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国内研究者論文詳細

日本人論文紹介:詳細

2019/09/13

オミックス解析で明らかになった有毒アオコ原因ラン藻ミクロキスティス・エルギノーサ感染性広域および狭域宿主ウイルスの共在

論文タイトル
Cooccurrence of Broad- and Narrow-Host-Range Viruses Infecting the Bloom-Forming Toxic Cyanobacterium Microcystis aeruginosa
論文タイトル(訳)
オミックス解析で明らかになった有毒アオコ原因ラン藻ミクロキスティス・エルギノーサ感染性広域および狭域宿主ウイルスの共在
DOI
10.1128/AEM.01170-19
ジャーナル名
Applied and Environmental Microbiology
巻号
Applied and Environmental Microbiology Volume 85, Issue 18
著者名(敬称略)
森本 大地, 吉田 天士 他
所属
京都大学大学院農学研究科 応用生物科学専攻海洋分子微生物学分野

抄訳

ラン藻ミクロキスティスは肝臓毒生産能を有し、世界中の湖沼で異常増殖してアオコを形成するため、重要な生物種と捉えられています。本種は極めて多くのウイルス耐性遺伝子を有し、多種多様なウイルスと環境中で相互作用すると示唆されてきましたが、本種感染ウイルス分離例は当研究室保有のMa-LMM01に限られていました。本研究では京都府広沢池にてウイルスメタゲノム解析をおこない、24時間に渡ってミクロキスティスとウイルスの包括的転写解析をおこないました。その結果、大きく3つのグループから成る15の新規本種感染ウイルスゲノムを明らかにしました。また環境中にはMa-LMM01のような非常に限られたミクロキスティス株にのみ感染可能な狭域宿主ウイルスと、様々なミクロキスティス株に感染可能な広域宿主ウイルスが共存することを見出しました。包括的転写解析より、ミクロキスティスは特に後者による感染に応じてウイルス耐性遺伝子を発現させることが示唆されました。

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2019/09/06

劇症1型糖尿病における膵の炎症性病変の特徴

論文タイトル
Unique Inflammatory Changes in Exocrine and Endocrine Pancreas in Enterovirus-Induced Fulminant Type 1 Diabetes
論文タイトル(訳)
劇症1型糖尿病における膵の炎症性病変の特徴
DOI
10.1210/jc.2018-02672
ジャーナル名
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism
巻号
Vol.104 No.10 (4282–4294)
著者名(敬称略)
滝田 美夏子, 小林 哲郎 他
所属
冲中記念成人病研究所

抄訳

劇症1型糖尿病(FT1DM)では発症時、膵外分泌酵素の上昇に加え、膵臓の腫大を伴う症例も報告されており、急激なβ細胞破壊と外分泌の炎症とともにおこっている可能性を裏付ける。本研究ではFT1DM膵臓の免疫組織学的および病理学的変化を検討することを目標とし、3例のFT1DM膵と17例の非糖尿病患者膵を比較検討した。CD45、CD3、CD8、CD4、CD20、CD11c、CD68陽性細胞、VP1(エンテロウイルスカプシド蛋白)、CXCL10、そのレセプターであるCXCR3を染色し、膵島および周辺の外分泌腺組織(Exo)の各免疫細胞数を計測した。膵島およびExoの各免疫細胞数はFT1DM膵ではコントロール群と比較し有意に増加し、特にCD8、CD11c、CD68陽性細胞数が高値であった。VP1はFT1DM膵では膵島、外分泌腺、膵管上皮細胞、十二指腸粘膜で陽性であった。また、FT1DM膵では膵島および外分泌腺にCXCL10陽性細胞を認め、周囲にCXCR3陽性T細胞を認めた。以上のことからFT1DM膵では膵島、外分泌腺、膵管、十二指腸粘膜のウイルス感染に伴って樹状細胞やマクロファージが浸潤することが明らかとなった。またサイトカインやケモカインを介して活性化した自己反応性T細胞によって外分泌腺の炎症が惹起され、β細胞死に陥る可能性が示唆された。

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2019/09/04

両側性アルドステロン症において非機能性と診断される副腎腫瘍からも微量のコルチゾール自律分泌があり予後に影響する

論文タイトル
Latent Autonomous Cortisol Secretion From Apparently Nonfunctioning Adrenal Tumor in Nonlateralized Hyperaldosteronism
論文タイトル(訳)
両側性アルドステロン症において非機能性と診断される副腎腫瘍からも微量のコルチゾール自律分泌があり予後に影響する
DOI
10.1210/jc.2018-02790
ジャーナル名
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism
巻号
Vol.104 No.10 (4382–4389)
著者名(敬称略)
大野 洋一, 曽根 正勝 他
所属
京都大学医学研究科 糖尿病・内分泌・栄養内科

