本文へスキップします。

H1

国内研究者論文詳細

日本人論文紹介:詳細

2018/09/25

マウス網膜in vivoイメージングにおける白内障防止コンタクトレンズの開発

論文タイトル
Cataract-preventing contact lens for in vivo imaging of mouse retina
論文タイトル(訳)
マウス網膜in vivoイメージングにおける白内障防止コンタクトレンズの開発
DOI
10.2144/btn-2018-0040
ジャーナル名
BioTechniques Future Science Group
巻号
Vol.65,No.2(2018)101-104
著者名(敬称略)
池田 わたる 他
所属
株式会社カン研究所 臨床科学部

抄訳

2光子または共焦点レーザー顕微鏡を用いたマウス網膜のin vivoイメージングは、中枢神経系組織における細胞動態解析の強力なツールである。
しかし、麻酔下ではマウス眼内の水晶体が可逆的に不透明化(白内障化)するため、眼底の視認性が著しく悪化する。
マウス眼球表面に平凹型コンタクトレンズを装用して角膜の乾燥を防ぐことにより、白内障の進行を遅延させることはできるが、その効果には限界がある。
こうした問題を解決するため、我々はマウス眼球表面を完全に覆うコンタクトレンズを開発することにより、6時間以上にわたって麻酔下での白内障を防止することに成功した。
その結果、マウス網膜における白血球の動態を長時間にわたって解析することが可能となった。
今後、本コンタクトレンズを補償光学システムと組み合わせることにより、マウス網膜におけるin vivo分子イメージングも可能になることが期待される。

論文掲載ページへ

2018/09/25

KCNJ5変異アルドステロン産生腺腫症例にて、デキサメサゾンによるアルドステロンの抑制性

論文タイトル
Aldosterone Suppression by Dexamethasone in Patients With KCNJ5-Mutated Aldosterone-Producing Adenoma
論文タイトル(訳)
KCNJ5変異アルドステロン産生腺腫症例にて、デキサメサゾンによるアルドステロンの抑制性
DOI
10.1210/jc.2018-00738
ジャーナル名
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism Endocrine Society
巻号
J Clin Endocrinol Metab Vol.103 No.9 (3477?3485)
著者名(敬称略)
井上 浩輔, 西川 哲男 他
所属
横浜労災病院内分泌・糖尿病センター

抄訳

原発性アルドステロン症(PA)でのRAS系の検討はされているも、ACTH系の病態への関与は知られていない。一方、KCNJ5変異アルドステロン産生腺腫の症例は、重症型PAである。そこで、KCNJ5変異の有無とACTH経路の臨床的関与につき検討した。方法:APA141例を対象とし、ACTH負荷試験、1mgデキサメサゾン負荷試験(DST)を含む各種術前内分泌検査とKCNJ5遺伝子変異の相関を横断的に検討した。また、超選択的副腎静脈サンプリング(SS-ACTH-AVS)におけるACTH負荷後PAC, 血清コルチゾール値(F)と変異の相関についても検討した。結果:KCNJ5変異は76%に認められ、非変異群に比し、血漿アルドステロン濃度(PAC)基礎値、生食負荷試験後PAC・ACTH負荷試験後PACが高値を示していた。一方、変異群でDST後にPACの強い抑制を認め、多変量解析でもDST後PAC抑制度はKCNJ5変異の有無と正の相関を認めた (P=0.01)。SS-ACTH-AVSでは、変異群において病変側のPAC/F比が高値を示した。免疫組織染色にて、CYP11B1とCYP17が有意に発現増強していた。考案:変異群においてDST後のPAC抑制度が強いことは内因性ACTHへの高い反応性を示し、AVS所見もそれを支持する結果であった。結論:1mg DSTによるPAC抑制性は、APAのKCNJ5変異を予測する上で重要な指標である可能性が示された。

論文掲載ページへ

2018/09/11

栄養素組成の1食毎の変化が食後の血糖値に及ぼす影響

論文タイトル
Effect of diurnal variations in the carbohydrate and fat composition of meals on postprandial glycemic response in healthy adults: a novel insight for the second-meal phenomenon
論文タイトル(訳)
栄養素組成の1食毎の変化が食後の血糖値に及ぼす影響
DOI
10.1093/ajcn/nqy086
ジャーナル名
American Journal of Clinical Nutrition American Society for Nutrition
巻号
Vol.108, No.2 (332?342)
著者名(敬称略)
安藤 貴史・田中 茂穂
所属
国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 栄養・代謝研究部

