺特異蛋白であることから自己免疫性甲状腺疾患の自己抗原となる可能性がある。そこで140人の自己免疫性甲状腺疾患(バセドウ病:100人。橋本病:40人)と80人のコントロール(健常人:50人、甲状腺乳頭癌:10人、SLE:10人、RA:10人)において、血清中の抗ペンドリン抗体を調べた。方法はペンドリンを過剰発現させたCOS-7細胞の抽出蛋白を用い、ウエスタンブロット法で行った。特異性は吸収実験、ペンドリン過剰発現COS-7を用いたフローサイトメトリーで確認した。
その結果、ペンドリン自己抗体は自己免疫性甲状腺疾患の81%に、コントロールの9%に陽性であった(odds ratio=44、p<0.0001)。橋本病においては97%、バセドウ病においては74%に陽性であり、健常人ではすべて陰性であった。抗ペンドリン抗体は自己免疫性甲状腺疾患の新たな自己抗体であり、抗サイログロブリン抗体、抗TPO抗体と同様に診断に有用であることが証明された。

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2009/02/20

植物特異的なMCD1はシアノバクテリア由来のMinDと相互作用して葉緑体分裂面を決定する

論文タイトル
Plant-Specific Protein MCD1 Determines the Site of Chloroplast Division in Concert with Bacteria-Derived MinD
論文タイトル(訳)
植物特異的なMCD1はシアノバクテリア由来のMinDと相互作用して葉緑体分裂面を決定する
DOI
10.1016/j.cub.2008.12.018
ジャーナル名
Current Biology Cell Press
巻号
January, 2009|Vol. 19|Issue 2|151-156
著者名(敬称略)
中西弘充、鈴木健二、壁谷如洋、宮城島進也
所属
理化学研究所 基幹研究所 宮城島独立主幹研究ユニット

抄訳

葉緑体はシアノバクテリアの細胞内共生を起源とし、その分裂にはシアノバクテリアの細胞分裂装置に由来するFtsZリングの形成が必要である。葉緑体のFtsZリングは、バクテリアと同様にMinDおよびMinEタンパク質によって位置決定される。我々は、新たに植物特異的なMULTIPLE CHLOROPLAST DIVISION SITE 1(MCD1)が葉緑体のFtsZリングの位置決定に必要であることを発見した。MCD1とMinDは共に葉緑体分裂に必要で、葉緑体内包膜の分裂面にリング状および表面に分散した点状に局在した。MCD1を欠損するとMinDが分裂面に局在できなくなることから、MinDの局在にはMCD1が必要であることが分かった。Yeast two-hybrid assayの結果、MCD1とMinDが結合することから、植物特異的なMCD1がシアノバクテリアに由来するMinDと直接相互作用することで葉緑体分裂面の位置決定を行うことが考えられた。これらの結果は、葉緑体分裂面の位置決定メカニズムにおいて、シアノバクテリアに由来するMinシステムを調節するための新しいタンパク質を、宿主植物細胞が付け加えたことを示唆する。

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2009/01/27

繊毛先端に局在する新規蛋白sentanの同定

論文タイトル
Sentan: A Novel Specific Component of the Apical Structure of Vertebrate Motile Cilia
論文タイトル(訳)
繊毛先端に局在する新規蛋白sentanの同定
DOI
10.1091/mbc.E08-07-0691
ジャーナル名
Molecular Biology of the Cell American Society for Cell Biology
巻号
December, 2008|Vol. 19|Issue 12|5338-5346
著者名(敬称略)
久保亮治、他
所属
慶應義塾大学医学部皮膚科学

抄訳

気管や卵管の上皮には繊毛を持つ細胞が存在する。1つの細胞から300~400本の繊毛が生えており、繊毛が協調して波打ち運動をすることで、気管内の異物の排出や卵管での卵の輸送を行っている。繊毛は微小管軸索を中心とした細胞骨格構造を持つ。一方、精子の鞭毛も繊毛とほぼ同様の細胞骨格構造を持つが、鞭毛は渦巻き運動を行い、またその構造は細部が異なっている。繊毛の先端部分には、気管内の粘液や異物を排除するのに最適化していると考えられる特殊な構造が存在するが、この構造は精子の鞭毛には存在しない。繊毛の先端構造を構成する分子はこれまで全く知られていなかった。そこで、繊毛先端の特殊構造の形成に必要な蛋白の探索を行った。
我々は気管上皮繊毛細胞を初代培養して繊毛形成をin vitroで誘導し、繊毛形成時に発現上昇する遺伝子を検索できる系を作成した。In silicoスクリーニングにより、繊毛細胞で特異的に発現し精子では全く発現していない遺伝子の一覧を作成し、その中から繊毛形成時に発現上昇する遺伝子を探索した。得られた候補分子を用いて細胞内局在スクリーニングを行い、繊毛先端に特異的に局在する初めての蛋白を同定した。我々はこの蛋白を“sentan”(先端)と名付けた。Sentanは細胞膜と微小管軸索を結びつける蛋白としても、初めて発見されたものである。Sentanは陸上生活をする脊椎動物間で保存されているが、魚類には存在しない。すなわち空気呼吸する生物において、sentanによる繊毛先端部の特殊構造の形成が、気管内異物除去の点から生存に有利であったと考えられる。Sentanの発見は、呼吸器疾患の研究のみでなく、繊毛形成機構の解析と空気呼吸の進化の研究に役立つものである。またSentan-GFPにより繊毛先端の蛍光ラベルが生体内で可能となり、高速度撮影による繊毛運動の解析にも非常に有用なツールとなることが期待されている。