抄訳

本研究では原発性アルドステロン症(PA)において非機能性と診断された副腎腫瘍がPA患者に与える影響を検討した。日本全国29施設共同で作成したPA患者データベース(JPAS)の内、副腎静脈サンプリングで両側性と診断された527例を、診断基準上非機能性の副腎腫瘍がある群とない群に分け、両群の患者背景とホルモン値の比較を行った。すると、腫瘍あり群はなし群と比べ、糖尿病及び蛋白尿の有病率が有意に高く、年齢、性別といった患者背景を調整した上でも、1mgデキサメサゾン抑制試験(DST)後コルチゾール値が有意に高かった。さらに腫瘍サイズは1mgDST後コルチゾール値と有意な正相関を認めた。これまで1mgDSTでコルチゾール値1.8 µg/dL以下に抑制される副腎腫瘍は非機能性と考えられていたが、本研究によって、コルチゾール自律産生能がないと診断された副腎腫瘍であっても、微量なコルチゾール産生能が存在し、糖尿病や蛋白尿を引き起こす可能性が示唆された。

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2019/09/04

原発性アルドステロン症患者における腎障害は、血漿アルドステロン濃度と密接に相関している

論文タイトル
Renal impairment is closely associated with plasma aldosterone concentration in patients with primary aldosteronism
論文タイトル(訳)
原発性アルドステロン症患者における腎障害は、血漿アルドステロン濃度と密接に相関している
DOI
10.1530/EJE-19-0047
ジャーナル名
European Journal of Endocrinology
巻号
Vol.181 No.3 (339–350)
著者名(敬称略)
川島 彰透, 曽根 正勝 他
所属
京都大学医学研究科 糖尿病・内分泌・栄養内科

抄訳

【目的】原発性アルドステロン症 (PA)はしばしば腎障害を合併する.PAにおける腎障害の有病率と,そのオッズ比を増加させる因子を解析した.
【デザイン】日本におけるPA患者の多施設共同研究 (JPAS)のデータベース,および本態性高血圧症 (EHT)患者のデータを後ろ向きに解析した.
【方法】PA患者のchronic kidney disease (CKD),蛋白尿,推算糸球体濾過量(eGFR)低下の有病率を調査し、年齢,性別、収縮期血圧,罹病期間をマッチさせたEHT患者と比較した.また,これら腎障害のオッズ比を増加させる因子を多変量ロジスティック回帰分析で解析した.
【結果】2366人のPA患者のうち,腎障害の有病率は,CKD 19.7%,蛋白尿 10.3%, eGFR低下 11.6%であった.背景因子をマッチさせたEHT患者との比較では,PA患者で蛋白尿が有意に多かったが (16.8% vs 4.4%, p = 0.002),CKD,eGFR低下は有意差を認めなかった (28.9% vs 19.1%, p = 0.079, 17.2% vs 15.0%, p = 0.628).多変量ロジスティック回帰分析では,既存のリスク因子で調整しても,血漿アルドステロン濃度 (PAC)はCKD,蛋白尿,eGFR低下のオッズ比を増加させた. 【結論】PA患者における腎障害はPACと密接に相関していた.同じJPASのデータベースを用いた研究で,我々は,PA患者における脳卒中・虚血性心疾患などの心血管合併症はPAC自体との直線的な相関を認めないと報告しており,PA患者における腎障害は大血管合併症とは異なる機序が想定された.

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2019/09/03

ストレスによって引き起こされる母乳タンパク質の低下には、乳腺由来のノルアドレナリンによる作用が関与している。

論文タイトル
Stress-Induced Suppression of Milk Protein Is Involved in a Noradrenergic Mechanism in the Mammary Gland
論文タイトル(訳)
ストレスによって引き起こされる母乳タンパク質の低下には、乳腺由来のノルアドレナリンによる作用が関与している。
DOI
10.1210/en.2019-00300
ジャーナル名
Endocrinology
巻号
Endocrinology Vol.160 No.9 (2074–2084)
著者名(敬称略)
千葉 健史 他
所属
北海道科学大学薬学部薬学科 臨床薬学部門 臨床薬剤学分野

抄訳

授乳期のストレスは、母乳タンパク質等の母乳成分や、母乳産生量の低下を引き起こすことが知られている。本研究では、始めに、ヒト母乳中にノルアドレナリン(NA)が存在していること、乳腺上皮がNAを合成し、母乳中へ分泌していることを明らかにした。また、マウスモデルを用いた実験により、ストレス負荷マウスでは、乳腺上皮におけるNA合成律速酵素のチロシン水酸化酵素の発現や母乳中NA濃度が上昇すること、その一方で母乳タンパク質の一つであるβ-カゼイン濃度は減少することが明らかとなった。さらに、マウス乳腺上皮の頂端膜側(母乳側)にはアドレナリンβ2受容体が発現していることが明らかとなった。一方、NAで処理した正常ヒト乳腺上皮細胞HMECにおけるβ-カゼインの発現量はNA濃度依存的に減少し、β2刺激薬サルブタモールで処理した非腫瘍性ヒト乳腺上皮細胞MCF-12Aにおけるβ-カゼインの発現量もサルブタモール濃度依存的に減少した。これらの結果は、ストレスによる母乳タンパク質の減少には、上昇した母乳中NAによるアドレナリンβ2受容体を介した作用が関与していることを示唆している。

