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国内研究者論文詳細

日本人論文紹介:詳細

2019/07/11

シアノバクテリアF1-ATPaseのγサブユニットの持つβ-ヘアピン構造には酵素活性の制御機能がある

論文タイトル
The β-hairpin region of the cyanobacterial F1-ATPase γ-subunit plays a regulatory role in the enzyme activity
論文タイトル(訳)
シアノバクテリアF1-ATPaseのγサブユニットの持つβ-ヘアピン構造には酵素活性の制御機能がある
DOI
10.1042/BCJ20190242
ジャーナル名
Biochemical Journal
巻号
Vol. 476 No. 12 (1771-1780)
著者名(敬称略)
秋山 健太郎, 久堀 徹 他
所属
東京工業大学 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所

抄訳

葉緑体とシアノバクテリアのATP合成酵素(FoF1)は,光合成電子伝達系と協働して働き,生命のエネルギー源であるATPを合成している.興味深いことに,光合成生物由来のFoF1のγサブユニットには,ミトコンドリアやバクテリアの酵素には見られない35-40アミノ酸で構成される特有の挿入配列がある.最近の構造解析により,この挿入配列が柔軟なβ-ヘアピン構造をとり,複合体分子内では酵素活性に影響する場所に位置していることが明らかになった.そこで,本研究ではこのβ-ヘアピン構造の可動性に注目してその周辺にCys残基を導入し,それによって形成されるジスルフィド結合を用いてβ-ヘアピン構造の動きを固定できる変異体を作製した.そして,ATP加水分解活性と活性制御がどのように変化するかを調べた.その結果,β-ヘアピン構造の下部を固定すると,ATP加水活性とADP阻害のpH依存性が著しく低下した.また,β-ヘアピン構造の上部はεサブユニットの結合によって構造が変化し,ε阻害を促進することが分かった.これらの結果は,光合成生物だけが持っている挿入配列がATP加水分解を制御し,生体内ATP濃度の維持管理に必要不可欠であることを示唆している.

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2019/07/04

マウスES細胞視床下部分化誘導系後期に残存するRax陽性細胞はTanycytesと類似する

論文タイトル
Tanycyte-Like Cells Derived From Mouse Embryonic Stem Culture Show Hypothalamic Neural Stem/Progenitor Cell Functions
論文タイトル(訳)
マウスES細胞視床下部分化誘導系後期に残存するRax陽性細胞はTanycytesと類似する
DOI
10.1210/en.2019-00105
ジャーナル名
Endocrinology
巻号
Vol.160 No.7 (1701–1718)
著者名(敬称略)
加納 麻弓子, 須賀 英隆 他
所属
名古屋大学大学院医学研究科 糖尿病・内分泌内科学

抄訳

Tanycytesは成体視床下部における神経幹/前駆細胞と考えられている。胎児発生初期に視床下部前駆細胞に広範に認められる転写因子Raxが、それ以後もTanycytesには発現し続けることが特徴である。本研究ではこのRax発現に着目することで、マウスES細胞からのTanycytes様細胞を見出すことに成功した。マウスES細胞視床下部分化誘導系後期におけるRax陽性細胞をsortingし、その性質を評価した。SortしたRax陽性細胞は、Sox2、Vimentin、Nestinなどの神経幹/前駆細胞マーカーを発現し、さらに成熟したTanycytesに特徴的なDio2やGpr50の発現を認めた。Rax陽性細胞はFGF2依存性に自己増殖を行い、継代可能なNeurosphereを形成すること、さらに視床下部ニューロンやグリアなど三系統の神経系細胞への分化能を有することから、視床下部神経幹/前駆細胞としての性質を持つことが示唆された。

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2019/06/24

日本人高齢者における乳製品摂取と機能障害のリスクについて:久山町研究

論文タイトル
Dairy consumption and risk of functional disability in an elderly Japanese population: the Hisayama Study
論文タイトル(訳)
日本人高齢者における乳製品摂取と機能障害のリスクについて:久山町研究
DOI
10.1093/ajcn/nqz040
ジャーナル名
American Journal of Clinical Nutrition
巻号
American Journal of Clinical Nutrition Vol.109 No.6 (1664–1671)
著者名(敬称略)
吉田 大悟 他
所属
九州大学大学院医学研究院 衛生・公衆衛生学分野

