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国内研究者論文紹介

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ユサコでは日本人の論文が掲載された海外学術雑誌に注目して、随時ご紹介しております。

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2023/07/06

Alicyclobacillaceae科の新属新種の土壌細菌Collibacillus ludicampi

論文タイトル
Collibacillus ludicampi gen. nov., sp. nov., a new soil bacterium of the family Alicyclobacillaceae
論文タイトル(訳)
Alicyclobacillaceae科の新属新種の土壌細菌Collibacillus ludicampi
DOI
https://doi.org/10.1099/ijsem.0.005827
ジャーナル名
International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology
巻号
Volume 73, Issue 5
著者名(敬称略)
城島 透、森 美穂
所属
近畿大学 農学部 環境管理学科

抄訳

新規な中程度好熱性、好気性細菌TP075株は、日本の運動場の土から単離された。TP075株は桿菌であり、好気性で芽胞を形成し、水酸化カリウム法によりグラム陽性と判定された。増殖の最適pHは4.0-5.0、最適温度は47-50℃であった。ドラフトゲノム配列から、GC含量は46.5%と判明した。主要な脂肪酸は、分岐鎖脂肪酸(iso-C15:0, anteiso-C15:0, and iso-C16:0)であった。16SリボソームRNA遺伝子による分子系統解析の結果、TP075株は、Alicyclobacillaceae科の細菌であり、Effusibacillus consociatus CCUG53762T (92.6%)、およびTumebacillus soil CAU11108T (92.5%)に対して最も高い類似性を示した。ゲノム解析の結果、TP075株は、Effusibacillus pohliae DSM 22757に対して最も高い類似性を示し、average amino acid identity (AAI)は62.7%、average nucleotide identity (gANI)は70.86%であった。以上の結果より、TP075株は、新属の新種であり、Collibacillus ludicampi、基準株はTP075株(JCM34430=TBRC15186)として提案された。

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2023/07/06

イメグリミンとメトホルミンの併用療法はdb/dbマウスにおいて膵β細胞保護作用を示す

論文タイトル
Protective Effects of Imeglimin and Metformin Combination Therapy on β-Cells in db/db Male Mice
論文タイトル(訳)
イメグリミンとメトホルミンの併用療法はdb/dbマウスにおいて膵β細胞保護作用を示す
DOI
10.1210/endocr/bqad095
ジャーナル名
Endocrinology
巻号
Endocrinology, Volume 164, Issue 8, August 2023, bqad095
著者名(敬称略)
西山 邦幸, 白川 純 他
所属
群馬大学 生体調節研究所 代謝疾患医科学分野

抄訳

本研究では、糖尿病治療薬であるイメグリミンとメトホルミンとの併用療法の、2型糖尿病モデルマウスであるdb/dbマウスにおける効果を検証した。イメグリミンとメトホルミンとの併用療法により、インスリン分泌のグルコース応答性回復、膵β細胞増殖促進、および膵β細胞アポトーシス抑制が認められた。膵島の網羅的遺伝子発現解析により、イメグリミンとメトホルミンの併用は、アポトーシス関連遺伝子群の発現を制御することが示された。db/dbマウスの単離膵島や膵β細胞株に直接イメグリミンとメトホルミンを添加しても、同様にアポトーシスが抑制された。以上より、イメグリミンとメトホルミンの併用は、直接作用により膵β細胞保護効果を有し、膵β細胞機能や量を維持する2型糖尿病治療に有用であることが示唆された。

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2023/07/03

細胞の成長ゆらぎがクローン集団をより速く成長させる

論文タイトル
Noise-driven growth rate gain in clonal cellular populations
論文タイトル(訳)
細胞の成長ゆらぎがクローン集団をより速く成長させる
DOI
10.1073/pnas.1519412113
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
PNAS March 22, 2016 vol. 113 no. 12 3251–3256
著者名(敬称略)
橋本幹弘 若本祐一他
所属
東京大学 大学院総合文化研究科 広域科学専攻 相関基礎科学系