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2019/08/29

マウスにおけるオートファジー基礎活性欠損は、甲状腺濾胞上皮細胞死を誘導する。

論文タイトル
Basal Autophagy Deficiency Causes Thyroid Follicular Epithelial Cell Death in Mice
論文タイトル(訳)
マウスにおけるオートファジー基礎活性欠損は、甲状腺濾胞上皮細胞死を誘導する。
DOI
10.1210/en.2019-00312
ジャーナル名
Endocrinology
巻号
Vol.160 No.9 (2085–2092)
著者名(敬称略)
蔵重 智美, 永山 雄二 他
所属
長崎大学原爆後障害医療研究所 細胞機能解析部門 分子医学研究分野

抄訳

この論文は、細胞内蛋白分解機構の1つであるオートファジーの甲状腺特異的ノックアウトマウスを作出して、甲状腺機能・形態の変化を検討したものである。Atg5flox/floxマウス(ATG5はオートファジーに必要な蛋白の1つ)とTPO-Creマウス(甲状腺のみでCreを発現)を交配して作出したノックアウトマウスでは、ATG5の発現が消失し、LC3の点状集積消失とp62の集積が認められたことから、オートファジー機能欠損が確認された。1年間の観察期間を通じてノックアウトマウスの甲状腺機能は正常であったが、4か月齢マウスで、活性酸素の増加によると考えられるDNA損傷マーカー(8-OHdGと53BP1集積)の増加とユビキチン化蛋白の集積が認められ、8~12か月齢マウスでは、アポトーシス細胞死による濾胞上皮細胞の減少と、それによる濾胞上皮細胞の菲薄化、さらに異常形態濾胞(瓢箪型)の出現が観察された。これらの結果から、オートファジー基礎活性が甲状腺濾胞上皮細胞の生存・ホメオスターシス維持であることが明らかとなった。

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2019/08/27

プラディミシンのマンノース認識機構と菌細胞表面イメージングへの応用

論文タイトル
Molecular Basis of Mannose Recognition by Pradimicins and their Application to Microbial Cell Surface Imaging
論文タイトル(訳)
プラディミシンのマンノース認識機構と菌細胞表面イメージングへの応用
DOI
10.1016/j.chembiol.2019.03.013
ジャーナル名
Cell Chemical Biology
巻号
Cell Chemical Biology Vol.26 Iss.7 (July 18,2019)
著者名(敬称略)
中川 優 他
所属
名古屋大学 大学院生命農学研究科 応用生命科学専攻 生物活性分子研究室

抄訳

プラディミシン A (PRM-A) は,マンノース (Man) と特異的に結合するユニークな天然物である。現時点において,水中でManを特異的に認識する低分子化合物は他に存在しないことから,PRM-Aは極めて貴重な糖鎖研究用ツールとなる可能性を秘めている。しかしながら,PRM-Aの発見以来約30年間そのMan認識機構は不明であり,実用的なツール分子の開発に成功した例はなかった。  本研究では,X線結晶構造解析と固体NMR解析を用いてPRM-AによるMan認識メカニズムの概要を初めて明らかにするとともに,その知見に基づいてMan認識能を保持したままアジド基を導入したPRM-A誘導体 (PRM-Azide) を開発した。さらに,PRM-Azideを用いて真菌Candida rugosaの細胞壁マンナン (Manを構成糖とする多糖) を蛍光染色できることを実証した。本結果は,PRM-AzideがManを有する糖鎖を蛍光染色するツール分子として利用できる可能性を示唆するものである。

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2019/08/21

オールドキノロン系薬は小児患者から分離されるキノロン低感受性インフルエンザ菌の識別に有用である

論文タイトル
Earlier generation quinolones can be useful in identifying Haemophilus influenzae strains with low susceptibility to quinolone isolated from paediatric patients
論文タイトル(訳)
オールドキノロン系薬は小児患者から分離されるキノロン低感受性インフルエンザ菌の識別に有用である
DOI
10.1099/jmm.0.001027
ジャーナル名
Journal of Medical Microbiology
巻号
Journal of Medical Microbiology Vol 68 Issue 8 (2019) 1227-1232
著者名(敬称略)
田中 愛海、輪島 丈明 他
所属
東京薬科大学 薬学部 病原微生物学教室