抄訳

1食毎の栄養素組成の変化は,日常的に見られる.しかし,これまでの研究は1食のみや1日単位の栄養素組成と血糖値の関連のみにフォーカスしており,1食毎の栄養素組成の変化が1日全体の中で血糖値変動に及ぼす影響は明らかになっていない.我々は,「高脂質を摂取した次の食事において相対的に高糖質の食事を摂取すると,体内の基質利用優先度が脂質に傾いているため高血糖が引き起こされる」という仮説を立て,14名の健康な成人男性を対象とした3試行のクロスオーバー試験で検証した.各試行は, 3日間の規定食摂取の後に1日間の試験食摂取で構成されており,試験食摂取日に1日3食摂取した時の血糖値変動をcontinuous glucose monitoring systemを用いて評価した.基質の利用バランス(RQ)はヒューマンカロリメーターを用いて評価された.試験食には,3食普通食(R)試行,朝高糖質・昼高脂質・夜高糖質(CB)試行,朝高脂質・昼夜高糖質(FB)試行があり,3試行の1日合計の栄養素組成(糖質摂取量)は同一に設定された.その結果,1日の血糖値最高値はR試行に比べCB,FB試行において高値を示し,各食後の血糖値については,高脂質摂取後に高糖質食を摂取した場合において,他の高糖質摂取時と比べ20mg/dL程度の高値を示した.また,食後の血糖値と食前のRQに有意な負の関連が見られた.したがって我々の研究結果は,高脂質から高糖質への食事変化が基質の利用優先度の変化を伴い,食後高血糖をもたらすことを示唆する.

論文掲載ページへ

2018/09/10

海藻藻場がサンゴ群集へ置き換わる:温暖化影響下における海流輸送と植食圧の役割

論文タイトル
Ocean currents and herbivory drive macroalgae-to-coral community shift under climate warming
論文タイトル(訳)
海藻藻場がサンゴ群集へ置き換わる:温暖化影響下における海流輸送と植食圧の役割
DOI
10.1073/pnas.1716826115
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences National Academy of Sciences
巻号
PNAS vol. 115 no. 36 8990-8995
著者名(敬称略)
熊谷直喜 他
所属
国立環境研究所 生物・生態系環境研究センター

抄訳

海藻藻場やサンゴ群集は重要な生態系の構成要素だが、近年、温帯の海藻藻場が衰退しサンゴ群集に置き換わる現象が生じている。本研究は60年以上にわたる生物出現記録の文献を収集・精査し、国内の温帯で進行している海藻藻場の分布縮小と造礁サンゴ群集の分布拡大の全貌を明らかにした。さらに気候変動と海流輸送、海藻を食害する魚類の影響を組み込んだ解析を行い、海藻藻場からサンゴ群集への置き換わりが進行する機構を解明した。海流を利用した移動分散に長けた食害魚類やサンゴは、温暖化によって新たに生息可能になった海域へとより早く分布を拡大するが、移動分散能力の低い海藻は徐々にしか分布を更新できなかった。このため魚類による食害とサンゴの加入によって分布が縮小し、次第にサンゴ群集へと置き換わることが分かった。さらに今後も温帯では海藻藻場の減少とサンゴ群集の増加が進行すると予測され、生態系機能・サービスも大きく変化すると予想される。

論文掲載ページへ

2018/08/08

寛骨臼形成不全の症状を有する股関節における、坐骨大腿スペースと股関節の形態学的特徴の間のレントゲン学的相関性

論文タイトル
Radiologic Correlation Between the Ischiofemoral Space and Morphologic Characteristics of the Hip in Hips With Symptoms of Dysplasia
論文タイトル(訳)
寛骨臼形成不全の症状を有する股関節における、坐骨大腿スペースと股関節の形態学的特徴の間のレントゲン学的相関性
DOI
10.2214/AJR.17.18465
ジャーナル名
American Journal of Roentgenology American Roentgen Ray Society
巻号
AJR March 2018, Volume 210, Number 3, 608-614
著者名(敬称略)
大西康央 内田 宗志 他
所属
産業医科大学若松病院 整形外科

抄訳

目的:本研究の目的は、症候性寛骨臼形成不全DDH、境界型DDH、及び大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)を有する患者らの股関節におけるischiofemoralスペースと形態学的所見のレントゲン的相関性を調査することにあった。
対象及び方法:股関節鏡を受けた84患者における108股がLCEAに応じて3群に分けられた:DDH群(LCEA<20度;18股)、境界型DDH群(20度≦LCEA<25度;26股)、及びFAI群(LCEA≧25度;64股)。坐骨大腿ディスタンスがレントゲンによって、そして坐骨大腿スペースと大腿方形筋スペースがMRIによって評価された。術前CTスキャン上の、LCEAのレントゲンパラメータ、femoral neck-shaftアングル、及びfemoral neck anteversionを計測するためにソフトウェアが用いられた。
結果:坐骨大腿ディスタンス、坐骨大腿スペース、及び大腿方形筋スペースは、FAI群におけるよりも、DDH及び境界型DDH群において、有意に小さかった。17mm未満の坐骨大腿スペースを有する股関節の有病率は、FAI群(4/64患者【6%】)におけるよりも、DDH群(10/18患者【56%】)及び境界型DDH群(8/26患者【31%】)において有意に高かった。さらに、8mm未満の大腿方形筋スペースを有する股関節の有病率は、FAI群(0/64患者【0%】)におけるよりも、DDH群(2/18【11%】)及び境界型DDH群(3/26【12%】)において有意に高かった。Femoral neck-shaftアングル及びfemoral neck anteversionは、FAI群よりもDDH群において有意に大きかった。