抄訳

同じ遺伝情報をもつクローン細胞を同じ環境に置いたとしても、個々の細胞のさまざまな性質(表現型)には、しばしば大きなばらつきが観察されます。このような「表現型ゆらぎ」は遺伝情報と異なり子孫細胞に安定に継承されないため、これまでその進化的意義については十分に理解されてきませんでした。今回のこの論文では、大腸菌のクローン細胞集団を1細胞レベルの精度で100世代以上の長期にわたって連続観察可能な計測システムを開発し、これを用いることで、細胞レベルの成長ゆらぎが大きいほど、それら細胞によって構成される細胞集団がより速く成長できることを定量的に明らかにしました。この結果は、表現型ゆらぎの明確な進化的意義を示すとともに、細胞集団の成長能が細胞の平均的な成長能と定量的には必ずしも一致しないという興味深い事実を実験的に確認するものです。さらにこの論文では、異なる環境条件下での成長ゆらぎの間に成立する新たな定量的法則も発見し、この法則に基づいて、成長ゆらぎの情報から各生物種の成長率の原理的上限を知ることができる可能性も示唆しています。

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2023/06/23

骨形成不全症2型の乳児に対するパミドロネート治療の有効性

論文タイトル
Cyclic intravenous pamidronate for an infant with osteogenesis imperfecta type II
論文タイトル(訳)
骨形成不全症2型の乳児に対するパミドロネート治療の有効性
DOI
10.1136/bcr-2022-252593
ジャーナル名
BMJ Case Reports
巻号
BMJ Case Reports Vol.16 Issue 5
著者名(敬称略)
深堀 響子 長崎 啓祐
所属
新潟大学医学部 小児科学教室

抄訳

論文要旨:骨形成不全症(OI)2型は、周産期致死型と言われていた最重症型で、生後1ヶ月までに呼吸不全などにより90%以上が死亡する。現在、OIに対して骨折頻度の減少および骨痛の改善目的に、パミドロネート治療が行われるが、OI 2型に対する使用例はほとんど報告がなく、その安全性や有効性など明らかではない。我々は、OI 2型の乳児に対してパミドロネートの静脈内投与を行い、長期生存している例を報告する。在胎17週に胎児の大腿骨短縮を指摘され、在胎28週におこなった胎児CTの所見からOI 2型が疑われていた。出生後、呼吸困難のため気管内挿管を行い、人工呼吸器管理を行った。COL1A1のヘテロ接合性バリアント(c.1679G>T,p.Gly358Val)が確認され、OI 2型と診断した。生後41日目にパミドロネートの静脈内投与を開始し、投与量を調整しながら1ヶ月毎に投与した。生後7ヶ月で抜管に成功し、高流量鼻カニューレを使用して呼吸状態は安定している。生後12ヶ月現在、出生後の新規骨折はなく、NICUで在宅に向けて管理中である。OI 2型に対する集学的な呼吸器管理やパミドロネート治療により生命予後が改善する可能性がある。

患者の視点(両親の声) 私たちは、出生前に致死性の骨系統疾患と診断されたとき、混乱と不安に襲われました。この診断で元気に生活している人はいるのか」「頭や両上下肢の形が良くなる可能性はあるのか」「出産する母体にリスクはないのか」等々、医療スタッフに質問をたくさんしました。しかし、私たちは医師に何を言われても妊娠を継続すると決めていたので、中絶という選択肢はなかったです。羊水検査はリスクを伴うので希望しませんでしたし、その結果が私たちの決断を左右することはないとわかっていました。妊娠中、赤ちゃんが生きているかどうか常に心配でした。何が起こってもいいように準備はしていましたが、同時に彼の生命力を信じたいという気持ちもありました。 出産後、赤ちゃんが無事に生まれてきてくれて本当によかったと思いました。赤ちゃんに触れることができたことも嬉しかった。私たち二人とも、心肺蘇生法を含む最善かつ最も積極的な管理を望みました。出産後、お母さんのお腹の中で骨折したと聞かされ、私たちはショックを受けました。まるで私たちのせいのようでした。パミドロネート治療については、正直、副作用が怖かった。しかし、治療をしなければ何も良くならないので、治療を受けさせました。現在、骨が強くなっているのを実感しており、励みになっています。今は、病気に関係なく、兄と同じようにたくさんの愛情を注いであげたいと思っています。大きな信念と希望を持って、私たちは彼の生きる意志を信じています。