抄訳

 近年、日本では小児領域において、キノロン系薬に対し感受性が低下したインフルエンザ菌(キノロン低感受性株)が出現している。キノロン低感受性株は、小児用量における最高血中濃度のキノロン系薬曝露後でも生存可能であるにも関わらず、通常の感受性試験では「感受性」と判定される。そこで、本研究では、ディスク拡散法を用いた低感受性株の簡易的かつ低価格な識別法の確立を目的とした。ディスク拡散法には、33株の臨床分離株と感受性基準株を使用した。薬剤は、レボフロキサシン、ノルフロキサシン、ナリジクス酸、ピぺミド酸を用いた。それぞれの阻止円とキノロン耐性決定領域(QRDR)のアミノ酸置換の相関を評価したところ、すべての株がレボフロキサシンとノルフロキサシンに対し、明瞭な阻止円を形成した。一方で、低感受性株では、ナリジクス酸に対する阻止円が認められなかった。さらに、QRDRに2つのアミノ酸置換を有する低感受性株では、ピぺミド酸に対する阻止円も認められなかった。これは、オールドキノロン系薬に対する阻止円の有無で、遺伝子解析なしでも、高感度にキノロン低感受性株を検出可能であることを示している。本検出法は、キノロン系薬の不適切な使用を減らすことに貢献できると考えられる。

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2019/07/29

6日連続の朝食欠食が若年健常者のエネルギー代謝と血糖値の変動に及ぼす影響

論文タイトル
Effect of skipping breakfast for 6 days on energy metabolism and diurnal rhythm of blood glucose in young healthy Japanese males
論文タイトル(訳)
6日連続の朝食欠食が若年健常者のエネルギー代謝と血糖値の変動に及ぼす影響
DOI
10.1093/ajcn/nqy346
ジャーナル名
American Journal of Clinical Nutrition
巻号
The American Journal of Clinical Nutrition Vol.110 Issue.1
著者名(敬称略)
緒形 ひとみ 他
所属
広島大学 大学院総合科学研究科 行動科学講座

抄訳

大規模疫学調査等によって、朝食欠食は肥満や生活習慣病と関連していることが報告され、また一過性の食事介入実験でも平均血糖値に影響を及ぼすことが明らかとなっている。本研究では、健康な男性10名を対象に1日の摂取エネルギー量は等しい6日間の食事介入(1日3食摂取または1日2食(朝食欠食))実験を行い、朝食欠食が生体に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。食事介入期間中は持続血糖測定を行い、介入6日目にはエネルギー代謝を測定した。その結果、就寝前の血糖値は朝食欠食試行で有意に高値を示し、食事介入1日目のみ昼食後の血糖値が大きく上昇した。また、食事介入6日目は座位安静を保ってエネルギー代謝測定を行ったため、平均血糖値が高いという結果となった。24時間のエネルギー消費量や酸化基質に違いは認められなかった。安静と朝食欠食が血糖値の上昇をもたらすことが示され、血糖コントロールにおける身体活動と朝食摂取の必要性が示唆された。

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2019/07/22

臀筋跛行:体動時に必発する左臀部の限局性疼痛の原因は?

論文タイトル
Buttock claudication: what induces pain only in the left buttock on every movement?
論文タイトル(訳)
臀筋跛行:体動時に必発する左臀部の限局性疼痛の原因は?
DOI
10.1136/bcr-2019-231271
ジャーナル名
BMJ Case Reports
巻号
BMJ Case Reports Volume 12 Issue 6
著者名(敬称略)
多胡 雅毅
所属
佐賀大学医学部附属病院総合診療部

抄訳

完全房室ブロック、永久ペースメーカー植え込み術後、閉塞性動脈硬化症、脳梗塞の既往がある89歳男性が、3日前から左臀部痛を自覚した。安静時には痛みは消失するが、起立や歩行動作などの体動時には必ず出現し、歩行困難となった。外傷や皮疹、臀部の圧痛や神経根症状はなかった。血液検査でDダイマーが1.24µg/mLと上昇しており、造影CTでは左上殿動脈に血栓閉塞を認め、上殿動脈閉塞による臀筋跛行と診断した。ペースメーカーの波形記録で発作性心房細動を認め、直接経口抗凝固薬を開始した。 臀筋跛行は内腸骨動脈、またはその分枝の虚血で生じる。確定診断は画像検査で行うが、体動時痛以外に症状がないため診断が難しい。内腸骨動脈領域の虚血による臀筋跛行の概念を知っておくことが、迅速で正確な診断につながる可能性がある。本症例のように体動時に必発し、安静時に改善する限局性の臀部痛を診た場合、臀筋跛行を想起する必要がある。

