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国内研究者論文紹介

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ユサコでは日本人の論文が掲載された海外学術雑誌に注目して、随時ご紹介しております。

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2024/02/19

ハムスターモデルにおけるレプトスピラの骨格筋への直接侵入が引き起こす非化膿性筋炎

論文タイトル
Non-purulent myositis caused by direct invasion of skeletal muscle tissue by Leptospira in a hamster model
論文タイトル(訳)
ハムスターモデルにおけるレプトスピラの骨格筋への直接侵入が引き起こす非化膿性筋炎
DOI
https://doi.org/10.1128/iai.00420-23
ジャーナル名
Infection and Immunity
巻号
Infection and Immunity, Ahead of Print
著者名(敬称略)
宮原 敏 他
所属
産業医科大学 医学部 微生物学
著者からのひと言
レプトスピラ症は、世界中で報告される人獣共通感染症です。1915年に病原体であるLeptospira interrogansが日本で発見されましたが、病態や病原因子については未だ不明な点が多く残されています。本研究は、レプトスピラ症の筋病変について、免疫応答ではなく、細菌の直接感染によって筋肉が破壊されることを明らかにしました。筋病変は腎障害をもたらすため、レプトスピラ症の主な死因である腎不全の予防に、早期の抗菌薬投与が重要であることを示しています。

抄訳

筋肉痛はレプトスピラ感染症の一般的な症状である。剖検では、筋線維の変性・壊死や、マクロファージ、リンパ球主体の炎症細胞浸潤が報告されているが、詳細な病態は不明である。本研究は、レプトスピラが筋肉に直接感染するのか、また浸潤した炎症細胞が筋線維の破壊に関与しているのかを、ハムスターモデルを用いて検証した。Leptospira interrogans serovar Manilae UP-MMC-SM株を皮下感染させたハムスターは、接種部位に隣接する大腿部にヒトと同様の非化膿性筋炎を示した。免疫蛍光染色により、損傷した筋線維を取り囲むレプトスピラが認められた。感染したハムスターにクロドロン酸を投与すると、組織内の菌量に影響を与えることなく、筋組織へのマクロファージ浸潤が減少した。クロドロン酸で処理した感染ハムスターでは筋壊死が依然として観察され、血清クレアチンキナーゼ値はコントロールと比較して有意な変化はなかった。これらの結果は、レプトスピラが接種部位から筋組織に侵入すると筋線維を破壊し、非化膿性筋炎を引き起こすが、浸潤マクロファージは筋破壊には寄与しないことを示唆している。

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2024/02/19

東南極ドロンニングモードランドのインホブデから発見された、異常な爪を持ち有性生殖するオニクマムシ類の新種

論文タイトル
A New Species of Bisexual Milnesium (Eutardigrada: Apochela) Having Aberrant Claws from Innhovde, Dronning Maud Land, East Antarctica
論文タイトル(訳)
東南極ドロンニングモードランドのインホブデから発見された、異常な爪を持ち有性生殖するオニクマムシ類の新種
DOI
https://doi.org/10.2108/zs220085
ジャーナル名
Zoological Science
巻号
Zoological Science, 40(3):246-261 (2023)
著者名(敬称略)
鈴木 忠 他
所属
慶應義塾大学医学部・生物学教室
著者からのひと言
こんなに枝分かれした爪を持つオニクマムシは東南極からしか見つかっておらず非常に珍しいのです。じつは第5次南極地域観測隊(1960–62)による生物調査の頃から、その存在は知られていたのですが、60年以上経過して、やっと新種として発表できました。本種を含む南極産オニクマムシのいくつかは、系統樹の中程に現れます。その祖先種はジュラ紀にゴンドワナ大陸の真ん中で生まれたようです。ゴンドワナの分裂と大陸移動に伴って、オニクマムシ類が多種に分かれ、全世界に拡散していったという歴史が見えてきました。