抄訳

【目的】地域高齢者における乳製品摂取が将来の生活機能およびADL障害の発生に及ぼす影響を検討した。
【方法】生活機能とADLが自立した地域高齢者859人を7年間追跡した。生活機能は老研式活動能力指標、ADLはBarthel Indexで評価し、それぞれ1項目以上できない場合を障害ありとした。乳製品摂取量は、半定量式食物摂取頻度調査票を用いて算出し、残差法でエネルギー調整後4分位に分けて検討した。ポアソン回帰モデルを用いて相対危険を算出した。
【結果】生活機能障害の発生リスクは、乳製品摂取量の増加に伴い有意に低下した(傾向性P値=0.001)。乳製品摂取量の第1分位に対する第4分位の生活機能障害発生の相対危険(多変量調整後)は、0.74(95%信頼区間0.61-0.90)と有意に低かった。さらに乳製品摂取はADL障害の発生リスクとも有意な負の関連を認めた(傾向性P値=0.04)。一方で、これらの負の関連はたんぱく質摂取量をモデルに入れて調整すると減弱した。
【結論】地域高齢者において、乳製品の高摂取はおそらくたんぱく質摂取の増加を介して、将来の生活機能障害やADL障害の発生リスクの低下と関連する事が示唆された。

 

 

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2019/05/31

脳血管構造に応じた脳動脈瘤破裂率の違いは、脳動脈瘤の血行力学的環境の相違に依存している

論文タイトル
Differences in Cerebral Aneurysm Rupture Rate According to Arterial Anatomies Depend on the Hemodynamic Environment
論文タイトル(訳)
脳血管構造に応じた脳動脈瘤破裂率の違いは、脳動脈瘤の血行力学的環境の相違に依存している
DOI
10.3174/ajnr.A6030
ジャーナル名
American Journal of Neuroradiology American Society of Neuroradiology
巻号
American Journal of Neuroradiology Vol. 40, No. 5 (834-839)
著者名(敬称略)
福田 俊一 他
所属
国立病院機構 京都医療センター 脳神経外科

抄訳

目的:脳動脈瘤はその大きさと発生部位に応じて破裂率が有意に異なるが、そのメカニズムは不明である。そこで、計算流体力学 (CFD) 解析を用いてこれらの脳血管構造関連破裂リスクが脳動脈瘤の血行力学的環境に依存しているかどうかを検討した。
方法:国立病院機構共同臨床研究CFD ABO Studyの461登録症例から84例(Acom瘤42例 MCA瘤42例)の3DCTAと頚動脈エコー結果を用いて拍動流によるCFD解析を行い、血行力学指標と既知の破裂予測因子(年齢 性別 高血圧 喫煙歴 部位 大きさ)との関連を多変量解析で検討した。
結果:瘤の大きさは、壁ずり応力の大きさや時間的な乱れを表す指標と有意な相関を認めた。部位の違いでは、ずり応力の大きさと有意な相関を認め、乱れの指標に関しては多方向性の乱れの指標NtransWSSのみと有意な相関を認めた。他の既知の破裂リスクでは有意な相関は見られなかった。すべての指標の中でNtransWSSが部位と大きさ双方に対し最も高いオッズ比を示した。新たに提案した血管構造指標AAIは、ずり応力の大きさ・乱れに対し強い相関を示した。
結論:脳動脈瘤の大きさや部位による破裂率の違いは、瘤の血行力学的環境の相違を反映している可能性が示唆された。部位と大きさでは破裂の血行力学的要因が異なっていると考えられる。

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2019/05/27

Sex-lethalによる精子二型の形成

論文タイトル
Dimorphic sperm formation by Sex-lethal
論文タイトル(訳)
Sex-lethalによる精子二型の形成
DOI
10.1073/pnas.1820101116
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
PNAS May 21, 2019 116 (21) 10412-10417
著者名(敬称略)
酒井 弘貴 新美 輝幸 他
所属
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 基礎生物学研究所 進化発生研究部門

抄訳

性メカニズムは多様性に富み、昆虫では性決定の最上流遺伝子は近縁種であっても異なることが知られている。このことから、ある種では性決定最上流遺伝子として働く遺伝子が、他の種では全く異なる機能を持つ可能性が考えられる。本研究では、ショウジョウバエの性決定最上流遺伝子であるSex-lethalSxl)遺伝子に着目した。鱗翅目昆虫(ガとチョウの仲間)のモデル生物であるカイコにおけるSxl遺伝子の機能を類推するため、Sxl遺伝子の発現パターンを調べたところ、精巣で高発現していることが判明した。カイコの精巣では受精する精子である有核精子と、自身は受精しないが有核精子の受精に必要な無核精子の二種類の精子が形成される。ゲノム編集技術を用いて作出したSxl変異体の解析により、Sxl遺伝子は正常な無核精子の形成に必須であること、及び無核精子は雌の交尾嚢から受精嚢への有核精子の移動に必須であることが明らかとなった。

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2019/05/23

脳アミロイド血管症におけるタキシフォリンの多面的神経保護作用

論文タイトル
Pleiotropic neuroprotective effects of taxifolin in cerebral amyloid angiopathy
論文タイトル(訳)
脳アミロイド血管症におけるタキシフォリンの多面的神経保護作用
DOI
10.1073/pnas.1901659116
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
PNAS May 14, 2019 116 (20) 10031-10038
著者名(敬称略)
井上 隆之 田中 将志 他
所属
健康科学大学健康科学部理学療法学科