論文掲載ページへ

2018/08/07

LTBP2は肺筋線維芽細胞から分泌され、特発性肺線維症の血清バイオマーカーとなり得る

論文タイトル
LTBP2 is secreted from lung myofibroblasts and is a potential biomarker for idiopathic pulmonary fibrosis
論文タイトル(訳)
LTBP2は肺筋線維芽細胞から分泌され、特発性肺線維症の血清バイオマーカーとなり得る
DOI
10.1042/CS20180435
ジャーナル名
Clinical Science Portland Press
巻号
Clinical Science Vol.132 No.14 (1565-1580)
著者名(敬称略)
榎本 泰典, 岩下 寿秀 他
所属
浜松医科大学医学部医学科再生・感染病理学講座

抄訳

目的:肺の線維化における重要プロセスである、線維芽細胞からα-smooth muscle actin (αSMA)陽性筋線維芽細胞への分化を反映する、特発性肺線維症(IPF: idiopathic pulmonary fibrosis)のバイオマーカーを探索する。
方法:FACSを用いて、bleomycin誘導性マウス線維化肺から筋線維芽細胞を、未処置マウス肺から定常状態の線維芽細胞を直接単離する。microarrayデータの比較により、Acta2 (αSMAをコードする遺伝子)とシグナル比が近似し、かつ細胞外分泌タンパク質をコードする遺伝子を同定し、ヒトの細胞・組織における再現性を確認する。IPF患者において、血清中の同タンパク質濃度を測定し、臨床情報との関連を後方視的に検証する。
結果:マウス肺筋線維芽細胞に高発現する遺伝子Ltbp2(latent TGFβ-binding protein-2)を同定した。ヒト肺線維芽細胞にTGFβ1を投与しin vitroで筋線維芽細胞へ分化させた場合でも、ACTA2の遺伝子発現上昇と合わせてLTBP2発現が上昇し、また同時に細胞外に分泌されるLTBP2のタンパク質量が増加することがわかった。マウス線維化肺及びヒトIPF肺の免疫染色では共に、線維化した間質領域及び一部の筋線維芽細胞でLTBP2陽性であった。IPF患者の血清LTBP2濃度は健常者と比較して有意に高く、努力性肺活量と負の相関を示した。Coxハザードモデルの結果、血清LTBP2濃度は予後不良例ほど高値であった。
結論:LTBP2はIPFの新規バイオマーカーとして期待される。

論文掲載ページへ

2018/07/24

シトリン欠損症小児におけるコレステロール代謝は肝臓と脳において亢進している

論文タイトル
Cholesterol Metabolism Is Enhanced in the Liver and Brain of Children With Citrin Deficiency
論文タイトル(訳)
シトリン欠損症小児におけるコレステロール代謝は肝臓と脳において亢進している
DOI
10.1210/jc.2017-02664
ジャーナル名
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism Endocrine Society
巻号
J Clin Endocrinol Metab Vol.103 No.7 (2488?2497)
著者名(敬称略)
平山 哲 他
所属
順天堂大学医学部・臨床検査医学講座

抄訳

シトリン欠損症は、シトリン遺伝子(SLC25A13)の異常による常染色体劣性遺伝疾患である。発症時期により、新生児肝内胆汁うっ滞症(NICCD)と成人発症2型シトルリン血症(CTLN2)に分類される。シトリンは、肝臓のミトコンドリア膜にあるアスパラギン酸とグルタミン酸の輸送蛋白であり、リンゴ酸‐アスパラギン酸シャトルを構成する。細胞質で生じたNADHの還元エネルギーをミトコンドリア内に輸送し、NADHを産生する。一方、シトリンの機能低下では、細胞質のNADH過剰とNAD+枯渇が生じるが、リンゴ酸‐クエン酸シャトルが代償的に働き、多くのNICCDは、幼児期から学童期に一旦改善する(適応・代償期 = post NICCD期)。post NICCD期のシトリン欠損症は、糖質を嫌い、高脂肪・高蛋白食を好む。高コレステロール血症を生じるが、肝機能は正常であり、一部患児にのみ種々の代謝障害が生じ、思春期以降にCTLN2を発症する。我々は、post NICCD期のシトリン欠損症における高コレステロール血症の病態を明らかにするため、LC-ESI-MS/MSを用いてコレステロール合成・吸収・異化マーカーを測定し、脂質プロファイルとの関連を調べた。対象は、5歳から13歳のシトリン欠損症小児20名と健常小児37名である。シトリン欠損症群は、健常群に比しHDL-C濃度が有意に高く(78 ± 11 vs. 62 ± 14 mg/dL)、LDL-CおよびTG濃度は差がなかった。シトリン欠損症群のコレステロール合成マーカー(lathosterol・7-dehydrocholesterol)と異化マーカー(7α-hydroxycholesterol・27-hydroxycholesterol)は、健常群に比し各々1.5~2.8倍、1.5~3.9倍高かった。中枢神経系でのコレステロール異化マーカーである24S-hydroxycholesterolは、シトリン欠損症群で2.5倍高かった。両群のHDL-C濃度は、胆汁酸合成の副経路で産生される27-hydroxycholesterol濃度と有意な正相関を示した。以上より、post NICCD期のシトリン欠損症は、HDL-Cおよび種々のステロールマーカー濃度が高く、特に肝臓および脳でのコレステロール合成と異化が亢進していると考えられる。