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2019/07/19

未破裂脳動脈瘤塞栓術後の長期成績とフォローアップ期間についての検討

論文タイトル
Long-Term Results and Follow-Up Examinations after Endovascular Embolization for Unruptured Cerebral Aneurysms
論文タイトル(訳)
未破裂脳動脈瘤塞栓術後の長期成績とフォローアップ期間についての検討
DOI
10.3174/ajnr.A6101
ジャーナル名
American Journal of Neuroradiology
巻号
American Journal of Neuroradiology Vol. 40, No. 7 (1191-1196)
著者名(敬称略)
村上知義 中村 元 他
所属
大阪大学医学部 脳神経外科

抄訳

【目的】脳動脈瘤に対するコイル塞栓術後の至適フォローアップ期間は明確ではない。今回我々は未破裂脳動脈瘤コイル塞栓術後の長期成績を調査し、再開通および再治療までの期間を検証した。
【方法】2006年4月から2011年3月に脳動脈瘤塞栓術を施行した148個の未破裂動脈瘤のうち、5年以上の経過観察が可能であった116個を対象とした。当院ではTOF-MRAを用いて塞栓術後の画像フォローを行っており、術翌日、3-6か月後、1年後、以後1年1回施行されている。
【結果】平均観察期間は7年で、術後2年以内に再開通した動脈瘤は19個(16.3%)あり、うち8個(6.8%)に対して再治療が行われた。術後2年以内に再開通しなかった瘤は、全例その後のフォロー期間中に再開通することはなかった。また、瘤の最大径が大きいものほど再開通率が高いことが明らかになった(P=0.019)。
【結論】未破裂脳動脈瘤の塞栓術後2年以内に再開通を認めなかった場合、術後7年間は再開通を認めなかった。本結果は、動脈瘤塞栓術後フォローアップ画像検査の頻度および期間を考慮するにあたり、参考となるかもしれない。

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2019/07/11

チオレドキシン様タンパク質2/2-シスペルオキシレドキシンのレドックスカスケードは葉緑体グルコース6リン酸脱水素酵素を酸化して活性化する

論文タイトル
Thioredoxin-like2/2-Cys peroxiredoxin redox cascade acts as oxidative activator of glucose-6-phosphate dehydrogenase in chloroplasts
論文タイトル(訳)
チオレドキシン様タンパク質2/2-シスペルオキシレドキシンのレドックスカスケードは葉緑体グルコース6リン酸脱水素酵素を酸化して活性化する
DOI
10.1042/BCJ20190242
ジャーナル名
Biochemical Journal
巻号
Vol. 476 No. 12 (1781-1790)
著者名(敬称略)
吉田 啓亮, 久堀 徹 他
所属
東京工業大学 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所

抄訳

レドックス制御は、タンパク質分子を酸化または還元することによってその活性を調節する分子機構である。植物葉緑体では、この制御系が光環境の変化に呼応してダイナミックに働き、光合成をはじめとするさまざまな葉緑体機能のオン・オフを行っている。我々は、2018年にレドックス制御の最大の謎であった光合成系タンパク質を夜に酸化して不活性化する分子装置(チオレドキシン様蛋白質2/2-シスペルオキシレドキシン(TrxL2/2CP)経路)を同定した。本研究では、このTrxL2/2CP経路の重要性に関する理解をさらに深めるために、この経路によって制御される標的タンパク質を探索した。グルコース6リン酸脱水素酵素(G6PDH)は、夜間のエネルギー供給に重要な酸化的ペントースリン酸経路の最初の反応を触媒する酵素である。生化学的な解析により、G6PDHはTrxL2/2CP経路に依存して酸化され、この酸化に伴って酵素活性が上昇することが明らかになった。この結果は、TrxL2/2CP経路が光合成機能の抑制と酸化的ペントースリン酸経路の促進というふたつの役割を果たすことによって、葉緑体代謝モードを昼型から夜型に切り替えていることを示している。

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2019/07/11

シアノバクテリアF1-ATPaseのγサブユニットの持つβ-ヘアピン構造には酵素活性の制御機能がある

論文タイトル
The β-hairpin region of the cyanobacterial F1-ATPase γ-subunit plays a regulatory role in the enzyme activity
論文タイトル(訳)
シアノバクテリアF1-ATPaseのγサブユニットの持つβ-ヘアピン構造には酵素活性の制御機能がある
DOI
10.1042/BCJ20190242
ジャーナル名
Biochemical Journal
巻号
Vol. 476 No. 12 (1771-1780)
著者名(敬称略)
秋山 健太郎, 久堀 徹 他
所属
東京工業大学 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所