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2008/12/18

ThバランスのTh1型優位への偏向により腫瘍内単核食細胞の成熟が抑制される

論文タイトル
Skewing the Th cell phenotype toward Th1 alters the maturation of tumor-infiltrating mononuclear phagocytes
論文タイトル(訳)
ThバランスのTh1型優位への偏向により腫瘍内単核食細胞の成熟が抑制される
DOI
10.1189/jlb.1107729
ジャーナル名
Journal of Leukocyte Biology 
巻号
September 1, 2008|Vol. 84|Issue 3|679-688
著者名(敬称略)
野中健一1、齊尾征直(連絡著者)2、他
所属
1 岐阜大学大学院医学研究科腫瘍制御学講座 腫瘍外科2          同                   免疫病理学

抄訳

【緒言】単核食細胞(MPC)は狭義には単球とマクロファージを含む概念である。他方、従来腫瘍内浸潤MPCは多くの場合腫瘍内浸潤マクロファージ(TIM)と呼ばれ、免疫抑制的に働くことが知られていた。ところが近年、担癌状態では骨髄球系(顆粒球・単球両系を含む)の分化と成熟が異常となり骨髄球由来抑制細胞(MDSC)が骨髄や脾などのリンパ器官内で形成され、単球系MDSCが腫瘍内へ浸潤し最終的には腫瘍内浸潤マクロファージ(TIM)へも分化する可能性が示唆された。

【研究目的】そこで、本研究では、単球系MDSC、TIMを個別に区分するのではなく腫瘍内浸潤MPC(腫瘍内MPC)として包括的に捉えるとともに、腫瘍内MPCの成熟分化を免疫治療により制御することができるか検討した。

【方法】マウス大腸癌細胞株MCA38腺癌細胞株にIL-2と可溶型TNF受容体II型(sTNFRII)cDNAを単独あるいは共導入することで免疫治療モデルを作製し、腫瘍内からMPCやT細胞を単離し解析に用いた。

【結果】対照群の腫瘍内ではMPCの70%以上が成熟マクロファージ(F4/80+Ly6C-)、残りは未熟な単球(F4/80+Ly6C+)であったが、IL-2とsTNFRII共導入腫瘍群においては腫瘍内MPCの成熟が抑制されるとともに、試験管内での性質も著しく変化し試験管内で生存できなくなった。その原因は少なくとも2つあり、1つはFas依存性のアポトーシスであり、もう1つはMPC表面のM-CSF受容体(M-CSFR)の発現消失であると考えられた。また、対照群において腫瘍内浸潤CD4 T細胞(CD4 TIL)はIL-13やIL-4といったTh2型のサイトカインを発現していたが、共導入群CD4 TILのIL-13発現は低下しており、IFN-γ発現は保たれTh1優位に偏向していた。

【考察】従来からマクロファージの成熟分化は、Th1優位であれば抗腫瘍性のM1型へ、Th2優位であれば免疫抑制性のM2型へ成熟することが知られ、腫瘍内はM2型優位であるといわれてきた。本研究では、免疫治療により腫瘍内のThバランスがTh1型優位に偏向すると腫瘍内MPCの成熟・分化は抑制され、 M2型免疫抑制性マクロファージへの成熟が抑制されることが示唆された。

【結語】腫瘍の微小環境を変化させることで腫瘍内MPCの成熟・分化を変化させることが可能であることが本研究では示され、今後の免疫治療において腫瘍内MPCの成熟・分化制御に着目することの重要性が明らかとなった。

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2008/11/13

重合酵素を利用した乳酸ポリマー合成ための微生物工場の開発

論文タイトル
A microbial factory for lactate-based polyesters using a lactate-polymerizing enzyme
論文タイトル(訳)
重合酵素を利用した乳酸ポリマー合成ための微生物工場の開発
DOI
10.1073/pnas.0805653105
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences National Academy of Sciences
巻号
November 11, 2008|Vol. 105|No. 45|17323-17327
著者名(敬称略)
田口精一、他
所属
海道大学大学院工学研究科生物機能高分子専攻生物工学講座バイオ分子工学研究室

抄訳

乳酸ポリマーは、石油原料ではなく再生可能バイオマスから作られるバイオプラスチックの一種で、水と二酸化炭素に分解されることから、地球環境に優しい持続循環型の産業素材であり、産業用途が拡大しているバイオプラスチックの一つである。今回、乳酸導入型ポリマーを微生物を用いて「ワンステップ合成」する基礎技術の開発に初めて成功いたしました。従来、乳酸ポリマーは発酵による乳酸合成、抽出及び化学重合を含む複数のステップで生産されていましたが、今回の方法は、人工的に創成した乳酸重合酵素を組み込んだ微生物(大腸菌)を用いてバイオマスからワンステップで乳酸ポリマーを生産するものです。また、従来の技術では、化学構造が同一ながら光学的性質の異なる2種類の乳酸(D体とL体の光学異性体)の一方のみを選択的に化学重合することは大変難しいものでしたが、今回の方法は、乳酸重合酵素を用いることで最近注目されているD体のみを温和な条件で選択的に重合することができる点も、特筆すべきことです。

