本文へスキップします。

H1

国内研究者論文紹介

コンテンツ

ユサコでは日本人の論文が掲載された海外学術雑誌に注目して、随時ご紹介しております。

論文検索

(以下、条件を絞り込んで検索ができます。)

日本人論文紹介:検索
日本人論文紹介:一覧

2025/06/04

ゼブラフィッシュ仔魚の神経筋接合部標本におけるシナプス小胞再利用過程のライブイメージング

論文タイトル
Live Imaging of Synaptic Vesicle Recycling in the Neuromuscular Junction of Dissected Larval Zebrafish
論文タイトル(訳)
ゼブラフィッシュ仔魚の神経筋接合部標本におけるシナプス小胞再利用過程のライブイメージング
DOI
10.3791/67633-v
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (216), e67633
著者名(敬称略)
江頭 良明 小野 富三人
所属
大阪医科薬科大学 医学部 生命科学講座 生理学教室
著者からのひと言
ゼブラフィッシュの仔魚は、様々な生理現象を生きた個体の中でリアルタイムに可視化する目的に適したモデル生物だと言えます。例えば、脳全体の神経細胞の活動を生体のまま観察することはすでに可能となっています。今回報告した手法は、より微小なシナプスの活動をとらえる技術です。論文では、魚の体幹部分を切り出した組織標本を使いましたが、将来的には、生きた魚のシナプス活動をリアルタイムにモニターすることができると考えています。

抄訳

神経細胞間のコミュニケーションであるシナプス伝達は、神経伝達物質を含むシナプス小胞が継続的に再利用される過程に依存している。この過程の解析法として、酸性環境にあるシナプス小胞内にpH感受性の蛍光タンパク質を遺伝学的に導入しイメージングする手法が広く利用されている。しかし、遺伝子の導入と光学的イメージングを必要とする技術的制約から、培養神経細胞での実験が多く、生体内や組織標本での利用はまだ限られている。ゼブラフィッシュは、遺伝学的操作が容易なうえ、仔魚は組織が透明であるため蛍光イメージングに適している。私たちのグループでは、シナプス伝達を可視化できる蛍光プローブを運動神経特異的に発現するトランスジェニックゼブラフィッシュを作成している。本論文では、この魚の神経筋接合部標本を用いて、シナプス伝達をライブイメージングする方法を説明している。

論文掲載ページへ

2025/06/02

腸管免疫シグナル伝達におけるプロバイオティクス由来の細胞外膜小胞の役割に関する最近の進展

論文タイトル
Recent advances in understanding the role of extracellular vesicles from probiotics in intestinal immunity signaling
論文タイトル(訳)
腸管免疫シグナル伝達におけるプロバイオティクス由来の細胞外膜小胞の役割に関する最近の進展
DOI
10.1042/BST20240150
ジャーナル名
Biochemical Society Transactions
巻号
Biochem Soc Trans (2025) 53 (02): 419–429
著者名(敬称略)
倉田淳志、上垣浩一
所属
近畿大学 農学部 応用生命化学科
著者からのひと言
本総説では、腸内細菌の中でもプロバイオティクスが放出する細胞外の膜小胞を対象に、その特徴と機能、宿主への影響と作用機序を整理して、これらの膜小胞の応用における課題を説明しました。プロバイオティクス由来の膜小胞について総合的に理解を深めることは、ポストバイオティクスとしてこれらの膜小胞を活用する、生体機能の新たな調節技術の開発につながります。

抄訳

一部の腸内細菌は、約20〜400 nmの膜小胞を細胞外に放出する。これらの膜小胞は、細菌の構成成分を受け手の宿主細胞へ運搬しており、多様な細胞応答を惹起する。近年、発酵食品で活用されている乳酸菌、ビフィズス菌、酢酸菌、納豆菌、酪酸産生菌などのプロバイオティクスが細胞外に放出する膜小胞について、物理化学的・生化学的な特性が報告されている。宿主に対する膜小胞の機能や作用機序の解明が、動物・組織・細胞・遺伝子・タンパク質・物質の各レベルで著しく進んでいる。さらにこれらの膜小胞の社会実装を目指して、ヒトや家畜での疾患の改善や既存の治療技術に対する膜小胞の活用について研究報告が増加している。一方、これらの膜小胞をポストバイオティクスとして応用することに関して懸念も提起されている。本総説では、腸管の免疫シグナル伝達を対象にプロバイオティクス由来の膜小胞が担う役割と、これらの膜小胞の応用に関連する課題について議論した。