論文掲載ページへ

2018/07/03

20番染色体母性片親性ダイソミー:5症例の身体的および内分泌学的特徴

論文タイトル
Maternal Uniparental Disomy for Chromosome 20: Physical and Endocrinological Characteristics of Five Patients
論文タイトル(訳)
20番染色体母性片親性ダイソミー:5症例の身体的および内分泌学的特徴
DOI
10.1210/jc.2017-02780
ジャーナル名
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism Endocrine Society
巻号
J Clin Endocrinol Metab Vol.103 No.6 (2083?2088)
著者名(敬称略)
川嶋 明香, 鏡 雅代 他
所属
国立研究開発法人 国立成育医療研究センター研究所 分子内分泌研究部

抄訳

20番染色体がともに母親に由来する20番染色体母性片親性ダイソミー (UPD(20)mat) は、近年、Silver-Russell症候群(SRS)やSGA性低身長と臨床診断された症例で同定、報告されている。20q13領域に存在するGsαをコードするGNAS遺伝子は、組織特異的にインプリンティングされる。本疾患と鏡像関係となる20番染色体父性片親性ダイソミーではGsα発現低下によるホルモン抵抗性を認めるが、UPD(20)matの内分泌学的異常などの詳細な臨床像や発症頻度はこれまで検討されていない。我々は、原因不明のSGA性低身長96例、SRS 55例で、それぞれ3例(5.5%)および1例(1.0%)のUPD(20)matを同定した。さらに1例を加え、計5例を対象に臨床像を検討した。2例で血清Ca軽度高値を示した。1例で低TSHを示した。本研究はUPD(20)mat症例におけるホルモン受容体の感受性亢進を示唆した。

論文掲載ページへ

2018/07/02

マウスモデルにおけるglucose-dependent insulinotropic polypeptideの末梢動脈リモデリング抑制作用

論文タイトル
Glucose-Dependent Insulinotropic Polypeptide Suppresses Peripheral Arterial Remodeling in Male Mice
論文タイトル(訳)
マウスモデルにおけるglucose-dependent insulinotropic polypeptideの末梢動脈リモデリング抑制作用
DOI
10.1210/en.2018-00336
ジャーナル名
Endocrinology Endocrine Society
巻号
Endocrinology Vol.159 No.7 (2717?2732)
著者名(敬称略)
森 雄作 他
所属
昭和大学医学部内科学講座糖尿病・代謝・内分泌内科学部門

抄訳

インクレチンのglucose-dependent insulinotropic polypeptide (GIP)は心血管系への直接的な作用を示す。本研究は、マウスの大腿動脈ワイヤー傷害モデルを用いてGIPの末梢動脈リモデリングに対する作用を評価した。野生型のマウスにGIPを持続投与することで動脈リモデリング(新生内膜過形成)が抑制された。この作用は一酸化窒素合成酵素(NOS)阻害薬の同時投与で消失したことから、NOの関与が示唆された。反対に、GIP受容体をノックアウトすると動脈リモデリングが悪化した。培養のヒト臍帯静脈内皮細胞において、GIPは細胞内カルシウム濃度を増加させ、AMP-activated protein kinase (AMPK)依存的にNO産生を促進した。GIPはリン酸化AMPKを増加させ、この作用はカルシウムを介したシグナル伝達に関与するphospholipase Cとcalcium-calmodulin-dependent protein kinase kinaseの阻害で抑制された。さらにGIPの効果は、2型糖尿病モデルのdb/dbマウスと高血糖で培養したヒト臍帯静脈内皮細胞においても同様に認められた。本研究から、マウスモデルにおいてGIPが末梢動脈のリモデリングを抑制し、この作用に血管内皮細胞におけるカルシウムを介したAMPKの活性化が関与することが示された。

論文掲載ページへ

2018/06/28

NCCNガイドラインおよび膵癌取扱い規約による膵癌切除可能性評価

論文タイトル
Modified National Comprehensive Cancer Network Criteria for Assessing Resectability of Pancreatic Ductal Adenocarcinoma
論文タイトル(訳)
NCCNガイドラインおよび膵癌取扱い規約による膵癌切除可能性評価
DOI
10.2214/AJR.17.18595
ジャーナル名
American Journal of Roentgenology American Roentgen Ray Society
巻号
AJR June 2018, Volume 210, Number 6 1252-1258
著者名(敬称略)
野田 佳史, 五島 聡 他
所属
岐阜大学 放射線科

抄訳

NCCNガイドラインに記載されている膵癌切除可能性分類に,膵癌取扱い規約の局所進展度因子評価を追加することで,術前CTでの切除可能性評価が向上するか否か検討した.
術前ダイナミック造影CTを撮像された86例の切除膵癌症例を対象に,NCCNガイドラインの切除可能性分類に記載されている脈管侵襲(NCCN score)および膵癌取扱い規約に記載されている局所進展度(JPS score)につき,それぞれ浸潤程度によってスコア化し,そのスコアを合算した(Combined score).R0切除症例とR1/R2切除症例の分離能をそれぞれのスコアで評価した.
Combined scoreを用いた上記分離能は感度 86.9%,特異度 68.0%,AUC 0.874であり,AUCはNCCN scoreと比較し,有意に高値であった(P = 0.0059).
NCCNガイドラインと膵癌取扱い規約の双方を用いた膵癌切除可能性評価は,それぞれ単独での評価と比較し,より正確な評価が可能であった.