抄訳

脳アミロイド血管症(CAA)は、アミロイドβ(Aβ)が脳血管に集積し、脳血管の機能障害や脳出血をもたらすことで、認知症発症・進展と密接に関わる疾患である。アルツハイマー病(AD)においても高頻度で認められ、CAAとADは相互に深く関連すると考えられる。よって、CAAの効果的予防法・治療戦略の開発は喫緊の課題である。
我々はこれまで、認知症発症・進展と関連するCAAのモデルマウスにて、シベリアカラマツ等の植物に含まれるフラボノイド・タキシフォリンの経口投与により、脳内血流量の改善、脳内Aβ量の減少(脳からの排出促進)とともに、認知機能低下が抑制されることを認めてきた(Acta Neuropathol Commun 2017)。そこで本研究では、タキシフォリンが有する作用のさらなる解明のため、タキシフォリンの経口投与は脳内の神経傷害因子に対しどのような作用を発揮するかについて詳細な検討を行った。その結果、血液脳関門のタキシフォリンに対する透過性は微量であるにもかかわらず、タキシフォリンを経口投与したマウスでは、海馬及び大脳皮質のいずれにおいても、脳内のAβ産生・分泌系に関わるApoE–ERK1/2–APP系が抑制されて、脳内Aβ産生自体が減少することを見出した。また、これまでゲノムワイド関連解析から認知症との関連が示唆され、脳ではミクログリア特異的に発現する細胞表面分子・TREM2について、TREM2発現亢進は脳内炎症増悪と関連すること、さらにタキシフォリン投与によりTREM2陽性細胞の脳内集積が抑制され、脳内炎症が抑制されることを認めた。また、タキシフォリンは、他の神経傷害因子であるグルタミン酸や活性酸素のレベルに対しても抑制効果を発揮した。これらの神経保護効果と一致して、脳内のアポトーシス指標はタキシフォリン経口投与マウスにて低値であった。
以上より、CAAモデルマウスに経口投与したタキシフォリンは、脳内にてAβ産生抑制を始めとする多面的な神経保護作用を発揮することで、認知機能低下の抑制に寄与すると考えられた。これらの知見は、CAAに対する新規予防・治療戦略の開発に貢献することが期待される。

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2019/05/20

ヘッジホッグ経路関連がんのゲノム診断、腫瘍微小環境及び標的治療

論文タイトル
Genomic testing, tumor microenvironment and targeted therapy of Hedgehog-related human cancers
論文タイトル(訳)
ヘッジホッグ経路関連がんのゲノム診断、腫瘍微小環境及び標的治療
DOI
10.1042/CS20180845
ジャーナル名
Clinical Science
巻号
Vol.130 No.8 (953-970)
著者名(敬称略)
加藤 勝
所属
国立がん研究センター オミックスネットワーク部門

抄訳

ヘッジホッグ(Hh)シグナルはSmoothened (SMO)-GLI及びSMO-RhoA経路等に伝達される。がん細胞内におけるHhシグナル活性化は、幹細胞の自己複製、腫瘍細胞の生存増殖、浸潤転移を促進する。がん微小環境おけるヘッジホッグシグナル活性化は、血管新生、線維化、免疫回避、がん疼痛等を惹起する。Hh経路に関連する遺伝子異常は、基底細胞がんや髄芽腫において高頻度に認められ、乳がん、大腸がん、胃がん、膵がんなどにおいても低頻度に認められる。基底細胞がん患者に対するHh経路阻害剤vismodegib或いはsonidegibの単独療法、並びに急性骨髄性白血病患者に対するHh経路阻害剤glasdegibの併用療法が、米国食品医薬品局 (FDA) により承認されている。Hh経路下流の遺伝子異常やWNT-β-catenin経路の活性化により、Hh経路阻害剤に対する治療抵抗性が誘導される。Hh経路阻害剤による腫瘍免疫賦活作用に着目して、vismodegibと免疫チェックポイント阻害剤pembrolizumabとの併用療法の治験が進行中である。

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2019/05/14

分子疫学解析法を用いた山形県における肺炎マイコプラズマの学校内および家族内感染の検討

論文タイトル
Polyclonal spread of multiple genotypes of Mycoplasma pneumoniae in semi-closed settings in Yamagata, Japan
論文タイトル(訳)
分子疫学解析法を用いた山形県における肺炎マイコプラズマの学校内および家族内感染の検討
DOI
10.1099/jmm.0.000969
ジャーナル名
Journal of Medical Microbiology  Microbiology Society
巻号
Journal of Medical Microbiology Vol. 68 Issue. 5 (785-790)
著者名(敬称略)
鈴木 裕 他
所属
山形県立中央病院 検査部

