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国内研究者論文紹介

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ユサコでは日本人の論文が掲載された海外学術雑誌に注目して、随時ご紹介しております。

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日本人論文紹介:一覧

2021/07/15

Rnd2は脳の白質に多く発現し、脳白質のミエリン構造の維持に関わる

論文タイトル
Rnd2 differentially regulates oligodendrocyte myelination at different
developmental periods
論文タイトル(訳)
Rnd2は脳の白質に多く発現し、脳白質のミエリン構造の維持に関わる
DOI
10.1091/mbc.E20-05-0332
ジャーナル名
Molecular Biology of the Cell
巻号
Molecular Biology of the Cell Volume 32, Issue 8(769-787)
著者名(敬称略)
宮本 幸、山内 淳司 他
所属
国立成育医療研究センター研究所 薬剤治療研究部

抄訳

 脳の白質は、ミエリンに富む構造である。ミエリンを構成する細胞はグリア細胞と呼ばれ、脂質を多く含む絶縁体として働き、神経細胞を保護すると同時に神経伝達信号を効率よく伝える役割をもつ。ミエリンは、比較的再生能力が高いものの、ミエリンが変性している時期が長期に及ぶと、その再生能力が低下すると言われているため、ミエリン形成のメカニズムの根本を解明することが、ミエリン変性疾患等の治療薬の開発につながると考えられる。
 当該研究では、Rnd2が脳内のグリア細胞に高発現していることを見いだし、ミエリン化において重要な分子の一つであるRho kinaseを介して、ミエリン化の過程を厳密に制御していることを明らかにした。本研究結果から、ミエリン変性を呈する様々な疾患において、Rnd2の活性を調整することでミエリン組織を再生できる可能性が生まれ、治療薬の開発につながることが期待される。

 

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2021/07/13

成熟精巣内での胎児セルトリ細胞の分化

論文タイトル
Differentiation of fetal sertoli cells in the adult testis
論文タイトル(訳)
成熟精巣内での胎児セルトリ細胞の分化
DOI
10.1530/REP-21-0106
ジャーナル名
Reproduction
巻号
Reproduction Volume 162 Issue 2 (141–147)
著者名(敬称略)
横西 哲広 他
所属
川崎医科大学 解剖学教室

抄訳

未熟なセルトリ細胞は、性決定後から思春期までの間、増殖しながら成熟する。成熟したセルトリ細胞は、一生涯にわたり精子形成を支持する。胎児精巣の組織培養実験や、成熟マウスの腎皮膜下への移植実験では、胎児セルトリ細胞は精細管を形成し、精子形成を支持することが知られている。しかし、成熟した精巣内での非同期性・同所性移植における挙動については調べられていない。我々は、性成熟したマウスのセルトリ細胞を薬剤により除去し、E12.5、 E14.5とE16.5の胎児精巣細胞を移植した。移植2ヶ月後に、ドナー胎児由来のセルトリ細胞、ライディッヒ細胞や筋様細胞が、宿主精巣に定着しているのを認めた。定着した胎児セルトリ細胞は、宿主の精子形成を支持したことから、非同期性・同所性移植においても胎児セルトリ細胞は成熟することがわかった。近年、iPS細胞を用いたセルトリ細胞などの精巣体細胞への分化誘導法が報告されている。本研究は、これらの細胞の機能アッセイにも応用ができると期待される。

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2021/07/06

ペグフィルグラスチムによる大血管炎を来した1例

論文タイトル
Pegfilgrastim-induced large vessel vasculitis
論文タイトル(訳)
ペグフィルグラスチムによる大血管炎を来した1例
DOI
10.1136/bcr-2021-243757
ジャーナル名
BMJ Case Reports
巻号
BMJ Case Reports Vol.14 Issue 6 (2021)
著者名(敬称略)
齋藤 寛晃 須田 烈史
所属
金沢市立病院 消化器内科