論文掲載ページへ

2025/05/29

植物根の内生菌は転写因子の発現により葉に感染する「炭疽病菌」となる
 

論文タイトル
A fungal transcription factor converts a beneficial root endophyte into an anthracnose leaf pathogen
論文タイトル(訳)
植物根の内生菌は転写因子の発現により葉に感染する「炭疽病菌」となる
DOI
10.1016/j.cub.2025.03.026
ジャーナル名
Current Biology
巻号
Current Biology Volume 35, Issue 9
著者名(敬称略)
氏松 蓮 晝間 敬 他
所属
東京大学 大学院総合文化研究科 広域科学専攻 生命環境科学系

抄訳

植物内生菌は宿主植物の生長を助けたり(共生)、あるいは病気を引き起こしたり(病原)と様々な生活様式を示します。しかしそうした生活様式がどのように制御されているかについてはほとんどわかっていません。今回、植物根に内生して多くの場合共生的にふるまう真菌Colletotrichum tofieldiaeが、「CtBOT6」遺伝子の発現レベルに依存して、共生性から強い病原性まで幅広い生活様式を連続的に示すことを発見しました。論文では、CtBOT6は転写制御因子として菌の二次代謝物生合成遺伝子クラスター「ABA-BOT」を正に制御すること、ABA-BOT由来代謝物の蓄積がゲノムワイドな遺伝子発現調節に関わることで本菌の病原性が発現する可能性が示されました。また、菌感染中の植物側の遺伝子発現解析から、菌の病原性の強さに依存して植物の応答が変化しており、こうした応答が最終的な生活様式に寄与していることが示唆されました。本研究で得られた知見は植物-微生物相互作用における共生性・病原性の連続的な制御機構の理解につながり、さらに、農業現場で共生菌を効果的に利活用する上で基礎的な知見となります。

論文掲載ページへ

2025/05/23

CKDにおける新規の末期腎不全予測モデルの開発:血清ビリルビン値の有用性

論文タイトル
A Novel Kidney Failure Prediction Model in Individuals With CKD: Impact of Serum Bilirubin Levels
論文タイトル(訳)
CKDにおける新規の末期腎不全予測モデルの開発:血清ビリルビン値の有用性
DOI
10.1210/clinem/dgae430
ジャーナル名
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism
巻号
The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, Volume 110, Issue 5, May 2025, Pages 1375–1383
著者名(敬称略)
井口 登與志 他
所属
福岡市医師会 福岡市健康づくりサポートセンター
著者からのひと言
データ駆動型アプローチによりCKDにおける簡易でかつ精度の高い新規末期腎不全予測モデルを開発・検証した論文であり、この予測モデルの臨床現場でのリスク評価や治療判断における有用性も期待される(web上でも使用可能となっているhttps://carna-hs.co.jp/simulation2)。また、内因性抗酸化因子である血清ビリルビン値の予測寄与度が極めて高いことにも注目してほしい。

抄訳

本研究は、慢性腎臓病(CKD)から末期腎不全(ESKD)への進行予測における血清ビリルビン値の有用性を明らかにし、これを取り入れた新たな予測モデルを開発・検証した。2008〜2018年に九州大学病院でフォローされたCKD患者4103名を開発コホートとし、Cox比例ハザードモデルにより20項目の候補因子から予測寄与度の高い順にeGFR、ビリルビン、蛋白尿、年齢、糖尿病、高血圧、性別、アルブミン、ヘモグロビンの9項目を選定。これらを用いた予測モデルは、時間依存AUC(2年:0.943、5年:0.935)において高い識別能と優れたキャリブレーション性能(予測確率と観察確率の一致度)を示し、外部検証コホート(n=2799)においても良好な結果を示した。結論として、血清ビリルビン値はCKDの進行に対する独立した強力な予測因子であり、血清ビリルビン値を含んだ今回の新規予測モデルは、簡易でかつ精度高くESKD進行を予測可能であり、臨床現場でのリスク評価や治療判断に貢献する可能性が示唆された。

