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国内研究者論文紹介

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ユサコでは日本人の論文が掲載された海外学術雑誌に注目して、随時ご紹介しております。

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2024/12/13

全自動システムによるリコンビナントタンパク質の迅速糖鎖品質評価

論文タイトル
Rapid Glyco-Qualitative Assessment of Recombinant Proteins Using a Fully Automated System
論文タイトル(訳)
全自動システムによるリコンビナントタンパク質の迅速糖鎖品質評価
DOI
10.3791/66571
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments (JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (208), e66571
著者名(敬称略)
布施谷 清香 久野 敦 他
所属
産業技術総合研究所 細胞分子工学研究部門 分子細胞マルチオミクス研究グループ
著者からのひと言
従来、糖鎖分析は多くの時間と手間を要し、基本的に手作業で行われていました。しかし、新しいシステムの導入により、全自動での分析が可能となり、糖鎖の構造や修飾を効率的に識別し、短時間でタンパク質の質的特徴を評価できるようになりました。このシステムは、組換えタンパク質の製造過程における品質管理の向上や、製造プロセスの最適化に大きく貢献することが期待されます。

抄訳

タンパク質のグリコシル化は、重要な翻訳後修飾であり、バイオ医薬品を含む組換えタンパク質の安定性、有効性、免疫原性に影響を与える。糖鎖構造は、生産細胞の種類、培養条件、精製方法によって異なる大きな不均一性を示すため、組換えタンパク質の糖鎖構造のモニタリングと評価は非常に重要である。加えて、産業界で適応させるためには、自動化されたハイスループットな手段が必要である。そこで、「bead array in a single tip (BIST)」技術のコンセプトを活用して世界初の全自動レクチンベースの糖鎖プロファイリングシステムを開発した。本システムでは、糖鎖を認識するレクチン固定化ビーズをそれぞれ1,000個単位で調製・保存することができ、様々な目的に合わせてチップを作製、カスタマイズ可能である。システムの汎用性を高めるため、N型糖鎖やO型糖鎖を認識する15種類のレクチンを選択し、内包したチップを「標準GlycoBISTチップ」と名付けた。本システムの信頼性は再現性試験や長期保存試験を通じて確認され、さらにサンプルのラベリングプロセスを最適化し、全体の処理時間を30分短縮した。また、データの視認性向上のために、レクチン結合シグナルは機器モニターにドットコードとして表示される。このユーザーフレンドリーで迅速な糖鎖分析装置は、糖質科学に馴染みのない研究者による分析を容易にし、実用的な有用性を広げることが期待される。

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2024/12/09

覚醒コモンマーモセットにおける同種他個体の鳴き声を聴いている間の頭皮上脳波計測

論文タイトル
Electroencephalography Measurements in Awake Marmosets Listening to Conspecific Vocalizations
論文タイトル(訳)
覚醒コモンマーモセットにおける同種他個体の鳴き声を聴いている間の頭皮上脳波計測
DOI
10.3791/66869
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments (JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (209), e66869
著者名(敬称略)
鴻池 菜保 中村 克樹 他
所属
京都大学ヒト行動進化研究センター 高次脳機能分野/認知神経機構学分科 京都大学白眉センター
著者からのひと言
サルの頭皮上から脳波を計測して、主に聴覚情報処理にかかわる神経メカニズムを明らかにする一連の研究を開発者の新潟大学脳研究所の伊藤浩介先生とともに実施してきました。今回は、実際の計測手法を動画形式で示すことにより、興味をもった方に実際に試していただけるように工夫しました。是非、ご覧ください!

抄訳

我々は南米原産の小型霊長類であるコモンマーモセットを対象として、覚醒状態で頭皮上に設置した電極から脳活動を非侵襲的に記録する手法を開発した。本手法は、非侵襲的であり動物に負担をかけず、麻酔することなく、覚醒状態の動物から長期的な脳活動の計測が可能であるという利点がある。この手法を用いて、音声処理脳内メカニズムを理解することを目的として、9頭のマーモセットから脳波を計測し、マーモセット特有の鳴き声を聴かせている間の事象関連電位と時間周波数マップを得た。その結果、脳活動の周波数特性とその変化が年齢によって変化することが明らかになった。本手法を用いれば、音声コミュニケーションが豊富なマーモセットのデータとヒトの頭皮上脳波データの直接比較が可能となり、言語や音声処理の進化的視点に立った研究に取り組むことが可能となる。動画では、動物のハンドリング、事前の馴致訓練、脳波計測実験の各プロトコールを紹介している。