抄訳

症例は71歳の女性。肝内胆管癌に対する化学療法中に, 発熱性好中球減少症の予防目的にペグフィルグラスチム3.6mgを投与された。しかし,投与7日後より全身倦怠感, 胸背部痛, 発熱を認めた。 血液検査では,白血球やCRPの高値を呈した。造影CTでは, 大動脈炎を示唆する大動脈弓部の壁肥厚を認めた。 膠原病関連の自己抗体は陰性であった。鑑別疾患として巨細胞性動脈炎と高安動脈炎が挙げられたが, 診断基準に合致しなかった。 臨床経過よりペグフィルグラスチムによる大血管炎と診断し, ステロイドによる治療を開始した。ステロイド投与によって速やかな症状消失,血液検査での炎症反応の低下,造影CTでの壁肥厚の改善を認めた。また, 治療開始前の血液検査でIL-6は高値を呈していたが, 治療後に正常範囲内へ低下した。ペグフィルグラスチムによる大動脈炎は稀だが, 大動脈解離などの重篤な副作用が報告されているため, その認識は重要である。 診断のための画像検査とステロイドによる適切な治療が必要である。

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2021/07/06

滑走するフラボバクテリアの単層集合運動が生み出す動的回転を伴う巨大渦

論文タイトル
Large-Scale Vortices with Dynamic Rotation Emerged from Monolayer Collective Motion of Gliding Flavobacteria
論文タイトル(訳)
滑走するフラボバクテリアの単層集合運動が生み出す動的回転を伴う巨大渦
DOI
10.1128/JB.00073-21
ジャーナル名
Journal of Bacteriology
巻号
Journal of Bacteriology Vol. 203, No. 14
著者名(敬称略)
中根 大介 他
所属
電気通信大学 基盤理工学専攻

抄訳

自己駆動型粒子の集団運動は、物理学や生物学において魅力的なテーマである。洗練された巨視的な行動は、何千、何百万ものバクテリア細胞の集団が、べん毛の回転や走化性反応によって自らを推進することで現れる。今回、私たちは非べん毛性の棒状土壌細菌Flavobacterium johnsoniaeの連続的な相転移に伴う一連の集団運動を発見した。この集団運動は、滑動運動として知られる表面細胞の動きによって引き起こされていた。低栄養条件では細菌群は寒天上で自発的な渦パターンを示し、それらは左回りに旋回しながら巨大化した。単独の細胞ではランダムな方向に動くが、細胞同士がつながっているものは、飢餓状態では左回りに偏った軌道を示すことが明らかになった。この運動モードは細菌が栄養分を効率的に見つけ出すための戦略なのかもしれない。

本論文に関連するビデオが下記でご覧になれます。

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2021/07/02

術前画像で観察された、生検経路に生じた乳癌播種

論文タイトル
Breast cancer seeding in the biopsy route observed on preoperative imaging
論文タイトル(訳)
術前画像で観察された、生検経路に生じた乳癌播種
DOI
10.1136/bcr-2021-242741
ジャーナル名
BMJ Case Reports
巻号
BMJ Case Reports Vol.14 Issue 6 (2021)
著者名(敬称略)
藤本 章博
所属
埼玉医科大学国際医療センター 乳腺腫瘍科

抄訳

乳房針生検では稀に腫瘍の播種が問題となる。術前の画像診断で生検経路への播種が観察された症例を報告する。71歳女性。左乳房の18 mm腫瘤に対し吸引式乳房組織生検(VAB)を施行し、浸潤性乳癌と診断した。生検後33日目に、穿刺部位に発赤を伴う皮膚結節が出現した。超音波では、生検経路に血流信号増加を伴う紐状の低エコー領域を認め、PET-CT、造影MRIでも同様な病変が認められ、生検経路への播種が示唆された。術後病理所見では浸潤長径は84 mmに及び、生検経路にリンパ管腫瘍塞栓を主成分とする癌病変を認め、原因は腫瘍の播種と考えられた。通常コア針生検(CNB)よりも太い針を使用するVABは、組織採取量が豊富で診断能が高いと考えられるが、吸引圧が生じることや、針路内での腫瘍の拡散により播種を生じる可能性があり注意を要する。生検前の画像で播種リスクを予測することは困難であり、本症例のような合併症を避けるにはCNBの方が安全かもしれない。逆にVABの場合は、生検経路全体の切除が可能な部位から穿刺することが重要である。

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2021/06/29

患者由来がんオルガノイドを用いたin vitroハイスールプットアッセイ

論文タイトル
High-Throughput In Vitro Assay using Patient-Derived Tumor Organoids
論文タイトル(訳)
患者由来がんオルガノイドを用いたin vitroハイスールプットアッセイ
DOI
10.3791/62668
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (172), e62668
著者名(敬称略)
比嘉 亜里砂1、高木 基樹2 他
所属
1. 富士フイルム和光バイオソリューションズ株式会社
2. 福島県立医科大学 医療-産業トランスレーショナルリサーチセンター