抄訳

南極昭和基地の南西約120 kmに位置するインホブデ露岩域の生物調査(2015)において発見されたオニクマムシの1新種をMilnesium rastrumとして記載した。オニクマムシ類は4対の各肢先に2本の細長い爪(第1爪)と2本の短い爪(第2爪)を持つ。これまで世界中から記載された40種以上の第2爪は通常2〜3本に分枝した鉤爪となり、2種のみが4分枝を持つが、今回記載された種では4〜7本に分枝する。また、オスの1標本が得られたことと、1頭のメスの100日以上にわたる飼育中に産卵を伴わない2度の脱皮が観察されたことから、本種の繁殖はオスを必要とする有性生殖であることが示唆された。本種から得られた遺伝子配列(18S rRNA, 28S rRNA, ITS-2, COI)とデータベースから得られるMilnesium類の遺伝子配列を用いて生物系統地理的な解析を行なった。

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2024/02/02

中枢性尿崩症治療薬、デスモプレシン口腔内崩壊錠の1日投与量に影響する臨床的要因

論文タイトル
Clinical Factors Affecting Daily Dosage of Desmopressin Orally Disintegrating Tablets in Arginine Vasopressin Deficiency
論文タイトル(訳)
中枢性尿崩症治療薬、デスモプレシン口腔内崩壊錠の1日投与量に影響する臨床的要因
DOI
10.1210/clinem/dgad694
ジャーナル名
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism
巻号
The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, dgad694
著者名(敬称略)
星野 良朋 竹下 章 他
所属
虎の門病院 内分泌代謝科(内分泌部門)

抄訳

【背景】 中枢性尿崩症(AVP欠乏症:AVP-D)の治療に、デスモプレシン口腔内崩壊錠(ODT)が広く使用されている。しかし、その効果には個人差があり、投与量は通常、開始用量に対する効果に基づき漸増され決定されている。
【目的】様々な臨床所見とODTの1日投与量との関係を検討し、ODT投与量に影響を及ぼす因子を明らかにする。
【方法】 この後方視的研究では、AVP-Dの成人患者209例を対象とした。患者には患者用指導箋を用いてODTを舌下服用後30分間は飲食を制限するよう指導した。ODTの用量漸増は入院下に行われ、尿量、体重、血清Na値を綿密にモニタリングした。退院時のODTの1日投与量に関連する臨床因子を同定するために、多変量線形回帰分析を実施した。また、退院後、当院でフォローした134例の1年後の投与量を評価した。
【結果】 退院時のODTの1日投与量の中央値は90μg(IQR 60-120μg)であった。多変量解析にて、性別・年齢・推定クレアチニンクリアランス(eCCr)が1日投与量に関連する有意な因子であり、eCCrが最も強い影響を及ぼすことが明らかとなった。退院後、当院でフォローアップを行った患者134例中AVP-Dが軽快した患者を除く114例を対象とすると81例(71%)が1年後も同じ投与量を継続していた。
【結論】 安全かつ安定したAVP-Dの補充療法を行うため、患者教育による適切な舌下投与のもと、性別・年齢・eCCrを考慮しODTの1日投与量を決定することが大切である。

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2024/01/30

Decitn-2欠損はマクロファージからの炎症性サイトカイン分泌を促進し、グルコース応答性インスリン分泌を障害する

論文タイトル
Dectin-2 Deficiency Promotes Proinflammatory Cytokine Release From Macrophages and Impairs Insulin Secretion
論文タイトル(訳)
Decitn-2欠損はマクロファージからの炎症性サイトカイン分泌を促進し、グルコース応答性インスリン分泌を障害する
DOI
10.1210/endocr/bqad181
ジャーナル名
Endocrinology
巻号
Endocrinology, Volume 165, Issue 1, January 2024, bqad181
著者名(敬称略)
藤田 政道 宮澤 崇 他
所属
九州大学大学院医学研究院 病態制御内科学講座

抄訳

膵島炎症は糖尿病の発症に重要な役割を果たしている。我々は膵島炎症に重要な役割を果たす膵島マクロファージに、C型レクチン受容体の一つであるDectin-2(D2)が発現することを見出した。糖代謝におけるD2の役割を明らかにするため、D2欠損マウスの表現型を解析した。D2欠損マウスは、野生型(WT)マウスと比較して耐糖能異常を呈し、単離膵島のグルコース応答性インスリン分泌(GSIS)が有意に低下し、β細胞機能障害を認めた。また、D2欠損マウスの膵島では炎症が起こり、マクロファージの浸潤が増加した。D2欠損マウスのマクロファージは炎症性の形質を示し、IL-1αやIL-6などの炎症性サイトカインの分泌が増加しており、特にIL-1シグナル経路を介してβ細胞機能不全とGSIS低下をもたらすことを明らかにした。本研究は、D2が膵島炎症の病態形成に関与する可能性を示唆している。