抄訳

葉緑体とシアノバクテリアのATP合成酵素(FoF1)は,光合成電子伝達系と協働して働き,生命のエネルギー源であるATPを合成している.興味深いことに,光合成生物由来のFoF1のγサブユニットには,ミトコンドリアやバクテリアの酵素には見られない35-40アミノ酸で構成される特有の挿入配列がある.最近の構造解析により,この挿入配列が柔軟なβ-ヘアピン構造をとり,複合体分子内では酵素活性に影響する場所に位置していることが明らかになった.そこで,本研究ではこのβ-ヘアピン構造の可動性に注目してその周辺にCys残基を導入し,それによって形成されるジスルフィド結合を用いてβ-ヘアピン構造の動きを固定できる変異体を作製した.そして,ATP加水分解活性と活性制御がどのように変化するかを調べた.その結果,β-ヘアピン構造の下部を固定すると,ATP加水活性とADP阻害のpH依存性が著しく低下した.また,β-ヘアピン構造の上部はεサブユニットの結合によって構造が変化し,ε阻害を促進することが分かった.これらの結果は,光合成生物だけが持っている挿入配列がATP加水分解を制御し,生体内ATP濃度の維持管理に必要不可欠であることを示唆している.

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2019/07/04

マウスES細胞視床下部分化誘導系後期に残存するRax陽性細胞はTanycytesと類似する

論文タイトル
Tanycyte-Like Cells Derived From Mouse Embryonic Stem Culture Show Hypothalamic Neural Stem/Progenitor Cell Functions
論文タイトル(訳)
マウスES細胞視床下部分化誘導系後期に残存するRax陽性細胞はTanycytesと類似する
DOI
10.1210/en.2019-00105
ジャーナル名
Endocrinology
巻号
Vol.160 No.7 (1701–1718)
著者名(敬称略)
加納 麻弓子, 須賀 英隆 他
所属
名古屋大学大学院医学研究科 糖尿病・内分泌内科学

抄訳

Tanycytesは成体視床下部における神経幹/前駆細胞と考えられている。胎児発生初期に視床下部前駆細胞に広範に認められる転写因子Raxが、それ以後もTanycytesには発現し続けることが特徴である。本研究ではこのRax発現に着目することで、マウスES細胞からのTanycytes様細胞を見出すことに成功した。マウスES細胞視床下部分化誘導系後期におけるRax陽性細胞をsortingし、その性質を評価した。SortしたRax陽性細胞は、Sox2、Vimentin、Nestinなどの神経幹/前駆細胞マーカーを発現し、さらに成熟したTanycytesに特徴的なDio2やGpr50の発現を認めた。Rax陽性細胞はFGF2依存性に自己増殖を行い、継代可能なNeurosphereを形成すること、さらに視床下部ニューロンやグリアなど三系統の神経系細胞への分化能を有することから、視床下部神経幹/前駆細胞としての性質を持つことが示唆された。

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2019/06/24

日本人高齢者における乳製品摂取と機能障害のリスクについて:久山町研究

論文タイトル
Dairy consumption and risk of functional disability in an elderly Japanese population: the Hisayama Study
論文タイトル(訳)
日本人高齢者における乳製品摂取と機能障害のリスクについて:久山町研究
DOI
10.1093/ajcn/nqz040
ジャーナル名
American Journal of Clinical Nutrition
巻号
American Journal of Clinical Nutrition Vol.109 No.6 (1664–1671)
著者名(敬称略)
吉田 大悟 他
所属
九州大学大学院医学研究院 衛生・公衆衛生学分野

抄訳

【目的】地域高齢者における乳製品摂取が将来の生活機能およびADL障害の発生に及ぼす影響を検討した。
【方法】生活機能とADLが自立した地域高齢者859人を7年間追跡した。生活機能は老研式活動能力指標、ADLはBarthel Indexで評価し、それぞれ1項目以上できない場合を障害ありとした。乳製品摂取量は、半定量式食物摂取頻度調査票を用いて算出し、残差法でエネルギー調整後4分位に分けて検討した。ポアソン回帰モデルを用いて相対危険を算出した。
【結果】生活機能障害の発生リスクは、乳製品摂取量の増加に伴い有意に低下した(傾向性P値=0.001)。乳製品摂取量の第1分位に対する第4分位の生活機能障害発生の相対危険(多変量調整後)は、0.74(95%信頼区間0.61-0.90)と有意に低かった。さらに乳製品摂取はADL障害の発生リスクとも有意な負の関連を認めた(傾向性P値=0.04)。一方で、これらの負の関連はたんぱく質摂取量をモデルに入れて調整すると減弱した。
【結論】地域高齢者において、乳製品の高摂取はおそらくたんぱく質摂取の増加を介して、将来の生活機能障害やADL障害の発生リスクの低下と関連する事が示唆された。

 

 

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2019/05/31

脳血管構造に応じた脳動脈瘤破裂率の違いは、脳動脈瘤の血行力学的環境の相違に依存している

論文タイトル
Differences in Cerebral Aneurysm Rupture Rate According to Arterial Anatomies Depend on the Hemodynamic Environment
論文タイトル(訳)
脳血管構造に応じた脳動脈瘤破裂率の違いは、脳動脈瘤の血行力学的環境の相違に依存している
DOI
10.3174/ajnr.A6030
ジャーナル名
American Journal of Neuroradiology American Society of Neuroradiology
巻号
American Journal of Neuroradiology Vol. 40, No. 5 (834-839)
著者名(敬称略)
福田 俊一 他
所属
国立病院機構 京都医療センター 脳神経外科