論文掲載ページへ

2018/06/26

脈絡膜厚及び中心性漿液性網脈絡膜症に関連する遺伝子CFH、VIPR2の同定

論文タイトル
CFH and VIPR2 as susceptibility loci in choroidal thickness and pachychoroid disease central serous chorioretinopathy
論文タイトル(訳)
脈絡膜厚及び中心性漿液性網脈絡膜症に関連する遺伝子CFH、VIPR2の同定
DOI
10.1073/pnas.1802212115
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences National Academy of Sciences
巻号
PNAS Vo.115 No.24 (6261-6266)
著者名(敬称略)
細田 祥勝, 山城 健児 他
所属
京都大学大学院医学研究室 眼科学教室

抄訳

 中心性漿液性網脈絡膜症(CSC)は脈絡膜の肥厚に伴う黄斑部の漿液性網膜剥離を来す疾患である。続発性に脈絡膜新生血管を発症して、滲出型加齢黄斑変性(AMD)と酷似した病態を呈することもあり、CSCとAMDには共通した発症機序が関与しているのではないかとも考えられてきた。
 今回我々は、6110人の日本人データを用いたゲノムワイド関連解析で、脈絡膜厚に関連する2つの遺伝子(CFH・VIPR2)を同定した。さらに、この2つの遺伝子がCSCの発症にも関わっていることが、701人の日本人CSC患者の追加データおよび韓国人2068人のデータを用いた解析で確認できた。
 また、脈絡膜が厚く、CSCを発症しやすい型のCFH遺伝子を持っているとAMDを発症しにくくなり、逆にAMDを発症しやすい型のCFH遺伝子を持っていると、脈絡膜は薄くなり、CSCを発症しにくくなることも判明した。
 今回の研究ではCSCの発症予防や新たな治療につながる結果が得られた。また、CFH遺伝子には2つの役割があり、脈絡膜の肥厚およびCSCの発症と、AMDの発症には異なった機序が関与している可能性が示された。

論文掲載ページへ

2018/06/19

ヒメギス(キリギリス科、学名Metrioptera engelhardti)の腸管から単離された新種の乳酸菌Lactobacillus metriopterae の発見

論文タイトル
Lactobacillus metriopterae sp.nov.,a novel lactic acid bacterium isolated from the gut of grasshopper Metrioptera engelhardti
論文タイトル(訳)
ヒメギス(キリギリス科、学名Metrioptera engelhardti)の腸管から単離された新種の乳酸菌Lactobacillus metriopterae の発見
DOI
10.1099/ijsem.0.002694
ジャーナル名
International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology Microbiology Society
巻号
Volume 68,Issue 5,1484-1489 May 2018
著者名(敬称略)
千葉 誠、川崎 信治 他
所属
東京農業大学 応用生物科学部 バイオサイエンス学科、東京農業大学 生命科学部 分子微生物学科 兼務

抄訳

我々は植物(湿原や草原の花を中心として)と同調査域の昆虫に生息する嫌気性菌の微生物生態に関して研究を行っている。
これまでに尾瀬湿原の花から新種の嫌気性乳酸菌Lactobacillus ozensisとLactobacillus floricolaを単離・報告してきた。
長野県の野々海高原は人里離れた湿原で、貴重な生態系が存在することから、許可を得て経年的に調査を行っている。
野々海高原に生息する花や昆虫の微生物叢を調査する過程で、草食性(雑食)のヒメギスに由来する腸内細菌叢を解析した結果、未記載種の乳酸生成菌を単離した。
16S rRNA遺伝子解析の結果、既知細菌種との相同性が96%台と低く、かつ近縁種にはない形態的な特徴(黄色を呈するなど)や生化学的特徴を有していたことから、新種 Lactobacillus metriopteraeを提唱した。メタ16S rRNA遺伝子の解析結果から、本細菌はヒメギス腸管細菌叢の18~78%を占める最優占種であることが判明した。
今後、ヒメギス腸内における本新種の生理学的な役割の解明が期待される。