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2024/01/25

時計遺伝子BMAL1はヒト顆粒膜細胞における性ステロイド生合成を制御する

論文タイトル
BMAL1 positively correlates with genes regulating steroidogenesis in human luteinized granulosa cells
論文タイトル(訳)
時計遺伝子BMAL1はヒト顆粒膜細胞における性ステロイド生合成を制御する
DOI
10.1530/REP-23-0225
ジャーナル名
Reproduction
巻号
Reproduction Volume 167: Issue 2
著者名(敬称略)
河村 ともみ、戴 易丹、小野 政徳 他
所属
東京医科大学産科婦人科学分野
著者からのひと言
これまでストレスや体重減少による性ステロイド分泌異常が報告されてきました。今回、時計遺伝子異常によって性ステロイド分泌異常が起こることが明らかとなりました。本研究は、概日リズムの乱れが不妊症や月経不順に繋がるメカニズムの一端を明らかにした点で重要な学術的意義があります。

抄訳

【背景】
概日リズムは生体機能維持に重要な役割を担う。そしてBrain and muscle arnt-like protein-1 (BMAL1)、Circadian locomotor out cycles kaput (CLOCK)、Period Circadian Regulator (PERIOD)、Cryptochrome Circadian Regulator (CRY)などの時計遺伝子は生殖器官にも発現している。これまでにBmal1全身ノックアウトマウスは不妊であることが報告されたが、ヒトにおける不妊症と時計機能異常に関する研究は限られていた。本研究では、ヒト顆粒膜細胞における時計遺伝子の発現と性ステロイド生合成を解析した。
【方法】
生殖補助医療で採取された余剰卵胞液中から顆粒膜細胞を分離した。また、ヒト顆粒膜細胞腫由来の細胞株KGNと、不死化ヒト顆粒膜細胞HGL5をin vitroモデルとして使用した。低分子干渉RNA (siRNA)を用いて、BMAL1発現を抑制あるいは強制発現し、性ステロイド生合成への影響を解析した。
【結果】
BMAL1は性ステロイド生合成関連遺伝子発現と正の相関を認めた。BMAL1を抑制すると、ステロイド合成酵素の発現が有意に低下し、性ステロイド分泌も抑制された。一方、BMAL1を強制発現させると、ステロイド合成酵素の発現が有意に増加した。これらの結果は、BMAL1が顆粒膜細胞における性ステロイド生合成を制御していることを示している。
【結語】
BMAL1がヒト顆粒膜細胞におけるステロイド生合成を制御することが明らかとなった。

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2024/01/23

VP2トランス供給によるレポーター遺伝子が組み込まれた感染性ネズミノロウイルスの作製

論文タイトル
Production of infectious reporter murine norovirus by VP2 trans-complementation
論文タイトル(訳)
VP2トランス供給によるレポーター遺伝子が組み込まれた感染性ネズミノロウイルスの作製
DOI
10.3174/ajnr.A5927
ジャーナル名
Journal of Virology
巻号
Journal of Virology, Ahead of Print
著者名(敬称略)
石山涼翔、吉田和夫、及川和樹、芳賀慧、片山和彦 他
所属
北里大学 大村智記念研究所 ウイルス感染制御学
著者からのひと言
我々の発見は、同様のプラスミドベースリバースジェネティックスシステムを有するHuNoVだけで無く、カリシウイルス科に属するウイルス研究に広く応用可能だと思われます。本研究で、作出したレポ-ター遺伝子を内包させた感染性ウイルスは、安定して継代可能な初めてのノロウイルスです。今後、小動物感染モデルの体内動態、細胞への侵入機構の解明などの研究進展への貢献が期待されます。