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2024/12/04

深部帯水層から単離された新属新種バクテリアFidelibacter multiformis、及び、候補門Marine Group A(または、SAR406、Marinimicrobia)改め新門Fidelibacterotaの提案

論文タイトル
Fidelibacter multiformis gen. nov., sp. nov., isolated from a deep subsurface aquifer and proposal of Fidelibacterota phyl. nov., formerly called Marine Group A, SAR406 or Candidatus Marinimicrobia
論文タイトル(訳)
深部帯水層から単離された新属新種バクテリアFidelibacter multiformis、及び、候補門Marine Group A(または、SAR406、Marinimicrobia)改め新門Fidelibacterotaの提案
DOI
10.1099/ijsem.0.006558
ジャーナル名
International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology
巻号
Volume 74 Issue 10
著者名(敬称略)
片山 泰樹
所属
産業技術総合研究所 地質調査総合センター 地圏資源環境研究部門 地圏微生物研究グループ
著者からのひと言
原核生物の大多数は人工的な培地上で培養できず、性質も未解明である。我々は4年の歳月をかけて門レベルで新しいバクテリアIA91株を分離培養した。培養試験により、自身の増殖に不可欠な細胞壁の合成を他の細菌から放出される細胞壁断片に委ねるという教科書レベルの常識を覆す特徴と、微生物同士の新奇な相互作用が明らかとなった。未培養微生物の魅力と培養手法の重要性を端的に示している。

抄訳

グラム陰性、絶対嫌気性、化学従属栄養細菌IA91株が、日本の深部帯水層の堆積物と地層水から分離培養された。IA91株は、増殖する他の細菌から放出される細胞壁断片ムロペプチドを、自身の細胞壁ペプチドグリカン、エネルギー源、炭素源として利用し、細胞壁の形成、増殖、更には細胞の形状に至るまで他の細菌に依存した。 IA91株細胞は桿状であるが、他の細菌に由来するムロペプチドがない場合あるいは枯渇すると球状に変化し、やがて死滅した。IA91株は非常に限られた基質、酵母エキス、ムロペプチド、D-乳酸のみを利用し増殖した。酵母エキス分解の主な最終生成物は酢酸、水素、二酸化炭素であった。水素を除去するメタン生成古細菌との共培養はIA91株の増殖を強く促進した。16S rRNA遺伝子、及び、保存タンパク質配列に基づく分子系統解析の結果、IA91株は培養株の存在しない候補門Marine Group A(またはSAR406、Ca. Marinimicrobia)に属することが示された。表現型および系統学的特徴に基づき、IA91株を新属新種Fidelibacter multiformis、新科Fidelibacteraceae、新目Fidelibacterales、新綱Fidelibacteria、新門Fidelibacterotaとして提案した。

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2024/11/08

生体内CRISPRスクリーンがトキソプラズマ原虫の病原性に必須の遺伝子を同定した

論文タイトル
CRISPR screens identify genes essential for in vivo virulence among proteins of hyperLOPIT-unassigned subcellular localization in Toxoplasma
論文タイトル(訳)
生体内CRISPRスクリーンがトキソプラズマ原虫の病原性に必須の遺伝子を同定した
DOI
10.1128/mbio.01728-24
ジャーナル名
mBio
巻号
Volume 15, Issue 9 (2024)
著者名(敬称略)
橘 優汰 山本 雅裕 他
所属
大阪大学微生物病研究所 感染病態分野
著者からのひと言
トキソプラズマ症やマラリアといったアピコンプレクサに属する寄生虫による感染症は依然として人類の脅威です。トキソプラズマ原虫は実験がしやすいことからアピコンプレクサのモデル生物と言われています。今後もCRISPRを基盤技術としたトキソプラズマの研究を通じてアピコンプレクサ全体に保存された知見を得ていき、最終的には病原体のサイエンスを通じて、感染症領域において臨床に還元できる研究成果を発信したいと思っています。

抄訳

寄生虫の一種であるトキソプラズマ原虫は免疫不全患者や新生児に重篤な感染症を引き起こす。トキソプラズマ原虫がコードする8000個以上のタンパク質の多くは細胞内の局在および機能が不明であり、病原性への関与も未知数な状態であった。我々が樹立した生体内CRISPRスクリーニング技術を駆使することで、約600個のトキソプラズマ遺伝子の必須性をマウスの生体内で網羅的にスクリーニングした。その結果、トキソプラズマ原虫の病原性に必須の因子を多数同定することに成功した。その中でも医学的に最も重要な寄生虫の集団である『アピコンプレクサ』に保存されているRimM遺伝子に着目した。RimMは寄生虫の葉緑体類似器官であるアピコプラストに局在し、寄生虫の生存に必須であることを証明した。本研究成果によりアピコンプレクサが引き起こすトキソプラズマ症やマラリアの病態解明、ひいては新規治療薬やワクチン開発につながることが期待される。