抄訳

肺炎マイコプラズマ(Mp)は主に小児および若年者の気道感染症の起因菌として重要である。我々は2011年~2013年に山形県で複数の遺伝子型のMpが同時に流行したことを以前報告した1)。本研究では、学校や家庭などの準閉鎖的環境におけるMp伝播の特徴を明らかにするために、同期間に山形県で確認されたMpの学校内および家族内感染事例に属する患者の情報とMp分離株の遺伝子型を併せて解析した。その結果、16の家族内感染事例のうち87.5%(14/16)では単一遺伝子型のMpが分離されたのに対して、単一遺伝子型のMpによる学校内感染事例は半数以下(5/11, 45.5%)に留まった。最大の学校内感染事例について患者の学年とクラスの情報を加えて分析したところ、各遺伝子型のMpは複数の学年から分離され、同一クラスの患者同士でも半数で遺伝子型が異なっていた。本研究では、家族間でMp遺伝子型の一致率が高かったことから、Mp伝播の場として家庭の重要性が示された。また、学校内では、Mpの伝播はクラス以外の場でも起きている可能性が示された。1) Suzuki Y, et al., Jpn J Infect Dis. 2017;70:642–646.

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2019/05/13

原発性副甲状腺機能亢進症マウスモデルの頭蓋骨において、DMP1低下はFGF23発現を促進させる

論文タイトル
Attenuated Dentin Matrix Protein 1 Enhances Fibroblast Growth Factor 23 in Calvaria in a Primary Hyperparathyroidism Model
論文タイトル(訳)
原発性副甲状腺機能亢進症マウスモデルの頭蓋骨において、DMP1低下はFGF23発現を促進させる
DOI
10.1210/en.2019-00017
ジャーナル名
Endocrinology
巻号
Vol.160 No.5 (1348–1358)
著者名(敬称略)
永田 友貴 他
所属
大阪市立大学大学院 医学研究科 代謝内分泌病態内科学

抄訳

原発性副甲状腺機能亢進症では副甲状腺ホルモン(PTH)によって骨組織で発現する線維芽細胞増殖因子23 (FGF23)の分泌は増加する。また、骨で発現するDentin matrix protein 1 (DMP1)はFGF23発現を抑制し、PTHで発現低下するが、原発性副甲状腺機能亢進症の病態における役割は不明であった。今回の検討で、原発性副甲状腺機能亢進症モデルマウスおよび骨芽細胞の培養系において、PTHによるFGF23上昇およびDMP1低下を確認した。その機序として、PKA経路の活性化がFGF23は増加、DMP1は抑制することをin vitroで証明した。さらにsiRNAによるDmp1発現抑制は、PTHと相加的に転写因子CREBリン酸化およびFgf23発現を上昇させた。以上より、原発性副甲状腺機能亢進症の病態の一部として、過剰なPTHが骨組織に直接作用するだけでなく、Dmp1発現抑制を介することでFgf23発現増加が促進されることが示唆された。

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2019/05/13

2型糖尿病におけるレム睡眠中の無呼吸低呼吸指数と糖尿病網膜症との関連

論文タイトル
Apnea Hypopnea Index During Rapid Eye Movement Sleep With Diabetic Retinopathy in Patients With Type 2 Diabetes
論文タイトル(訳)
2型糖尿病におけるレム睡眠中の無呼吸低呼吸指数と糖尿病網膜症との関連
DOI
10.1210/jc.2018-00946
ジャーナル名
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism
巻号
Vol.104 No.6 (2075–2082)
著者名(敬称略)
西村 明洋 他
所属
虎の門病院内分泌代謝科(糖尿病・代謝部門)

抄訳

睡眠時無呼吸症候群(OSA)は糖尿病網膜症(DR)を含む糖尿病慢性合併症のリスク因子となる可能性が示唆されている. 一方, 従来OSAの重症度を評価する指標としては無呼吸低呼吸指数(AHI)が用いられてきたが, ノンレム睡眠中のAHI(NREM-AHI)よりもレム睡眠中のAHI(REM-AHI)のほうが高血圧症の発症やHbA1cと強く関連することが近年報告され, REM-AHIがOSAの新たな指標として注目されている. しかしREM-AHIとDRとの関連はこれまで報告されていない. そこで我々は当院通院中の2型糖尿病症例で終夜ポリソムノグラフィを施行した症例を対象としてREM-AHIとDRとの関連を横断的に検討した. 複数のDRリスク因子で補正した多変量解析の結果, REM-AHIはDRと独立した関連を有する一方でNREM-AHIはDRと関連しないことが示された. この解析で補正したリスク因子の中には(既報でREM-AHIとの関連が示されている)高血圧症やHbA1cも含まれていることから, REM-AHIは高血圧や高血糖を介さずともDRのリスク因子となる可能性が今回初めて明らかとなった. 我々の検討では糖尿病性腎臓病(DKD)とREM/NREM-AHIについても同様の関連を認めており(現在投稿準備中), REM-AHIが糖尿病慢性合併症の新たなリスク因子となる可能性がある.