論文掲載ページへ

2018/06/15

ダイアファナス関連フォルミンmDia1のらせん回転はコフィリン抵抗性のアクチン線維を生成する

論文タイトル
Helical rotation of the diaphanous-related formin mDia1 generates actinfilaments resistant to cofilin
論文タイトル(訳)
ダイアファナス関連フォルミンmDia1のらせん回転はコフィリン抵抗性のアクチン線維を生成する
DOI
10.1073/pnas.1803415115
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences National Academy of Sciences
巻号
PNAS Vo.115 No.22 (E5000-E5007)
著者名(敬称略)
水野 裕昭, 渡邊 直樹 他
所属
京都大学大学院生命科学研究科 分子動態生理学分野

抄訳

細胞内でいかに多様なアクチン線維構造が生み出され、異なる動態を示すかについては多くの謎が残されている。以前われわれが報告したように、フォルミンファミリーはアクチン線維端に結合したまま連続的に線維を伸長するとともに、線維の二重らせん構造に沿って回転する。今回、フォルミンファミリーの1つmDia1がそれ自身と線維の反対端が固定されるとアクチン線維のねじれを緩める力を発生し、アクチン脱重合因子コフィリンによる線維切断を抑制することを見出した。コフィリンはアクチン線維のねじれを30%増強することが知られている。培養細胞では、細胞構造につなぎとめられるタイプのmDia1の活性型変異体(ΔC63)を過剰発現すると、アクチン線維の寿命が延長し、コフィリンへの結合が減弱することが判明した。さらに電子顕微鏡を用い、mDia1が生むトルクがアクチン線維のらせんピッチ長を延長することを可視化することに成功した。本研究は、線維のねじれを介して遠距離にある分子の働きを変えるユニークなしくみを明らかにするとともに、多様なアクチン構造が細胞内で共存しながら作動するメカニズムの解明に向け、新たな枠組みを提供する。

論文掲載ページへ

2018/06/13

心筋ミオシン結合タンパク質CとフォルミンFhod3との相互作用

論文タイトル
Interaction between cardiac myosin-binding protein C and formin Fhod3
論文タイトル(訳)
心筋ミオシン結合タンパク質CとフォルミンFhod3との相互作用
DOI
10.1073/pnas.1716498115
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences National Academy of Sciences
巻号
Vol.115 No.19
著者名(敬称略)
松山 翔、武谷 立 他
所属
宮崎大学 医学部 薬理学分野

抄訳

心筋ミオシン結合タンパク質C(cMyBP-C)の遺伝子変異は、家族性肥大性心筋症の主因のひとつである。cMyBP-Cは、心筋サルコメア内のC-ゾーンと呼ばれる領域に局在し、クロスブリッジ制御を介して心機能を調節すると考えられているが、そのメカニズムには不明な点が多い。今回我々は、新規のcMyBP-C結合タンパク質として、心筋サルコメアの形成・維持に必須のアクチン調節因子であるフォルミンFhod3を同定した。cMyBP-Cの心臓特異的なN末端Ig様ドメインが、Fhod3の心臓特異的なN末領域と直接相互作用していた。cMyBP-Cとの結合領域を欠いた非心筋型Fhod3バリアントはC-ゾーンに局在できないこと、逆に心筋型Fhod3バリアントがcMyBP-C欠損マウスのC-ゾーンに局在できないことから、本相互作用がFhod3のC-ゾーンへの局在を決定していると考えられた。cMyBP-C欠損マウスにおける心筋症様の表現型は、Fhod3の過剰発現によって増悪し、逆にFhod3タンパク質レベルの低下により部分的に改善されたことから、Fhod3が正しい部位に局在できないcMyBP-C-欠損の状態下ではFhod3が心機能に有害な作用を及ぼすことが示唆された。以上より、Fhod3はcMyBP-Cとの直接結合を介して心機能の制御に関わると考えられる。

論文掲載ページへ

2018/06/13

X染色体優性低リン血症性くる病とFGF23関連低リン血症性疾患: 新規治療への期待

論文タイトル
X-Linked Hypophosphatemia and FGF23-Related Hypophosphatemic Diseases: Prospect for New Treatment
論文タイトル(訳)
X染色体優性低リン血症性くる病とFGF23関連低リン血症性疾患: 新規治療への期待
DOI
10.1210/er.2017-00220
ジャーナル名
Endocrine Reviews Endocrine Society
巻号
Endocrine Reviews Vol.39 No.3 (274?291)
著者名(敬称略)
木下 祐加, 福本 誠二
所属
徳島大学 藤井節郎記念医科学センター

抄訳

リンは生体内で多様な作用を有しており、血中リン濃度は一定の範囲に維持されている。線維芽細胞増殖因子23(fibroblast growth factor 23: FGF23)は骨により産生されるリン調節ホルモンで、腎近位尿細管リン再吸収と、血中1,25-水酸化ビタミンD濃度の低下を介する腸管リン吸収の抑制により、血中リン濃度を低下させる。過剰なFGF23活性により、いくつかのFGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症が惹起されることが明らかにされた。特に、phosphate-regulating endopeptidase homolog, X-linked (PHEX)遺伝子不活性型変異によるX染色体優性低リン血症性くる病(X-linked hypophosphatemic rickets: XLH)は、遺伝性低リン血症性くる病の中で最も頻度の高い疾患である。リン製剤と活性型ビタミンD製剤が、現状ではXLH等に対し使用されている。しかしこれらの治療には、有効性や有害事象の点で、限界があることが知られている。そこでFGF23の活性阻害が、XLH等に対する新たな治療法となるかどうかが検討されている。特に、FGF23活性を阻害するモノクローナル抗体は、FGF23関連低リン血症性疾患に対する新規治療として有望視されている。