抄訳

目的:脳動脈瘤はその大きさと発生部位に応じて破裂率が有意に異なるが、そのメカニズムは不明である。そこで、計算流体力学 (CFD) 解析を用いてこれらの脳血管構造関連破裂リスクが脳動脈瘤の血行力学的環境に依存しているかどうかを検討した。
方法:国立病院機構共同臨床研究CFD ABO Studyの461登録症例から84例(Acom瘤42例 MCA瘤42例)の3DCTAと頚動脈エコー結果を用いて拍動流によるCFD解析を行い、血行力学指標と既知の破裂予測因子(年齢 性別 高血圧 喫煙歴 部位 大きさ)との関連を多変量解析で検討した。
結果:瘤の大きさは、壁ずり応力の大きさや時間的な乱れを表す指標と有意な相関を認めた。部位の違いでは、ずり応力の大きさと有意な相関を認め、乱れの指標に関しては多方向性の乱れの指標NtransWSSのみと有意な相関を認めた。他の既知の破裂リスクでは有意な相関は見られなかった。すべての指標の中でNtransWSSが部位と大きさ双方に対し最も高いオッズ比を示した。新たに提案した血管構造指標AAIは、ずり応力の大きさ・乱れに対し強い相関を示した。
結論:脳動脈瘤の大きさや部位による破裂率の違いは、瘤の血行力学的環境の相違を反映している可能性が示唆された。部位と大きさでは破裂の血行力学的要因が異なっていると考えられる。

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2019/05/27

Sex-lethalによる精子二型の形成

論文タイトル
Dimorphic sperm formation by Sex-lethal
論文タイトル(訳)
Sex-lethalによる精子二型の形成
DOI
10.1073/pnas.1820101116
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
PNAS May 21, 2019 116 (21) 10412-10417
著者名(敬称略)
酒井 弘貴 新美 輝幸 他
所属
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 基礎生物学研究所 進化発生研究部門

抄訳

性メカニズムは多様性に富み、昆虫では性決定の最上流遺伝子は近縁種であっても異なることが知られている。このことから、ある種では性決定最上流遺伝子として働く遺伝子が、他の種では全く異なる機能を持つ可能性が考えられる。本研究では、ショウジョウバエの性決定最上流遺伝子であるSex-lethalSxl)遺伝子に着目した。鱗翅目昆虫(ガとチョウの仲間)のモデル生物であるカイコにおけるSxl遺伝子の機能を類推するため、Sxl遺伝子の発現パターンを調べたところ、精巣で高発現していることが判明した。カイコの精巣では受精する精子である有核精子と、自身は受精しないが有核精子の受精に必要な無核精子の二種類の精子が形成される。ゲノム編集技術を用いて作出したSxl変異体の解析により、Sxl遺伝子は正常な無核精子の形成に必須であること、及び無核精子は雌の交尾嚢から受精嚢への有核精子の移動に必須であることが明らかとなった。

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2019/05/23

脳アミロイド血管症におけるタキシフォリンの多面的神経保護作用

論文タイトル
Pleiotropic neuroprotective effects of taxifolin in cerebral amyloid angiopathy
論文タイトル(訳)
脳アミロイド血管症におけるタキシフォリンの多面的神経保護作用
DOI
10.1073/pnas.1901659116
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
PNAS May 14, 2019 116 (20) 10031-10038
著者名(敬称略)
井上 隆之 田中 将志 他
所属
健康科学大学健康科学部理学療法学科