論文掲載ページへ

2025/05/23

時計タンパク質KaiCのリン酸化は自己阻害メカニズムによって制御される

論文タイトル
The priming phosphorylation of KaiC is activated by the release of its autokinase autoinhibition
論文タイトル(訳)
時計タンパク質KaiCのリン酸化は自己阻害メカニズムによって制御される
DOI
10.1093/pnasnexus/pgaf136
ジャーナル名
PNAS Nexus
巻号
PNAS Nexus, Volume 4, Issue 5, May 2025, pgaf136
著者名(敬称略)
古池 美彦 森 俊文 秋山 修志 他
所属
自然科学研究機構 分子科学研究所 協奏分子システム研究センター 階層分子システム解析研究部門
著者からのひと言
細胞内環境を保つためには、各種酵素の活性制御が必須です。そのため、酵素と基質の出会いの確率の調節や、基質との親和性の制御など、複数のメカニズムが働いています。本研究では、概日リズムという「1日」の時間スケールのなかで、基質ATPを結合しながら、そのうえで活性部位の静電環境を調整することで活性制御する時計タンパク質KaiCの特異なメカニズムが明らかになりました。反応速度の変化が計時機能に直結するKaiCでは、夾雑系の影響が少ない分子内でのリン酸化制御が有用であったと考えられます。

抄訳

シアノバクテリアの概日リズムは、時計タンパク質KaiCのT432・S431における周期的な自己リン酸化・自己脱リン酸化によって生じ、とりわけリン酸化の進行にはKaiAの関与が必須であると考えられてきた。しかしながらKaiCのリン酸化がいかに活性化・不活性化されるのか、そのメカニズムは明らかになっていない。我々は、KaiA非存在下でもT432のリン酸化が起こるものの、その反応速度は非常に遅く、KaiC自身が活性を抑制していることを見出した。この自己阻害の仕組みに迫るため、KaiCの立体構造データを用いて計算機シミュレーションを行った。その結果、T432がアデノシン三リン酸の末端リン原子への求核攻撃に適した位置にあること、そして反応の進行に必要な一般塩基であるE318の触媒作用がR385によって静電的に抑制されていることが明らかになった。そこでKaiC変異体を用いてE318にかかる抑制の程度を検証したところ、KaiAの結合に伴ってR385が遊離することで自己阻害が解除されることが分かった。

論文掲載ページへ

2025/05/22

単純ヘルペスウイルス1型の蛋白質発現量と子孫ウイルス産生量の直接的関係性

論文タイトル
Direct relationship between protein expression and progeny yield of herpes simplex virus 1
論文タイトル(訳)
単純ヘルペスウイルス1型の蛋白質発現量と子孫ウイルス産生量の直接的関係性
DOI
10.1128/mbio.00280-25
ジャーナル名
mBio
巻号
mBio Ahead of Print
著者名(敬称略)
野邊 萌香 丸鶴 雄平 川口 寧 他
所属
東京大学医科学研究所 感染・免疫部門 ウイルス病態制御分野
著者からのひと言
ウイルス感染細胞のシングルセル解析では、ウイルス遺伝子発現量と子孫ウイルス産生量が細胞ごとに大きくばらつくことが複数の研究で報告されています。しかし、従来は両者を別々に評価していたため、直接的な関連性は不明でした。本研究では、レポーターウイルス感染細胞の蛍光強度に基づいてセルソーターで細胞集団を分画し、それぞれのサブポピュレーションを統合解析するという、”ありそうでなかった”新規手法を確立し、ウイルスタンパク質発現量と子孫ウイルス産生量の直接的かつ定量的な関係を初めて明らかにした論文です。

抄訳

細胞内のウイルス蛋白質発現量と子孫ウイルス産生量は、細胞毎に大きくばらつくことが示されてきたが、その両者を同時に評価した研究はこれまで行われていなかった。本研究では単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)の後期蛋白質Us11に蛍光蛋白質Venusを融合したレポーターウイルスを作製し、感染細胞をVenusの蛍光強度(すなわち後期蛋白質発現量)に応じて複数のサブポピュレーションに分画した。それぞれのサブポピュレーションのウイルス力価と電子顕微鏡解析を行った結果、後期蛋白質の発現量が特定の閾値を超えた場合のみ、ヌクレオカプシドの成熟が誘導され、子孫ウイルスが産生されることが明らかになった。