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2008/10/20

視床下部領域における新たな神経核の同定

論文タイトル
A recently identified hypothalamic nucleus expressing estrogen receptor α
論文タイトル(訳)
視床下部領域における新たな神経核の同定
DOI
10.1073/pnas.0806503105
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences National Academy of Sciences
巻号
September 9, 2008|Vol. 105|No. 36|13632-13637
著者名(敬称略)
森 浩子、河田光博、他
所属
京都府立医科大学解剖学教室生体構造科学部門

抄訳

ラットの視床下部領域において、今までに報告されていない新たな神経核を発見した。新たに発見した神経核は弓状核と視床下部腹内側核との境に位置しており、その大きさには著しい性差があった。脳内における構造的な性差は新生児期におけるアンドロゲンの作用によって構築されることが分かっているが、本神経核における性差もまた新生児期におけるアンドロゲンの作用によって引き起こされることが明らかになった。本神経核はエストロゲンに対する受容体(ERα)を発現しており、神経核内におけるERα陽性細胞数およびその分布にも性差が認められた。さらに成熟した雌ラットにおいては性周期の変動に伴って本神経核内のERα陽性細胞数が増減するという現象をとらえた。本神経核が神経内分泌学上重要な脳領域に存在する事をあわせて考えると、本神経核は性特異的な機能および行動発現の制御に深く関与している可能性がある。

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2008/09/08

急性心筋梗塞症における冠動脈プラーク破綻部位でのToll様受容体4の発現について

論文タイトル
Local expression of Toll-like receptor 4 at the site of ruptured plaques in patients with acute myocardial infarction
論文タイトル(訳)
急性心筋梗塞症における冠動脈プラーク破綻部位でのToll様受容体4の発現について
DOI
10.1042/CS20070379
ジャーナル名
Clinical Science Portland Press
巻号
August 2008|Vol. 115|No. 4|133-140
著者名(敬称略)
石川 有、佐藤 衛、他
所属
岩手医科大学内科学第二講座

抄訳

急性心筋梗塞症(AMI)は、冠動脈プラークの破綻とそれに伴う血栓性閉塞により発症する。動脈プラークの破裂には、冠動脈の血管壁への単球/マクロファージなどの免疫担当細胞の浸潤およびこれらの細胞の活性化が関与していると考えられている。本研究では、62例のAMIを対象に、冠動脈カテ−テル治療に際し梗塞部位から冠動脈血サンプルを得て、単球を分離し、Toll様受容体4(TLR4)のRNA発現量および蛋白発現量を測定した。その結果、TLR4が末梢血サンプルに比較して明らかに亢進していた。また、梗塞部位から吸引により得られた血栓/プラ−クを免疫組織化学染色したところ、TLR4蛋白発現が陽性であった。さらに、対象例の予後を追跡したところ、再狭窄などの心事故発生群は非発生群に比較してTLR4が高値であった。以上の結果は、心筋梗塞部位でTLR4シグナルが活性化し、この活性亢進は冠動脈硬化促進に関与する因子である可能性を示すものであり、心筋梗塞症の発症機序を考案する上で重要な知見である。

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2008/08/19

Notchシグナルによって制御される血管内皮細胞の分節パターンに沿った分化と背側大動脈への移動

論文タイトル
Notch Mediates the Segmental Specification of Angioblasts in Somites and Their Directed Migration toward the Dorsal Aorta in Avian Embryos
論文タイトル(訳)
Notchシグナルによって制御される血管内皮細胞の分節パターンに沿った分化と背側大動脈への移動
DOI
10.1016/j.devcel.2008.03.024
ジャーナル名
Developmental Cell Cell Press
巻号
June 10, 2008|Vol. 14|No. 6|890-901
著者名(敬称略)
佐藤有紀、高橋淑子、他
所属
奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科分子発生生物学講座

抄訳

体内で血管の3次元パターンがどのようにできるかについては、これまでほとんどわかっていなかった。発生中の胚内で最初につくられる背測大動脈の形成過程では、まず側板由来の原始血管がつくられ、その後、体節に由来する細胞が原始血管内に侵入することが知られていた。今回我々は、体節内で出現した血管内皮前駆細胞が、分節パターンに沿ってダイナミックに移動し大動脈形成に寄与することを見いだした。このときNotchシグナルが血管内皮細胞の分化と細胞移動の両方に重要な役割をもつ。またこれらの細胞移動には、原始血管からの誘因作用が関わる。分節パターンに沿って移動した内皮細胞は、最終的には背測大動脈全体に分布するようになる。この論文で報告された知見は、発生過程における血管形成のみならず、成体内での血管新生や、ガン細胞の転移の仕組みの解明につながることが期待される。

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