抄訳

脳アミロイド血管症(CAA)は、アミロイドβ(Aβ)が脳血管に集積し、脳血管の機能障害や脳出血をもたらすことで、認知症発症・進展と密接に関わる疾患である。アルツハイマー病(AD)においても高頻度で認められ、CAAとADは相互に深く関連すると考えられる。よって、CAAの効果的予防法・治療戦略の開発は喫緊の課題である。
我々はこれまで、認知症発症・進展と関連するCAAのモデルマウスにて、シベリアカラマツ等の植物に含まれるフラボノイド・タキシフォリンの経口投与により、脳内血流量の改善、脳内Aβ量の減少(脳からの排出促進)とともに、認知機能低下が抑制されることを認めてきた(Acta Neuropathol Commun 2017)。そこで本研究では、タキシフォリンが有する作用のさらなる解明のため、タキシフォリンの経口投与は脳内の神経傷害因子に対しどのような作用を発揮するかについて詳細な検討を行った。その結果、血液脳関門のタキシフォリンに対する透過性は微量であるにもかかわらず、タキシフォリンを経口投与したマウスでは、海馬及び大脳皮質のいずれにおいても、脳内のAβ産生・分泌系に関わるApoE–ERK1/2–APP系が抑制されて、脳内Aβ産生自体が減少することを見出した。また、これまでゲノムワイド関連解析から認知症との関連が示唆され、脳ではミクログリア特異的に発現する細胞表面分子・TREM2について、TREM2発現亢進は脳内炎症増悪と関連すること、さらにタキシフォリン投与によりTREM2陽性細胞の脳内集積が抑制され、脳内炎症が抑制されることを認めた。また、タキシフォリンは、他の神経傷害因子であるグルタミン酸や活性酸素のレベルに対しても抑制効果を発揮した。これらの神経保護効果と一致して、脳内のアポトーシス指標はタキシフォリン経口投与マウスにて低値であった。
以上より、CAAモデルマウスに経口投与したタキシフォリンは、脳内にてAβ産生抑制を始めとする多面的な神経保護作用を発揮することで、認知機能低下の抑制に寄与すると考えられた。これらの知見は、CAAに対する新規予防・治療戦略の開発に貢献することが期待される。

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2019/05/20

ヘッジホッグ経路関連がんのゲノム診断、腫瘍微小環境及び標的治療

論文タイトル
Genomic testing, tumor microenvironment and targeted therapy of Hedgehog-related human cancers
論文タイトル(訳)
ヘッジホッグ経路関連がんのゲノム診断、腫瘍微小環境及び標的治療
DOI
10.1042/CS20180845
ジャーナル名
Clinical Science
巻号
Vol.130 No.8 (953-970)
著者名(敬称略)
加藤 勝
所属
国立がん研究センター オミックスネットワーク部門

抄訳

ヘッジホッグ(Hh)シグナルはSmoothened (SMO)-GLI及びSMO-RhoA経路等に伝達される。がん細胞内におけるHhシグナル活性化は、幹細胞の自己複製、腫瘍細胞の生存増殖、浸潤転移を促進する。がん微小環境おけるヘッジホッグシグナル活性化は、血管新生、線維化、免疫回避、がん疼痛等を惹起する。Hh経路に関連する遺伝子異常は、基底細胞がんや髄芽腫において高頻度に認められ、乳がん、大腸がん、胃がん、膵がんなどにおいても低頻度に認められる。基底細胞がん患者に対するHh経路阻害剤vismodegib或いはsonidegibの単独療法、並びに急性骨髄性白血病患者に対するHh経路阻害剤glasdegibの併用療法が、米国食品医薬品局 (FDA) により承認されている。Hh経路下流の遺伝子異常やWNT-β-catenin経路の活性化により、Hh経路阻害剤に対する治療抵抗性が誘導される。Hh経路阻害剤による腫瘍免疫賦活作用に着目して、vismodegibと免疫チェックポイント阻害剤pembrolizumabとの併用療法の治験が進行中である。

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2019/05/14

分子疫学解析法を用いた山形県における肺炎マイコプラズマの学校内および家族内感染の検討

論文タイトル
Polyclonal spread of multiple genotypes of Mycoplasma pneumoniae in semi-closed settings in Yamagata, Japan
論文タイトル(訳)
分子疫学解析法を用いた山形県における肺炎マイコプラズマの学校内および家族内感染の検討
DOI
10.1099/jmm.0.000969
ジャーナル名
Journal of Medical Microbiology  Microbiology Society
巻号
Journal of Medical Microbiology Vol. 68 Issue. 5 (785-790)
著者名(敬称略)
鈴木 裕 他
所属
山形県立中央病院 検査部

抄訳

肺炎マイコプラズマ(Mp)は主に小児および若年者の気道感染症の起因菌として重要である。我々は2011年~2013年に山形県で複数の遺伝子型のMpが同時に流行したことを以前報告した1)。本研究では、学校や家庭などの準閉鎖的環境におけるMp伝播の特徴を明らかにするために、同期間に山形県で確認されたMpの学校内および家族内感染事例に属する患者の情報とMp分離株の遺伝子型を併せて解析した。その結果、16の家族内感染事例のうち87.5%(14/16)では単一遺伝子型のMpが分離されたのに対して、単一遺伝子型のMpによる学校内感染事例は半数以下(5/11, 45.5%)に留まった。最大の学校内感染事例について患者の学年とクラスの情報を加えて分析したところ、各遺伝子型のMpは複数の学年から分離され、同一クラスの患者同士でも半数で遺伝子型が異なっていた。本研究では、家族間でMp遺伝子型の一致率が高かったことから、Mp伝播の場として家庭の重要性が示された。また、学校内では、Mpの伝播はクラス以外の場でも起きている可能性が示された。1) Suzuki Y, et al., Jpn J Infect Dis. 2017;70:642–646.

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