抄訳
血清Mac-2結合蛋白質糖鎖異性体(M2BPGi)濃度は、慢性肝障害や線維化の指標となることが知られている。本研究では、糖尿病を発症していない40~79歳の地域日本人住民2,143人を7年間追跡した成績を用いて、血清M2BPGi濃度と2型糖尿病発症との関連を検討した。追跡開始時の血清M2BPGi濃度の5分位値を用いて対象者を5群に分類した: Q1 ≦0.37、Q2 0.38-0.49、Q3 0.50-0.62、Q4 0.62-0.80、Q5 ≧0.81 (単位 cutoff index)。 解析にはCox比例ハザードモデルを用いた。追跡期間中、219名が2型糖尿病を発症した。2型糖尿病の年齢・性別調整後の累積発症率は、血清M2BPGi値の上昇とともに有意に増加した(p for trend < 0.01)。さらに、潜在的な交絡因子で調整しても有意な関係を認めた(p for trend = 0.04)。一方、血清高感度C反応性タンパク質やHOMA-IR(Homeostasis Model Assessment of Insulin Resistance)を追加で調整したところ有意な関連は消失した。
このように、わが国の地域住民において、血清M2BPGi濃度と糖尿病リスクは正の関連を有することが明らかとなった。炎症とインスリン抵抗性は、血清M2BPGi濃度が高い人の糖尿病リスク上昇に関与することが示唆された。