抄訳

ヒトノロウイルス(HuNoV)は、感染性胃腸炎の原因ウイルスとして知られていますが、効率良くHuNoVを増殖培養可能な株化培養細胞が無く、効果的な治療法やワクチンの開発が遅れています。ネズミノロウイルス(MNV)は株化培養細胞で増殖培養が可能なノロウイルスで、感染モデル動物としてマウスを利用可能なため、HuNoVの構造および機能的な特性を解明するためのモデルウイルスとして頻繁に使用されています。我々が開発したプラスミドベースのMNVリバースジェネティックスシステムは、簡便に組換えウイルスを作製することが可能です。本研究では、MNVゲノムのORF3(VP2コード領域)の5‘側約1/3〜2/3の領域を任意の外来性遺伝子で置き換え、VP2をトランス供給することで、外来性遺伝子がゲノムに組み込まれた感染性ウイルスを作製することに成功しました。この組換えウイルスは、VP2がトランス供給された細胞では、複製増殖が可能で、安定した大量生成が可能ですが、VP2をトランス供給しないと複製増殖できず、一度しか感染できません。我々の発見は、ノロウイルスのライフサイクルにおけるVP2の機能解明に利用可能であるとともに、外来性遺伝子を導入したレポーターウイルス作製の他、高度弱毒化生ウイルスワクチンやドラッグデリバリーシステム開発に有用です。

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2024/01/19

転移性/切除不能の消化管間質腫瘍やその他のがんの治療におけるピミテスピブ

論文タイトル
Pimitespib for the treatment of advanced gastrointestinal stromal tumors and other tumors
論文タイトル(訳)
転移性/切除不能の消化管間質腫瘍やその他のがんの治療におけるピミテスピブ
DOI
10.2217/fon-2022-1172
ジャーナル名
Future Oncology
巻号
Ahead of Print
著者名(敬称略)
土井 俊彦 他
所属
国立がん研究センター 東病院

抄訳

ピミテスピブ(TAS-116)は、日本で初めて承認された選択的Heat Shock Protein 90(HSP90)阻害剤であり、イマチニブ、スニチニブ及びレゴラフェニブの治療後に増悪した消化管間質腫瘍(GIST)の治療薬である。このレビューでは、ピミテスピブの基礎研究と臨床研究から、その作用機序や薬物動態、臨床的な抗腫瘍活性、安全性について概説する。イマチニブ、スニチニブ及びレゴラフェニブに不応又は不耐の転移性/切除不能GIST患者を対象とした第III相試験(CHAPTER-GIST-301試験)では、ピミテスピブはプラセボと比較して主要評価項目の無増悪生存期間(PFS)を有意に延長した(PFS中央値:ピミテスピブ群2.8ヶ月 vs プラセボ群1.4ヶ月、ハザード比0.51:95% CI 0.30-0.87、p = 0.006)。ピミテスピブ群の主な副作用は、下痢、食欲減退、血中クレアチニン増加、倦怠感、悪心、眼障害であった。ピミテスピブはその他のがんや、他の抗がん剤との併用においてもその有効性と安全性を検討する臨床試験が実施中であり、今後の開発が期待される。

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2024/01/17

日本産ハチミツから分離された好乾性真菌の新種Talaromyces mellisjaponici

論文タイトル
Talaromyces mellisjaponici sp. nov., a xerophilic species isolated from honey in Japan
論文タイトル(訳)
日本産ハチミツから分離された好乾性真菌の新種Talaromyces mellisjaponici
DOI
10.1099/ijsem.0.006212
ジャーナル名
International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology
巻号
Volume 74, Issue 1
著者名(敬称略)
広瀬 大 他
所属
日本大学 薬学部 薬学科

抄訳

ハチミツは水分活性が極端に低い(0.5–0.7)極限環境の1つである。著者らは日本国内のハチミツ中の真菌の多様性調査を進める中でTalaromycesTrachyspermi節に属する未記載種と思われる菌株を複数分離した。4遺伝子領域の部分塩基配列を用いた分子系統解析を行った結果、これらの菌株はTalaromyces affinitatimellis、Talaromyces basipetosporus、Talaromyces speluncarumと近縁であることが明らかになった。形態学的観察を行った結果、3種類の平板培地における菌糸成長が近縁種よりも良いことが分かった。またスクロース濃度0–80%の培地で菌糸成長が可能であり、スクロースを添加した培地で菌糸成長及び胞子形成が促進されたことから、ハチミツ内の環境に適応していることが示唆された。これらの結果に基づき今回筆者らが分離した菌株について新種Talaromyces mellisjaponiciを提案した。