論文掲載ページへ

2025/05/22

概日時計によって制御される細胞の更新が、時間依存的な味覚感受性の変化を調節する

論文タイトル
Circadian clock–gated cell renewal controls time-dependent changes in taste sensitivity
論文タイトル(訳)
概日時計によって制御される細胞の更新が、時間依存的な味覚感受性の変化を調節する
DOI
10.1073/pnas.2421421122
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.122 No.19
著者名(敬称略)
松浦 徹 他
所属
関西医科大学 病理学講座
著者からのひと言
哺乳類では、概日時計によって制御される細胞周期の進行が、全身の複数の組織や培養線維芽細胞で観察されている。本研究では、概日時計により制御される細胞分裂が、マウスの舌において、II型味細胞の集団に日内変動をもたらすことを示した。これらのII型味細胞数の変動は、苦味、甘味、うま味の知覚に影響を与える。我々の知見は、概日時計による細胞分裂制御が、生理機能の日内リズム的変化、特に高い代謝回転を有する細胞において重要であることを示唆している。

抄訳

概日時計による細胞周期の制御により、臓器や組織で失われた細胞が日内リズムに応じて補充される。本研究では、マウス舌上皮における細胞集団の時間依存的変化をシングルセルRNAシーケンスで解析し、幹細胞/前駆細胞や分化細胞、特にII型味細胞の細胞数の変動を確認した。味蕾幹細胞除去により新規細胞産生を抑制するとこれらの変動は消失した。時計遺伝子Bmal1遺伝子のノックダウンで味蕾オルガノイドでの24時間周期の細胞分裂が消失することは概日周期による制御を示唆する。舌上皮ではアポトーシスのリズムも観察されたが、幹細胞除去で失われ、新生細胞供給が細胞死リズムに必要であることが示唆された。味覚テストでは時間帯によりII型味細胞由来の感受性に変化が見られ、概日時計が日内の細胞数変化を調節することで舌の機能を調節していることが示唆された。

論文掲載ページへ

2025/05/15

腸内細菌共通抗原フリッパーゼWzxEは酸性環境、低温環境、高浸透圧環境における大腸菌の増殖に必要である

論文タイトル
Enterobacterial common antigen repeat-unit flippase WzxE is required for Escherichia coli growth under acidic conditions, low temperature, and high osmotic stress conditions
論文タイトル(訳)
腸内細菌共通抗原フリッパーゼWzxEは酸性環境、低温環境、高浸透圧環境における大腸菌の増殖に必要である
DOI
10.1128/aem.02595-24
ジャーナル名
Applied and Environmental Microbiology
巻号
Applied and Environmental Microbiology Ahead of Print
著者名(敬称略)
山口 咲季 垣内 力 他
所属
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科・分子生物学分野
著者からのひと言
腸内細菌共通抗原(ECA)の生理的な役割は、十分には明らかになっていません。本研究では、ECAの合成過程が大腸菌のストレス耐性に重要な役割を果たすことを見出しました。

抄訳

腸内細菌に保存されている多糖類である腸内細菌共通抗原(ECA)のストレス耐性における役割は不明である。脂質結合型 ECA 繰り返し単位はECAフリッパーゼWzxEによって内膜を透過させられた後、ECAとなる。本研究では、ECAフリッパーゼWzxEの欠損株が酸性環境、低温環境、高浸透圧環境に対してコラン酸依存的に感受性を示すことを明らかにした。この結果は、脂質結合型 ECA 繰り返し単位が、コラン酸依存的に大腸菌の酸性環境、低温環境、高浸透圧環境に対する感受性を引き起こすことを示唆している。脂質結合型 ECA 繰り返し単位が WzxE と脂質結合型コラン酸繰り返し単位のフリッパーゼの両方によって内膜を透過させられる知見を考慮すると、WzxE欠損株の表現型のコラン酸依存性は、ストレス条件下で大量に産生されたコラン酸が脂質結合型コラン酸繰り返し単位のフリッパーゼを占有し、その結果、内膜上に脂質結合型 ECA 繰り返し単位が蓄積するモデルを提示している。

 