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2024/10/31

動物界の排卵:全動物の排卵に共通の細胞メカニズムを求めて(総説)

論文タイトル
An attempt to search for the common cellular mechanism of ovulation across all metazoans: A review
論文タイトル(訳)
動物界の排卵:全動物の排卵に共通の細胞メカニズムを求めて(総説)
DOI
10.1530/REP-24-0184
ジャーナル名
Reproduction
巻号
Accepted Manuscripts REP-24-0184
著者名(敬称略)
高橋 孝行 荻原 克益
所属
北海道大学 大学院理学研究院 生殖発生生物学研究室 荻原グループ
著者からのひと言
これまで様々な動物種を用いて行われてきた排卵研究の知識を整理し,動物界の排卵に共通するメカニズムの追究を試みた初めての総説論文で,reviewersによりherculean effortにより仕上げられたencyclopedic reviewと評された。著者らが永年に亘り従事してきた排卵研究の経験を基に,5年の歳月をかけて2024年までの排卵研究の情報をまとめている。現在,排卵研究に携わっている研究者,これから排卵研究に参入しようとしている若い研究者,さらには動物の卵巣においてどのように卵が成長し排卵に至るのかについて知りたい大学院生のみならず生殖生物学とは無縁の研究者など,排卵研究の現状の把握や基本知識の習得に本総説論文は役立つものと信じる。

抄訳

排卵は卵巣から受精可能な卵が放出される現象を指し,有性生殖により子孫を残すすべての動物にとって不可欠な過程である。10動物門に属する11種の動物の排卵について文献調査から,多くの動物では濾胞破裂という様式によって排卵すること,さらに濾胞破裂による排卵する動物の濾胞においては,2つの重要な細胞学的イベントが共通して誘起されることを提唱した。1)卵を取り囲む濾胞細胞の細胞結合システム(Cell-Cell junctions およびcell-ECM junctions)に変化が起こり,それによって濾胞細胞内の細胞骨格タンパク質の再配置が誘導され,同時に,2)濾胞細胞間を埋めるECMタンパク質の分解が起こることによって,濾胞細胞が変形および移動性を獲得し,濾胞壁の一部に卵を濾胞外に送り出すための通路が形成される。哺乳類や魚類などの脊椎動物の濾胞においては多量のECMタンパク質が濾胞壁に蓄積しており,これらの動物の排卵ではECMタンパク質の分解がより一層重要性を増す。本論文では,動物の排卵の進化および今後の排卵研究の課題についても論じている

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2024/10/29

特定の宿主昆虫に対して自然に進化した共生細菌および人工的に進化させた共生細菌の宿主範囲比較

論文タイトル
Host range of naturally and artificially evolved symbiotic bacteria for a specific host insect
論文タイトル(訳)
特定の宿主昆虫に対して自然に進化した共生細菌および人工的に進化させた共生細菌の宿主範囲比較
DOI
10.1128/mbio.01342-24
ジャーナル名
mBio
巻号
Volume 15, Issue 9 (2024)
著者名(敬称略)
杉山 隆雅  深津 武馬 他
所属
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 生物プロセス研究部門

抄訳

共生が始まった当初、宿主と共生生物の特異性はどのように生じるのだろうか?一般に共生が始まる瞬間を直接観察することは難しい。しかし近年、共生に関する実験的進化学的アプローチがブレークスルーをもたらしつつある。本研究では、チャバネアオカメムシを宿主に実験室で作成した共生大腸菌と、チャバネアオカメムシの天然の共生細菌を用いてこの進化的問題に取り組んだ。我々は、多様なカメムシの必須共生細菌を、チャバネアオカメムシの人工共生細菌と天然共生細菌に置き換える実験を行い、特定の宿主のために進化した共生細菌が、異種宿主に感染を確立し、成長と生存を支持できるかを評価した。予想外なことに、人工共生細菌はチャバネアオカメムシのみに厳密な宿主特異性を示したのに対し、天然共生細菌は多様なカメムシと共生可能であった。この知見は、宿主と共生細菌の特異性が共生の進化初期段階でどのように確立されるのかについて洞察を与えるものである。

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2024/10/22

沖縄県のベンガルヤハズカズラおよび土壌から見つかった新種酵母Yamadazyma thunbergiae sp. nov.