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2024/01/12

新型コロナウイルス排出と粘膜抗体の関係を解明 ~呼吸器ウイルスのヒト間伝播を制御・予防する第一歩~

論文タイトル
Infectious virus shedding duration reflects secretory IgA antibody response latency after SARS-CoV-2 infection
論文タイトル(訳)
新型コロナウイルス排出と粘膜抗体の関係を解明 ~呼吸器ウイルスのヒト間伝播を制御・予防する第一歩~
DOI
10.1073/pnas.2314808120
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.120 No.52
著者名(敬称略)
宮本 翔 鈴木 忠樹 他
所属
国立感染症研究所

抄訳

国立感染症研究所 感染病理部の鈴木 忠樹 部長、宮本 翔 研究員らの研究グループは、国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院理学研究科の岩見 真吾 教授らとの共同研究でオミクロン感染者の臨床検体を数理科学的に分析することで、粘膜表面における分泌型Ig-A(S-IgA)抗体の誘導が早い症例ほど感染性ウイルス排出期間が短くなる傾向を明らかにしました。The first few hundred調査と呼ばれるオミクロン感染者の積極的疫学調査で得られたデータと試料を倫理審査委員会の承認を得て二次利用し合計122人のデータを分析すると、S-IgA抗体は鼻粘膜検体において他の抗体(IgG抗体やIgA抗体)よりもウイルス量や感染性を強く抑制する傾向も見られました。なお、新型コロナウイルスへの感染歴やワクチン接種歴がある感染者ほどS-IgA抗体の誘導時間が短くなることも明らかになりました。本研究は、呼吸器ウイルス感染症において分泌型粘膜抗体が感染性ウイルス排出を抑制する可能性をヒトで示した世界で初めての報告となります。 現在、mRNAワクチンによりCOVID-19による重症化や死亡のリスクは著しく低減されました。一方で、呼吸器ウイルスによるパンデミックでは、ヒト間伝播を制御・予防する課題が浮き彫りになっています。本研究成果により、粘膜免疫を標的とした次世代のワクチン開発が加速され、将来、呼吸器系ウイルスによるヒト間伝播を予防し、パンデミックを制御するための新たな戦略を与えることが期待されます。

内容の詳細は下記よりご覧ください。
掲載記事:https://www.nagoya-u.ac.jp/researchinfo/result/2023/12/post-603.html
プレスリリース:https://www.nagoya-u.ac.jp/researchinfo/result/upload_images/20231219_sci.pdf

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2024/01/12

半自動運転における行動協調実験:互恵性の発生と崩壊

論文タイトル
Emergence and collapse of reciprocity in semiautomatic driving coordination experiments with humans
論文タイトル(訳)
半自動運転における行動協調実験:互恵性の発生と崩壊
DOI
10.1073/pnas.2307804120
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.120 No.51
著者名(敬称略)
白土 寛和 他
所属
Carnegie Mellon University

抄訳

概要:近年、機械知能は、その発展に伴い、人々の集団行動での利用が増加しています。これにより、個人の利便性は向上する一方、社会規範や互恵性といった人々が協力して行動するために築いてきた価値観が影響を受ける可能性があります。

本研究では、社会協調のゲーム理論に基づき、インターネットを介した遠隔操作で複数の小型ロボット車を協調させる実験を行いました。300人の被験者を用い、機械知能による支援が人々の互恵性に与える影響を調査しました。

実験の結果、緊急時の自動操舵支援システムを搭載した車を「運転」すると、人々が自分の利益にのみ焦点を当て、道の譲り合いといった互恵性が抑制されることが明らかになりました。この行動変容は、人と人との間にある社会規範を損なうため、自動操舵支援がなくなった後もすぐには回復しないことが追加実験で確認されました。

研究の結果から、機械知能が人間の意思決定に介入することで、利他的な社会規範が崩れる可能性が示唆されます。人々は、集団行動における困難に対処するため、様々な社会規範や価値観を築いてきました。しかし、機械知能がそうした黙約を考慮せず人の集団行動に関与した場合、人々の持つ社会性が影響を受けることが懸念されます。

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