抄訳

患者由来の腫瘍オルガノイド(PDO)は、従来の細胞培養モデルよりも疾患の再現性に優れた前臨床がんモデルとして期待されています。PDOは、腫瘍組織の構造や機能を正確に再現し、さまざまなヒト腫瘍から樹立することに成功しています。しかし、PDOはサイズが不均一で、培養中に大きなクラスターを形成するため、抗がん剤を評価する際に96ウェルや384ウェルプレートを用いたハイスループットアッセイシステム(HTS)や細胞解析には適していません。また、これらの培養やアッセイでは、マトリゲルなどの細胞外マトリックスを用いて腫瘍組織の足場を作る必要があります。そのため、PDOはスループットが低く、コストも高いため、適切なアッセイシステムを開発することが困難です。この問題を解決するために、我々が樹立したF-PDOを用いて、抗がん剤や免疫療法の効果を評価可能で、よりシンプルで精度の高いHTSを確立しました。

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2021/06/25

胸部単純X線写真で病変と誤解されうる先天性肋骨癒合

論文タイトル
Congenital costal fusion can be misinterpreted as lesions on chest X-ray
論文タイトル(訳)
胸部単純X線写真で病変と誤解されうる先天性肋骨癒合
DOI
10.1136/bcr-2021-242834
ジャーナル名
BMJ Case Reports
巻号
BMJ Case Reports Vol.14 Issue 6 (2021)
著者名(敬称略)
多胡 雅毅
所属
佐賀大学医学部附属病院総合診療部

抄訳

67歳の男性が、1週間続く発熱、咽頭痛、食欲不振のために当院を受診した。喫煙者で、他に既往歴はなかった。発熱はなく、身体所見に異常を認めなかった。胸部単純X線写真で、右第5肋間に腫瘤影を認め、骨原性腫瘍や転移性病変を疑った。胸部CTで右第5・6肋骨の癒合を認め、先天性肋骨癒合と診断した。 肋骨癒合は0.3%の頻度で見られ、その多くは無症状で、しばしば本症例のようにX線写真で偶発的に指摘される。肋骨奇形は胸腰部の側弯を伴うことが多く、肋骨癒合は第1肋骨と第2肋骨に多く発生し、胸郭出口症候群の原因となりうる。すぐにCT検査を行うのではなく、まず身体診察とX線写真で肋間と胸郭の左右差を慎重に確認する必要がある。また側弯の有無、胸郭出口症候群の症状も診断の参考となる。本症例では、X線写真で右の第5肋間が左に比べて狭小化していた。内科医は決して稀ではない肋骨癒合に関する正しい知識を持つべきである。

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2021/06/22

神経ネットワークの動的構造を捉える高速・高解像度・広視野 2光子顕微鏡

論文タイトル
Fast, cell-resolution, contiguous-wide two-photon imaging to reveal functional network architectures across multi-modal cortical areas
論文タイトル(訳)
神経ネットワークの動的構造を捉える高速・高解像度・広視野 2光子顕微鏡
DOI
10.1016/j.neuron.2021.03.032
ジャーナル名
Neuron
巻号
Neuron VOLUME 109, ISSUE 11, P1810-1824.E9, JUNE 02, 2021
著者名(敬称略)
太田 桂輔 村山 正宜
所属
理化学研究所 脳神経科学研究センター 触知覚生理学研究チーム

抄訳

脳はさまざまな領域の集合体であり、領域間の相互作用により脳機能が発現すると考えられている。しかしながら、多領域から神経細胞の活動を計測できる顕微鏡は存在せず、広域ネットワークの機能的構造は不明であった。今回、我々は低倍率かつ高開口数を満たす大型対物レンズ、大口径・高感度・高出力光検出器を開発することで、広視野・高解像度・高速撮像・高感度・無収差を同時に満たす2光子顕微鏡「FASHIO-2PM(fast-scanning high optical invariant two-photonmicroscopy)」を開発した。マウス大脳皮質2層に存在する1万6000個以上の神経細胞の活動を、9mm2(従来の36倍)の単一視野面から7.5Hzの撮像速度で高感度に測定することに成功した。単一神経細胞の活動に基づくネットワークを解析したところ、脳はスケールフリーネットワークではなくスモールワールドネットワークであることが明らかになった。同時に長距離の機能的結合も含め100以上の細胞と協調的に活動する非常にレアなハブ細胞(存在確率は1%未満)の存在も明らかにした。