論文タイトル
Yamadazyma thunbergiae sp. nov., a novel yeast species associated with Bengal clock vines and soil in
Okinawa, Japan
論文タイトル(訳)
沖縄県のベンガルヤハズカズラおよび土壌から見つかった新種酵母Yamadazyma thunbergiae sp. nov.
DOI
10.1099/ijsem.0.006537
ジャーナル名
International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology
巻号
Volume 74 Issue 10
著者名(敬称略)
清家 泰介
所属
大阪大学大学院情報科学研究科バイオ情報計測学講座
著者からのひと言
この新種の酵母は、2022年夏に沖縄の美ら海水族館前で咲いていたベンガルヤハズカズラと、翌年の冬に琉球大学キャンパスの土壌から単離されました。特に注目すべきは、Yamadazyma属の中でもラフィノースやメリビオースなど、幅広い糖を利用できる点です。この多様な糖利用能力は、産業利用への大きな可能性を秘めています。世界中で数千種以上の酵母が発見されていますが、まだまだ身近な場所にも新種が潜んでいるかもしれません。さらなる酵母の発見を通じ、その可能性を広げていきたいと考えています。

抄訳

沖縄県のベンガルヤハズカズラ(Thunbergia grandiflora)および土壌からそれぞれ単離された酵母2株、JCM 36746TおよびJCM 36749が新たに発見された。rRNA遺伝子のITS領域およびD1/D2ドメインの配列解析により、両株は同一の配列を持ち、同種に属することが確認された。配列解析および生理学的特徴から、これらの株はYamadazyma属の新種であると判明した。ITSおよびD1/D2の配列類似性から、JCM 36746TおよびJCM 36749は、Candida dendronema、C. diddensiae、C. germanica、C. kanchanaburiensis、C. naeodendra、C. vaughaniae、Y. akitaensis、Y. koratensis、Y. nakazawae、Y. philogaea、Y. phyllophila、Y. siamensis、Y. ubonensis、未記載の3種(Candida aff. naeodendra/diddensiae Y151、Candida sp. GE19S08、Yamadazyma sp.株 NYNU 22830)を含むYamadazymaクレードに属することが示唆された。新種のD1/D2ドメインおよびITS領域の配列は、これらの関連種と比較して、それぞれ1.51%および2.57%以上のヌクレオチド置換の違いが見られた。また、生理学的特徴もこれら近縁種とは異なっていた。これらの結果に基づき、この種をYamadazyma属に分類し、Yamadazyma thunbergiae sp. nov.という名称を提案した。

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2024/10/16

ラットの繁殖効率の違いは生殖フェロモンの産生と関連している

論文タイトル
Fecundity difference is related to the production of reproductive pheromones in rats
論文タイトル(訳)
ラットの繁殖効率の違いは生殖フェロモンの産生と関連している
DOI
10.1530/REP-24-0104
ジャーナル名
Reproduction
巻号
Reproduction Accepted Manuscripts REP-24-0104
著者名(敬称略)
山田 俊幸、佐古 兼一、土田 成紀、山本 博之 他
所属
日本薬科大学 薬学科 生命科学薬学分野
著者からのひと言
弘前ヘアレスラット(HHR)は、筆頭著者(山田)が以前在籍していた弘前大学医学研究科においてSDラット(SDR)より自然発生した乏毛ラットであり、毛のケラチン遺伝子をいくつか欠失しています。HHRがSDRに比べて「よく増える」ことはかねてより気付かれていましたが、その機序は不明でした。今回、オスの眼窩外涙腺由来の生殖フェロモンの関与が示唆され、その原因解明に一歩近づきました。今後は、ケラチン遺伝子の欠失と生殖フェロモンの産生との関連性の解明に興味がもたれます。