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2019/04/17

福島第一原子力発電所事故後の安定ヨウ素剤配布地域における小児の内服実態調査

論文タイトル
Stable Iodine Distribution Among Children After the 2011 Fukushima Nuclear Disaster in Japan: An Observational Study
論文タイトル(訳)
福島第一原子力発電所事故後の安定ヨウ素剤配布地域における小児の内服実態調査
DOI
10.1210/jc.2018-02136
ジャーナル名
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism
巻号
Vol.104 No.5 (1658–1666)
著者名(敬称略)
西川 佳孝 他
所属
ひらた中央病院

抄訳

安定ヨウ素剤の内服は、原子力災害後の小児甲状腺癌の重要な予防策だが、その内服実態については十分に知られていない。本研究では、福島第一原子力事故後の小児の安定ヨウ素剤の内服率を算出し、内服に関連した要因を検討した。2017年8月〜11月にひらた中央病院で実施された甲状腺検診を受診した福島県三春町の小児を対象とした。居住地区をグループレベルとしたマルチレベルロジスティック回帰分析を行った。質問紙の回答に基づき、非内服の理由を分析した。
94.9%の世帯に配布されたが、0〜9歳児の内服の割合は63.5%だった。0〜2歳児の内服は、3歳以上と比して少なく(オッズ比(OR) 0.21; 95%信頼区間(CI)、0.11〜0.36)、保護者が内服している場合は、子供も内服している傾向があった(OR、61.0、95%CI、37.9〜102.9)。居住地区レベルよりも個人レベルの要因の影響の方が大きかった(variance partition coefficient: 0.021)。非内服の理由は、選択式回答では、安全性への懸念が最多だった(46.7%)。その他の理由についての自由記載欄のテーマ分析を行い、安定ヨウ素剤配布、薬剤情報提供、内服指示の課題が明らかになった。今後の原子力災害に備えて、安定ヨウ素剤について、事前に保護者と子供の両方に十分な情報提供を行うことが重要である。

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2019/04/16

グルココルチコイド過剰がポジティブフィードバックを介して発症の誘因となったACTH依存性周期性クッシング症候群

論文タイトル
ACTH-Dependent Cyclic Cushing Syndrome Triggered by Glucocorticoid Excess Through a Positive-Feedback Mechanism
論文タイトル(訳)
グルココルチコイド過剰がポジティブフィードバックを介して発症の誘因となったACTH依存性周期性クッシング症候群
DOI
10.1210/jc.2018-02268
ジャーナル名
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism
巻号
Vol.104 No.5 (1788–1791)
著者名(敬称略)
関 康史 他
所属
東京女子医科大学 高血圧・内分泌内科

抄訳

背景:周期性クッシング症候群は、周期的にコルチゾール過剰が起こる稀な病態である。ACTH依存性周期性クッシング症候群の寛解に、グルココルチコイドのポジティブフィードバックの抑制が関与すると考えられてきた。しかし、その高コルチゾール血症の発症の誘因は明らかではない。我々は、外因性のグルココルチコイドがポジティブフィードバックを介してACTH依存性周期性クッシング症候群を発症させたと考えられる一例を報告する。
症例:75歳女性。ACTH、コルチゾールの高値を4年間で6回周期性に繰り返し示し、周期性クッシング症候群と診断された。高コルチゾール血症の時期には、低用量および高用量デキサメサゾンでACTHやコルチゾールは抑制されなかった。高コルチゾール血症の時期に、メチラポン連日投与はACTHとコルチゾールをともに低下させた。6回目の寛解後、誤ってヒドロコルチゾン25 mgを連日内服したところ、4週間後にACTH依存性の高コルチゾール血症が発症した。デキサメサゾン1 mgの内服では、2週間かけてACTHおよびコルチゾールが徐々に上昇し、高コルチゾール血症が発症した。デキサメサゾンとメチラポンの併用では、ACTHとコルチゾールは上昇せず、高コルチゾール血症の発症を防ぐことができた。
結論:外因性グルココルチコイドによりACTH依存性高コルチゾール血症を発症した周期性クッシング症候群を報告した。グルココルチコイドのポジティブフィードバックと内因性のコルチゾール合成が周期性クッシング症候群の周期性形成に重要な役割を担うと考えられた。