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2023/06/20

キチン添加土壌から分離されたメチオニン要求性のキチン分解新奇細菌Lysobacter auxotrophicusのビタミンB12要求性とゲノム解析

論文タイトル
Physiological and genomic analyses of cobalamin (vitamin B12)-auxotrophy of Lysobacter auxotrophicus sp. nov., a methionine-auxotrophic chitinolytic bacterium isolated from chitin-treated soil
論文タイトル(訳)
キチン添加土壌から分離されたメチオニン要求性のキチン分解新奇細菌Lysobacter auxotrophicusのビタミンB12要求性とゲノム解析
DOI
10.1099/ijsem.0.005899
ジャーナル名
International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology
巻号
Volume 73, Issue 5
著者名(敬称略)
齋藤明広、道羅英夫、浜田盛之、森内良太、小土橋陽平、森浩二
所属
静岡理工科大学 理工学部 物質生命科学科

抄訳

キチンは,真菌の細胞壁に含まれる直鎖状の多糖です。土壌にキチンを添加すると,真菌を病原とする植物病が低減されることが報告されてきました。キチン添加によって増加するキチン分解細菌が病害低減効果の一要因と考えられています。前報では、キチン添加土壌から分離したキチン細菌Lysobacter sp. 5-21aTがメチオニン (Met) 要求性を示すことを報じました(Iwasakiら2020)。本論文では,5-21aTがビタミンB12(VB12) 要求株であることを示すとともに、その遺伝的背景を探るために行ったゲノム解析の結果を報告しています。また、近縁株とのゲノム相同性の比較や,化学分類学的,表現型および系統学的データに基づいて,5-21aTがLyobacter属の新種であることを提唱し,Lyobacter auxotrophicus と命名しました。VB12要求性が5-21aTの近縁株にも共通した性質であること,VB12依存性Met合成酵素の遺伝子しか持たないために5-21aTのMet合成にはVB12が必要であると考えられること,また,5-21aTがVB12合成の上流 (コリン環合成) 経路の遺伝子を持っていないためにVB12de novo合成できないことがわかりました。 

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2023/06/20

血清中のMac-2結合タンパク質糖鎖異性体(M2BPGi)濃度は2型糖尿病の発症率と関連する

論文タイトル
Serum Mac-2 Binding Protein Glycosylation Isomer Concentrations Are Associated With Incidence of Type 2 Diabetes
論文タイトル(訳)
血清中のMac-2結合タンパク質糖鎖異性体(M2BPGi)濃度は2型糖尿病の発症率と関連する
DOI
10.1210/clinem/dgad011
ジャーナル名
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism
巻号
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, Volume 108, Issue 7, July 2023, Pages e425–e433
著者名(敬称略)
東岡 真由, 二宮 利治 他
所属
九州大学大学院医学研究院 衛生・公衆衛生学分野