抄訳

げっ歯類においてはフェロモンが生殖に重要な役割を果たしている。弘前ヘアレスラット(HHR)はSDラット(SDR)に由来する変異ラットである。HHR同志、SDR同志の交配では、HHRはSDRより高い繁殖効率を示した。HHRオスとSDRメスあるいはその逆の交配実験から、この繁殖効率の違いはオスに起因することが示された。一方で、すべての交配において産児数に有意差はなく、オスの精巣上体中の精子の数、形態、運動性、さらに血清テストステロン濃度に差はなかった。また、HHRオス、SDRオスそれぞれ1匹とメス1匹の計3匹を同居させたところ、常にHHRオスの子供が生まれた。これらのことから、HHRとSDRの繁殖効率の違いは交尾の成功率の違いによると考え、次に、メスに生殖行動を起こさせるオス由来のフェロモンの関与について検討した。肝臓由来のフェロモンであるDarcin (MUP20)の遺伝子発現はHHRオスとSDRオスの間で差はなかったが、眼窩外涙腺の重量はHHRオスの方が大きく、そこで産生されるフェロモンであるESP1とCRP1の量も多かった。以上の結果から、これらラットの繁殖効率の違いにはオスの眼窩外涙腺での生殖フェロモンの産生量の違いが関与しているものと考えられた。

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2024/10/11

高病原性肺炎桿菌を検出するためのストリングテストに最適な寒天培地の評価

論文タイトル
Evaluation of an optimal agar medium for detecting hypervirulent Klebsiella pneumoniae using string test
論文タイトル(訳)
高病原性肺炎桿菌を検出するためのストリングテストに最適な寒天培地の評価
DOI
10.1099/acmi.0.000834.v3
ジャーナル名
Access Microbiology
巻号
Volume 6, Issue 9 (2024)
著者名(敬称略)
渡辺 直樹
所属
亀田総合病院 臨床検査部
著者からのひと言
肺炎桿菌が寒天培地の種類によって異なる性状を示す場合があることに気づいたことが、本研究につながりました。高い病原性を有する肺炎桿菌は世界的に注目されており、迅速で正確なスクリーニング方法が必要とされています。ストリングテストは、簡便かつ低コストで実施できるため、臨床現場での応用が期待される方法です。今回の研究結果が、ストリングテストの診断精度を向上させる一助となれば幸いです。

抄訳

ストリングテストは、高い病原性を有する肺炎桿菌を検出するためのスクリーニング方法です。本研究では、寒天培地の種類がストリングテストの結果に与える影響を評価し、テストに最適な寒天培地とカットオフ値を決定しました。99株の肺炎桿菌を用い、4種類の寒天培地(ヒツジ血液、チョコレート、ドリガルスキー、マッコンキー寒天培地)でストリングテストを実施しました。各培地におけるテスト結果と、肺炎桿菌の病原性に関連する遺伝子(rmpA、rmpA2、iucA)の保有との一致率を計算し、診断精度を評価しました。その結果、最も高い診断精度を示した培地はヒツジ血液寒天培地で、5 mmのカットオフ値が最適であることが分かりました。これらの結果により、高い病原性を有する肺炎桿菌を効果的にスクリーニングするためには、寒天培地の選択と適切なカットオフ値の設定が重要であることが明らかとなりました。

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2024/10/01

Znrf3エクソン2欠失マウスは先天性副腎低形成症を再現しない

論文タイトル
Znrf3 exon 2 deletion mice do not recapitulate congenital adrenal hypoplasia
論文タイトル(訳)
Znrf3エクソン2欠失マウスは先天性副腎低形成症を再現しない
DOI
10.1530/JME-24-0015
ジャーナル名
Journal of Molecular Endocrinology
巻号
Accepted Manuscripts JME-24-0015
著者名(敬称略)
内田登、長谷川奉延 他
所属
慶應義塾大学医学部 小児科学教室

抄訳

ZNRF3エクソン2欠失は先天性副腎低形成症の病因となる。本研究では遺伝子改変マウスを作成し、Znrf3エクソン2欠失(Δ2)が副腎皮質発生に及ぼす影響を検討した。ホモ接合性Znrf3エクソン2欠失(Znrf3Δ2/Δ2)マウスと同胞の野生型マウスを比較した。Znrf3Δ2/Δ2マウスの副腎は低形成を示さず、成長とともに腫大した。6週齢では、活性型β-カテニン陽性細胞数およびWnt/β-カテニン標的遺伝子Axin2 陽性細胞数が減少していた。血中ACTHおよびコルチコステロン濃度は変化していなかった。活性型β-カテニンおよびAxin2陽性細胞数の減少は、エクソン2を欠失したZnrf3がWnt/β-カテニンシグナル伝達を不活化することを示唆するが、Znrf3Δ2/Δ2マウスは先天性副腎低形成症を再現しなかった。ZNER3/Znrf3エクソン2欠失の副腎皮質発生に関する影響には種差があると考える。

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