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2019/04/09

ゆらぎの定理を用いた非侵襲力測定法の神経細胞軸索輸送への応用

論文タイトル
Application of the fluctuation theorem for noninvasive force measurement in living neuronal axons
論文タイトル(訳)
ゆらぎの定理を用いた非侵襲力測定法の神経細胞軸索輸送への応用
DOI
10.1091/mbc.E18-01-0022
ジャーナル名
Molecular Biology of the Cell
巻号
Dec 1, 2018 Vol. 29 no.25
著者名(敬称略)
林 久美子 岡田康志 他
所属
東北大学 工学研究科 応用物理学専攻

抄訳

メカノバイオロジー分野では、生きている細胞内の小器官の物理的性質を調べるために、非侵襲な力計測法の開発が希求されてきた。細胞小器官は熱ノイズ等を受けてゆらいでいるが、本研究では物理学の最先端の理論(ゆらぎの定理)を利用して、小器官のゆらぐ運動の解析から小器官にはたらく力を求める新しい力測定法を提案した。物理学の知見から、分子のゆらぐ運動は単なるランダムなノイズではなく、分子のエネルギーと関連している。具体的には小器官として、神経細胞軸索で微小管に沿ってタンパク質分子モーターに輸送されるエンドソームに着目した。エンドソーム輸送の力はタンパク質分子モーターのATP(アデノシン三リン酸)加水分解によって生じる。エンドソームのゆらぐ運動は蛍光イメージングで容易に観察することができる。非侵襲力測定法を用いてエンドソームにはたらく力を計測した結果、1つのエンドソームは複数のタンパク質分子モーターに協同で輸送されていることが分かった。協同輸送により安定した軸索輸送が実現している。

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2019/03/13

条件付き敵対的生成ネットワークをピクセル毎に適用することによるDeep LearningによるSynthetic FLAIR像の画質向上

論文タイトル
Improving the Quality of Synthetic FLAIR Images with Deep Learning Using a Conditional Generative Adversarial Network for Pixel-by-Pixel Image Translation
論文タイトル(訳)
条件付き敵対的生成ネットワークをピクセル毎に適用することによるDeep LearningによるSynthetic FLAIR像の画質向上
DOI
10.3174/ajnr.A5927
ジャーナル名
American Journal of Neuroradiology  American Society of Neuroradiology
巻号
American Journal of Neuroradiology Vol. 40, No. 2 (224-230)
著者名(敬称略)
萩原 彰文
所属
順天堂大学 放射線診断学講座

抄訳

Synthetic MRIは任意のコントラスト強調像を1回のスキャンのデータに基づいて作成する事ができる技術であるが、 Synthetic FLAIRは従来法FLAIRよりも画質が低く、臨床導入を妨げる要因となっていた。本研究は、Deep LearningによりSynthetic FLAIRの画質を向上させることを目的として行った。40人の多発性硬化症患者を従来法FLAIRとSynthetic MRIによってスキャンし、30人の訓練データと10人のテストデータに分けた。従来法FLAIRを教師データとして、Synthetic MRIの元画像からDeep Learningを用いてFLAIR画像を作成した(DL-FLAIR)。従来法FLAIRを真の画像として計算したエラーはDL-FLAIRにおいてSyntheitc FLAIRよりも減少していた。DL-FLAIRにおける病変の描出能は従来法FLAIRと同程度であった。また、DL-FLAIRにおいてSynthetic FLAIRに特有のアーチファクトであるgranular artifactとswelling artifactはDL-FLAIRにおいて減少した。Deep Learningを用いて、Synthetic FLAIRの画質を向上させることに成功したと考えられる。

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2019/03/04

脂肪肝に対するUltrasound-guided Attenuation Parameterを用いた減衰係数測定の有用性-MRI-PDFFとの比較-

論文タイトル
Utility of Attenuation Coefficient Measurement Using an Ultrasound-Guided Attenuation Parameter for Evaluation of Hepatic Steatosis: Comparison With MRI-Determined Proton Density Fat Fraction
論文タイトル(訳)
脂肪肝に対するUltrasound-guided Attenuation Parameterを用いた減衰係数測定の有用性-MRI-PDFFとの比較-
DOI
10.2214/AJR.18.20123
ジャーナル名
American Journal of Roentgenology American Roentgen Ray Society
巻号
AJR February 2019, Volume 212, No 2
著者名(敬称略)
多田俊史 他
所属
大垣市民病院 消化器内科 医長