論文掲載ページへ

2025/05/14

麻黄と桂皮はウイルスの侵入および複製阻害という多機序的な抗インフルエンザウイルス作用を持つ

論文タイトル
Multiple antiviral mechanisms of Ephedrae Herba and Cinnamomi Cortex against influenza: inhibition of entry and replication
論文タイトル(訳)
麻黄と桂皮はウイルスの侵入および複製阻害という多機序的な抗インフルエンザウイルス作用を持つ
DOI
10.1128/spectrum.00371-25
ジャーナル名
Microbiology Spectrum
巻号
Microbiology Spectrum Ahead of Print
著者名(敬称略)
藤兼 亜耶 他
所属
福岡大学医学部総合診療学
著者からのひと言
この研究は、麻黄湯のインフルエンザに対する二重の抗ウイルス作用機構(侵入阻害+複製阻害)を初めて明らかにし、その効果がA型・B型インフルエンザに広く及ぶことを示しました。主要構成生薬の特定により、麻黄湯は多標的・広範囲に対応可能な治療薬候補として、パンデミック対策における薬剤再開発の新たな選択肢となり得ます。

抄訳

麻黄湯は、インフルエンザウイルス感染症に対する有効性がすでに知られている漢方薬であるが、その詳細な作用機序は未解明であった。本研究では、麻黄湯およびその構成生薬による抗インフルエンザウイルス作用のメカニズムを明らかにした。麻黄湯はウイルス表面のヘマグルチニン(HA)に結合し、A型(H1N1およびH3N2)およびB型を含む複数の株において、ウイルスの細胞侵入を阻害することが判明した。さらに、ウイルスとともに細胞内に取り込まれた麻黄湯は、ウイルス複製に必須なPAエンドヌクレアーゼにも結合し、その酵素活性を抑制した。構成生薬の中でも、麻黄および桂皮がHAおよびPAの双方に作用し、麻黄湯の抗ウイルス効果の中核を担っていることが示唆された。麻黄湯は、ウイルスの侵入と複製という複数の段階を標的とする多機序的な抗ウイルス作用を有しており、インフルエンザウイルスの変異にも柔軟に対応可能な新たな治療選択肢として期待される。

 

論文掲載ページへ

2025/05/12

シグマ因子の活性を調節するFecRタンパク質の連続的な切断が,TonB依存的なシグナル伝達を制御する

論文タイトル
Cleavage cascade of the sigma regulator FecR orchestrates TonB-dependent signal transduction
論文タイトル(訳)
シグマ因子の活性を調節するFecRタンパク質の連続的な切断が,TonB依存的なシグナル伝達を制御する
DOI
10.1073/pnas.2500366122
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.122 No.16
著者名(敬称略)
横山達彦 久堀智子 秋山芳展 他
所属
岐阜大学 大学院 医学系研究科 病原体制御学分野
著者からのひと言
私たちは,膜タンパク質を膜中で切断する特殊なプロテアーゼの切断基質を探索する過程で,FecRタンパク質が細胞内で連続的な切断を受けることを見出し,2021年に報告しました(Yokoyama et al., J. Biol. Chem., 2021).本研究ではこの発見を出発点として,FecRを介した鉄シグナル伝達機構の全体像を明らかにしました.今後,同様のタイプのシグナル伝達機構を理解する上で,本研究が重要な礎となることを願っています.最後に,本研究の土台となった膨大な研究を推進し,本研究領域の発展にご貢献されてきた,Max Planck Institute for Biology(ドイツ)のVolkmar Braun博士に心から敬意を表します.(横山達彦)

抄訳

生命にとって鉄は不可欠な元素であるが,環境中には微量しか存在しない.そのため,生命は外界の鉄を細胞内に取り込むシステムを高度に進化させて来た.細菌は外界環境の鉄を感知し,それに応じて鉄取り込みに関わる因子の発現を活性化するが,鉄を感知する分子メカニズムの全容は,長年にわたり明らかにされてこなかった.
グラム陰性細菌は外界の鉄を取り込む際に,分子モーターであるTonB-ExbBD複合体が生み出す機械的な力を利用することが知られている.本研究ではこの機械的な力が,シグナル伝達を担う膜タンパク質FecRにも伝わり,FecRの連続的な切断を引き起こすことを突き止めた.そして,この切断によって生じたFecR断片が,鉄の取り込みに必要な遺伝子群の発現を誘導することを明らかにした.本研究は,タンパク質切断を介したシグナル伝達の新たなメカニズムを提示し,生体機能制御の基盤となる仕組みの一端を明らかにしたものである.

内容の詳細は下記よりご覧ください.
プレスリリース:https://www.gifu-u.ac.jp/news/research/2025/04/entry18-14282.html

 

 

論文掲載ページへ