抄訳

血清Mac-2結合蛋白質糖鎖異性体(M2BPGi)濃度は、慢性肝障害や線維化の指標となることが知られている。本研究では、糖尿病を発症していない40~79歳の地域日本人住民2,143人を7年間追跡した成績を用いて、血清M2BPGi濃度と2型糖尿病発症との関連を検討した。追跡開始時の血清M2BPGi濃度の5分位値を用いて対象者を5群に分類した: Q1 ≦0.37、Q2 0.38-0.49、Q3 0.50-0.62、Q4 0.62-0.80、Q5 ≧0.81 (単位 cutoff index)。 解析にはCox比例ハザードモデルを用いた。追跡期間中、219名が2型糖尿病を発症した。2型糖尿病の年齢・性別調整後の累積発症率は、血清M2BPGi値の上昇とともに有意に増加した(p for trend < 0.01)。さらに、潜在的な交絡因子で調整しても有意な関係を認めた(p for trend = 0.04)。一方、血清高感度C反応性タンパク質やHOMA-IR(Homeostasis Model Assessment of Insulin Resistance)を追加で調整したところ有意な関連は消失した。
このように、わが国の地域住民において、血清M2BPGi濃度と糖尿病リスクは正の関連を有することが明らかとなった。炎症とインスリン抵抗性は、血清M2BPGi濃度が高い人の糖尿病リスク上昇に関与することが示唆された。

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2023/06/16

Fezf2は中枢性免疫寛容に必要な胸腺自己抗原発現を制御する

論文タイトル
Fezf2 Orchestrates a Thymic Program of Self-Antigen Expression for Immune Tolerance
論文タイトル(訳)
Fezf2は中枢性免疫寛容に必要な胸腺自己抗原発現を制御する
DOI
10.1016/j.cell.2015.10.013
ジャーナル名
Cell
巻号
Vol.163 No.4(p975-987)
著者名(敬称略)
高柳 広
所属
東京大学大学院医学系研究科

抄訳

T細胞は胸腺において分化・成熟する。その過程では、抗原を認識するタンパク質であるT細胞抗原受容体がランダムに作られるため、自己抗原に反応するT細胞が必然的に生まれてしまう。そのような自己反応性のT細胞は胸腺内で除去される(負の選択)。本論文では、胸腺に発現し、自己反応性T細胞の選別に関わる自己抗原発現を制御する転写因子Fezf2を見いだした。Fezf2は、既知の転写制御因子Aireとは独立して自己抗原を誘導する。Fezf2を持たない遺伝子改変マウスを調べたところ、自己抗体の産生や自己の組織を破壊するといった自己免疫疾患様の症状が見られた。この結果は、Fezf2が中枢性免疫寛容に必須の分子であり、自己免疫疾患の発症を抑えていることを示している。Fezf2の発見は、高等生物の獲得免疫システムの基本原理の理解につながるだけでなく、自己免疫疾患の発症機序の解明や新たな治療法の確立に役立つと考えられる。 

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2023/06/08

遺伝的親子関係から予測されるスズメの社会的つがい関係における子育貢献の雌雄差

論文タイトル
Genetic Parent-Offspring Relationships Predict Sexual Differences in Contributions to Parental Care in the Eurasian Tree Sparrow
論文タイトル(訳)
遺伝的親子関係から予測されるスズメの社会的つがい関係における子育貢献の雌雄差
DOI
10.2326/osj.22.45
ジャーナル名
Ornithological Science
巻号
Ornithological Science Volume 22, Issue 1
著者名(敬称略)
坂本 春菜、高木 昌興、他
所属
北海道大学大学院理学研究院・多様性生物学講座

抄訳

 多くの鳥類は一夫一妻のつがいで繁殖します。それはヒナを育て上げるための餌運びの労働コストが非常に大きく、つがいで繁殖することが有利だからです。しかしつがいの巣には、つがい外のオスとの交尾に由来するヒナ(つがい外父性)やつがい外のメスの托卵によって産み込まれた卵に由来するヒナ(種内托卵)を含むことがあります。オスはできるだけ多くのヒナを残し、メスは生産性の高い子を残すための繁殖戦略の一側面です。一方で自らと血縁関係にはないヒナのために餌を運ぶことは、自身の生存率を下げ、またその後の繁殖に悪影響を与えます。そのため、つがいのオスとメスはヒナの血縁関係と労働の配分という複雑な駆け引きをします。このような背景から自らの巣内に血縁関係のないヒナが存在すると、巣の持ち主である親はヒナへの子育て投資を減少させると推察されます。しかしこのような研究に適した材料がなく、実証は困難な状況にありました。本研究では、一夫一妻で繁殖するスズメにおいて、つがいの巣内につがい外父性や種内托卵の双方を含むことを発見しました。さらに巣内に自らと血縁関係にないヒナが多くなると、子育ての労力を減少させることを実証しました。 