抄訳

【背景】
 超音波Bモード法を参照しながら脂肪肝を定量評価できるUltrasound-guided Attenuation Parameter (UGAP)を用いた減衰係数 (AC: attenuation coefficient)測定の経験をし,MRI- proton density fat fraction (PDFF)と比較したので報告する.
【方法】
 対象はACが測定され,かつMRIによるPDFFが測定された非B非Cの患者126例である.超音波装置はGE社LOGEQ S8とE9,MRI装置はGE社 Discovery MR750Wをそれぞれ使用した.なおPDFFのカットオフは既報にしたがい,脂肪化grade ≧1,≧2,3をそれぞれ5.2%,11.3%,17.1%とした.
【結果】
 (1) PDFFとACの相関係数は0.746 (p<0.001)と強い相関が認められた.(2)PDFFから推定された各脂肪化gradeのROC解析による診断能 (AUROC)は,grade≧1の場合0.922, grade≧2の場合0.874,grade 3の場合0.892で,いずれも比較的高い診断能であった.(3) 脂肪化grade≦1のみの症例ではPDFFとACの相関係数は0.559 (p<0.001)と中等度の相関が認められた.(4) BMI:25 kg/m2以上の症例においてはPDFFとACの相関係数は0.773 (p<0.001)と強い相関が認められ,AUROCは,grade≧1の場合0.884, grade≧2の場合0.863,grade 3の場合0.889であった. 【結論】  UGAPを用いたAC値は脂肪肝に対して高い診断能を有する.

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2019/02/27

プローブ-オン-キャリア型DNAチップを用いた1塩基認識

論文タイトル
Single nucleotide recognition using a probes-on-carrier DNA chip
論文タイトル(訳)
プローブ-オン-キャリア型DNAチップを用いた1塩基認識
DOI
10.2144/btn-2018-0088
ジャーナル名
BioTechniques Future Science Group
巻号
BioTechniques, Vol. 66, No. 2 (2019) 73–78
著者名(敬称略)
Saifullah、塚原 俊文 他
所属
北陸先端科学技術大学院大学 マテリアルサイエンス系 塚原研究室

抄訳

個々の患者のSNP分析は、最良の薬物反応を達成し、最適な治療を確実にするために不可欠となっている。 本研究では、SNPの検出のための費用対効果の高いプローブ-オン-キャリア型DNAチップを開発した。 微細粉末多孔質ガラスを固相担体としてプローブを合成し、そのまま固定化することで安価で自由設計のDNAチップ作成を可能にした。 特異性を検証するために4つの細胞株を使用してプローブハイブリダイゼーションを行った。 このチップはTP53遺伝子の1塩基変異であるrs121912651、rs11540652と野生型TP53を区別して検出することが可能であった。 相補鎖間の完全な塩基対合に基づいて、ハイブリダイズした完全マッチスポットで強い蛍光強度が観察されたが、 ミスマッチスポットでは有意に低い蛍光(p<0.05)が観察された。 これらの結果は、プローブ-オン-キャリア型DNAチップがSNP遺伝子型決定に適していることを示している。

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2019/02/25

MiR-33a はSPG4関連遺伝性痙性対麻痺の治療標的となる

論文タイトル
MiR-33a is a therapeutic target in SPG4-related hereditary spastic paraplegia human neurons
論文タイトル(訳)
MiR-33a はSPG4関連遺伝性痙性対麻痺の治療標的となる
DOI
10.1042/CS20180980
ジャーナル名
Clinical Science Portland Press
巻号
Vol.133 No.4 (583-595)
著者名(敬称略)
中関 典子, 尾野 亘 他
所属
京都大学大学院医学研究科循環器内科学

抄訳

これまでの研究から、microRNA (miR)-33a/bはコレステロール代謝に重要であることが明らかにされてきた。我々はヒトにおけるmiR-33a/bの新たな標的遺伝子を明らかにする目的で、これらのノックアウトヒトiPS細胞を作成した。遺伝子発現プロファイルと3’UTR解析の結果、SPASTINという微小管切断活性を示す蛋白をコードするSPAST遺伝子が新たな標的と確認された。このSPASTは遺伝性痙性対麻痺(Hereditary Spastic Paraplegia; HSP)の原因遺伝子として知られており(SPG4と分類)、この遺伝子異常でSPASTの発現が減ると疾患が発症する。SPG4疾患患者より得られたiPS細胞において、miR-33aをノックダウンするとSPASTの発現が増え、神経突起の長さが長くなるという表現型の改善が認められた。本研究により、miR-33aがSPG4の治療標的になることが疾患特異的iPS細胞を利用して初めて証明された。

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2019/02/20

梨状窩瘻孔の診断のための初回バリウム嚥下造影の至適施行時期

論文タイトル
Optimal Timing of the First Barium Swallow Examination for Diagnosis of Pyriform Sinus Fistula
論文タイトル(訳)
梨状窩瘻孔の診断のための初回バリウム嚥下造影の至適施行時期
DOI
10.2214/AJR.18.19841
ジャーナル名
American Journal of Roentgenology American Roentgen Ray Society
巻号
AJR November 2018, Volume 211, Number 5
著者名(敬称略)
細川 崇洋 山田 祥岳 他
所属
埼玉県立小児医療センター 放射線科