追記
本論文執筆後の2018年に、抗FGF23抗体はEuropean Medicines Agency(EMA)、およびFood and Drug Administration(FDA)からXLHに対し認可された。

論文掲載ページへ

2018/06/05

腸管出血性大腸菌の低分子RNA Esr41はLEEとべん毛遺伝子群の発現を逆向きに調節する。

論文タイトル
Small RNA Esr41 inversely regulates expression of LEE and flagellar genes in enterohaemorrhagic Escherichia coli
論文タイトル(訳)
腸管出血性大腸菌の低分子RNA Esr41はLEEとべん毛遺伝子群の発現を逆向きに調節する。
DOI
10.1099/mic.0.000652
ジャーナル名
Microbiology Microbiology Society
巻号
Microbiology Volume 164, Issue 5, May 2018 821-834
著者名(敬称略)
須藤 直樹、関根 靖彦 他
所属
立教大学 理学部 生命理学科 分子生物学研究室

抄訳

腸管出血性大腸菌(以下、EHEC)は溶血性尿毒素症候群などの重症例を伴う感染症を引き起こす、臨床上重要な病原性細菌である。EHECの多くは、宿主細胞への感染に直接に関与する3型分泌装置をコードするLEEと呼ばれる病原性遺伝子群をもつ。このLEEの発現が活性化するとき、べん毛をコードするべん毛遺伝子群の発現が抑制される。この遺伝子発現制御の意義は、宿主細胞への感染の際、宿主側の免疫系を活性化するべん毛の発現を抑制することで、免疫系の誘導を回避することにあると考えられる。本研究は、低分子RNAであるEsr41が、LEEの主要な転写活性化因子をコードするlerを転写後段階で抑制すること、lerの転写活性化因子をコードするpchの転写を間接的に抑制することでLEEの発現を抑制し、EHECの宿主細胞への接着性を低下させることを示した。さらに、Esr41がべん毛特異的シグマ因子をコードするfliAの転写を間接的に活性化させることで、べん毛遺伝子群の発現を上昇させることを示した。これらの結果は、LEEとべん毛遺伝子群間における逆相関の発現制御においてEsr41が重要な役割を担うことを示唆する。

論文掲載ページへ

2018/05/23

オステオポンチンの細胞接着活性とリン酸化修飾における部位特異的O-結合型糖鎖修飾の生物学的役割

論文タイトル
Biological role of site-specific O-glycosylation in cell adhesion activity and phosphorylation of osteopontin
論文タイトル(訳)
オステオポンチンの細胞接着活性とリン酸化修飾における部位特異的O-結合型糖鎖修飾の生物学的役割
DOI
10.1042/BCJ20170205
ジャーナル名
Biochemical Journal Portland Press
巻号
Biochemical Journal Vol. 475 No. 9 (1583-1595)
著者名(敬称略)
大山 翠、苅谷 慶喜 他
所属
福島県立医科大学医学部生化学講座

抄訳

 オステオポンチン(OPN)は、細胞の接着や運動の制御により、癌をはじめとする様々な疾患の増悪に関わる糖タンパク質である。OPN は5か所のO-結合型糖鎖付加部位に加え、40か所以上のリン酸化部位をもつ。これまでOPNの生物学的活性は、糖鎖やリン酸化により調節を受けると考えられてきたが、直接的な証拠は得られていない。それゆえ、OPNのO-結合型糖鎖修飾とリン酸化修飾、接着活性の3者の関係については不明である。
 本研究では、部位特異的にO-結合型糖鎖をもつOPN変異体を用いて、それらの関係について詳細な検討をおこなった。その結果、1) OPNのO-結合型糖鎖が部位特異的に細胞接着活性およびリン酸化に影響を与えること、2)リン酸化レベルとO-結合型糖鎖の数、接着活性は必ずしも相関しないこと、が明らかとなった。これらの結果は、O-結合型糖鎖によるOPN機能およびリン酸化の新たな調節メカニズムを示唆するものである。

論文掲載ページへ

2018/05/18

ウシ胚盤胞期胚栄養外胚葉の発生におけるTEAD4とCCN2の相互制御

論文タイトル
Reciprocal regulation of TEAD4 and CCN2 for the trophectoderm development of the bovine blastocyst
論文タイトル(訳)
ウシ胚盤胞期胚栄養外胚葉の発生におけるTEAD4とCCN2の相互制御
DOI
10.1530/REP-18-0043
ジャーナル名
Reproduction Bioscientifica
巻号
Reproduction Vol.155 No.6 (563-571)
著者名(敬称略)
秋沢 宏紀, 川原 学 他
所属
北海道大学大学院農学研究院 生物資源科学専攻 家畜生産生物学講座