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2023/06/07

GLP-1は齧歯類において食事タンパク質の熱産生作用に関与する

論文タイトル
Glucagon-Like Peptide-1 is Involved in the Thermic Effects of Dietary Proteins in Male Rodents
論文タイトル(訳)
GLP-1は齧歯類において食事タンパク質の熱産生作用に関与する
DOI
10.1210/endocr/bqad068
ジャーナル名
Endocrinology
巻号
Endocrinology, Volume 164, Issue 6, June 2023, bqad068
著者名(敬称略)
落合 啓太, 比良 徹 他
所属
北海道大学 大学院農学研究院 基盤研究部門 生物機能化学分野 食品栄養学研究室

抄訳

タンパク質の摂取は、強力に体温を上昇、エネルギー消費を増大させるが、そのメカニズムは十分に解明されていない。Glucagon-like peptide-1(GLP-1)は食後に分泌される消化管ホルモンであり、タンパク質摂取はその分泌を強力に促進する。本研究では、食事タンパク質誘導性の熱産生作用におけるGLP-1の関与を、ラット及びマウスを用いて検討した。ラットの直腸温測定により、タンパク質の経口投与による熱産生作用が、炭水化物や脂質の作用よりも大きいことが観察された。また、5種類の食事タンパク質(カゼイン、ホエイ、米、卵、大豆)の中で、大豆タンパク質が最も直腸温を上昇させた。さらに、大豆タンパク質の熱産生作用は、GLP-1受容体アンタゴニスト処理およびGLP-1受容体欠損マウスでは完全に消失した。これらの結果は、ラット及びマウスにおける食事タンパク質誘導性の熱産生作用にGLP-1シグナルが必須であるという新たなメカニズム、ならびに消化管ホルモンGLP-1の新たな生理的役割を提唱するものである。

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2023/06/02

ヤツメウナギ初期胚からの高純度なtotal RNA抽出法

論文タイトル
High-quality total RNA extraction from early-stage lamprey embryos
論文タイトル(訳)
ヤツメウナギ初期胚からの高純度なtotal RNA抽出法
DOI
10.2144/btn-2023-0004
ジャーナル名
BioTechniques
巻号
BioTechniques, Ahead of Print
著者名(敬称略)
菅原 文昭(筆頭、連絡著者)、Juan Pascual-Anaya
所属
兵庫医科大学生物学

抄訳

 高純度のtotal RNAの抽出は、近年のトランスクリプトーム解析においてバイアスのない結果を得るために不可欠な技術である。ヤツメウナギは現代に生き残る無顎類の一種であり、脊椎動物の進化発生学(EvoDevo)研究において重要な系統的位置を占める動物である。ヤツメウナギから人工受精によって胚を得ることは比較的容易だが、原腸陥入前の初期胚から不純物のないtotal RNAを抽出すことはこれまで困難であった。例えばAPGC法にイソプロパノール沈殿を組み合わせた従来の手法では多量のコンタミネーションが生じ、O.D.260/280の値が極めて低くなる。また、QIAGEN社のRNeasyなどシリカメンブレンフィルターを用いた抽出法では、RNAがフィルターに結合せず収量が大幅に低下する。今回我々は、抽出前の遠心分離操作の追加とイソプロパノール沈殿時の塩濃度の調整により、収量と純度の大幅な改善に成功したので、その手法を報告する。また、RNA抽出に伴う上記の問題は、孵化前後に徐々に解消されていくことも明らかになった。このことから、孵化に伴う胚の変化(卵膜の有無、卵黄の量)に関係する何らかの物質が初期胚のRNA抽出を妨げている可能性が示唆される。

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