抄訳

梨状窩瘻孔は、小児の繰り返す炎症性頸部腫脹、新生児の呼吸困難をきたす疾患であり、梨状窩瘻孔の診断で、バリウム嚥下造影検査で瘻孔を確認することが重要である。しかし、この検査を、症状発症後どれくらい経過してから行えばいいかの報告はない。この研究では、初回バリウム嚥下造影検査を、症状発症後、いつ行えば良いのかを検討した。23人の外科手術で証明された梨状窩瘻孔の小児患者を後方視的に検討した。初回バリウム検査の結果が、真陽性であった群(60.9%)と偽陰性であった群(39.1%)を比較すると、検査時期は真陽性群が症状発症から平均48.57日後、偽陰性群が平均26.33日後であり、有意に偽陰性群で検査施行時期が早かった。症状発症後、6週間以内に初回バリウム嚥下造影検査が行われた場合、半分以上の症例で偽陰性であった。この研究から、梨状窩瘻孔が疑われた患者では、症状発症後の早期の検査では偽陰性であることが多いことが分かった。小児への被ばくを考慮すると、症状発症後早期のバリウム嚥下造影検査はあまり推奨されない可能性がある。

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2019/02/19

脳室下帯に存在するフラクトンは神経幹細胞ニッチとして機能する斑点状基底膜である

論文タイトル
Ventricular-subventricular zone fractones are speckled basement membranes that function as a neural stem cell niche
論文タイトル(訳)
脳室下帯に存在するフラクトンは神経幹細胞ニッチとして機能する斑点状基底膜である
DOI
10.1091/mbc.E18-05-0286
ジャーナル名
Molecular Biology of the Cell American Society of Cell Biology
巻号
Vol. 30 no.1
著者名(敬称略)
佐藤祐哉、関口清俊 他
所属
大阪大学 蛋白質研究所

抄訳

基底膜は組織幹細胞の挙動を制御する幹細胞ニッチの一つである。成体の神経幹細胞は側脳室の脳室下帯に存在するが、基底膜がそのニッチとして機能しているかどうかはこれまで不明であった。本論文では、上衣細胞の細胞間および直下に存在する斑点状の基底膜(通称“フラクトン”)に着目し、これが従来考えられていたような血管基底膜の延伸構造ではなく、GFAP陽性の神経幹細胞が産生する幹細胞性維持のための足場(ニッチ)であることを見いだした。ラミニンα5鎖は斑点状基底膜の構成分子であるが、Gfap-Creマウスを用いて神経幹細胞/アストロサイト特異的にその発現をノックアウトすると、斑点状基底膜のラミニンα5鎖の発現は有意に減少した。また、同様にして基底膜ラミニンのインテグリン結合能を神経幹細胞/アストロサイト特異的に消失させると、斑点状基底膜の数や大きさが減少し、ニューロスフィア形成能が顕著に低下した。これらの結果は、斑点状基底膜が神経幹細胞/アストロサイトによって産生され、その形成にはラミニンとインテグリンの相互作用が関与することを実証するとともに、これが神経幹細胞のニッチとして機能している可能性を強く示唆している。

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2019/02/18

ビタミンB1のde novo合成が欠失しているピロリ菌のビタミンB1輸送系

論文タイトル
Thiamin transport in Helicobacter pylori lacking the de novo synthesis of thiamin
論文タイトル(訳)
ビタミンB1のde novo合成が欠失しているピロリ菌のビタミンB1輸送系
DOI
10.1099/mic.0.000765
ジャーナル名
Microbiology Microbiology Society
巻号
Microbiology Vol.165 No.2 (224-232)
著者名(敬称略)
野坂 和人 他
所属
武庫川女子大学 薬学部薬学科 生化学Ⅱ講座

抄訳

ピロリ菌Helicobacter pyloriは、人の胃粘膜に長期間持続感染するグラム陰性細菌であり、世界人口の約半数が保因者であると推定されている。ピロリ菌感染は萎縮性胃炎、消化性潰瘍及び胃癌などの誘発と関連しており、治療法としては三剤併用療法が挙げられるが、耐性菌の出現や再発が臨床上問題となっている。本論文において、ピロリ菌はde novoのチアミン(ビタミンB1)生合成酵素遺伝子が欠失しているために、外界からチアミン(>1 nM)を取り込まなければ生育できないことが示された。また、pnuT欠損株ではチアミン要求濃度が高くなる(>100 nM)ことが観察され、ピロリ菌には複数のチアミン輸送系が存在し、PnuTは高親和性チアミン輸送タンパク質であることが示唆された。PnuTによるチアミン輸送は促進拡散であるが、取り組まれたチアミンはチアミンピロホスホキナーゼにより効率よくピロリン酸化されるので、チアミンの輸送は単方向になると思われる。チアミンの胃粘膜内濃度が血液中濃度(2〜30 nM)と同程度であるとすると、PnuTは新規抗ピロリ菌薬の分子標的として期待される。

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