抄訳

哺乳類胚では胚盤胞期胚において最初の分化として二つの細胞集団、すなわち内部細胞塊 (ICM)と栄養外胚葉 (TE)への特徴づけが行われる。げっ歯類モデルでは、胚割球をTEに導く制御因子としてTEA domain transcription factor 4 (TEAD4)が重要な役割を果たすことが広く知られている。しかし、ウシ胚ではTEAD4の役割は不明である。本研究ではまず、ウシ胚盤胞期胚におけるTEAD4発現はmRNAとタンパク質の両方のレベルでICMと比べてTEで高いという部位優勢な発現様式を確かめた。そして、TEAD4遺伝子発現抑制 (knockdown: KD)により、TE分化関連遺伝子、CDX2GATA2CCN2の発現レベルが対照区と比較し有意に低下することを見出した。次いで、下方制御された遺伝子の中で最も大きく発現を低下させていたCCN2に着目し、ウシ胚においてCCN2 KDを試したところ、CDX2GATA2TEAD4の発現レベルが対照区と比べ有意に低下した。さらに、CCN2 KD胚では対照区と比べ、ICMに対するTEの細胞数比が減少していた。以上より、CCN2がTEAD4の制御を受けること、ならびに、これら二因子の相互的な制御が、胚盤胞期胚の適切な遺伝子発現の制御を介してTE細胞分化に重要な役割を果たすことが明らかになった。

論文掲載ページへ

2018/05/16

生体試料中薬物濃度分析法における一般的な変更に対するフルバリデ-ション及びパーシャルバリデーションへの科学的リスクベースドアプローチの提案

論文タイトル
Proposal for risk-based scientific approach on full and partial validation for general changes in bioanalytical method
論文タイトル(訳)
生体試料中薬物濃度分析法における一般的な変更に対するフルバリデ-ション及びパーシャルバリデーションへの科学的リスクベースドアプローチの提案
DOI
10.4155/bio-2017-0226
ジャーナル名
Bioanalysis Future Science Group
巻号
Bioanalysis: Ahead of Print, Published Online: 10 Apr 2018
著者名(敬称略)
望月あゆみ、家木克典、上森 浩、永尾 明美、中井 恵子、中山 聡、難波 英太郎
所属
(望月)大塚製薬株式会社 新薬開発本部 クリニカルマネジメント部 臨床薬理室

抄訳

FDA,EMA及びMHLWが発出している生体試料中薬物濃度分析法のバリデーションに関するガイドライン/ガイダンスには,フルバリデーションの評価項目は詳しく記載されているが,パーシャルバリデーションの詳細は殆ど記載されていない。そのような中で,著者らはJapan Bioanalysis Forum(JBF)の活動の一環として,2012年から2014年にかけて製薬企業やCROに在席するメンバーで構成された3つのディスカッショングループを結成し,日本におけるLC-MS/MSを用いた低分子の生体試料中薬物濃度分析で考え得るパーシャルバリデーション項目に焦点を当てて議論を行った。この論文では,各種分析法の部分変更に対するフルバリデーション又はパーシャルバリデーションの必要評価項目について,著者らの経験およびJBFシンポジウムの参加者と行った意見交換を基に導き出した見解並びに推奨内容を紹介する。なお,本論文はJBFの総意を代弁するものではなく,執筆段階の著者の意見である。

論文掲載ページへ

2018/05/15

新生仔低酸素性虚血性脳症の後遺症に対するプロゲステロンの予防効果

論文タイトル
Progesterone as a Postnatal Prophylactic Agent for Encephalopathy Caused by Prenatal Hypoxic Ischemic Insult
論文タイトル(訳)
新生仔低酸素性虚血性脳症の後遺症に対するプロゲステロンの予防効果
DOI
10.1210/en.2018-00148
ジャーナル名
Endocrinology Endocrine Society
巻号
Endocrinology Vol.159 No.6 (2264?2274)
著者名(敬称略)
河原井 麗正, 生水 真紀夫 他
所属
千葉大学大学院医学研究院生殖医学講座

抄訳

周産期の低酸素虚血性イベント(HIE)は、小児麻痺(CP)の原因のひとつである。プロゲステロンは脳内で合成され、プレグナノロンをはじめとするニューロステロイドに転換されて神経保護作用を示すことが知られている。われわれは、妊娠中に胎盤で合成されたプロゲステロンが胎児脳に保護的に働いていると推定している。今回ラットHIEモデルを用い、出生後のプロゲステロン投与がその後の協調運動障害の発生を阻止するか検討した。妊娠18日の母獣の子宮動脈を30分間駆血した。その後、自然分娩した新生仔にプロゲステロン(PD1-9, 0.1mg/day)を投与したところ、 PD50におけるロタロッドスコア(運動能)は正常対照と同等のレベルにまで回復していた。プロゲステロン投与中にオリゴデンドログリアが正常化し、投与終了後に軸索形態と神経細胞数が徐々に正常化していた。出生後のプロゲステロン投与がCP発生を予防する可能性が示された。

論文掲載ページへ