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2021/06/21

体細胞核移植に伴うエピジェネティクス異常

論文タイトル
25th ANNIVERSARY OF CLONING BY SOMATIC-CELL NUCLEAR TRANSFER: Epigenetic abnormalities associated with somatic cell nuclear transfer
論文タイトル(訳)
体細胞核移植に伴うエピジェネティクス異常
DOI
10.1530/REP-21-0013
ジャーナル名
Reproduction
巻号
Reproduction Volume 162 Issue 1 (F45–F58)
著者名(敬称略)
小倉 淳郎 他
所属
理化学研究所バイオリソース研究センター遺伝工学基盤技術室

抄訳

体細胞核移植(Somatic Cell Nuclear Transfer, SCNT)は、1個の体細胞核からクローン胚やクローン個体を作り出す技術である。成体の体細胞核移植によって生まれた最初の哺乳動物、クローンヒツジDollyの報告(Nature 1997)からすでに25年が経過しようとしている。この間、SCNT関連の研究は飛躍的に進み、クローン動物の生産効率の向上に貢献するとともに、SCNTによるエピゲノム異常が次々と明らかになっている。これらの研究を通じて、ドナー体細胞のエピゲノム情報には卵子で再プログラムできるものとできないものがあることが明らかになってきた。現在では、ドナー体細胞ゲノムに含まれるゲノム刷込み情報(片親依存性遺伝子発現制御)は、典型ゲノム刷込み(DNAメチル化依存性)および非典型ゲノム刷込み(ヒストン修飾H3K27me3依存性)とも、SCNTでは再プログラム化されないことがわかっている。したがって、SCNT由来のクローン胚には、ドナー細胞の刷込み記憶パターンがそのまま引き継がれている。前者の典型ゲノム刷込みは、ドナー細胞でも基本的に正常なパターンが保たれており、クローン胚でも問題になることは少ない。一方、後者の非典型ゲノム刷り込みは、ドナー細胞で失われているために、クローン胚において正常な片アレル(父方)発現が破綻し、両アレル発現となり、主な発現器官である胎盤での過剰発現と表現型異常をきたす。また、刷込み記憶以外の体細胞エピゲノム記憶のうち、ヒストンアセチル化やH3K9me3などは不十分な再プログラム化が知られており、これがクローン胚の発生不全につながっている。SCNTから得られるエピゲノム情報は、体細胞クローン技術の改善への基盤となるとともに、エピゲノム異常の発生への影響を理解する上でも重要な知見をもたらす。

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2021/06/18

ウィスキーもろみ由来および発酵乳由来 Lactobacillus helveticus 菌株の生息域特異的な環境適応

論文タイトル
Niche-specific adaptation of Lactobacillus helveticus strains isolated from malt whisky and dairy fermentations
論文タイトル(訳)
ウィスキーもろみ由来および発酵乳由来Lactobacillus helveticus 菌株の生息域特異的な環境適応
DOI
10.1099/mgen.0.000560
ジャーナル名
Microbial Genomics
巻号
Microbial Genomics Volume 7 Issue 4
著者名(敬称略)
城戸 良彦 遠藤 明仁 他
所属
東京農業大学 生物産業学部 食香粧化学科 食の化学研究室

抄訳

L. helveticus はチーズを含む様々な発酵乳製品の製造に利用される代表的な発酵乳乳酸菌であり、その保健効果を利用したプロバイオティクス乳製品も多数開発されている。一方で、本菌はウィスキー発酵中のもろみからも見いだされることが知られている。この2つの生息域は微生物が生息するにあたり、栄養面及び環境ストレス面で大きく異なる。そこで本研究ではこの2つの環境から分離されたL. helveticus 菌株の生理学的性状及びゲノム性状を比較解析した。その結果、ウィスキー由来株はアルコール耐性を有しているのに対し、発酵乳由来株には見られなかった。また、麦芽糖であるマルトースや植物由来糖であるセロビオース、スクロースなどの代謝能はウィスキー由来株だけに特異的にみられた一方で、乳由来の糖であるラクトースやその構成糖であるガラクトースの代謝は発酵乳由来株だけに特異的にみられた。この糖代謝能の違いは比較ゲノム解析データからも完全にフォローされ、L. helveticus は環境にゲノムレベルで適応することで表現性状を大きく変化させていることが明らかとなった。また、進化学的研究により、L. helveticus は本来穀物発酵物中に生息していたものが乳環境中に適応していったことが示唆された。

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